平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

フォトンベルト妄想(6)

2006年07月03日 | フォトンベルト妄想
太陽がプレアデスの周囲をめぐり、プレアデスから出ているフォトンベルトに出たり入ったりするという観念は、ドイツ人ヘッセ(Paul Otto Hesse)に端を発する妄想であることがおわかりになったと思いますが、ところがフォトンベルト妄想には様々な改変が付加されていくことになります。

【絵文録ことのは】によれば、

【3】1991/夏 ロバート・スタンレー(Robert Stanley)が「フォトン・ゾーン――地球の未来は輝く("The Photon Zone: Earth's Future Brightens")」という記事を「Unicus Magazine」で発表。

このロバート・スタンレーというのは、渡邊延朗氏がフォトンベルトの発見者として持ち上げる「アメリカの天文学者ロバート・スタンレー博士」のことのようです。しかし、Robert Stanley を astrophysics や astronomy という語と組み合わせて検索しても、インターネットにはその情報が出てきません。

当然です。ロバート・スタンレーは天文学者などではなく、現在「Unicus Magazine」という雑誌の編集長(editor)をしている人物なのです。スタンレーは子供のころからUFOに関心を持ち、様々な不思議な体験をしてきたといいます。
http://www.unicusmagazine.com/html/editor.htm

私はUFO現象にはそれなりの意味があると思っておりますので、妄想であるとして頭から否定しようとは思いません。しかし、どちらかというと矢追純一氏のような人物を、「天文学者」や「博士」と呼ぶことは、誤解を招くと思います。

スタンレーのような人物が編集長をしている「Unicus Magazine」も、やはり『ムー』と同じレベルの雑誌だということは確実です。

さて、このスタンレーの「フォトン・ゾーン」の記事には、ある人物から強い批判が寄せられました。その批判から、スタンレーのフォトン・ゾーン理論が読み取れます。

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 1991年の夏、ロバート・スタンレー(Robert Stanley)は「フォトン・ゾーン――地球の未来は輝く("The Photon Zone: Earth's Future Brightens")」という記事を「Unicus Magazine」に発表した。この記事は、フォトン・ベルト概念を銀河の中心からの噴出(アウトバースト)の概念と結びつけたものである。この概念はラヴィオレットの銀河スーパーウェーブの概念と驚くほど似ているが、科学的な基礎もなければ、観測上のデータもない。「フォトン・ゾーン」は、銀河の中心から放射されるベルト状またはトロイド(ドーナツ)状の過剰な光子(フォトン)であり、「太陽系の水平軌道に対して90度直角に回転している」とスタンレーは述べている。

 スタンレーはどうやらラヴィオレットの科学論文を参照していないようである。ラヴィオレットの論文では、銀河の宇宙線スーパーウェーブが銀河の中心から放出されている証拠について述べている。そして、外に向かって動いているスーパーウェーブの各々の殻は、銀河中心部を中心とする同心円状の電磁放射のリングを形成するが、これは銀河の平面上にある。スーパーウェーブが外に向かって広がっていくのに伴って、この殻は外に広がっていく。この放射ゾーンを「フォトン・バンド」とか「フォトン・ベルト」と呼ぶことはできるかもしれない。このスーパーウェーブ放射のリングの一番近いリングからやってくる放射は、私たちにとって一番近い地点としては、7000光年離れたおうし座の領域で発生しているように見えるだろう、ということをラヴィオレットは示した(したがって、プレアデスからさらに6500光年遠方)。そして、その放射は反対方向、つまり3万光年先にある銀河の中心部(さそり座の領域)に向かって、われわれからはるかに離れてのびている。つまり、観測上の証拠がないフォトン・バンド理論は、スーパーウェーブの概念に興味を持つ人たちを混乱させているのである。

 スタンレーは、このフォトン・バンドは銀河の中心から放射されたものだとするが、それは静的な領域であるという矛盾した観念も示している。シャーリー・ケンプの説の多くを採用して、スタンレーは、フォトン・バンドが太陽系の近くにあり、太陽系が2万6000年の周天円軌道(epicycle)を進行することにより、太陽系がそれを定期的に通過していると述べている。B・H・クロウ(B. H. Clow)は彼女の著書『プレアデス 銀河の夜明け(The Pleiadian Agenda)』で、スタンレーが次のように述べたと引用している。恒星アルシオーネを巡る「2万6000年の銀河軌道上で、わが太陽系は、銀河のこの地帯[フォトン・ゾーン]に1万1000年ごとに入り、それを2000年間通過する」。しかし、太陽系がアルシオーネを巡る2万6000年の軌道上にあるという天文学上の証拠は何もない。銀河系の中心(いて座 A*)を巡る太陽系の軌道は1周約2億年であり、銀河の中心はプレアデスとは反対側のいて座・さそり座の方向にある、という証拠が存在する。
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http://www.etheric.com/LaViolette/Disinformation.html

これは、ラヴィオレットという天文学者がスタンレーを批判している文章です。ラヴィエットの批判をまとめると、

(1)スタンレーはフォトンベルトを、銀河の中心部から発するフォトンの領域としているが、それはラヴィオレットが考え出した「銀河スーパーウェーブ」の概念と似ている。
(2)にもかかわらず、スタンレーの考えには、おかしな観念が多数含まれている。
 ・「銀河スーパーウェーブ」はおうし座の方角から来ると観測されるはずなのに、プレアデスの方向から来るとしている。
 ・「銀河スーパーウェーブ」は元来、水面に広がる波紋のように動的なものであるのに、スタンレーはそれを静的な領域と考えている。
 ・太陽系がアルシオーネの周囲を周天円軌道で回転しているということはない。
(3)このおかしな観念はシャーリー・ケンプに由来するものだろう。

※周天円軌道(epicycle)というのは、プトレマイオスの天動説の説明のために導入された概念です。地球から見ると太陽や月や惑星は実に複雑な運動を示しますが、それを説明するために、それらの天体が天球上で様々な円軌道の組み合わせ=周天円軌道を描いている、と考えられました。ここではこの言葉は、大きな軌道の上で行なっている小さな円運動の軌道という意味で使われています。つまり、太陽は銀河中心に対して円運動をしていると考えられますが、地球はその太陽の周りを円運動しており、そして地球の周りを月が円運動しています。地球や月の運動はそれぞれが周天円運動をしていることになります。パウル・オットー・ヘッセは、太陽がプレアデスのまわりを周天円運動していると考えたわけです。しかし、太陽のこのような周天円運動を可能にするためには、プレアデスが銀河1万倍の質量を持たねばならないことは、先に述べたとおりです。

スタンレーはフォトンベルトを銀河中心部からのフォトンとすることによって、フォトンベルトの観念に混乱を持ち込みました。すなわち、ヘッセとケンプが、フォトンベルトは

(1)アルシオーネから発している

としたのに、スタンレーは、それは

(2)銀河中心部から発している

と考えたのです。そしてこのフォトンベルトはたまたま太陽系の近くにあり、太陽系がアルシオーネの周囲を回転することによって、フォトンベルトに入ったり出たりするというのです。これはヘッセとケンプの説の修正です。

しかもスタンレーは、フォトンベルトは

(3)太陽系の水平軌道に対して90度直角に回転している

と述べています。太陽系はほぼ銀河の水平面上で回転していると考えられますから、フォトンベルトは銀河平面上にあるのではなく、それと垂直に直交していることになります。

この3つの混乱した観念が、渡邊氏をはじめ、現在のフォトンベルト信者には併存しています。

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