Kanaheiのデンマーク生活

糖尿病の勉強をしたくてきたデンマークでの紆余曲折な生活を日記として残しています。

初のインシュリンポンプ患者さん…はグリーンランド人!

2015年11月04日 | デンナースのお仕事


 元気にもりもり仕事に出かけたにも関わらず、突如謎の腹痛(激痛!)と吐き気でタクシー早退というドラマを繰り広げた今日。家に帰って爆睡したらサラッと回復し、なんだったんだ…!?という。年をとると変な体調問題が浮上してきて、いやはや困ります。
 原因はおそらく2度の体外授精でのホルモン治療で、排卵時に卵巣が腫れるから、というものだと思うのですが、それにしても今回はひどかった…。これから閉経までこれが続くのかと思うと、気が重いっす…。婦人科で検査(というか軽い血液検査だけ)もしてもらいましたが、排卵時以外は別になんともないので、もちろん「異常なし」で終わっちゃいましたが。

 さて、仕事の上で色々と面白いことがあったので、久々にまたブログに残しておきたいと思います。

 私が務める王立病院は、一応デンマーク先端医療の中枢病院として機能しているため、デンマーク国内、いろんなところから患者さんが運ばれてきます。「国内」というと、そこにはボーンホルム島(スウェーデン南部に浮かぶ)はもちろんのこと、フェロー諸島(スコットランドの上、ノルウェーとアイスランドの間)、はたまたグリーンランドまでも王立病院の管轄なので、はるばるみなさん、飛行機に乗って受診してくるのです。
 
 王立病院に勤務し始めた1年前、「王立病院なのにインシュリンポンプ患者さんがいないなんて!」と憤慨し、ことある度に、「ポンプ外来立ち上げましょう!」とドクターや糖尿病エキスパートナースのシャーロッテに言って回っていたのですが、念願叶って(そして必要に迫られて)、先日ついに我が糖尿病外来初のインシュリンポンプ患者さんを受け入れることになりました。しかも、その初ポンプ患者さん、なんとグリーンランド在住!どひー。

 事の発端は、妊娠糖尿病のエキスパートであり、インシュリンポンプ治療にも経験豊富なドクター、エリザベスがある日「オーフス大学病院から転送されてきた若い女性患者さんの診察に付き合わないか」と声をかけてくれたのがきっかけ。(たぶん私がポンプポンプうるさかったから)
 患者さんは1型糖尿病のグリーンランド人で、教育の一環で一時的にオーフスに住んでいた時、インシュリンポンプの導入を始めたそう。でもグリーンランドに帰るに当たっては王立病院が管轄となるので、うちの外来に移ってきたのでした。

 オーフス大学病院での患者さんのポンプ設定は、超シンプル、というか最低限のことしか設定されておらず、よくこれで暮らせていたなあと…。エリザベスが設定をある程度変更し、その後私が引き継いで、低血糖時や運動時など、血糖変動に対しどうポンプの機能を活用していくか、ポンプ故障時など緊急時の対応の確認、グリーンランドでポンプに必要な物品をどう手配するか、そして定期検診をどう行っていくかなど話し合いました。

 特に普通のデンマーク国内にいる患者さんと違って、この患者さんは時差4時間、直行便で8時間弱のグリーンランド在住です。通院にかかる交通費は国が負担するのでかかりませんが、それでも「じゃあ1ヶ月後にまた来てください」というわけにはなかなかいきません。なので、王立病院に通院に来るのは1年に1度、それ以外は3ヶ月に1度、グリーンランド首都にある病院でHbA1c(過去2ヶ月の血糖の推移を見るための血液検査)のモニターや合併症のスクリーニングしていく、ということに決まったのですが、変更したばかりのポンプの設定の微調整や、その他もろもろのことをケアしていくのは担当ナースである私の役目です。

 そこで、このハイテクなご時世、ネット環境さえあればどうにかなるもので、患者さんにポンプと血糖測定器からデータをPCに転送して、その解析結果と治療プランをメールか電話で、ポンプが最適な設定に達するまで、およそ1〜4週間ごとにやりとりしていきましょう、と決定。患者さんも若者なので、その辺はすんなりオッケー。
 ポンプのメーカーに問い合わせたところ、この患者さんが使用している、Rubin社のアニマスポンプでは、Diasendというオンラインデータベースで患者さんのデータを共有できるそうで、患者さんは世界中どこにいても(ネット環境さえあれば)、このデータベースに血糖測定器とポンプのデータさえ送信し、担当医療スタッフと交信できるのです。ワンダホー!

 というわけで、ささやかながら突如スタートした、うちの外来でのインシュリンポンプ診療。いきなりグローバルな展開です。距離とか時差だけでなく、グリーンランドはエスキモーの土地。患者さんは首都ヌークに住む現代グリーンランド人の若者ですが、生活習慣がまるで違います。そんな患者さんを相手に、今後どうポンプチーム(現在メンバーは私とエリザベスのみ…)を発展させていくか、かなりワクワクです!