日本帰省の前までは英会話に通ったりしていた関係で、あまり準夜勤(15~23時)をしていなかったのですが、最近また準夜勤をとることになりました。
準夜勤のメインイベントといえば、「患者さん向け糖尿病教室」での授業。約1時間半にわたって、「糖尿病とは?1型と2型の違い」「検査値をどう治療に反映させるか」「正しい自己注射手技とインシュリンの保存に関して」「旅行時の注意」「血糖と運動」「フットケア」「糖尿病性眼病変」などのテーマで授業を毎日やっていくわけです。
だいたいデン語もよちよちな私は、この授業で講師を勤めるのが超苦手。今までの授業では、講義というよりは、ソファーにこじんまりと集まって、私が投げたテーマに関して和やかに話し合いつつ、情報を交換し合いつつ、という感じだったので、なんとか切り抜けてきました。
しかし最近、病棟で糖尿病教室用のスタンダードのパワーポイントが作られ、それを使って授業をすることが多くなってきました。別に使わなくてもいいものだけど、やっぱり視覚的に訴えるマテリアルというのは効果的なこともあり、私も今週はそれを使って授業をしています。
が、パワーポイントでの陥りやすい罠として、見ている人に常に注意を向けていかないと、かなり退屈な授業になってしまいます。私も一昨日は慣れないパワーポイント、しかも30ページ以上に及ぶ長いものだったこともあり、このパワポの流れに沿ってひたすら授業を進行させてしてしまったので(ページの少ないパワポだともっと自分の中で進行の流れを作りやすい)、ハッと気がついたときには患者さんがアクビをしている状況…。
さらに、そのクラスの雰囲気というか、毎週月曜日に一斉にやってくる患者さんはその時々様々で、まとまりのいいグループもあれば、てんでバラバラに言いたいことを言う人達や、授業をかき乱す患者さんもいたりで色々。
で、今週のクラスは平均年齢50歳くらいのおばちゃんが多く、まとまってはいるんだけど、ちょっと静か。退屈なパワポで患者さんのリアクションの薄さに気まずくなってどもる私のデン語、重い沈黙、もっとしどろもどろになる私…。
久々の、そしてパワポを使った授業は自分的に超ダメダメでしたが、その後優しい患者さんが「大丈夫よ、デン語が難解な言語だってことはみんなわかってるから。十分理解できる授業だったわ。」と励ましてもらいましたが(励まされてどうする!)、翌日の超ベテランスーパーナースのTが授業をしたところ、授業後の患者さんの表情の生き生きしていることったら!!「すばらしい授業だったわ。たくさんの役に立つ情報ありがとうね!」ってわざわざナースステーションにお礼を言いにくる患者さんまで…。
どどーんと、落ち込むどころか、地面にめり込む自信。そらー、ポルトガルの忙しい糖尿病外来で14年間バリバリ働いていたTと比べられたら、どうしようもないんですけど…。
しかも間の悪いことに、今週は拒食症で長いこと入院している若い女の子の患者さんを私が担当しているのですが、彼女、私の言うこと(決まった量の炭水化物を食事から摂るという治療)に対し、まるで「どうでもいいね」というティーンエイジャーのように反抗的に振る舞い、約束をやぶり、しかしTが話すと素直に聞くという…。
まあ、この子はいつも誰かしらに対してそうなんですが(その時々で話を優しく聞いて甘やかしてくれそうな人に媚びる。ボーダーラインという精神疾患との境目)、どん底に自信をなくしている状態だったので、もう悲しいやらなんやら。
このスーパーナースのT、昨年私より後に入ってきたのですが、その後彼女の素晴らしいキャリア欲しさに上が仕掛けた、契約社員3名の中で契約をめぐるややこしい騒動があったり、それほどスーパーな彼女。
そんな彼女と比べるのはバカらしいことだけど、でもあまりに優秀な人と対等に働くのもつらいものがあります…。
準夜勤も終わり、どん底なムードで帰ろうとしたのですが、ふとしたことで深夜勤の、これまた大ベテランナースSと糖尿病教室の授業について話し、初日の授業がうまくいかなかったこと、沈黙があるとテンパってしまうこと、患者さんにTと比較されているようでつらいことなどを打ち明けると、色々親切に相談に乗ってくれました。
Sの授業は伝説というほどに素晴らしいと評判なのですが、そんな彼からまず、授業のポイントをいくつか。
「パワーポイントは確かに患者さんが置いてかれやすいから、もし自分で使いにくい長いようなものだったら、いっそのこと無視して自分で流れを作った方がいい」「授業に患者さんを引き込みたいんだったら、常に患者さんに質問を投げかけること。自分で質問して自分で答えていってもいい」
そして、「Pause(間)を怖がらなくていいんだよ。デンマーク人ってのは他の外国人に時々、会話の中で”間”が多いから変だと言われるんだけど、僕らにとっては普通だから。質問されてすぐに答えられなくても、ここではそれはそんなに恥ずかしいことじゃないんだ。だからパニックになる必要ないし、じっくり考えてるんだ、っていう音(うーん)とか出してもいいし、出さなくてもいい。もしかしたら患者さんの沈黙も、ただ考え中ってだけかもよ?」と。これは超意外な発見。
さらに「他の人のやり方を聞くのはすごくいいことだけど、みんなそれぞれ違ってて、授業にだって個性がある。だから比べる必要はないんだよ」と。そっか、私は無理にみんなと同じようにする必要はないのね。ていうか、そもそもネイティブで大ベテランのようになんて出来ないんだけど、がんばってどうにかしなきゃ、と思ってたから失敗したのね、と。
Sは数年前にステノのプロジェクトでインドへ行って、50名以上のインド人の医療関係者に対して講義を行ったそうで「死ぬかと思った」そうです。ひたすら長い沈黙、パワポ、そしてある意味ネイティブなんだけど決して聞き取れない「印グリッシュ(インド人の英語)」で次々投げかけられる質問。「いやーあの時は最悪だったね。本気で帰ろうかと思ったよ」と。なるほど。ありがとうS!これからは「インド人50人に比べたら大したことないわ」って、乗り越えていけそうよ!
そんなわけで、Sのお陰でめり込んだ自信も少し立ち直り、私は私で今後も「ガイジンKanahei的なヒュゲリな授業」をしていくことを心に決めたのでした。がんばるよー!
トップ写真:ベテランナースSが深夜勤のお供に連れて来た愛犬。一応病院ですが…。のんきなSと犬に癒されました。
準夜勤のメインイベントといえば、「患者さん向け糖尿病教室」での授業。約1時間半にわたって、「糖尿病とは?1型と2型の違い」「検査値をどう治療に反映させるか」「正しい自己注射手技とインシュリンの保存に関して」「旅行時の注意」「血糖と運動」「フットケア」「糖尿病性眼病変」などのテーマで授業を毎日やっていくわけです。
だいたいデン語もよちよちな私は、この授業で講師を勤めるのが超苦手。今までの授業では、講義というよりは、ソファーにこじんまりと集まって、私が投げたテーマに関して和やかに話し合いつつ、情報を交換し合いつつ、という感じだったので、なんとか切り抜けてきました。
しかし最近、病棟で糖尿病教室用のスタンダードのパワーポイントが作られ、それを使って授業をすることが多くなってきました。別に使わなくてもいいものだけど、やっぱり視覚的に訴えるマテリアルというのは効果的なこともあり、私も今週はそれを使って授業をしています。
が、パワーポイントでの陥りやすい罠として、見ている人に常に注意を向けていかないと、かなり退屈な授業になってしまいます。私も一昨日は慣れないパワーポイント、しかも30ページ以上に及ぶ長いものだったこともあり、このパワポの流れに沿ってひたすら授業を進行させてしてしまったので(ページの少ないパワポだともっと自分の中で進行の流れを作りやすい)、ハッと気がついたときには患者さんがアクビをしている状況…。
さらに、そのクラスの雰囲気というか、毎週月曜日に一斉にやってくる患者さんはその時々様々で、まとまりのいいグループもあれば、てんでバラバラに言いたいことを言う人達や、授業をかき乱す患者さんもいたりで色々。
で、今週のクラスは平均年齢50歳くらいのおばちゃんが多く、まとまってはいるんだけど、ちょっと静か。退屈なパワポで患者さんのリアクションの薄さに気まずくなってどもる私のデン語、重い沈黙、もっとしどろもどろになる私…。
久々の、そしてパワポを使った授業は自分的に超ダメダメでしたが、その後優しい患者さんが「大丈夫よ、デン語が難解な言語だってことはみんなわかってるから。十分理解できる授業だったわ。」と励ましてもらいましたが(励まされてどうする!)、翌日の超ベテランスーパーナースのTが授業をしたところ、授業後の患者さんの表情の生き生きしていることったら!!「すばらしい授業だったわ。たくさんの役に立つ情報ありがとうね!」ってわざわざナースステーションにお礼を言いにくる患者さんまで…。
どどーんと、落ち込むどころか、地面にめり込む自信。そらー、ポルトガルの忙しい糖尿病外来で14年間バリバリ働いていたTと比べられたら、どうしようもないんですけど…。
しかも間の悪いことに、今週は拒食症で長いこと入院している若い女の子の患者さんを私が担当しているのですが、彼女、私の言うこと(決まった量の炭水化物を食事から摂るという治療)に対し、まるで「どうでもいいね」というティーンエイジャーのように反抗的に振る舞い、約束をやぶり、しかしTが話すと素直に聞くという…。
まあ、この子はいつも誰かしらに対してそうなんですが(その時々で話を優しく聞いて甘やかしてくれそうな人に媚びる。ボーダーラインという精神疾患との境目)、どん底に自信をなくしている状態だったので、もう悲しいやらなんやら。
このスーパーナースのT、昨年私より後に入ってきたのですが、その後彼女の素晴らしいキャリア欲しさに上が仕掛けた、契約社員3名の中で契約をめぐるややこしい騒動があったり、それほどスーパーな彼女。
そんな彼女と比べるのはバカらしいことだけど、でもあまりに優秀な人と対等に働くのもつらいものがあります…。
準夜勤も終わり、どん底なムードで帰ろうとしたのですが、ふとしたことで深夜勤の、これまた大ベテランナースSと糖尿病教室の授業について話し、初日の授業がうまくいかなかったこと、沈黙があるとテンパってしまうこと、患者さんにTと比較されているようでつらいことなどを打ち明けると、色々親切に相談に乗ってくれました。
Sの授業は伝説というほどに素晴らしいと評判なのですが、そんな彼からまず、授業のポイントをいくつか。
「パワーポイントは確かに患者さんが置いてかれやすいから、もし自分で使いにくい長いようなものだったら、いっそのこと無視して自分で流れを作った方がいい」「授業に患者さんを引き込みたいんだったら、常に患者さんに質問を投げかけること。自分で質問して自分で答えていってもいい」
そして、「Pause(間)を怖がらなくていいんだよ。デンマーク人ってのは他の外国人に時々、会話の中で”間”が多いから変だと言われるんだけど、僕らにとっては普通だから。質問されてすぐに答えられなくても、ここではそれはそんなに恥ずかしいことじゃないんだ。だからパニックになる必要ないし、じっくり考えてるんだ、っていう音(うーん)とか出してもいいし、出さなくてもいい。もしかしたら患者さんの沈黙も、ただ考え中ってだけかもよ?」と。これは超意外な発見。
さらに「他の人のやり方を聞くのはすごくいいことだけど、みんなそれぞれ違ってて、授業にだって個性がある。だから比べる必要はないんだよ」と。そっか、私は無理にみんなと同じようにする必要はないのね。ていうか、そもそもネイティブで大ベテランのようになんて出来ないんだけど、がんばってどうにかしなきゃ、と思ってたから失敗したのね、と。
Sは数年前にステノのプロジェクトでインドへ行って、50名以上のインド人の医療関係者に対して講義を行ったそうで「死ぬかと思った」そうです。ひたすら長い沈黙、パワポ、そしてある意味ネイティブなんだけど決して聞き取れない「印グリッシュ(インド人の英語)」で次々投げかけられる質問。「いやーあの時は最悪だったね。本気で帰ろうかと思ったよ」と。なるほど。ありがとうS!これからは「インド人50人に比べたら大したことないわ」って、乗り越えていけそうよ!
そんなわけで、Sのお陰でめり込んだ自信も少し立ち直り、私は私で今後も「ガイジンKanahei的なヒュゲリな授業」をしていくことを心に決めたのでした。がんばるよー!
トップ写真:ベテランナースSが深夜勤のお供に連れて来た愛犬。一応病院ですが…。のんきなSと犬に癒されました。