Kanaheiのデンマーク生活

糖尿病の勉強をしたくてきたデンマークでの紆余曲折な生活を日記として残しています。

ココ嬢、しつけトレーニングへ

2011年09月26日 | なるほどな話
 3月にココ嬢がやってきてから早半年が経過しました。

 彼女の行いの数々からあだ名ばかり増え、「Snappe(パクッと盗み食いする様子から)」を筆頭に、「Snappesen(デンマーク人に多い~senという名字から)」、「Stinkedyr(激臭動物。雨の日に臭かったので私が命名)」、「Bandit hund(Banditはろくでなしとか不良とかそういう意味)」、「Flæske(豚肉の皮下脂肪。カリッとオーブンで焼いたflæskestegはデン人の好物)」と、みんな愛情を込めて呼ぶので、彼女も自分の本名がなんなのか、きっと忘れかけていることでしょう。

 そんなココ嬢ですが、来た当初のおどおどさがすっかり失せたのはいいものの、呼んだら来るなどの基本コマンドーを守れないどころか、住人の帰宅時も吠える、小さな子供に威嚇する、飼い主の制止を振り切って逃亡するなど、暴れん坊ぶりがエスカレートし、H氏も1ヶ月に1度は「もうこんなアホ犬にはほとほと疲れた!」と、ブチ切れしながら散歩から帰ってきたりしていたため、「よし、いっちょガツンとやるか!」と、ココ嬢を犬トレーニングに連れて行くことにしました。

 連れて行った先は、Rolf Andersenという犬の個人トレーナーの元。デンマーク軍隊に所属するRolf氏、いつもその恰好なのか、アーミーな出で立ちで登場し(しかもこれまたアーミーなジープで)、かなりいかつい感じです。
 そこでまず、基本コマンドを理解し、逃亡せず、無駄吠えもせず、ついでにごはんもあちこち持ち出して食べるのではなくその場で行儀よく食べれるようにしたい、という私達の希望を話し、その後、犬トレーナーとして彼の理論と経験談を聞いた後、彼の犬でまず「正しい犬」の模範を見せてもらいました。

 Rolf氏はラブラドールと雑種犬(ココ嬢と同じくDansk-Svensk gårdhundと何かのミックス)を所有しており、「このミックスはお宅の犬とほぼ同じ犬種だし、似てるだろう」ということで連れて来たそうですが、「いつまでも待ち続けます!指令が降りるまで!」な、すばらしい従順ラブラドールと違い、ミックスの方は模範演習の途中でおもちゃを持ち逃げ!!説得力全然なしです!しかもうちの犬と似てるとか言った手前、Rolf氏言い訳もできません。


Rolf軍曹の家の前にて訓練を受けるココ。湖の目の前のすてきなところです。


 まあそんな気まずい場面もありましたが、Rolf軍曹に教わったことは以下のような事柄。

1、飼い主は指揮官長
 犬にとってヒエラルキーは絶対なので、そのヒエラルキーのどこに位置しているのか(もちろん最下位)理解させることが大事。それを理解していないから、「止まれ」の指示も守らず、好き勝手をする。
 そして犬は常になにかの指示を与えられ、その行動が正しいと認めてもらえる(褒められる)ことで、安心し、より従順になろうとするので、指令、褒める、指令、褒める、を繰り返しつつ、上下関係を理解させていく。
 ちなみに叱るときや「だめ」の指令の時には、犬の名前を呼ばないこと。「ココ!」などと名前で叱られると、名前=怒られると認識してしまい、呼び寄せたい時に萎縮してしまったり逆効果なのだそう。

2、見張るのは飼い主でなく犬の方
 アホ犬こそ「何か悪さをしないか、逃亡しないか」と目が離せないものですが、そうやって飼い主が常に犬の行動に目を配っていることで犬は安心し、もっと大胆な行動をとるようになるのだとか。なので逆に、犬が飼い主を見失わないよう、常に目を配っていなければならない状況でトレーニングをすることがいいのだそうです。
 私達はココ嬢を犬を放してもいい森に連れて行き、ココが何かに注意を取られて飼い主から離れていったら木陰に隠れ、様子をうかがってみました。初めての場所で、自分が何かに夢中になっている間に飼い主を見失ったココはかなり焦ったようで、来た道を行ったり来たり、まさしく右往左往。そして名前を呼び、嬉しそうに駆け寄ってきたところで「よしよしよーーし!」とムツゴロウ褒め(ここが重要)。
 この恐怖の「迷子パニック」の後に飼い主に呼ばれてみつけた時の感激は犬にとっては強烈にインプットされるようで、それを何度か森の中で繰り返したことで、すっかりココ嬢も飼い主の行動に常に注意を払うようになり、どっかに逃げ出したりとかすることもなくなりました。


主人の帰りを待つドッグ。

3、恥をかかせる
 もしも犬が指令に従わず呼んでも来ない場合、最終手段として犬の首根っこをつかみ上げて、飼い主がいた場所(始めに呼んだ場所)まで連れて来ます(猫同様、犬も首根っこは痛い部分ではないので、よっぽどでかい犬でない限り、持ち上げても大丈夫)。
 これは子犬がはぐれたりした時に母犬が自分のところに連れ戻すためにする行動で、犬にとっては他の兄弟子犬達の目の前で母犬にこうされることで「恥ずかしい、情けない」思いを味わうのだとか。(犬にそこまでの感情があるのかは謎ですが…)
 こうしてつかみ上げて連れ戻し、犬をじいいいいいっと睨みつけ「怒ってるんだぞ、なんでちゃんと言うこと聞かないんだ」オーラで無言の圧力をしばらくかけた後に解放すると、うちのココ嬢にもさすがに反省の色が見られるようになります。

4、声のトーンを使い分ける
 犬は人間の色んな指令を聞き分けますが、実際は言葉を理解しているのではなく、声のトーンで判断しているのだそうです。なので、指令を下すときは低めの声で、名前を呼ぶ時やおやつ、遊びのときは明るい声のトーンにすることで、犬は自然とそのトーンを聞いただけでそれが楽しいことなのか、いけないことなのかを聞き分け、すぐに反応するようになります。

5、とにかく褒めるときは褒める!
 犬にとっても人間と同じようにメリハリは大事なようで、指令ばかりでは疲れてやる気をなくしてしまいます。なので、褒めるときは徹底的に褒めること。ご褒美のおやつがなくても、実はこの褒めることとその褒め方だけでも十分な効果がある。


 と、そんなわけで、Rolf軍曹の犬トレーニング、たったの1時間(300kr)ではありましたが、効果てきめん。インポシブルなココ嬢も人(犬)並の犬になりました。以下は彼のHP。本も出版していますよ。
http://bricksite.com/rolfandersen/velkommen


階下に住む義姉の双子の誕生日会にて。大家族なので家族が勢揃いすると子供も犬もすごい数になる。


双子のおじにあたる赤い服の彼は、犬のしつけがとても上手い。

デンマーク人の仕事とサービス

2011年09月07日 | デンマーク人って
 デンマークに住んだことのある日本人なら、きっと誰もが「信じられない」とびっくりしたことがあると思うのですが、そしてデンマークに住んで7年、ほぼデンマーク人ばかりの職場で働きはじめて4年の私でも未だに「やれやれ」と思うのが、デンマーク人のサービスのなさ。気の利かなさ。

 先日、デンマーク企業の日本支社で働く友人が同僚と出張でデンマークに来ていたので、一緒に飲みつつ話していたのですが、そこで「なにが腹が立つって、本社の同じオフィスの隣同士のブースで働いているにも関わらず、そこでちゃんと話し合わずに違う内容を別々にメールで(日本支社に)送って来たりするんだよ。なんでそっちでちゃんと話し合ってから送らないんだよって」と、いかにデンマーク人と働くのが大変か、という話に。

 そこで私も、「確かにデンマーク人って同僚同士とか、お互いの仕事をチャックし合ったりしないし、必要以上に自分の分担以上のことをしたがらないな」と、自分の職場を振り返ると思いあたるふしがたくさんでてきました。
 日本人だったらその仕事の仕上げにあたり、それが他の人のやった仕事でも、結局なにか問題があってはいけないから(団体責任になるから)、チェックし合ったりするのは、そこまで珍しいことではないし、自分の担当する業務でなかったとしても、誰か他のスタッフから何か問い合わせがあったら、とりあえず自分でできる範囲のところまで答えたり、手伝ったりするのは当たり前ですよね。
 しかもそれが外部の顧客だったりしたら、自分に直接関係ないことだったとしても、その会社や職場で働いている以上、一社員としてそれなりの対応はするし、相手もそれを求めてきます。

 でもデンマークの場合、前述のように自分の担当外のことは平気で「知らない」ときっぱり言うし、意地でもそれ以上のサービスや労力を割くようなことはしません。ひどいときは「いや、それ、でもあんたの管轄の仕事でしょ?」ということでも、彼/彼女が「ここまでが私の仕事」と自認している以上のことはやりたがらないし、拒絶反応を示します。
 なので時として、仕事の範疇というのは、お客さんや他部門のスタッフではなく、その担当者が「自分のやりたい」ところまでで決めているようなときがあり、例えばマガジン(デパート)で不良品のクレームやアフターサービスについて、その売り場のレジで聞いても「私はその日勤務していなかったしわからないし、できない」とか、こっちがわけわからないよ!という対応をされて、唖然となることもしばしば起こるのです。

 ちなみにH氏はそんなデンマーク人の中でも、ものすごく気の利く人です。とにかくよく察して動いてくれるし、サービス精神旺盛なので仕事帰りで疲れていようがスーツだろうが、出くわした知人の引っ越しを突然手伝いだしたり、とりあえず自分の担当外のことでも、困っている人がいてお願いされたらほとんどの場合断らないし、出来る限りのことはします(彼はアフリカへの募金団体に募金をたのまれた時、当時離婚したてで本当に貧乏でお金がなく「じゃあ募金の代わりに」と集金のボランティアを始め、それ以来5年間毎年続けている)。

 そんな彼なので、時々自分ができるくらいのサービスを他人にも求めてしまうことがあり、”気の効かないデンマーク人”にはばっさり拒否られたり、仕事を不利に押し付けられたりして、まるで在デン日本人のようにデンマーク人に腹を立てたりもしています。

 なので二人で、「なんでデンマーク人はそうなんだ?」という話になったのですが、結論として「サービスはしだしたらきりがないし、デンマーク人は個人主義が徹底してるから、もっともっととサービスを要求されたりして、どこかで自分の領域を侵されるのが恐いのではないか」、と。(実際H氏の息子達は「お父さんの手伝いしてたらきりがない!」と怒っていた)

 たとえばH氏の元奥さんでいうと、「再来週の週末は息子達がうちにいる週だけど、どうしても断れない用事があるから、その日の夜だけでもあずかってくれないか」というお願いをしたとして、まだ彼女はその週の予定がなにもなくても”とりあえず”「わからないけどできないと思う…」とか、NOを出すタイミングがめちゃくちゃ早い(自分はしょっちゅう小さな用事で息子達のことを頼んでくるくせにね)。自分の限界どころか、努力圏内であってもサッとボーダーを引いてしまうのです。(ま、彼女の場合ちょっと特殊ですけど)

 で、この傾向はうちの職場でもそうで、特に、というかほとんどの場合、女性(そして中年の)において顕著な気がします。

 H氏曰く、「女性って何か判断をゆだねられたときに男性ほど潔くない。”ちょっと誰かに相談してみないと…”とか、自分で決断をすることでその場での責任も一人で引き受けることが恐いんだと思う。だから拒否するタイミングも早いし。仕事の上で男女で能力の差は無いとしても、そういうところで女性よりも男性が選ばれるっていうのは、やっぱりしょうがないと思うよ」と。

 男同士って、なんか手伝ってあげたりもらったりしても、あまり変な裏がないというか、さくっとしているけど、女の人ってけっこう几帳面に覚えてたり、特にされたことに関してはよーく記憶している。だから決断を迫られるようなときに、周りに助けを求めるのも躊躇われて、ここで個人主義のデンマークでは「えーい、もう断っちゃえ」となるのでしょうか。あと、仕事上であっても「ヒュゲ」が大事みたいだし(ヒュゲるなら家でヒュゲろ、とたまに思うこともあるけど)。

 まあ、ここまでダラダラ書いてきて「だからなんだ」って言われたらそれまでで、客の立場としてとか、一緒に仕事をしていると時々もう本当にうんざりすることの多いデンマーク人、特に妙齢の女性~おばさんですが、それでもあののんびりさとかはやはり憎みきれないものがあります。
 でもなんとなく、H氏と話してみてデンマーク人が気が利かない理由がわかって、心持ちすっきりしたようなしないような。とりあえずデンマークでサービスのできる人に会ったら、すんごい珍しいことだと思って、運がよかったと思うことにします。



写真:先日、夏休みに滞在した北ローマで食べたパスタを自宅で再現してみました。パスタマシーンはなかなか重労働ですが、子供がいっぱいいるうちでは労働力も豊富なので助かります(児童労働)。