Kanaheiのデンマーク生活

糖尿病の勉強をしたくてきたデンマークでの紆余曲折な生活を日記として残しています。

ステノに来てよかった、その3

2009年06月07日 | デンナースのお仕事
 さてその3は、ステノに、というより「Novoに来てよかった」。

3、Novo Nordiskの保養所が安く借りられる。

 ステノはもともとNovoの研究施設だったことから、今もステノの全面経営はNovoです。職員も一応Novo Nordiskの社員という括りになるので、Novo社員が受けられる特典というのが同様に受けられます。
 例えば、とある巨大な店で、ありとあらゆる家電品から家具など社員割引で買うことができたり、なかなか豪華なクリスマスプレゼントがもらえたり。
 そんな特典の中でもとりわけ素敵なのが、Novo所有の保養所。デンマーク国内とヨーロッパのいたるところにサマーハウスやアパート、キャンピング施設やスキーハウスなどがあり、Novoの社員は信じられないような価格でそれらを借りることができます(一カ所2週間まで。何回でも可)。

 ちなみにどんなところに保養所があるかというと、デンマーク海岸線や小さな島のサマーハウスエリア、南ヨーロッパの海辺エリア(ニース、カンヌ、マラガなど)、都会(ベルリン、パリ、バルセロナ、マドリード、ローマ)、あとはスイスやオーストリアのスキー場近辺とか100カ所くらい。
 料金はハイシーズンの1週間で1800~2500krと、かなりお手頃。場所によってさまざまですが、都会の真ん中にあるアパートでもだいたい広さは70㎡以上はあり、家具や食器はもちろん、洗濯機などもあってすぐに生活ができるようになっています。

 私は今回、就職したのが3月と、サマーハウスの申し込みに間に合わなかったので、人気のある物件はあきらめていたのですが、たまたま先日物件情報をみていたら、スペインのマラガから60kmほどのFrigilianaという街の人気物件にキャンセルが出ており、しかも日程がばっちり私のサマーホリデーとマッチ。これはもう行くしかないでしょう!ちょうどマラガに住む友達のとこに遊びに行こうと思ってたし!と、ネットで即ブッキング。わーい!

 このFrigilianaという街、スペインで一番美しい町として表彰されたとかで、色んなサイトで写真をみていると、まっ白なアンダルシアな建物に地中海と、確かに美しい…。アフリカまで目と鼻の先なので、8月なんて死ぬほど暑いこと確実ですが、黒こげになりつつ1週間のんびりしてきます。
 
 そんなわけで、「ステノ(Novo)に来てよかった」その3でした。


白い壁の建物が有名なフリヒリアナ。

ステノに来てよかった、その2

2009年06月05日 | デンナースのお仕事
 さて、「ステノに来てよかった」その2ですが。

2、継続看護ができる。

 これまで働いていたAmagerでもBispebjergでも、そして日本でも、一番したい糖尿病患者さんの継続看護というものがなかなかできず、残念だったのですが、ステノは患者さんこそ多いものの、スタッフがこじんまりしてて団結してるので、退院後外来フォローになった患者さんのその後など、外来ナースやドクターから聞けるしうれしいです。
 いつもランチはキャンティーンで他のナースと一緒にとるのですが、その時の情報交換で「~さん最近また低血糖起こしてるみたい」とか、「~さん入院で血糖安定して来たよー」とか、『あの人は今…』的に会話がもりあがります。で、そこでの情報をお互い生かしつつ患者さんの指導をしていけるので、とても有益。

 外来が予約いっぱいでなかなか次回の予約がとれない患者さんや、しばらく状態が落ち着くまで頻回の継続フォローが必要な患者さんとかは、病棟スタッフが継続してみていくのですが、週に1~2回、多い時では病棟が開いている平日毎日呼び出してナースが診察します。そして週末は24時間対応の緊急電話相談でフォローアップ。
 時にはこちらから電話をかけて「その後どうですかー?」と様子をうかがったりもするのですが、患者さんも気にかけてもらって嬉しいようで、なんかお互い親近感というか、安心感というか、すごくいい感じ。一緒に悩んで、試して、その結果がうまく出たときには一緒に喜んで。これよこれ、糖尿病看護の醍醐味!

 最近、就職後3ヶ月経って、私にもいわゆる「常連さん」というか、「お得意様」ができたのですが、他のバリバリ積極的指導をする熟練スタッフと違って、私の場合日本で培った「傾聴」「忍耐」の看護のおかげで(単にデン語がまずくてしゃべれないという噂も…)、時間をかけつつ患者さんの情報や訴えを引き出しアセスメントがしやすいということもあり、外国人(特にアラブ系移民)、お年寄り、そして他のスタッフが苦手とする、訴えをじくり聞かなきゃいけない精神病の人がお得意様につきやすいです。(なのでバリバリ指導が必要な若者はちょい苦手)
 精神病とかちょっと癖のある患者さんだと、他のスタッフはあまり甘やかさず、「セルフコントロールのためにも些細なことで逐一電話してこないよう、時には教育的指導で厳しくね」というスタンスなのですが、なんか私はどうもそれができず…。
 「今めまいがするから、転ばずにベッドに戻れるか心配なの。15分以内に電話するから、もし電話が来なかったら私になにか起きてるってことだから、よろしくね!」「(15分後)今ベッドに入りました。転ばなかったわ。また電話してもいい?」とか「お部屋の消臭スプレーをあやまって目に吹きかけちゃって、100回くらい目を洗ったの。不安だからここに電話したわ!(血糖に異常なし)」とか電話してくる患者さんに「大丈夫だよ、また不安だったらいつでも相談のるから…」とついつい言ってしまうのでした…。
 
 また継続という点では、こちらからアクティブに働きかけることができるのもステノのいいところ。例えば一人暮らしの高齢者のお宅や、職員に指導が必要な老人ホーム、患者さん本人だけでなく周囲のサポートが必要な若者の家や学校に訪問指導にいったり。

 あとこの前は緊急電話相談で、寝る前の持続型インシュリンを打つはずが、間違えて超即効型インシュリンをものすごい単位打ってしまた人(けっこうこういう人多い)に、30分ごとのフォロー電話をしていたのですが、30分経っても患者さんからの連絡がなく、こちらから電話しても電話に出ず、「まさか家で低血糖ショックを起こしてるんじゃ…」と心配になりドクターに相談すると、「インターネットの住所検索で、隣に住んでる人の電話番号を調べて、様子を見に行ってもらえるか聞いて。もし隣人が見つからないんだったら警察に電話してドアをこじ開けて安否の確認をして!」と。
 言われた通りネットで隣人を検索し、「あの、ステノ糖尿病センター看護師のKanaheiと申します、夜分にすみません。あなたの隣人の~さんなんですが糖尿病で、連絡がとれないんです。もしかしたら低血糖で倒れてるかもしれないので、ちょっとドアをノックして返事があるか確認してもらえますか?」と電話。結局この患者さんは無事で、「うちの電話、呼び出し音が鳴らないのよ」という間抜けな理由で電話を取らなかっただけでしたが…。警察ごとにならなくてよかった…。
 でも同僚は「警察がドアを蹴破って入ってきても、全然無事で、大音量でTV見てるだけだったという人もいるけど、でもそうじゃなかった場合の最悪のケースを考えて、最善の対策をするのよ」と。それくらいインシュリンていうのは重要な薬で、劇症に陥りやすいから、ってことなのでしょうが、なんかここまでやると継続フォローもすごい。

 そんなわけで、継続看護(そしてちょっとプライマリー看護)。自分のやったケアに責任が持てる、患者さんから、他のスタッフからのフィードバックが得られて次につなげられる、そして患者さんととても近い、いい関係が築けるという点で、私の理想。良いリソースとシステム、そして時間的余裕もあるステノならではできる看護です。今までで一番看護をしてて楽しいかも。

 そんなわけで「ステノに来てよかった」その2でした。


ステノ、病棟のナースステーション。
電子カルテなので必要なのは電話とコンピューターのみ。あと補食のバナナ。

ステノに来てよかった、その1

2009年06月05日 | デンナースのお仕事


 ステノに就職して早くも3ヶ月です。なんだかんだで「ま、この子はほっといても大丈夫そう」と、現場の状況でかなり放置プレイされやすい私は、しょうがないのでここまでで培ったサバイバルナーシングで乗り越えてきたのですが、ある日婦長が「…みんな、私自身よく忘れてるけど、Kanaheiはまだ就職して3ヶ月たってないから!うっかり仕事を与えすぎないように!」と、Noと言えない日本人をちょっとかばってくれたり。現場で通用してるから仕事を色々任される、と喜ぶべきか、なんなのか…。

 そんなステノ。この3ヶ月で思った、「ステノに来てよかった!」ことをいくつか。

1、日本ではもちろん、デンマークの普通の病院でもあまり導入していない新しい治療をみることができる。

 インシュリンポンプとか、新薬のByettaとか。Byettaはまだ試験段階で、Novoのではなく他社のを使ってますが、これがなかなか優れもの。

 Byettaはアメリカのイーライリリー社で開発されたのですが、2型糖尿病(生活習慣病)の特に、肥満患者さんに効果的なホルモン製剤。GLP-1という特殊なホルモンが腸管での糖吸収を抑制、そして脳の食欲信号にも作用して食欲を抑え、さらにインシュリンを分泌する膵臓の細胞自体を保護、活性化、そして必要な量のインシュリン分泌を促すので血糖をさげつつ、体重を落とすことができるのです。
 また肝臓にも作用してグリコーゲンの調節もしてくれるので、ある一定の血糖値まで下がったら作用をスットップするので低血糖が起こらないという。すばらしい!

 私もByettaを導入する患者さんを受け持ったことがありますが、使用したその日から効果てきめん。これまで100単位以上打っていたインシュリンが2、3日で1/3の量に。ただ、副作用(吐き気)が人によってかなり強く出るので、なかなかしんどそうですが。
 このGLP-1ホルモンを使った新薬が、今色んな形(経口薬とか)で開発されているので、過食&肥満の糖尿病患者さんには今後かなり嬉しい展開になりそう。


バイエッタ。


 インシュリンポンプは、日本ではまだ3、4世代ほど前のものが使用されていて、ポンプ治療自体もまだまだ特別なものらしいです。たしかに私も日本では見たことなかったし。
 知らない人のために簡単に説明すると、インシュリンポンプとは5cm x 10cmほどの機械に、基礎分泌(身体が何もしなくても常に分泌しているインシュリン。日内変動あり)の量を時間単位でプログラミングし、超即効型インシュリンを24時間持続的に注入するもの。で、食後など血糖が上昇する時は、カーボンカウンティング(摂取した炭水化物量の計算)で追加注入をするので、メリットとしては正常のインシュリン分泌に最も近い形でインシュリンを取ることができる、頻回の注射が必要なく、患者さんの生活リズムがもっとフレキシブルで自由になること。


ステノでも使用しているごく一般的なポンプ。

 そんなインシュリンポンプですが、先日ステノのスタッフミーティングでデモンストレーションが行われたのは、センサー付きインシュリンポンプというもの。皮下にセンサーを固定し、24時間血糖をはかるので、これまでパチンパチンと指に針を刺して血を出して行っていた血糖測定が必要なくなります。
 さらに優れているのは、そのモニターした血糖を本体であるポンプの機械の方に転送してデータ処理。なので血糖に応じて基礎分泌を自動調節してくれるのです。
 ただ、このセンサーは皮下での測定なので、実際の血液による測定との間に20分ほどの時差がある、というのが難点。インシュリンの感受性が高く、血糖変動が激しい人や、運動の激しい子供では20分の時差も命取りなので、使っていくのは難しいのですが。
 また最近デンマークでも使い捨てのインシュリンポンプというものが市場に出て来たようで、それもどんなものなのか、ステノでも導入されるのか楽しみ。

 最新治療、という点ではさすがにアメリカほどではありませんが、でもまあこうして新しいものをじっくり見られる、勉強できるという点ではステノでよかったなあと思います。とりあえず長くなってしまったので、今回は「ステノに来てよかった」その1でした。


そういえば英会話教室

2009年06月04日 | おもしろい人・おもしろいもの


 旅行とか夜勤とか飲み会とか重なって、実に1ヶ月ぶりに英会話教室にいってきました。

 クラスメイトの30%ほどが休みなのか辞めたのか、姿が見えませんでしたが、新たに韓国人クラスメイトが仲間入り。見た目も雰囲気も、やはり中国人よりなんとなく日本人に近い気がする…。

 クラスで一番仲がいい、というかまともに一緒に話せるイタリア人のマリアは相変わらず元気はつらつで、休憩時間中、パルマ出身の彼女に「サッカー選手の中田知ってる?日本人はパルマって聞いたら、ハムやチーズの次に中田がいたサッカーチームを思い出すよ」と話すと、最初「うーん知らない」と言っていたのですが、途中で「ナカータ」から「なかた」と発音を日本語に近く発音したところで、「あああ!!なかたね!!なかた!!彼は有名よー!」と。ラテン語はやはり日本語発音の方が英語のそれより近いのでしょうか…。

 中身超デニッシュ、発音はぶりぶりブリティッシュな先生は、相変わらずちょいポッシュで、今日は何を思ったのか突然、コーヒー豆の自家焙煎器(made in Italy)の写真を持って来て、「ほら、これが何かわかるかい?イタリア人の君ならわかるだろう?僕の父は昔コーヒーショップを経営しててね、毎朝コーヒー豆を焙煎しに行ってたものさ。焙煎したてのコーヒー豆の香しいことといったら…くだらないコーヒーが飲めなくなるね」と、コーヒー通ぶりを語りだしました。

 するとイタリア人のマリア、「いや、それはどんなコーヒーかにもよるわ!おいしいコーヒーならillyよ!illy!」と、ベッライッターリアー!!とばかりに自信満々に自社ブランド(?)を一押し。で、でもillyって、その辺のスーパーで売ってるやつでは…。
 そんなイタリア人の愛国心で戸惑う先生。すると追い打ちをかけるかのようにスペイン人のクラスメイトが「Irmaのがおいしいわよ」と、これまたスーパーで売ってるコーヒーで土俵入り。そんな具合にあっさりとコーヒーカルチャーの国、イタリアとスペイン両者から否定されてしまったコーヒー通の先生。ポッシュな彼だけにうける。



 そんな刺激的な英会話クラス。あと1ヶ月はりきって通いたいと思います。