難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

なぜ、コミュニケーション支援事業の有料化が狙われるか

2006年11月02日 21時26分36秒 | 福祉サービス

秋の枯れ葉東京都の昭島市では、コミュニケーション支援事業を他の障害者サービスとともに条例で有料化した。

市の障害者福祉の担当部長は聴覚障害者団体が何度交渉しても、「他の障害者との公平のため」として頑迷な態度を取り続けている。

条例で決定されているので、これを再審議に持ち込むには相当の理由が必要だ。
コミュニケーション支援が双方に「利益」があるから聴覚障害者のみが負担するのはおかしいとか、生活のあらゆる活動に必要だと説明しても、他の一部の障害者から、自分たちが負担しているのになぜ無料を要求するのかという声もあるくらい、もっと説得力のある説明が必要だ。

個別給付の自立支援等は支援費制度で行政の措置から契約に、つまり利用者とサービス提供事業者との契約になった。コミュニケーション支援事業は社会参加促進事業で「契約」になっていない。行政サービスで無料とされてきた。
ところが、移動支援は支援費制度では個別支援の契約事業だが、自立支援法では地域生活支援事業になった。ここで、地域生活支援事業に法律で有料にされた契約の事業が入ってきた。
そこで、行政はわざと「間違って」違う制度のサービスを有料化を持ち出した。
何故か。財政負担を抑えるためしかない。コミュニケーション支援事業の予算はどこも他の障害者支援事業に比べれば多くはないのに、何故有料化するのか。コミュニケーション支援事業が無料であれば他の障害者から無料化を求められる。実際に東京の区部の視覚障害者団体からはガイドヘルパーを手話通訳事業同様に無料にしてほしいと要求が出ているそうだ。

行政としてはこの動きを抑えるためには何が何でも無料化を認めたくないわけだ。逆に障害者側は権利として、無料化を求める理由にしたい。
行政は法的根拠は明確なものがないので、他の障害者との公平さを言うしかない。
格差是正を言うなら健聴者との格差をなくしたり、所得保障が先だろうに。

10月31日の1万5千人の参加者が終日、国会や厚生労働省を包囲したことがマスコミでも多く取り上げられ、国会の質疑にもそれが反映している。
あくまでも、コミュニケーション支援は「権利」として打ち出さないと障害者同士の比較になり、負けてしまう。

ラビット 記



要約筆記者事業への転換(2) 

2006年11月02日 14時03分20秒 | 要約筆記事業
061029_1440~001.jpg制度が急に変わってもすぐには対応出来ないという声は難聴者側に少なくない。
利用者の立場に立てば、きちんと書ける要約筆記者が派遣されるのは好ましいはずだが、難聴者協会の側は時期尚早だという。
長年要約筆記奉仕員の養成に苦労してきた難聴者協会としてみれば、要約筆記者養成の通訳課程のカリキュラムの108時間などに目がいってしまい、そんな講習会の指導運営は無理だ、そんな「高度」の要約筆記者を必要としている人は東京だけで地方にはいない、「通訳」よりは介助が必要だということになるのだろうか。
一人でも必要な人がいれば、その権利を守らねばならない。

制度は急に変わったのではなく、2000年の社会福祉基礎構造改革で福祉の流れが大きく変わったこと、2004の全国要約筆記問題研究大会でそのことが厚生労働省から問題提起されていた。昨年の仙台大会でもまさに障害者自立支援法と要約筆記者事業について討議してきたし、報告書にも残っている。
私たちは手話通訳と対等の要約筆記者、身分保障のある要約筆記者を長年求めてきたはずだ。そのことが自分たちの権利保障になると考えてきた。

それでも急にと感じるならば、2000年の社会福祉基礎構造改革から支援費制度への流れについて、三位一体改革、グランドデザインから障害者自立支援法へと説明を進めてきた全難聴の説明不足だ。その前の社会福祉基礎構造改革からしっかりと学習しなければならなかったのだ。

手話通訳士協会や東京手話通訳派遣等センターから福祉基礎構造改革や支援費制度に関するシンポジウムや講義のリーフレットになって販売されている。手話通訳問題研究誌や障害者関係団体の機関紙等にも掲載されている。ろう者団体や手話通訳その時々にこうした学習に取り組んでいることが権利意識の確立になっている。この学習が全難聴も全要研も欠けている。

福祉情勢の認識に対する遅れを取り戻すべく、進めてきたことが「急」に映ったのだろう。しかし、全難聴の要約筆記者事業が今要約筆記者制度化の要になっている。

今秋の要約筆記指導者養成講座の申込みが県の過半数を越えるなら、地方行政や要約筆記関係者の理解は進んでいることになる。

ラビット 記



要約筆記者事業への転換(1)   

2006年11月02日 12時34分55秒 | 要約筆記事業

路傍の花110月からコミュニケーション支援事業で要約筆記者が派遣されている。
派遣される要約筆記者には登録要約奉仕員があたることになっているので、要例えば滋賀県では約筆記奉仕員が要約筆記者として派遣されている。

「要約筆記奉仕員に認定試験を受けない方は派遣されない」という不安が広がっているという。
難聴者のコミュニケーションの保障に努力されてこられた方が、法律でその活動基盤が出来たわけだから、要約筆記者として活動してほしいと願っている。

法律で基盤が出来たというのは、要約筆記奉仕員派遣事業は法律に基づかない事業で厚生労働省の通知によるものだったのだが、障害者自立支援法では実施主体が実施主体で必ず実施しなければならないことになったということだ。
障害者の権利擁護の行政サービスとして派遣される以上、責任が伴うのは当たり前で、一定の技術、知識が求められる。
そのため公的な担保として認定試験がある。受けなければ、公的サービスに従事出来ないのだ。ボランティアの試験とは違う。
手話通訳はその養成研修事業の実施要項で修了時には登録試験がある。

今は制度の変わり目で、登録要約筆記奉仕員がそのまま派遣されているかも知れない。
しかし、財政圧迫の中、税金の使途が今ほど厳しく問われている時はない。その価値があるのか、いずれ市民や議会から問われる。

要約筆記奉仕員が「今までも責任を持ってきた」とは言えない。責任を持つのは個人ではなく、派遣元であり、市町村である。その責任を担保するのが認定試験だ。

ラビット 記