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難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

N市の要約筆記奉仕員研修会で

2008年07月23日 20時24分49秒 | 要約筆記事業
200807230822000.jpg8月に入って、N市の要約筆記奉仕員研修会で講義することになっている。

テーマ自体は、「難聴者の求めること」で、難聴者の求めていることを。様々な角度から話すことにしたい。
1.難聴者が社会の中で置かれている状況まず説明したい。
多くの難聴者が社会の中で支援も受けられずに孤立していること。
障害者施策でも障害児施策、高齢者施策でも難聴を支援するサービスが皆無に近く、あっても対象者が極めて限定されていることを告発したい。
高齢者に限っても、難聴でテレビの視聴や電話の利用にも困り、家庭の団らんからも地域の集まりからも疎外され、家族も含めて蔑みの対象になったり、。本人も難聴になることは加齢のため仕方がないと思って保護されるべき権利にも気付いていない。
対象者を身体障害者手帳を有するものに限定していることは障害者の権利条約に照らしても、WHOの基準に照らしても「違法」状態だ。
今朝の朝日新聞に非正規雇用者の高齢化の問題が指摘されていたが、日正規雇用者の中には少なくない難聴者やその他の障害者がいるのではないか。
正規の雇用の窓口が極めて狭い上、就労の現場に難聴者に対する支援施策も職場の理解もない状態なので、非正規雇用にならざるを得ないだろうと考えている。

2.難聴がいかに理解しにくい障害かを特徴を整理して理解する。
この理解しにくい理由が今後の支援方策の鍵になる。国際難聴者会議でもその理由を報告したが、
1)外見から難聴であることがわからない。
2)どのように聞こえているか他の人に状況が分からない。
3)聞こえている状況を言葉で説明しにくい。
4)理解出来ていないのに「分かる」と答えてしまうこと。
5)部分的に対応できるので、問題ないとみられること。
6)話せることが聞こえないと考えにくいこと。
7)難聴が高齢者、愚図などマイナスの悪いイメージがあること。
8)自ら障害を説明することができないこと。
9)その他

3.地域で求められる要約筆記者像とは何かを説明する。
難聴者が地域で生活していく上で必要なのは、一般社会の理解とバリアフリー環境、幅広い支援サービス、社会啓発や難聴者との交流などが必要だ。
今後、障害者自立支援法で難聴者の利用が広がる。
しかし、難聴者の置かれた状況から、コミュニケーション支援に当たる要約筆記者は、通訳行為が出来ることはもちろんだが、権利擁護の意識(アドボカシー)を持っていることが必要だ。それは、通訳するだけではなく、難聴者の持っている多くは隠れた問題を見極め、支援が必要か判断を求める力が必要だからだ。対人援助は高度な支援技術を必要とする。
例え、書くことが比較的難しくなくても、奉仕員のままでコミュニケーション支援することはふさわしくない。

4.全難聴はこうした施策の転換を求めて活動していること、支援法第二期の見直し、障害者の権利条約の批准の展望の中で、要約筆記奉仕員の新しい役割り、難聴者の社会の進出の中でより専門性を持った要約筆記者が必要になること、
5.裁判員制度や高等教育の聴覚障害学生の講義保障など、新しい課題への対応をどう考えるか。
要約筆記と字幕制作の棲み分け(使い分け)のための理論整理と養成。

を話そうと考えている。

ラビット 記
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>朝のウォーキングで見つけたです。暑いから気を付けくださいね。




M市の要約筆記者研修講演会と社会福祉の学習

2008年07月17日 15時41分26秒 | 要約筆記事業

080717-085006.jpg昨日、社会福祉概論の2回目のレポートが返ってきたが「A」だった。バンクーバーに行く前日の朝に書き上げたものだ。荷造りもできず難儀した。
採点の内容を見ると、記述式のところはマルは付いているものの、テキストを良く読むように書いてありる。
他の科目では「自分の言葉で書きなさい」とあったりするので、テキストを読み下して、少し書き換えて書いたのがいけなかったのかハナマルではなかった。
どっちにも対応できるようにテキストは良く読んでおこう。


これまで、都道府県レベルの要約筆記者、指導者にお話しさせて頂く機会が多かったが、地域レベルの要約筆記者の方々にお話しさせて頂く場合、地域の難聴者のニーズに答えるために何が必要かということを以下のように話ししたいと考えた。

「地域の要約筆記者に求めること」
(仮題)

1.難聴者が要約筆記を使う意味。
2.難聴者が要約筆記に求めること。
3.難聴者が要約筆記者に求めること。
4.要約筆記事業が社会福祉サービスである理由。
5.要約筆記事業が障害者自立支援法地域生活支援事業で
  実施されている意味。
6.支援法で、要約筆記「者」派遣事業としていること。
7.職場での要約筆記の実践的活用。
8.これからの難聴者支援のあり方。


ラビット 記




地域福祉と難聴者支援の要約筆記

2008年06月23日 08時53分29秒 | 要約筆記事業
080622-124935.jpg要約筆記指導者養成講習会で、要約筆記の役割は権利擁護のコミュニケーション支援と言ってきた。ちなみに通訳としての要約筆記というのは機能のことだ。

昨日のスクーリングの社会福祉概論の講義を聴いていると、地域福祉が社会福祉の中心で、フォーマルなサービスとインフォーマルなサービスの結合した福祉コミュニティの実現をめざしていることが良く理解できた。
 
これに対し、これまでの要約筆記者養成で要約筆記事業は地域生活支援事業のコミュニケーション支援事業として実施され、市町村の必須事業となったという説明はしてきたが、肝心の地域生活支援事業とは何か?そもそも何を目的に行われているかということは説明が十分でなかった。

社会福祉を学ぶ要約筆記者にそのことを言うと、自立支援給付との対比で地域生活支援事業と捕らえてきたからだねと応じてくれた。

要約筆記事業が、難聴者協会の例会等にだけ実施されるのではなく、地域コミュニティの中の難聴者が普通に地域で活動する、成熟した個人がコミュニティの一員として参加できるように要約筆記が利用されるようになっていくことを目指す必要がある。
そのためには、要約筆記をすることと難聴者の理解を求め、要約筆記を普及することを区別しなければならない。


ラピッド 記




スクーリングの要約筆記者

2008年06月20日 02時32分26秒 | 要約筆記事業
080619-123435.jpg通信教育のスクーリングに市が要約筆記の派遣を認めてくれた。

派遣元に、要約筆記者が講義前に見るテキストや資料が必要なら学校に求めて下さいと連絡すると、依頼者からお願いして下さいと返事があった。

学校に連絡するとすぐに自宅に送付したと返事があった。ギリギリで間に合うからよかったが、派遣元に依頼したのは先週だ。
こちらとしては、受講科目も連絡してあるので、要約筆記者がどういう方が来るのか分からず、何が必要なのかもわからないので聞いたのだが。

要約筆記者が講義内容に付いて打ち合わせして、この科目ならテキストを事前にもらって学習したいとかいうと思うが、それも要らない要約筆記者がくるのか、まだ要約筆記者が決まっていなくて科目も 伝えていないのか。

うーむ。それでも試験の結果は自分で責任を負うのだよ。胃が痛い。アと書いたら、アイウエオだと分かるくらいに勉強して行かないといけないか。
昨日の昼食は本当に「白がゆ」だった。


ラビット 記




スクーリングの要約筆記は公費派遣に。

2008年06月17日 21時11分51秒 | 要約筆記事業
花7.jpg080616-100414花6.jpg今週末に迫ったスクーリングの情報保障は、いつも職場の会議や通院の要約筆記を依頼している派遣センターに再度学校に問い合わせてもらったが断ってきた。
日がないこともあり、居住地の障害福祉課に問い合わせてもらったところ、スクーリングのカリキュラムと場所、時間を見て検討するとのことだった。
しばらくすると派遣するという返事が来た。

通常は教育関係は長期にわたること、主体がはっきりしていることもあり、公費派遣対象外だが、認められた。
学園都市なので、他にも実績があったのか分からないがとにかく要約筆記が付くことになった。

後はどういう人が派遣されるか分からないが、講義の場合は同時性よりは内容重視になる。22日は午後から社会福祉概論と実践学習ガイダンスだ。
29日は、社会福祉援助技術、コミュニティ論、家政学概論、学習ガイダンスと朝から夕方までびっしりだ。昼休みというか空き時間が30分もない。

スクーリング初日の前日には、要約筆記指導者養成事業で社会福祉としての要約筆記事業について講義することになっている。まさに、学習が実践につながっているというのか、下手なことは話せない。

昨日、学校から席の確保やパソコン用の電源ケーブルの準備はしますとファックスがきた。どうも過去にもパソコン要約筆記が来た経験があるらしい。
こちらはパソコンも考えたが、手書きの要約筆記者で良いが、講義の何がポイントか分かる人が要約筆記してくれれば講義が分かる。要約筆記者も社会福祉概論を学んだ人が派遣されるよう、派遣元に要望しておこう。
派遣センターが杓子定規な派遣をしないように。


ラビット 記




職場の要約筆記派遣

2008年04月15日 22時58分48秒 | 要約筆記事業
080415_1340~001.jpg080415_0927~001.jpg要約筆記者の派遣元に新たに今年度登録を申し込まれた人を対象にした説明会が約24人くらい参加して開かれた。

派遣は、都県レベルの要約筆記派遣は形の上では残っているが、区市の契約による派遣、企業や個人の依頼による派遣が大部分だ。

その中でも、企業に派遣される要約筆記は少ない。企業が派遣を依頼する場合、難聴者が企業に要望して派遣したというよりは企業が新人研修の際に難聴者に配慮して派遣したケースが多いのではないか。
難聴者が職場に要約筆記を派遣を希望する場合、幾つものハードルがある。

一つは、難聴者自身が要約筆記を通訳として認識しているかどうかが鍵だ。
さらに、自分の職務に必要なコミュニケーション支援の力を持っていることに確信が持てなければ、以下に述べる要約筆記に対する誤解、偏見を払拭出来ない。

二つ目は、難聴者と要約筆記に対する理解がないか浅いことだ。
少しゆっくり話せば分かるだろうとか、後で会議の結果を知らせるからとか私がメモをとってあげるから大丈夫と言われたりする。

三つ目は、職場に第三者を入れることに対する不安感や違和感だ。企業秘密の漏出に対する不安感があるのか、単なる口実なのかは分からないが。

四つ目は、費用だ。奉仕員と違って、要約筆記「者」の派遣単価は手話通訳ほどではないが、地域のパートや派遣会社のそれよりかなり高い。


これらのハードルを越えるには、現在の就労に対する要約筆記が技術の上でもモラルの上でも高いレベルを維持していなくてはならない。
要約筆記に対する信用はいったん崩れると中々取り返しが付かないからだ。

企業や一般社会に対して要約筆記そのものの理解を求める啓発も必要だろう。

そうして初めて、聴覚障害者の権利保障としての合理的配慮に、要約筆記が入ってくる。


ラビット 記 



保育福祉関係労組新聞に要約筆記問題が

2008年04月04日 23時00分59秒 | 要約筆記事業
080404_2135~001.jpg080404_2156~001.jpg東京都は平成19年度から手話通訳派遣事業から撤退し、全て区市に移行させた。
要約筆記者派遣事業も一部のみ「グループ派遣」の形で都の事業が継続したが、区市に移行された。グループ派遣は、団体を対象にした派遣とは言えない矛盾の多い派遣だ。

その結果、区市の派遣状況が、派遣の対象から内容、通訳レベルが区市ごとにまちまちになり、大きな格差が生じてしまった。

このため、都の通訳派遣事業の復活が重要な課題だと、保育福祉労組関係の新聞の1面トップで取り上げられた。
派遣センターの職員、契約職員は労組に加入をしている。
しかし、派遣される要約筆記者は登録要約筆記者団体はあっても労働条件を守る組織はない。
派遣される要約筆記者は区市の契約事業か有料派遣で派遣されるにせよ、派遣センターに雇用される労働者でもある。

派遣センターの運営委員会では手話通訳も要約筆記の事業もカンカンガクガクの議論をしている。私たちもこの時は、運動体感覚ではなく、法人事業の経営感覚が求められる。


聴覚障害者の権利を守る事業を行う社会福祉法人に働く労働者は、自分たちの権利を守ることと利用者である聴覚障害者の権利を守ることを高いレベルで統一させるため、現場と研修による絶えまない学習が必要だ。要約筆記者が自覚的学習をするようになって行く。


ラビット 記



東京都の恐るべき無理解 要約筆記派遣

2008年03月08日 11時20分27秒 | 要約筆記事業
080306_1957~001.jpg080307_2121~001.jpg東京都は、要約筆記者の派遣事業を縮小、撤退させようとしているが、驚くべき無理解がある。

難聴者協会は、毎年福祉局などの予算要求を当該課と交渉しているが、なんとグループ派遣の要約筆記を「政治的活動にあたるので都の要約筆記者派遣に該当しない、返金せよ」と言って来たことが判明。

私たち障害者の都の施策に対する要望は生活、生命にも密着したものだ。要望することは都民の権利でもある。立派な市民の政治活動である。

東京都が履き違えているのは特定の政党の政治的活動と市民の政治活動を混同している。

今は、衆議院、参議院に傍聴を希望すれば議会の負担で要約筆記者が派遣される。政治的参加の保障のためだ。

こんな理不尽なことがまかり通ったら。障害者の要求する権利すら認められなくなる。


ラビット 記
東京聴覚障害者地域代表者会議

  



「考えることの出来る」要約筆記

2008年03月07日 23時52分35秒 | 要約筆記事業
070616_1324~002.jpg070616_1232~002.jpg過日の要約筆記力パワーアップ研修会で、難聴者は要約筆記に何を求めているかについて講義した。
そのレジメに、「考えることが出来る要約筆記が必要」とレジメに記しておいた。
「その場で分かる要約筆記」と言い方をしたがもう少し踏み込んだ説明はしなかった。

………………………………
以上は2007年8月13日に記したままになっていた。
説明を続けたい。

難聴者も要約筆記者も要約筆記はコミュニケーション支援技術の一つと理解しているだろう。

要約筆記は話の言葉をそのまま文字に変える以上の「支援」が受けられる。
要約筆記を見ながら、相槌を打ったり、そういうことか、それはそうだがこういう場合だってある、それは違うねなどと考えている自分がいる。
ノートに板書も書き写しながら、資料に自分のメモも書ける。
要約筆記に書かれた文字を見て、講師の顔や口を見て理解することが出来る。

こうした経験をした難聴者は多分多くない。

要約筆記者は話者の話の内容を聞き、何を一番伝えたいという「メッセージ」を理解し、要約筆記を見ている難聴者にどういう言葉で伝えられるかを考えて、文章化している。
要約筆記者は話し手の過去の文筆や話を書き起こしたものやインターネットなどで事前に学習をしてくる。
学習出来ないのは、難聴者が何を知りたいか、何を知っているかということだ。
これがわかっていれば要約筆記者は聞こえたことを全部書く必要がなく、書き伝える内容を絞ることが出来る。逆に書かねばならないことに厚みが出る。

○会議に参加している場合は会議の目的、自分の立場、過去の議論、予想される発言者と内容、自分の話したい内容を要約筆記者に説明する。
 
○講義や講演に参加している場合は、講師や講演内容について、学習しておく。
講師の話す内容、方向がわかっていれば要約筆記は自分の思考を自由に飛ばせる。

誤解を恐れずに言えば、積極的に関わらなくては、要約筆記は使えない。関われば大いに使える。
「書いてもらう」から「書かせる」への転換だ。


ラビット 記



耳の日と要約筆記事業

2008年03月03日 22時05分37秒 | 要約筆記事業
080302_1315~001.jpg080302_1319~001.jpg耳の日記念文化祭で「障害者自立支援法の今後の運動」について、ミニ講演がありそれを聞いて一年前の運動を思い出した。


【要約筆記事業の地域への移行の経過】
障害者自立支援法の地域生活支援事業がスタートしたのは、平成18年の10月だが、東京都は同年3月ごろからコミュニケーション支援事業の手話通訳事業と要約筆記事業を区市に移行することを言い始める。

7月に東京都との予算交渉で、東京都の要約筆記奉仕員派遣事業は残しつつも区市への移行を明らかにする。

東京聴覚障害者自立支援センターは、要約筆記者派遣事業の委託契約のモデル案の検討を続け、8月には区市へ委託契約の依頼文書を配布し始めた。

一方、東京都の手話通訳者等派遣センターは司法や医療、教育など分野の他、対人支援の高度の専門性が求められる通訳を30年以上担ってきたが、年間70000万円に上る手話通訳派遣事業が一挙にカットされ、区市への移行を打ち出された。

平成19年1月、東京都は経過措置もなく、いきなりゼロ査定にした。要約筆記者派遣事業も半額近くに減額される。
3月3日の耳の日大会で、聴覚障害者関係団体長名の緊急アピールを配布。

手話通訳派遣事業はすでにすべての区市で実施されていたが、区市の通訳派遣と東京都手話通訳等派遣センターに登録された手話通訳の双方を選択できるように、区市と交渉を繰り返した。
また、一部の区市で有料派遣の動きがあり、全都的、全国的に反対運動が高まる。市議会で有料化が決まってしまった。これは後日病院の通院だけ無料化に修正された。


【難聴者協会の運動】
難聴者協会は、すべての区市に対して、要約筆記者派遣事業の開始手話通訳等派遣センターと契約するように交渉することにした。
事務所は日常業務の合間を縫って、区市に電話をかけまくり、アポイントを取る。
協会とは別組織の自主的な地域の難聴者の会に支援法の合同学習会を呼び掛け、二回以上開催したがいつもいっぱい参加があった。

平日に各区市を回るのは大変だったが難聴者協会と登録要約筆記者の会、地域の難聴者の会で回った。
ほとんどの区市は要約筆記を知らない。東京都の事業で実施されていたからだ。

さらに東京都にも区市へ契約を促すように求めたが、課長が変わってから約束を反故にされたのは悔しい。


【センター派遣方式のメリット】
要約筆記者派遣事業はほとんどの区市で実施されていなかったため、東京聴覚障害者自立支援センターが養成、派遣してきた要約筆記者が区市に派遣できるような契約を結んだ。

これは、要約筆記者が区市ごとに登録されてしまうと派遣される人の地域が偏り、例えば昼間派遣される人が少なくなって、派遣に応じられない恐れがある。またそれぞれの地域の要約筆記派遣の経験が共有できない。

センターで派遣される場合は、どの区市に対しても近くの人だけではなく、派遣の内容に応じたレベルの人を派遣できる。また、いろいろな派遣の事例をセンターが集約することで、派遣のコーディネートのノウハウが蓄積され、対人支援技術も高まる。

地域で養成された要約筆記者が派遣されるのが良い場合とそうでない場合がある。
病院や司法などその地域の通訳を避けたいという心理を持つ難聴者もいる。
大学や企業、裁判、調停等のノートテイクなど高度の専門性が要求される場合もあり、誰もがとは行かない。
衆議院、参議院の傍聴の時の要約筆記派遣は両院から派遣等センターに直接依頼がある。


【要約筆記者のレベルアップ】
聴覚障害者自立支援センター時代は、要約筆記者をさまざまなレベルに分け、いろいろなテーマで研修は年間30回以上も行っていた。
それだけの研修が求められる現場も多いためだ。この研修の指導力も問われるため、要約筆記指導者研修も有料で行われていた。
この研修が東京の要約筆記を支える。

難聴者協会やサークルの例会だから、レベルは低くても良いということにはならない。
手話を使う難聴者と要約筆記が頼りの難聴者と対等の議論が求められ、要約筆記者も難聴者もそのための要約筆記を追及して来た。
高齢者の集まりはそれで対人支援が必要だ。


ラビット 記




要約筆記が奉仕員事業で続いた訳 

2008年02月29日 12時15分41秒 | 要約筆記事業
080228_2037~001.jpg080228_2038~001.jpg【権利意識が問われる要約筆記】
「要約筆記はコミュニケーションの保障に不可欠」と言うのと「コミュニケーションの権利として要約筆記が必要」と言うのでは意味が違う。
難聴者は自らの権利を言い切れるだろうか。
昨年、外部研修に要約筆記の会社負担を求めた際に初めて「権利」を口にした。受講料も交通費も会社負担なのでと主催者のコンプライアンス部門や派遣元とも協議しながら、結局公費派遣になったが、会社側もこちらも緊張した。


【要約筆記奉仕員事業が続いた理由】
要約筆記者派遣事業は手話通訳と同じ「社会福祉法第2種事業」に指定されているが残念ながら、その経過は要約筆記事業だから指定されたとは言えない。当時はまだ奉仕員養成カリキュラムの作成に懸命で、奉仕員と「者」の違いを認識していなかった。

「手話通訳活動」はろう者の権利を守るためにコミュニケーション支援の専門性を高めてきた。
しかし、要約筆記は利用される場が難聴者集団の場が多く、一人ひとりの権利擁護を問う意識が育たなかったと思われる。

難聴者協会の活動がまた、「聞こえる」中途失聴・難聴者にリードされた場合、要約筆記に求めるものが歪んでしまうこともあった(補完的な利用)。
要約筆記を見ない会長は困るというのは良く聞く話だ。

個人の権利意識が強ければ、切実に必要な就労の場での利用がもっと広く始まっただろう。

要約筆記奉仕員で活動している人たちが登録者集団を形成する意識がなく、サークルにとどまったのも利用者の意識を反映しているに違いない。


【要約筆記の目的の理解】
要約筆記は「要約筆記の三原則」がありながら、その意味理解は長いこと深まらなかった。

コミュニケーションの成立には言葉の何が必要なのか、同時性はなんのために必要なのか、思考出来る要約筆記とは何か。
なぜ話言葉の意味をつかんで文章で表すのか、「通訳行為」とは何か?
権利を守るためにはどういう専門性が必要か。

難聴者は、長いこと要約筆記の手話通訳との扱いの格差の是正を要望してきたはずだが、その格差は社会参加促進事業の要約筆記奉仕員養成事業と専門性を確立してきた手話通訳「者」の事業の違いにあった。

その要約筆記の専門性を確立させるカリキュラムに、市町村に通訳課程のカリキュラムは市町村では困難、指導出来る難聴者がいないという理由で反対するのは、要約筆記を手話通訳同様にという過去の要望にも反することになる。


【要約筆記奉仕員養成事業の位置付け】
障害者自立支援法で要約筆記者派遣事業が始まった今、要約筆記事業と奉仕員事業の違いを再度確認しよう。

障害者自立支援法では、専門性を持つサービスの担い手の養成は都道府県の事業であり、市町村の養成は想定していない。独自予算で実施出来る市町村はどれだけあるだろうか。

都道府県で要約筆記者事業が行われるならば、市町村で要約筆記「奉仕員」の養成は内容、位置づけを考えないと今後は厳しい。
それに社会参加促進事業の奉仕員養成は任意の事業であり、奉仕員の派遣事業は規定されていない。
派遣があるのは、地域生活支援事業のコミュニケーション支援事業の要約筆記者派遣事業だ(実施要項)。社会参加促進事業ではない。
ここに、要約筆記者と書かれた意味は大きい。


【要約筆記事業の今後】
障害者自立支援法第2期を来年に控えた今年(2008年度)に都道府県、市町村ともコミュニケーション支援事業について何らかの対応をすることは容易に想像出来る。
国も自治体も財政危機の中、補助金の削減に動く。任意事業の奉仕員事業での継続は難しくなる。
その時に要約筆記事業が緊急に優先されるべき事業とするためには、権利擁護の事業としての要約筆記事業であること、どのような専門性を持つか明らかにしてどのように習得させるかを説明しなければならない。

要約筆記者養成を急ぐが奉仕員を要約筆記者に転換する事業も必要になる。

全難聴の要約筆記事業、補修・研修事業報告書を読み込むことで今後の動きに対応出来よう。


ラビット 記



要約筆記と難聴者の関わり方

2008年02月28日 12時56分43秒 | 要約筆記事業
080226_1629~001.jpg080226_0851~001.jpg難聴者が要約筆記に関わる必要はあるだろう。
だが関わり方を考えなければならない。
【難聴者の要約筆記の理解】
難聴者の要約筆記を心情的ではなく、理論的に理解する必要がある。
要約筆記で出来るだけたくさん書いて欲しい、要約筆記で冗談も聞きたいという心情は理解しても、要約筆記で何を得るか、何をさせるかは別に考えなければならない。

コミュニケーションの成立を図るなら、話された言葉を全て文字化する必要はないこと、意味の伝達を目的とすること、話されることと同時に進める作業であること、話言葉の特徴や場と情報の共有などで表出内容が合理化されていることなどを理解していなければならない。

さらに、社会福祉サービス、障害者福祉と要約筆記との関係の理解も不可欠だ。
今なら社会福祉基礎構造改革から支援費制度、障害者自立支援法、国連障害者権利条約の流れなどだ。

【難聴者の要約筆記の関わり方】
難聴者は要約筆記の指導する際に自らの体験を普遍化し、理解してもらう必要がある。
要約筆記者が様々な場面の現場での対応が必要なためだ。
指導する難聴者が要約筆記を利用する体験を持っていることは当然だが、要約筆記者よりは現場体験は少ない。病院に一年間行ったことがないとか家族に頼んでいる人もいるだろう。派遣される要約筆記者はそうはいかない。
難聴者の関わり方を考える所以の一つ。

難聴者にとって、講習会で「教える」だけが関わり方ではない。
その一つが要約筆記者養成講習会のプロデュースとマネジメントだ。
カリキュラムに基づく講習会の企画立案、指導内容の検討と講師選任、講師会議の開催。自治体への説得、交渉など要約筆記者養成事業の管理運営に関わることが出来る。
事業体の職員、あるいは運営委員会として関わる。

もう一つは、啓発だ。要約筆記を社会に普及すること、難聴者に利用を促進することは難聴者協会としての基本的役割だろう。
企業に要約筆記者派遣の受け入れなどは権利条約の批准に向けて、今後強化しなければならない活動だ。
アメリカでは電話リレーサービスが通信事業者の義務になっているが今でも電話リレーサービスに理解をしない企業や個人が多い。
そうした企業や人々に理解をしてもらう活動をアウトリーチというが通信事業者も難聴者協会の支部が積極的に行っている。

【要約筆記者の守秘義務】
要約筆記を利用した難聴者協会の会員の体験を集めてフィードバックすることは必要かもしれないが、一般利用者の場合は登録要約筆記者あるいは事業体でないと難しい。
事例研修のケースワークには難聴者は入れない。
個人情報、守秘義務に関わるからだ。

要約筆記の利用は協会の会員だけではない。広く社会の難聴者などが利用する社会福祉サービスなのだ。

難聴者協会も関わり方を変える必要がある。


ラビット 記
写真は開花したアマリリス(ポポスという品種)



要約筆記事業いろいろな受けとめ方

2008年02月27日 21時36分22秒 | 要約筆記事業
080216_1512~001.jpg「難聴者が要約筆記に関わらなくて、どうして難聴者のニーズにあった要約筆記が出来るのですか。」
「108は認める。しかし市町村では実施出来ない。52時間が限度。」
「難聴者協会が要約筆記講習会に関わるのは限度。病気になった人もいる。」
「奉仕員で社会福祉サービスを担う人を養成する。」
「手話は奉仕員養成がある。いきなり要約筆記者になる人はいないと県に言われた。」
「県の協会は要約筆記講習会を返上した。講習会本当には大変。市(の協会)も考えたい。」
「コミュニケーション支援事業は公的サービスとボランティアに分ける(必要がある)。」
「(要約筆記は)普及から質の向上に(向かわなくては)」
「通訳課程は東京だから出来ると言われる。」
いずれもこの数日間に聞いたことだ。


要約筆記はどういう活動だろうか。基本的な理解が必要だろう。
要約筆記は難聴者などがコミュニケーションの起きている場で、人の話を文字で理解してコミュニケーション出来ることが目的だ。
1.コミュニケーションに関わる活動なので、幅広い知識が要求される。
2.聞いた言葉の意味を理解して、読んで理解出来る文章で表す技術が必要なので高い言語能力が求められる。
3.障害者の権利を守る行政サービスを担う活動なので高い倫理性、人権意識が要求される。

これらは専門性が要求されていることを示している。
障害者自立支援法で要約筆記者派遣事業が市町村の必須事業になったのは、この認識があるからだ。
要約筆記奉仕員だった人が派遣されるにしても、要約筆記者として派遣されなければならない。

要約筆記が社会にまだ普及していない理由はいろいろあるだろうが、奉仕員事業で養成、派遣されてきたことも一因だろう。

一般名詞の要約筆記者が使われてきたのも、手話通訳に対する「要約筆記者」の意識がなかったのだ。
この考えが出てくるには2003年まで待たねばならなかった。


ラビット 記
写真は、要約筆記者派遣事業が要約筆記奉仕員養成講習会で要請された人々が要約筆記者として必要な知識、技術の確認をする初めての試験が行われた場所。



介護職に要約筆記は必要なのか

2008年02月10日 09時06分46秒 | 要約筆記事業
080204_0738~001.jpg介護を受けている人たちは高齢の難聴者が多い。
介護サービスに関わる専門職に要約筆記が必要なのか。

要約筆記はそれ自体が専門性のあるコミュニケーション支援サービスであり、社会福祉法第二種事業に指定されている。
要約筆記者が介護職を目指すことは当然あるが、要約筆記はコミュニケーション支援技術の一つであり独自の専門性を持つ。対人援助においても違う専門性が求められる。

共通しているのは、支援対象者の権利を守る立場で、社会福祉サービスを担っていることだ。
通訳といっても、言語通訳との違いもここにある。

いま活動している要約筆記者は要約筆記奉仕員カリキュラムに基づいてあるいはそれに満たない内容で学んだ人びとで、専門性は不十分というより、それを求められていない。


介護の現場で介護者に求められるのは、要約筆記(通訳)技術というよりは、聞こえの低下した対象者に対する理解と適切なコミュニケーション方法の技術ではないか。

難聴とは何か、聴覚障害は何を差すのか、聞こえない人はどういう心理的問題を持つのか、聞こえない人のコミュニケーション方法はどういうものか、難聴者支援の社会資源の種類と連携方法などが考えられる。

筆談は書いてコミュニケーションするが聞こえない人が分かりやすい書き方、機材というのはある。
ノートテイクは要約筆記の一つの方法で話し手の言葉を聞こえない人に書いて通訳するもので、支援者が対象者と直接コミュニケーションするための筆談とは違う。


全難聴の開いた「聞こえのケアマネジメント」講座は高齢者生活支援センターや介護施設、聴覚障害者情報提供施設などから申し込みが殺到したことがあったように、社会のニーズは強い。


ラビット 記



会議後のノミニュケーションと要約筆記

2008年01月31日 08時39分30秒 | 要約筆記事業
080130_1736~001.jpg080130_1747~001.jpgとある居酒屋で乾杯するなり、早速「こういうことを知っているか」とか「あの人はこういう考えなのか」とか、正面から聞けないことが次々と出てくる。
「ノミニュケーション」は仕事に直揃している。

男ばかりなのに「○○君は揃婚したんだって」と自分の営業所の若手のことが出て驚いた。

これでは、自分が人工内耳を受けたこともすぐに伝わるはずだ。会議室に入るとすぐ人工内耳はどうかと聞かれたのだ。その人には話してないのに。


難聴者はこうした場にも出ていかないと取り残される。要約筆記者はこうした場にも派遣されるべきだし、派遣されようとしたこともあった。「もあった」というのは、数年前聞こえない人から相談を受け、参加者や内容から派遣することを伝えたが依頼がなかったということを聞いていたからだ。


会議中は人工内耳も補聴器も役に立たない。
仕事の上では、何とか聞こえるとか大体聞こえるというのは「役に立たない」。その場に発せられた言葉は伝わったものとして議論が進む。理解が出来なければ聞くのだ。


ラビット 記