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『野山の仏』

2010年08月18日 | 図書文献
今回は一冊の本を紹介したいと思います。
今から約50年ほど前に書かれた『野山の仏』という本です。
藁科図書館の地域資料のコーナーで見つけた本書は、大きな本と本の間に埋もれていた小さな体裁ですが、まさに私にとっては長年探していた宝物と出会ったような感動でした。

筆者の戸塚さんは市街地に開業するお医者さんで、戦後間もない藁科川流域をはじめ、隣の安倍川筋に分け入り、野山のお地蔵さんたちを訪ね、その由来や地域の人々の言葉を断章風に紹介しています。

科学者(医者)としての客観的な視点と、野仏に対する限りない主観的な愛情が融合し、その文章は凛として格調高く、そしてみずみずしく、筆者が追い求めた野仏たちの魅力が、今なお色あせず読み手に迫ってくるすばらしい本です。
読み物としての面白さと、歴史的資料文献としての価値ある一冊。

“この地蔵は生きているかも知れない。
人々の限りない無理な願いを、慈悲の心で受け止めて
幾世紀の間、日だまりの野辺に、風雨の辻に、土を踏みしめて、
村人の心を救ってきた。
石に刻まれた像ではあるが、大地の精が宿っているかのように、
石造であって人間をいのままに動かす力を持っているものであってみれば、
確かにこの地蔵尊は生きている。
菩薩はその目で歴史の変転を見守ってきた・・・”

このような文章に出会うと、大きく頷き、時間を越えて、心が震えます。
本著に背中を押されて、またいろいろな藁科川の魅力を見つけてみたくなるのです。


『野山の仏』戸塚孝一郎著.金剛社.1963年


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