韓国の造船業界、過去最高の受注好況…それでも楽観できない理由とは
海運業の好況で船の発注が急増 受注-売上の時差で造船会社の業績は後退 現場では鉄板価格が上がり、収益悪化を懸念
サムスン重工業の巨済造船所に停泊しているコンテナ船「HMMサンクトペテルブルク号」=HMM提供
「造船業が没落の危機から圧倒的な世界1位として復活しました」 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は今月10日、就任4周年演説でこのように強調した。
一時は受注の崖に直面した韓国の造船会社が再び蘇ったという話だ。
しかし、数字に表われる企業業績や業界の雰囲気は全く異なる。
現場でもまだ追い風を体感していないという声があがっている。
受注だけを見れば、造船業の復活を語れそうにみえる。
11日、業界によると、今年第1四半期(1~3月)の国内造船会社の受注量は532万CGT(船舶建造量指標である「標準貨物船換算トン数」)で、昨年第1四半期に比べ868%増加した。
同期間の新規受注額も119億ドルと、753%伸びた。
各造船所のドック(船を作る作業場)は一杯になり、各造船会社は2年分の仕事(受注残高)を積んだ。
これは前方産業である海運業の好況のおかげだ。新型コロナ流行以降、物流が増加して海運運賃も跳ね上がり、海運会社がこれまで見合わせてきたコンテナ船の発注を大幅に増やしたからだ。
実際、サムスン重工業は今年3月、台湾の海運会社エバーグリーンから単一契約では過去最大規模のコンテナ船20隻を一度に受注した。
船舶価格も跳ね上がっている。
英国の造船・海運市況分析会社のクラックソンリサーチの資料によると、世界市場で新しく生産された船舶価格を指数に換算した新造船価格指数は今月134で、2015年2月以来6年ぶりの最高値を記録した。
造船所ドックの空きがなくなり、造船会社の交渉力が大きくなったことが影響した。
営業実績はこのような流れとははっきり異なる。
年初に大量の受注を受けたサムスン重工業は、今年第1四半期だけで5千億ウォン台の営業赤字を出した。
悪性在庫として抱えている海洋掘削船(ドリルシップ)の評価損失2100億ウォン(約204億円)と、新規受注物量の追加損失予想額(工事損失充当金)1200億ウォン(約117億円)などが反映された。
信用格付け会社のある関係者は「受注直後に予想工事原価が大幅に増えたというのは、昨年、受注の崖に直面した際にドックをまず一杯にするために低価格で受注したことを意味する」と述べた。
会社側は、再来年になれば営業黒字へと転換できると予想している。
サムスン重工業の株価は、第1四半期の業績発表(5月4日)後、19%も急落した。
世界1、2位の造船会社である韓国造船海洋と大宇造船海洋も状況はそれほど変わらない。
韓国造船海洋の今年第1四半期の営業利益は675億ウォン(約66億円)と、昨年第1四半期に比べて45%減少した。
市場ではまだ実績を公開していない大宇造船も、第1四半期にやっと営業黒字を出したと推算している。
このように受注と業績との乖離が生じるのは、受注産業である造船業の特徴のためだ。
船舶の場合、受注から設計、建造、引渡しまで1~2年かかるため、現在の造船会社の売り上げと利益とされるのはほとんどが受注不足に陥っていた過去の契約の物量だ。
当時受注した船舶価格も高くなかったため、当面は利益率の改善も期待しがたい状況だ。
造船会社は船舶建造期間中に発注先から請負費を分けて支給され、会計も工事の進行率によって売上と利益を分けて反映する。
最近、船舶製造に入る厚板(厚い鉄板)の価格が鉄鉱石の品薄の影響で大幅に値上がりしている状況も、造船会社としては好ましくない流れだ。
収益性に否定的な影響を与えるためだ。
今年に入って受注したマージンの良い工事収益は1~2年後から本格的に反映されるが、原材料価格の上昇は直ちに実績に悪影響を及ぼしうるということだ。
実際、サムスン重工業と韓国造船海洋が今年第1四半期に船舶製造に使う鋼材価格の引き上げの影響により追加で反映した費用は、それぞれ1千億ウォンを超える。
ある大手造船会社の関係者は、「内部的には、現在の受注好況が少なくとも今年下半期まで続けば、来年以降の売上と利益の改善につながるとみている」と語った。
SK証券のユ・スンウ研究員も「昨年コロナの影響で遅延した船舶発注物量が年初に一気に殺到し、造船業況がV字に反騰するような錯視効果が生じた」とし
「2004~2008年のような造船業の好況が再び訪れるのは、少なくとも以前の好況期に発注した船舶が大量に交替時期を迎える2024年以降になるとみられる」と述べた。
パク・ジョンオ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )