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慰安婦問題を言い続けるなら見捨てるぞ 韓国を叱りつけたバイデン政の真意は

2021-02-15 12:12:01 | 日記

バイデン政権の真意は

2021-02-15 11:55:41 | 日記

慰安婦問題を言い続けるなら見捨てるぞ 韓国を叱りつけたバイデン政権の真意は

2/15(月) 6:03配信

「いつまで『慰安婦』を持ち出すのか。日本と仲良くできないなら見捨てるぞ」と米国が韓国に言い渡した。J・バイデン(Joe Biden)政権が文在寅(ムン・ジェイン)政権を見限ったのだ。韓国観察者の鈴置高史氏が解説する。

耳にタコの「慰安婦」「徴用」

鈴置:東亜日報が興味深いニュースを報じました。バイデン政権の韓国担当者が同紙に対し、慰安婦や徴用工問題を唱え日本と対立を続けるのなら同盟を打ち切るぞ、と威嚇したのです。  「『最悪に突き進む』韓日関係に…米『韓国に対する期待を放棄するかも』と圧迫」(2月10日、韓国語版)から、その部分を訳します。 ・バイデン政権当局者は1月9日(現地時間)、本紙に「私たちはQUAD(=クワッド、日米豪印戦略対話)の協議体化を急いでいる。日本との関係改善にも注目している」とし、「韓国が(日本との関係で)前に進まないなら、バイデン政権はパートナーとしての韓国に対する期待を放棄しうる」と述べた。 ・この当局者は「我々が韓国から聞かされることといったら、シンガポールの米朝首脳会談の精神と、慰安婦、強制徴用問題だけ」、「世界的なイノベーション国家である韓国が、北朝鮮や日本問題に関しては、いかなるイノベーションもしていない」と語った。  韓国は元慰安婦、自称・徴用工を問題化して日本と摩擦を引き起こし、それを理由に日米韓の安保協力を拒んできました。しかし、同盟強化を図るバイデン政権は、歴史を言い訳に同盟を壊す茶番劇は辞めろと、就任早々から韓国を叱ったのです。  ことに慰安婦問題はB・オバマ(Barack Obama)政権当時、副大統領だったバイデン氏が日韓合意の保証人になって解決を図った経緯があります。(「かつて韓国の嘘を暴いたバイデン 『恐中病と不実』を思い出すか」参照)。  安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領が交わした慰安婦合意を、文在寅大統領はいとも簡単に反故にした。そのうえ、「徴用工」にも対日戦線を広げました。顔に泥を塗られたバイデン大統領が「いい加減にしろ」と怒り出すのも当然です。  怒りの激しさは「パートナーとしての韓国に対する期待を放棄しうる」との表現からうかがえます。外交的な修辞にくるんでいますが、要は「日本との関係を改善しないと、同盟を打ち切るぞ」と言い放ったのですから。

日韓関係改善のフリ

――文在寅政権は日韓関係を改善するでしょうか?  鈴置:しないでしょう。韓国政府にとって「改善」とは、何らかの形で日本政府が元慰安婦判決と自称・徴用工判決に従うことです。  ことに後者は「日韓併合は不法だった」と認めるよう日本に迫る判決です。「植民地になったことなどなかった」と信じたい韓国人の輿望を担った判決である以上、簡単に後ろに引けない。  一方、日本政府が譲歩する可能性はありません。「併合は不法だった」と認めるつもりは毛頭ない。国交正常化の際に結んだ日韓基本条約を覆すことにもなるからです。  だから「韓国は国際法違反の状態を引き起こした。自ら是正すべきである」と言い続け、話し合いも拒否しているのです。  日本と戦う際、韓国の頼みの綱は常に米国でした。が今回は、米国は韓国側に立たなかった。韓国の離米従中を決して許さない政権が登場したからです。韓国が歴史問題を言い募るほどに、米国はそれを言い訳と見なし、怒り出しているわけです。 ――文在寅政権はどう、凌ぐのでしょうか。 鈴置:日韓関係改善に努力するフリをして誤魔化すつもりと思われます。1月18日、新年の記者会見で文在寅大統領が姿勢を一転し、慰安婦合意を政府間の合意として認めました(「韓国人はなぜ、平気で約束を破るのか 法治が根付かない3つの理由」参照)。  「韓国は関係改善に向け、これだけ努力しているのに日本が応じない」との米国向け宣伝です。

「北の非核化」は急がない

 

韓国歴代大統領の末路

――フリだけされても米国は困りませんか?  鈴置:そうでもないのです。「日米韓」の連携が必要な北朝鮮の非核化は今や、米国にとって緊急度が高い問題ではなくなっています。ワシントンでは、北朝鮮が核・ミサイル実験を繰り返していた4年前の緊迫感はすっかり薄れています。  D・トランプ(Donald Trump)政権の軍事的な圧迫と、その後の懐柔のおかげで2017年末以降、北朝鮮は核実験もICBM(大陸間弾道弾)の実験も中断している。  とりあえずは実験の再開を抑え込んでおき、交渉はおいおい進めればいい、との判断にバイデン政権は傾いているようです。  文在寅政権の任期は2022年5月まで。あと1年半もありません。そんな政権は無視し、「日米韓」の協力体制は、次の「まともな政権」と作ればいいわけです。  中国包囲網だって、今すぐに韓国を入れる必要もない。QUADも初めは韓国なしでスタートすればいい。もし、G7拡大に動くとしても「韓国抜き」で始めればいいのです。  中国の顔色をうかがい、包囲網への参加から逃げ回る文在寅政権を米国が相手にする必要はどこにもない。バイデン政権は従中・従北の文在寅政権を見限ったのです。

「もう、反米政権は選ぶな」

――ではなぜ、「見捨てるぞ」と脅すのでしょうか?  鈴置:あれは文在寅政権を脅すというよりも、韓国人を脅しているのです。「次もこんな反米政権を選ぶのなら、同盟を打ち切るぞ」と韓国人に言い聞かせているのです。  先に引用した東亜日報の記事。読者コメントの約7割が「文在寅のために米国との同盟を失う」と危機感を表明するものでした。 「政権をすげ代えればいいのだ」「文政権は自他共に認める左派政権で、親中・親北政権だ。(米国は同政権を)放っておき、1年待って次期政権と政策的な協力を議論すべきだ」との書き込みもありました。韓国でも米国のサインを読みとった人が出たのです。  なお、残りの約3割がこの記事に否定的な書き込みでした。ただ、文在寅政権を真正面から支持するものはほとんどなく、「日本側に立った米国や東亜日報」への反発が中心でした。  東亜日報は保守系紙で読者の多くが親米派です。韓国人の平均像とは言えません。が、東亜日報に「書かせた」米政府の韓国担当者がこのコメント欄を見たら「手ごたえはあった」と喜んだでしょう。

VOAが威嚇攻勢

 米政府の警告は日韓関係に留まりません。国務省が運営するVOA(Voice of America)の韓国語版(発言部分は英語と韓国語)を通じ「文在寅政権とは軍事的にもスクラムを組めない」と執拗に訴えています。  1月末から2月上旬までの短い期間に、B・ベル(Burwell Bell)退役陸軍大将の発言を引用した記事が3本も載りました。同大将は2006年から2008年まで米韓連合軍司令部の司令官を務めた朝鮮半島専門家です。 ・「元韓米連合司令官ら『合同訓練を正常化せよ』…訓練縮小の主張に『準備体制を毀損』」(1月28日) ・「ベル元司令官『米韓は共同声明を通じ北朝鮮の挑発には懲らしめるぞと警告すべきだ』」(1月30日) ・「元韓米連合司令官『性急な作戦統制権の転換、戦時の派兵と核打撃能力を制限』」(2月10日)  文在寅政権は北朝鮮の顔色を見て、米韓合同演習の再開に反対している。VOAは1番目の記事で「それでは韓国をちゃんと守れないよ」とクギを刺したのです。

核の傘も提供しない

 2番目の記事は「北朝鮮が核・ミサイル実験を実施したら報復するぞと米韓で警告しておこう」との呼びかけです。  バイデン政権の発足に伴い、北朝鮮と中国が米韓同盟の結束度合いを確かめたくなっている。それを試すために北朝鮮が核・ミサイル実験を再開する可能性が高いから、共同声明を出して牽制しておこう――とベル大将は訴えたのです。  確かに、米韓の対北政策は大きな亀裂を生じていて、ここにつけ込まれそうになっています。文在寅政権は米朝首脳会談の早期開催を米国に求めている。  一方、バイデン政権は「首脳会談は政治ショーに終わる」と極めて否定的です。先に引用した東亜日報の記事で、米政府が「慰安婦」「徴用工」と並べ「シンガポールの米朝首脳会談の精神」を批判したのもそのためです。  米国とすれば韓国に米国寄りの姿勢を表明させ、亀裂を隠したい。文在寅政権が「報復」を唱える米韓共同声明に応じるとは、とても考えられないのですが。  3番目の記事は、韓国軍の戦時作戦統制権の返還を任期内に実現しようと狙う文在寅政権への牽制です。返還と同時に在韓米軍は韓国軍司令官の指揮下に入る約束になっています。  左派政権が戦争を指導することになれば、どれだけ本気で北朝鮮と戦うか怪しい。米軍兵士の命が危うくなります。これほど北朝鮮に弱腰な左派政権が登場するとは、米国は予想していなかった。  ただ、今さら「左派政権の指揮は受けない」と言えない。そこで有事の際に兵を増派しないし、核の傘で守らないかもしれないと、同盟無効化をちらつかせて返還に反対したのです。  米国はVOAを通じ、溜めていた要求を一気に突き付けた。「米国をとるのか、左派政権をとるのか」と韓国の国民に踏み絵を迫りながら。

通貨危機でお仕置き

――米国も露骨に脅しますね。 鈴置:VOAの極め付きの記事は2月11日の「米国務省、『中国のTHAADへの圧迫、不当で不適切…北朝鮮のミサイルへの対応力強化を計画』」です。  文在寅政権が韓国での運用を邪魔してきたTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)をさらに配備するぞ、と米国は言い出したのです。韓国がこれを受け入れば、中国からタコ殴りにされるのは目に見えています。  米政府は文在寅政権が窮地に陥る要求も大声で突き付け始めた。配慮というものが一切ない。「どうせこの政権とは協力できない」と見切ったことがよく分かります。韓国人がこれらの記事を読んだら「バイデン政権は文在寅政権を見捨てたな」と自然に考える仕掛けにもなっています。 ――これだけ脅せば、次は親米政権が登場しますか。 鈴置:そうは簡単にいかないのが韓国という国です。左派だけでなく保守も「米国が怒っているようだけど、少々の甘えは許してくれるはず。韓国に兵を置いておきたいのだから」と考えがちなのです。  口で脅すだけではなかなか効きません。1997年の通貨危機のように「痛い目」に遭わないと、言うことを聞かない人たちなのです。    1992年に中国と国交を樹立したばかりの金泳三キム・ヨンサム)政権は米国の軍事情報を中国に流していたと、米軍は見ています。米中二股の走りです。  米国は韓国から外貨が流出した1997年秋、助けなかったうえ、日本に対し韓国にドルを貸すなと命じました。韓国は外貨繰りに困り結局、IMF(国際通貨基金)の救済を受ける羽目に陥りました。  米国は裏切り者、韓国を金融という武器を使ってお仕置きしたのです(『米韓同盟消滅』第2章第4節「『韓国の裏切り』に警告し続けた米国」参照)。

金融ツートップがバブルを警告

――米国は再び、通貨危機を「発動」するのでしょうか。 鈴置:条件は整いつつあります。生産年齢人口の減少により韓国の経済規模は縮み始めました。一方、株式・不動産市場におカネが流れ込み高値が続いています。日本の1990年前後の状態と似ています。  韓国市場には外国からホットマネーが入り込んでいる。そのうえ、ウォンが国際通貨ではないため、バブル崩壊が通貨危機に直結しやすいのです。  中央銀行である韓国銀行も、日本の財務省にあたる企画財政部も危機感を強めています。1月5日、金融界の賀詞交換会で洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官と李柱烈(イ・ジュヨル)韓銀総裁という金融のツートップがバブル崩壊を警告しました。  洪楠基副首相は「実物経済と金融のかい離に対する懸念が高まっている」と述べました。李柱烈総裁は「流動性供給と返済猶予措置により潜在化していたリスクが今年は現実化すると予想される。高いレベルの警戒感が必要だ」と語りました。  というのに、韓国証券市場では個人が買い進み、1月7日にKOSPI(韓国株価総合指数)は史上初めて3000の大台に乗せました。  1月28日、IMFが「いつまでも空売り規制を続けるべきではない」と韓国に忠告しました。規制を続けるほどにホットマネーが入り込み、バブル崩壊の際の衝撃が大きくなるからです。しかし、3月15日に解除の予定だった空売り規制は5月2日まで延期されました。2月3日のことです。  規制解除を延期したのは4月7日のソウルと釜山の市長選挙を政府が意識したためです。買い方に回っている個人、すなわち有権者に忖度し、選挙前の株価急落を予防したのです。  李柱烈総裁は「小さな衝撃でも市場が大きく揺れる状態」とも指摘しています。この空売り規制解除の延期が「小さな衝撃」にならないか、関係者はかたずを飲んで見守っています。

「サムスンいじめに乗り出す日米」

――1997年にひどい目に遭った韓国が、通貨危機を警戒しないのでしょうか。 鈴置:人間の性(さが)とはそういうものでしょう。どの国も忘れた頃にまたバブルを起こす。韓国人も多くが「1997年当時は経済規模が小さかったから通貨危機に陥った。大きくなった今は大丈夫」と信じている。通貨危機とは外貨繰りの問題で規模とは関係がない。大きな会社でも倒産するのと同じことなのですが……。  ただ、米国が発動する「お仕置き」は通貨危機だけではありません。韓国で「従中の韓国に対し、米国はサムスン電子イジメに出るのではないか」との懸念の声があがっています。  朝鮮日報は2月10日、「台湾TSMC、日本と手をとり反中連合の先鋒に」(韓国語版)を載せました。前文を訳します。 ・半導体ファウンドリー(委託生産)の絶対的な強者、台湾のTSMCが反中の米日連合の求心点に浮上した。米・日政府はTSMCを支援することで5G(第5世代)通信・人口知能・自動運転・クラウドなど、未来産業の核心部品である半導体を確保すると同時に、中国の半導体勃興の芽を摘む戦略だ。TSMCは米日両国の全幅の支援を受け、サムスン電子を除け者にして、急成長するファウンドリー市場で独占体制を固める機会を得た。

「文在寅を拘束せよ」

 「サムソンがいじめられる」と、韓国人特有の被害者意識が噴出した記事です。日経の「台湾TSMC、日本に先端半導体の開発拠点」(1月8日)をお手本に書いています。しかし、日経には「サムスン電子を除け者にする」という文脈はもちろん、「サムスン」という単語さえないのです。  朝鮮日報の記事の読者コメント欄でも、韓国人の恐怖感と怒りが率直に語られています。象徴的なものを訳します。 ・愚かな文在寅のガキ。サムスンが滅び、半導体が滅びたら、何で飯を食っていくのか。 ・反日反米で、ここぞという時に親中する文在寅は売国奴だ。韓国の積弊、文在寅を拘束せよ。 ・文在寅左派政権がなければ、米・日・サムスンが連合体を構成していたのに。1日も早く文政権を終わらせねば経済は元通りにならない。  反米・反日の韓国に怒った日米が、台湾のTSMCとスクラムを組み、サムスン撲滅に乗り出した――と韓国の読者は考えたのです。

WTOで韓国を批判した米国

 TSMCも中国に工場を持っていて完全な海洋勢力派というわけではない。サムスン電子だって米国工場はありますから、中国派と言い切れない。  冷静に見れば、朝鮮日報の書きっぷりも、読者コメントも大げさすぎる。ただ、「米日が親中のサムスンを潰す」という認識が生まれた以上、それが利用されることになるかもしれません。  半導体素材の対韓輸出管理強化の問題。韓国はWTOに日本を訴えましたが2020年7月29日、米国はWTO(世界貿易機関)の協議の場で、「日本の安全保障に必要なことを判断できるのは日本だけだ」と韓国の提訴を批判しました。  米政府とすれば、さらに踏み込んで「サムスンは中国の5Gに協力しているのではないか」とつぶやき、素材の供給停止を匂わせる手があるのです。韓国では保守派を中心に「反米政権が続くとサムスンが殺される」と騒ぎになるでしょう。

フォトレジストが焦点に

――「供給停止」が効きますか?  鈴置:効きます。5G向け半導体を製造する際に必須なのが、高品位のフォトレジストです(「米中全面対決で朝鮮半島は『コップの中の嵐』に転落 日本の立場は」参照)。  これは日米の企業しか製造できないとされています。サムスン電子への供給を止めれば、同社はたちどころに5G向け半導体が作れなくなります。  韓国政府が「国産化に成功した」と言い張っているフッ化水素とは問題が本質的に異なります。5G向け半導体の製造工程では純度の低いフッ化水素も使えます。不良率の上昇を覚悟すればいい。しかし高品位のフォトレジストは「無ければ作れない」素材なのです。  実際に供給を止める前から、「止めるぞ」と米国が日本と共に脅すだけで、韓国はパニックに陥ります。それは金融市場にも及ぶでしょう。繰り返しになりますが、韓銀の李柱烈総裁が「小さな衝撃でも市場が大きく揺れる状態」と警戒している最中なのです。

反米の本性をむき出す

――文在寅政権はどう出るのでしょうか。 鈴置:とりあえずは米韓関係がうまくいっているように取り繕う。しかし、韓国人も馬鹿ではありません。すぐに実態が露呈します。その時は「反米」の本性をむき出しにして、左派の結集を図ると思われます。  韓国の大統領の末路は悲惨です。それを防ぐには「自分を監獄に送らない次の政権」を作るしかない。2022年の大統領選挙で親米派が勝ちそうになったら、死に物狂いで阻止に動くでしょう。朝鮮半島で突拍子もないことをしでかすのは「北」だけではないのです。 鈴置高史(すずおき・たかぶみ) 韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮取材班編集 2021年2月15日 掲載

 


文在寅の大誤算、バイデンのアメリカから見放され「韓国経済」は大ピンチへ…!

2021-02-15 11:20:17 | 日記

文在寅の大誤算、バイデンのアメリカから見放され「韓国経済」は大ピンチへ…!

2/15(月) 6:31配信

真壁 昭夫(法政大学大学院教授)

失業率が急上昇

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写真:現代ビジネス

足元で、韓国経済が厳しい局面に差し掛かりつつあるようだ。

新型コロナウイルスの感染再拡大や経済運営の行き詰まりで、韓国の雇用・所得環境の悪化に拍車がかかっている。

 1月の完全失業率は、前月の4.1%から大きく上昇し5.7%だった(季節調整値では4.5%から5.4%に上昇)。

業種別にみると、小売や飲食、宿泊などサービス業で失業者が増加している。  感染の再拡大が雇用に与える影響は深刻だ。

文在寅大統領の経済政策が行き詰っていることは間違いない。

 重要なポイントは、今のところ雇用環境の安定を回復する有効な政策が見当たらないことだ。

 それに加えて、国際社会における韓国の立場も一段と不安定感を増している。

 米国は車載を中心とする半導体の確保を目指して、これまで以上に台湾との関係を重視し始めた。

 バイデン政権は同盟国であるわが国との関係も重視している。

 その一方で、韓国の文大統領は、バイデン氏との会談の前に中国の習近平国家主席と電話会談した。

 中国としては、国際社会での孤立を防ぐために韓国との関係を強化したいと考えているのだろう。

 文大統領は、米中のはざまで両国との適切な距離感を見いだせずにいるように見える。

 それは、日米にとって軽視できないリスクだ。

ここへ来て加速する韓国の雇用悪化

 韓国統計庁が発表した1月の失業率を見ると韓国の雇用・所得環境はこれまで経験したことのない状況に足を踏み入れつつある。

 足許、韓国の大手製造業の業績はよい。

 コロナショック以前の韓国であれば、大手財閥系企業の輸出収益の増加は、雇用環境の持ち直しを支える大きな原動力だった。

 しかし、足許の韓国では製造業でも非製造業でも就業者が減少している。  

コロナショックを境に、大手財閥に属する製造業の輸出増加が内需を支えるという韓国の景気回復のメカニズムは機能しづらくなっているようだ。

 製造業の分野では、生産の現場に産業用ロボットなど省人化技術の導入が進んでいる。

 労働争議のリスクなどを避けるために海外進出を重視する企業も多い。  

そのため、企業が設備投資を積み増したとしても、雇用は生み出されづらい。  

その一方、飲食や宿泊などの非製造業の分野では、ソーシャルディスタンスの実施によって需要が蒸発している。

 今後、サムスン電子などの業績が拡大したとしても、過去のように韓国の雇用環境が上向く可能性は低下していると考えられる。

 それに加えて、感染が収束したとしても、飲食や宿泊などを中心に、需要がコロナショック以前の水準に戻らない恐れもある。

 そうした展開を念頭に置くと、当面の間、韓国若年層の失業率は高止まりするだろう。

 それに加えて、文政権が失業率の悪化を防ぐために重視してきた高齢者の短期雇用策も限界を迎えつつある。

 1月は60歳以上の世代の失業率が前月の5.3%から10.8%に上昇した。

 その要因として、公共部門での短期雇用契約の終了や、国内の需要低迷が考えられる。  

2月に入り文大統領の支持率が低下した一因として、先行きの雇用・所得環境への懸念上昇は軽視できない。

国際社会における韓国の孤立懸念

 雇用環境の悪化をはじめ経済格差が拡大すると、社会の不満は高まり、外需依存度の高い韓国が経済の安定を目指すことは難しくなる恐れがある。

 特に、韓国が日米とどう連携するか、先行きの不透明感は高まっている。  

米バイデン政権は、自動車関連などの半導体確保を目指して、台湾やわが国との関係をより重視し始めている。

 2月5日、バイデン政権は台湾と半導体のサプライチェーンの強化に関する協議を行った。

 その後、世界最大手の半導体受託生産企業(ファウンドリー)である台湾積体電路製造(TSMC)は次世代の半導体生産技術の確立を目指してわが国に研究拠点を設けることを発表した。

 また、アップルが次世代の有機ELディスプレイをTSMCと共同開発するなど、米国にとって台湾の重要性は高まっている。

 他方、世界貿易機関(WTO)の次期事務局長選挙に関して、トランプ前政権とは反対に、バイデン政権はナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏の支持を表明した。

 一連の米国の姿勢は、バイデン政権が韓国と距離をとり、文政権に自国の立場を明確にするよう求めているように見える。

 米国は北朝鮮への追加制裁も示唆している。

 韓国を取り巻く国際世論は厳しさを増しているといえる。

 文政権は、国内の経済運営に加えて、安全保障面では米国に頼りつつ、経済面で中国を、外交面では北朝鮮を重視する政策の限界を迎えているように映る。  

ただし、自らの政権基盤を安定させたい文氏にとって、これまでの政策スタンスを変えることは口で言うほど容易なことはないはずだ。

 今後、雇用喪失への不安の高まりなど韓国の社会心理は追加的に悪化し、経済運営は一段と難しい局面を迎える恐れがある。

真壁 昭夫(法政大学大学院教授)