勝又壽良のワールドビュー
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
韓国、「通貨危機への道」今年の景気は最悪、製造業の沈滞著しく「ウォン安誘発」
2020年02月01日
韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評
.
中国の新型ウイルスは、韓国人の不安心理を極度に高めている。中国人観光客が、来韓しないだけでなく、韓国人自身が繁華街へ姿を見せなくなってきた。商店街の売上は落込んでいる。
最低賃金の大幅引上げ・週労働52時間制に加え、中国ウイルスの襲来によって、韓国経済は「三重苦」に襲われている。今年の経済成長率は当然、さらなる悪化は免れない。
中国での新型ウイルスによる感染者数は、すでに1万人を超えている。SARS(2003年)を上回った。この先、感染はどこまで拡大するか不明である。
韓国経済への打撃は、GDP成長率で見れば、SARS時の0.25%ポイント・ダウンを上回る。今年のGDPは1.5%程度の成長率を覚悟する必要があろう。
新型ウイルスは、時間が来れば沈静化するが、もっと恐ろしい動きが韓国経済を襲っている。
文政権による最低賃金の大幅引上げ・週労働52時間制が、製造業の設備投資を抑制していることだ。
製造業こそ国力の基盤をなす。安定した雇用を維持し、イノベーションを推進する原点であるからだ。文政権の反企業・反市場政策が、ついに限界に突き当たった。
『朝鮮日報』(2月1日付)は、「韓国製造業の生産力が最近48年で最悪、沈滞ではなく災難レベルだ」と題する社説を掲載した。
(1)「韓国製造業の成長潜在力を示す生産能力が昨年は1.2%減少し、1971年に統計を取り始めて以来48年間で最大の下げ幅を記録した。
アジア通貨危機当時でさえプラスだった製造量の生産能力が、文在寅(ムン・ジェイン)政権発足直後の2018年にはじめてマイナス0.2%を記録し、それから1年でマイナス幅がさらに大きくなったのだ」
経済の実物指標では、生産能力指数、稼働率指数、在庫率指数など数々ある。その中で、生産能力指数は、設備投資を反映したもので潜在的な生産能力を示している。
その生産能力指数が、昨年は何と48年間で最大の下げ幅である。これは、深刻な問題だ。
企業が、韓国経済の成長性を見限ったことを意味するもの。文政権登場は、韓国経済にとって最大の「疫病神」である。こういう私の見方を裏付けているように思う。韓国は危機である。
(2)「実際に工場がどれだけ稼働しているかを示す製造業稼働率も72.9%にとどまり、これも通貨危機以来21年ぶりの低い数値だった。単なる沈滞ではなく経済の活力そのものが失われる災難とも言えるレベルだ」
稼働率指数も下落している。生産能力指数が落ちている状況下で、稼働率指数が落ちているのは、経済界の先行き見通しをさらに悪化させている。適正稼動率は80%程度とされる。企業は、これをベースに採算を弾いているはずだ。
ところが、昨年の稼働率指数は72.9%である。採算が悪化して当然である。これがまた、企業の設備投資を抑制するという逆スパイラルに落込んできた。
(3)「韓国政府の政策は労組寄り・反企業になり、企業は国内投資を嫌って海外に逃れた。昨年の設備投資は7.6%減で、これもここ10年で最大の下げ幅を記録した。産業生産はわずか0.4%の増加にとどまり、19年ぶりの低い数値だった。製造業の雇用はここ一年で8万人分も消えた。主力企業の業績も次々と墜落している」
文政権は、支持基盤の労組と市民団体に褒められる政策しかやらない。
それは、産業にとってマイナス材料であり、経済を縮小均衡に向かわせている。
これが、雇用不安を招いている最大の要因だ。労組寄り・反企業の政策(最賃大幅引上げと週労働52時間制)が、皮肉にも雇用不安の元凶である。文政権は、こういう矛楯点を理解できないほど幼稚である。
(4)「民間の(消費)支出が6分期連続でマイナスを記録する前例のない事態も起こっている。通貨危機当時でもなかった現象だ。
昨年末から半導体景気が回復の兆しを示したかに見えたが、「武漢肺炎」という新たな悪材料に襲われた。すでにデパートや映画館などは客足が途絶え、現場の景気は凍り付いている。事態が長期化すれば韓国経済にとって非常に大きな悪材料になるだろう。内憂外患の「パーフェクト・ストーム」を懸念しなければならない状況だ」
韓国は、大統領制であるから弾劾でもない限り5年は続く。
議院内閣制であれば、内閣総辞職で事態の打開が可能である。
韓国国民は、「悪い大統領」でも法に触れなければ5年我慢しなければならないのだ。
この5年間の空白は、取り返しのつかない事態を招く。
通貨危機が起これば、どうにもなるまい。その意味で、「ウォン安」の進行は韓国の危機を告げるバロメーターになってきた。
現状は、1ドル=1200ウォン寸前に来ている。ここを割り込んでウォン安が進めば、「また来た道」になる。
3度目の通貨危機だ。
好評を頂いている「勝又壽良の経済時評」の姉妹版。勝又壽良が日々の世界経済ニュースをより平易に、かつ鋭くタイムリーに解説します。中国、韓国、日本、米国など世界の経済時評を、時宜に合わせ取り上げます。
韓国、「通貨危機への道」今年の景気は最悪、製造業の沈滞著しく「ウォン安誘発」
2020年02月01日
韓国経済ニュース時評アジア経済ニュース時評
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中国の新型ウイルスは、韓国人の不安心理を極度に高めている。中国人観光客が、来韓しないだけでなく、韓国人自身が繁華街へ姿を見せなくなってきた。商店街の売上は落込んでいる。
最低賃金の大幅引上げ・週労働52時間制に加え、中国ウイルスの襲来によって、韓国経済は「三重苦」に襲われている。今年の経済成長率は当然、さらなる悪化は免れない。
中国での新型ウイルスによる感染者数は、すでに1万人を超えている。SARS(2003年)を上回った。この先、感染はどこまで拡大するか不明である。
韓国経済への打撃は、GDP成長率で見れば、SARS時の0.25%ポイント・ダウンを上回る。今年のGDPは1.5%程度の成長率を覚悟する必要があろう。
新型ウイルスは、時間が来れば沈静化するが、もっと恐ろしい動きが韓国経済を襲っている。
文政権による最低賃金の大幅引上げ・週労働52時間制が、製造業の設備投資を抑制していることだ。
製造業こそ国力の基盤をなす。安定した雇用を維持し、イノベーションを推進する原点であるからだ。文政権の反企業・反市場政策が、ついに限界に突き当たった。
『朝鮮日報』(2月1日付)は、「韓国製造業の生産力が最近48年で最悪、沈滞ではなく災難レベルだ」と題する社説を掲載した。
(1)「韓国製造業の成長潜在力を示す生産能力が昨年は1.2%減少し、1971年に統計を取り始めて以来48年間で最大の下げ幅を記録した。
アジア通貨危機当時でさえプラスだった製造量の生産能力が、文在寅(ムン・ジェイン)政権発足直後の2018年にはじめてマイナス0.2%を記録し、それから1年でマイナス幅がさらに大きくなったのだ」
経済の実物指標では、生産能力指数、稼働率指数、在庫率指数など数々ある。その中で、生産能力指数は、設備投資を反映したもので潜在的な生産能力を示している。
その生産能力指数が、昨年は何と48年間で最大の下げ幅である。これは、深刻な問題だ。
企業が、韓国経済の成長性を見限ったことを意味するもの。文政権登場は、韓国経済にとって最大の「疫病神」である。こういう私の見方を裏付けているように思う。韓国は危機である。
(2)「実際に工場がどれだけ稼働しているかを示す製造業稼働率も72.9%にとどまり、これも通貨危機以来21年ぶりの低い数値だった。単なる沈滞ではなく経済の活力そのものが失われる災難とも言えるレベルだ」
稼働率指数も下落している。生産能力指数が落ちている状況下で、稼働率指数が落ちているのは、経済界の先行き見通しをさらに悪化させている。適正稼動率は80%程度とされる。企業は、これをベースに採算を弾いているはずだ。
ところが、昨年の稼働率指数は72.9%である。採算が悪化して当然である。これがまた、企業の設備投資を抑制するという逆スパイラルに落込んできた。
(3)「韓国政府の政策は労組寄り・反企業になり、企業は国内投資を嫌って海外に逃れた。昨年の設備投資は7.6%減で、これもここ10年で最大の下げ幅を記録した。産業生産はわずか0.4%の増加にとどまり、19年ぶりの低い数値だった。製造業の雇用はここ一年で8万人分も消えた。主力企業の業績も次々と墜落している」
文政権は、支持基盤の労組と市民団体に褒められる政策しかやらない。
それは、産業にとってマイナス材料であり、経済を縮小均衡に向かわせている。
これが、雇用不安を招いている最大の要因だ。労組寄り・反企業の政策(最賃大幅引上げと週労働52時間制)が、皮肉にも雇用不安の元凶である。文政権は、こういう矛楯点を理解できないほど幼稚である。
(4)「民間の(消費)支出が6分期連続でマイナスを記録する前例のない事態も起こっている。通貨危機当時でもなかった現象だ。
昨年末から半導体景気が回復の兆しを示したかに見えたが、「武漢肺炎」という新たな悪材料に襲われた。すでにデパートや映画館などは客足が途絶え、現場の景気は凍り付いている。事態が長期化すれば韓国経済にとって非常に大きな悪材料になるだろう。内憂外患の「パーフェクト・ストーム」を懸念しなければならない状況だ」
韓国は、大統領制であるから弾劾でもない限り5年は続く。
議院内閣制であれば、内閣総辞職で事態の打開が可能である。
韓国国民は、「悪い大統領」でも法に触れなければ5年我慢しなければならないのだ。
この5年間の空白は、取り返しのつかない事態を招く。
通貨危機が起これば、どうにもなるまい。その意味で、「ウォン安」の進行は韓国の危機を告げるバロメーターになってきた。
現状は、1ドル=1200ウォン寸前に来ている。ここを割り込んでウォン安が進めば、「また来た道」になる。
3度目の通貨危機だ。