北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

民主党細野幹事長代理 シーレーン防衛恒久法制定を提唱

2010-06-20 23:35:12 | 国際・政治

◆防衛のバラマキ?緊縮ありきの予算と任務拡大論

 鳩山政権から菅政権に転換して、社民党が離脱したことにより防衛政策に踏み込んだ発言が増えてきました。しかし、予算措置人的措置を伴わず、これでは防衛のバラマキだ、と思えてくるのが今日この頃。

Img_7933  これについて興味深い記事がありましたので日経新聞から記事を引用します。海自のシーレーン防衛、恒久法で 民主・細野氏2010/6/19【ワシントン=大石格】・・・訪米中の細野豪志民主党幹事長代理は18日、日本の国際貢献の一環として海上自衛隊によるシーレーン防衛を実施すべきだとの考えを表明した。

Img_9026_1  海自は海賊対策法に基づきソマリア沖に艦船を派遣中だが細野氏は「地域を限定した特措法でない方がよい」と述べ、幅広く活動できる恒久法制定を提唱した。ワシントン市内で記者団に語った。海自によるインド洋での給油活動の再開案に関しては「一度やめたものだし、シーレーン防衛そのものではない」と指摘し、消極姿勢をみせた。

Img_2180  これに先立ちホワイトハウスのベーダー米国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長と会談。普天間基地の移設に関する日米合意の実現を参院選のマニフェストに盛り込んだことを伝達。南シナ海における中国海軍の活動状況などで意見交換した。

Img_7413  米シンクタンクでの講演では「日米同盟の機能的拡大」を目指すと強調。菅政権は鳩山前政権と異なり、(1)現実的な判断ができる(2)司令塔が明確だ――などと述べた。引用は以上です。http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819481E3EBE2E2E68DE3EBE2E4E0E2E3E29C9C97E2E2E2

Img_1322  普天間問題の政権内部での合意に至る事が出来なかったことから民主党が社会民主党との連立政権を解消して以来、もっともこれを契機に鳩山政権は崩壊し辞職したのですけれども、民主党は安全保障政策について自民党の理念と接近してきているように見えてきます。今回の恒久法提案についても同様です。

Img_3822  もともとシーレーン防衛を含む恒久法お制定は民主党が野党時代にテロ対策特別措置法に基づいて自衛隊の活動を実施していた時代から、自民党の時限立法による、民主党の表現を借りれば場当たり的な対処ではなく、長期的な自衛隊の任務を見据えた恒久法の制定が必要、と繰り返していました。

Img_1087  今回の発言は“地域を限定せず”、と表現していますので、これはシーレーン防衛のみならず、テロとの戦いに関するもので日本の安全保障に関連する事項であれば、新しい立法措置を行わずとも自衛隊を世界規模で展開させ、任務に対応させることを目指すもの、と読み取ることが出来ます。

Img_7213  しかし、一点気になるのは、自衛隊の任務の上限を定めない、という事にもなりますので、基本的に1000浬シーレーン防衛の延長として部隊編成を行ってきた海上自衛隊と、本土防空に特化した航空自衛隊、専守防衛を原則として装備や部隊編成、配置と訓練を実施してきた陸上自衛隊を現行編成のままこうした任務に充てることは妥当なのか、という疑問符が付きます。

Img_6911  昨今、安全保障や軍事に関する識者には、欧州の事例を出し、ドイツやイギリスが陸軍兵力を大幅に削減して冷戦型の編成から重装備を削り機動力を増強させる形で世界規模での脅威に対応させることが可能となるような体制への再編を行っている旨を紹介し、日本も冷戦型の編成からの脱却が必要だ、という発言がある事も確かです。

Img_2222  しかし、日本周辺の情勢はこれまでの記載しましたように、冷戦時代最大の脅威であり縮小傾向にあった北方の脅威が昨今の大型水上戦闘艦の航行や戦略爆撃機の出現として再度増加の傾向にあり、そこに冷戦時代はあまり大きな脅威では無かった中国が海空軍の勢力を増大させ日本周辺での行動が活性化、朝鮮半島情勢も予断を許さないものとなっており、冷戦型の延長上にある、という状況を忘れてはなりません。

Img_7547  仮に恒久法を制定したとして、自衛艦隊の編成をどうするのか、という問題があります。かつてはシーレーン防衛を自衛艦隊、沿岸警備と基地機能を維持を横須賀、佐世保、舞鶴、呉、大湊に置かれた地方隊が対応していて、護衛艦の数も、大型艦と小型艦の違いはありましたが均衡していました。しかし、現在では護衛艦は全て護衛艦隊に集約されているという状況があります。

Img_0847  ここに地域を区切らずシーレーン防衛を行う、という恒久法を制定するのならば、護衛艦隊が分散したのちに沿岸警備を行うために地方隊の再編、という事を本格的に検討しなければならなくなるでしょう。しかし、護衛艦定数は約60隻の時代から地方隊を縮減した事で大型化はしたのですが、現在の定数は40隻台、かなり縮減されています。

Img_6256  恒久法を制定して任務範囲を増大させるのならば、海上自衛隊がこれまでにない広い地域で任務に当たる場合に、補給艦を含めたロジスティクスはどのように行うのか、艦隊防空を含めた対処が必要な脅威が生じた際にどのように実施するのか、広域化する任務と本土防衛をどのようにして両立するのか、という事が明確となっていない理念先行型、というようにも思えてきます。

Img_6870  これは表現は編ですが、防衛政策のバラマキを行って防衛政策の担当能力を無理やり見せているようにしか見えません。任務増大任務増大しかし予算的人的裏付けなし、これは財源のめどを立てずに行った鳩山政権時代の福祉バラマキ政策と余り変わりません。どういう任務にはどのくらいの規模の部隊や人員が必要になるのか、防衛大綱に盛り込んだうえでの発言が必要でしょう。少なくとも、今回の発言に際して、必要な部隊の編成と予算措置を行う、という一言は付け加えてほしかったですね。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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平成22年度日米豪共同訓練6月21日~25日に実施 原子力空母等艦艇17隻が参加 

2010-06-19 23:33:44 | 防衛・安全保障

◆沖縄周辺海域にて対潜戦・対水上戦訓練

 ワールドカップが盛り上がっている昨今ですが、海上幕僚監部報道発表では、沖縄周辺海域にて21日から25日まで、多数の艦艇が参加し日米豪共同訓練が実施されるとのことです。

Img_6430  日米豪共同訓練は平成19年度から実施されている日米豪三カ国訓練で、前回から現在の日米豪共同訓練と名称が決まりました。平成19年度から数え演習は今回で第三回とのことです。訓練統裁官は、日本側が第2護衛隊群司令大塚海夫海将補、米海軍・豪海軍側が第五空母群司令ダン クロイド海軍少将。

Img_5312  参加部隊の規模は原子力空母を含む17隻でその内訳は以下の通り。海上自衛隊からは護衛艦4隻、ミサイル艇1隻、潜水艦2隻と航空機数機。米海軍からは原子力空母1隻、巡洋艦1隻、駆逐艦7隻、潜水艦3隻、航空機数機、豪空軍からは航空機1機が参加予定と発表されています。

Img_7164  航空機数機、とありますが、原子力空母が参加する米海軍でも数機、と発表されていますので、第五空母航空団の空母艦載機や海上自衛隊の艦載回転翼航空機などは含まれず、数機、というのはP-3C哨戒機のような陸上の航空基地から運用される機体を想定しているものと考えられます。

Img_6971  海上自衛隊によれば、19日から28日にかけて豪州空軍の派遣部隊が那覇航空基地に展開するため第5航空群が司令中園博文1佐以下ホストスコードロンとして対応する旨発表されています。それによれば、豪州からは第10航空隊司令のマイケルジャンセン空軍中佐が指揮官として展開、AP-3C、C-130J各1機が展開しているとのことです。

Img_6731_1  訓練が実施されるのは沖縄周辺海域で、先日中国海軍による潜水艦を含む大規模な演習が実施された海域と重なり、台湾海峡を含めた日本周辺での不安定要素に対する日米豪の協同体制を確保するとともに、当該地域での軍事的な冒険を抑制させるための訓練である、と考えられます。

Img_6808  米海軍の潜水艦は全て原子力推進となっていますので、原潜3隻と海上自衛隊の通常動力潜水艦2隻が参加し、対潜訓練が実施、日本の周辺ではロシア海軍と中国海軍が混成運用を行っており、特にロシア海軍では長距離対艦ミサイル攻撃に先んじて前方に進出しての情報収集などを実施する事が多く、その対処の訓練を行うのでしょう。

Img_6812  訓練にはミサイル艇が参加していますが、ミサイル艇は打撃力に対して防御力が低く、見通しの利く大洋ではまったく用途が限られる一方で沿岸や島嶼部においては最初の一撃を加えることが出来ます。しかし、米海軍はこの種の艦艇を有していませんし、豪州海軍についても同様です。しかし、海上自衛隊は地方隊が少数を運用しており、中国、北朝鮮、ロシアは多数を運用していますので、対処法の訓練は重要です。

Img_5802  米海軍の駆逐艦、巡洋艦は現役のものは全てイージスシステムを搭載していますので、その対空戦闘能力は特筆すべきものがあります。一方で、海上自衛隊の護衛艦とはデータリンクで共同交戦能力がありますので、この種の訓練は有事の際に日米が一体となって危機に対処するうえで意義があります。

Img_5595  一方、豪州海軍からは一隻も参加していない、というのは少々不思議にも思います。豪州艦は海上自衛隊や米海軍の艦艇よりも小型ですが、コリンズ級潜水艦等の参加は期待していました。しかし、米海軍のイージス艦だけで8隻、そこに空母航空団の母艦である原子力空母が参加するというだけで、訓練はかなり大規模になるものですね。

Img_5921  こういう一点を見ますと海上自衛隊もDDHの運用で、その種の補完的要素、護衛艦だけに留まらない運用が出来るようになれば、と思ったりもします次第。航空自衛隊のエアカバーが、という言い方も出来るのでしょうが、航空自衛隊の戦闘機にはそこまで数的余裕はありませんし、なによりどこまで統合運用を希求しようとも航空自衛隊が海上自衛隊の運用を完全に理解することは無理でしょう。まあ、四個飛行隊程度の基地航空隊を独自に運用してもいいやもしれませんが、こちらの方が難しいでしょう。

Img_5214  中国海軍が活性化して、冷戦時代では考えにくかった西方からの脅威が及んでいる中、日本周辺海域は中国が思い通りになる海域ではないという事を示すとともに、思い出せばロシア海軍がボストーク2010演習を極東地区で実施しており、これに対するカウンターバランスとしての意味合いも大きいのでしょうね。

HARUNA

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長島防衛政務官、インド洋給油支援再開を提言 ワシントン講演会にて発言

2010-06-18 22:54:07 | 国際・政治

◆任務増ならば見合った人的予算的配慮を

 長島防衛政務次官が講演でインド洋での給油支援の再開を示唆する発言を行いました。長島氏は米軍再編などの著書を通じて民主党では比較的、防衛に関する知識に長けた代議士として知られています。

Img_7042  本日は民主党と自民党のマニフェスト/政権公約を比較する予定でしたが、こちらの方が大きな話題ですので掲載です。民主党マニフェストですが、具体的な安全保障に関する内容が盛り込まれるという展望に若干期待していたのですが、観てみると失望しました。自民党の政権公約は細部に入り過ぎていて少々失敗のようにも見えましたが、民主党のものは理念理想先行型、鳩山内閣時代に制定されたものを若干手直ししたという事が明白でちょっと残念でした。

Img_0247  時事通信から引用:インド洋給油の再開検討を=菅首相は「現実主義者」-防衛政務官 【ワシントン時事】長島昭久防衛政務官は17日、ワシントン市内で開かれた日米関係のセミナーで講演、日本の安全保障政策に関し、「自衛隊は海外での活動から手を引いてはならない」と述べた上で、インド洋での海上自衛隊による給油活動の再開を検討すべきだとの考えを示した。

Img_1287  また、菅直人首相と鳩山由紀夫前首相のタイプの違いについて「鳩山さんは夢想家で、菅さんは現実主義者といわれている」と指摘。菅首相は米軍普天間飛行場移設に関する先の共同声明を完全に引き継ぎ、重要な外交政策では非常に現実的に行動するはずだと語った。 

Img_1117  一方、同じセミナーで講演したシファー国防次官補代理は、共同声明の発表は日米同盟の成熟を示したとの認識を示すとともに、「平等な同盟関係は米政府が歓迎し、切望するものだ」と強調。普天間代替施設の工法や位置などに関する協議は「8月末までに完了すると確信している」とも述べた。(2010/06/18-09:47)http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010061800208

Img_1687  社会民主党が連立から離脱した事で民主党は安全保障問題への発言の選択肢が増えた、というところでしょうか、その社会民主党も参院選政権公約にて米軍主導の安全保障体制からアジアとの集団安全保障体制に転換する、という最大の禁忌、集団的自衛権の問題に自ら足を踏み込んだあたり政権に参加した事は無意味では無かったとも思えるのですが、出たおかげで民主党では一歩進んだ発言が実現した、という印象です。

Img_6687  注意しなくてはならない一点、今回の長島政務官の発言は民主党議員という立場での発言ですが、インド洋給油支援を再度実施するべき、という自らの理念を述べた、というかたちを採っていて、決して菅直人首相自身がインド洋給油支援再開の検討を行っている、というは立場はとっていません。口述筆記が出ていませんので、どういう文脈で出たのかは想像するほかないのですが、こうした発想が出せた、ということは有意義ですね。

Img_8552  インド洋給油支援の中止は民主党が昨年の衆院選において政権公約として繰り返し提示していたものですが、代わりに実施するとしていたアフガニスタンへのPKO部隊の派遣、まだ民主党は断念していないとのことですけれども、そもそも国連主導の復興人道支援任務を行う事が出来ないほどの治安状態、再度米軍は兵力を集中させていますので間もなく大規模な掃討作戦が実施されるのでしょうか。

Img_9655  こうした状況から現状ではアフガニスタンへ戦闘部隊以外の自衛隊を派遣できるような状況ではありません。そうした中で鳩山政権において、インド洋給油支援中止とアフガニスタン復興支援は連節した複合政策として提示されていたのを大急ぎで無かった事にして、急遽インド洋給油支援のみを今年一月に終了させた、というのは記憶に新しいところです。

Img_5633  しかし、インド洋給油支援の再開を提示したのですけれども、現在のところ、一応鳩山政権時代にハイチPKO,パシフィックパートナーシップ派遣、そしてスーダン派遣が検討されており、自民党時代からの海賊対処任務部隊派遣も継続中、そこで人員充足率の向上が予算で認められなかった訳で、これでは難しいのでは、というのが正直な印象です。日本周辺では南西諸島、台湾海峡、朝鮮半島とロシア軍、冷戦時代と比較して脅威の総量は変わらず、多方向から迫っているという状況です。

Img_5806  充足率を高めてほしい、つまり定員割れの状況下でしく泊している状況をこのままでヨシ、とした民主党なのですが、加えて、補給艦の数も充分では無く、日本周辺の防衛警備を維持しつつ、広域化する任務に必死に対応している、という状況ですので、仕事だけ増やしてその他打つ手なし、では民主党が改めるべき、とした労働環境や過労死の問題と矛盾してしまいます。

Img_2884  それでなくとも、ロシア軍のボストーク2010演習を筆頭にロシア軍の動向が冷戦時代のソ連に匹敵する規模になりつつ、中国海軍の南西諸島での動向が活性化、加えて北朝鮮への弾道ミサイル対処が加えられ、アフリカ沖で海賊から船団を防護しつつ、輸送艦が友愛の為に東南アジアへ展開という状況。インド洋給油支援再開を示唆するのならば、防衛大綱の年末画定に際して、相応の配慮を行う、という補足の一言を加える事が重要でしょう。

HARUNA

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平成二十二年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報3

2010-06-17 23:28:16 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 全国的に梅雨入りですが皆さんいかがお過ごしでしょうか。ほぼ本州の行事はひと段落し、今週末は梅雨のない北海道での行事が中心です。

Img_2280  今週末は参院選のマニフェストや政権公約が出そろう時期なので少し早めに今週末の行事を掲載する事としました。菅総理は消費税率10%に言及しましたが、不景気の際に契機にカンフル剤が必要な時期にそうした措置は逆効果である、とBBCが同じくイギリスの付加価値税増税案に対して日本を反面教師的な扱いで紹介していました。

Img_6388  今週末に行われる最大級の自衛隊関連行事は上富良野駐屯地祭でしょう。上富良野駐屯地は第4特科群のミサイルや重砲部隊に加えて第2師団隷下の第2戦車連隊が駐屯しています。師団の下には機甲師団編成を採る東千歳の第7師団以外は基本的に戦車大隊が配置されるのですが、第2師団は戦車連隊を配置しています。なお第2戦車連隊の写真が無いので第3、第1戦車大隊の写真を掲載。

Img_4237  東西冷戦下、ソ連は太平洋艦隊の拠点が日本海沿岸にあり、艦隊が太平洋に展開するためにはどうしても宗谷海峡か津軽海峡、対馬海峡を通行する必要がありました。このため、ソ連にはサハリンと北海道北部の中間を通る宗谷海峡が戦略的に重要で、米ソが深刻な対立状況となった場合、艦隊を太平洋に展開するために北海道北部を限定占領する可能性があり、第2師団は戦略予備の第7師団と並び装備を強化し備えることが求められたのです。

Img_6783  このため第2戦車連隊は装備が充実いていて、戦車中隊は六個編成、90式戦車と74式戦車を配備しています。第4特科群は、203㍉自走砲を運用する第104特科大隊、第120特科大隊とMLRSを運用する第131特科大隊を基幹としています。加えて第3地対艦ミサイル連隊が置かれているのですがこちらは遠からず縮減対象となる見込みとのこと。

Img_6652  遠軽駐屯地祭、こちらも第2師団隷下の部隊が駐屯しています。遠軽駐屯地に駐屯しているのは第25普通科連隊、四個普通科中隊と対戦車中隊、重迫撃砲中隊を隷下に置いている部隊です。北部方面隊の師団は冷戦時代、一個連隊を装甲車化する事で打撃力を強化しよう、と努めたのですが、第2師団は名寄駐屯地の第3普通科連隊が装甲化されました。

Img_0781  東西冷戦が終結すると、戦車部隊や自走榴弾砲は演習場環境が良い北部方面隊に引き続き重点的言配備されたのですが、普通科部隊の装備は更新が本州の部隊よりも後回しとされ、対戦車部隊に対戦車ミサイルではなく106㍉無反動砲が装備されていたりします。しかし、北方の脅威は再度増大傾向にある事も確かな訳で、この点、現在の能力には興味が尽きません。

Img_9733  美唄駐屯地祭、第11旅団の管区であるこの駐屯地には第2地対艦ミサイル連隊が駐屯しています。この地対艦ミサイル連隊という部隊は冷戦時代、ソ連の脅威に曝されていた日本列島を防護する切り札として編成された部隊で、射程180kmといわれる88式地対艦誘導弾を運用しています。六連装発射器16基を以て一個連隊を編成、96発のミサイルを連続発射可能です。

Img_6462  北海道を中心に現在6個連隊が編成されています。地対艦ミサイルは決戦装備の切り札ですから、坑道掘削機が構築した内陸部の頑丈な掩砲所に射撃寸前まで待機します。ミサイルにはデジタル化された地形図が記憶されていて、発射後巧みに地形を利用し敵レーダーを避けながら海上に進出、上陸船団を洋上で撃破するという運用を採ります。ただし、創立記念行事では実弾射撃は出来ませんので、並ぶミサイルの様子が最大の見どころでしょうか。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

6月20日:上富良野駐屯地創設55周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
6月20日:遠軽駐屯地創設57周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
6月20日:第2地対艦ミサイル連隊創立18周年美唄駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/index.html

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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実質自衛官3500名縮減 増加傾向にある国際協力任務だが実員増は見送り

2010-06-16 23:46:02 | 国際・政治

◆参院本会議代表質問から

 10式戦車が富士学校で報道公開されたとのことで、来月の富士学校祭や再来月の富士総合火力演習で展示されるのか、注目が集まります。 

Img_3838  そんな中、先日参院本会議で自民党の佐藤正久代議士による菅直人総理への代表質問で、自衛隊員の実定員増が見送られ、実質来年度には3500名、佐藤代議士の表現を借りれば千歳基地と三沢基地の定員に匹敵する隊員が減員されるというなかで、任務だけが増大している、という状況をどう考えているのか、という質問が出されましたが、総理は重大性が認識できていなかったようです。

Img_5897  鳩山前総理が首相時代に提唱し、実現した友愛ボートは、カンボジアへ到着したようです。友愛ボートというと、聞こえはアレですが、実任務として友好国へ海上自衛隊の満載排水量14000㌧の輸送艦を派遣して医療活動などに充て、米海軍とともに東南アジアの各国と友好関係の強化させる、というのが友愛ボートの参加している米軍主導のパシフィックパートナーシップ2010の任務です。

Img_0312  また、民主党はスーダンへの陸上自衛隊ヘリコプターの派遣を計画しています。5月上旬に外務省とともにスーダンへ調査団を派遣し、その実現性を模索しました。現在、中央即応集団などから数名が派遣されているスーダンPKOですが、国連平和維持活動スーダン派遣団(UNMIS)が来年一月に実施を支援する選挙に際して、投票箱の輸送を陸上自衛隊のCH-47J/JAが支援する、という構想があります。

Img_2144  こうした新しい派遣計画が立てられる中で自衛隊の海外での任務は継続しています。ソマリア沖海賊対処任務では、海賊の発生が沈静化するという出口は全く見えない状況で粛々と護衛艦が船団護衛にあたり、哨戒機は洋上を警戒、ジプチにおける拠点設営も進められています。

Img_3907  またハイチでの地震からの復興人道支援任務も継続されていて、防衛省HPでは、その活動実績が日々更新されています。それだけではなく忘れられがちですがゴラン高原での輸送支援任務など海外での自衛隊の任務は決して少なくはありません。そこにスーダン派遣となれば、もっともその頃にはハイチでの支援は終了するのでしょうが、要員訓練と補給態勢の確立など問題は多いでしょう。

Img_6437  海外での任務が増大する一方で、日本周辺での脅威は中国海軍による南西諸島周辺での行動や台湾海峡の問題、小康状態ではありますが朝鮮半島の問題、北方に極東ロシア軍の活発な動向があるのですから決して安泰とは言えない状況があります。菅直人総理は早速沖縄問題で、失言をかましてくれましたが、現状を見る限り、国民の生命と財産の安全を見捨てると高らかに宣言してみるか、実員増の覚悟をもつか、必要なようにも思いました次第。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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RED FLAG-Alaska2010 日本から戦闘機・警戒管制機・給油機・輸送機が参加

2010-06-15 22:30:16 | 防衛・安全保障

◆旧COPE THUNDER、最大規模の空軍演習

 アメリカ空軍が実施する多国間空軍演習レッドフラッグアラスカ2010が6月2日から一ヶ月の日程で実施、旧コープサンダー演習として知られるこの演習に航空自衛隊もF-15戦闘機、E-767早期警戒管制機、KC-767空中給油輸送機、C-130H輸送機を参加させています。

Img_7200  航空自衛隊は、高い水準の搭乗員が最高レベルの航空機を駆使し、整備員、管制要員と連携、国内での防衛産業と協同し最大限の高稼働率を以て日本の防空に当たっています。こうして日本に軍事的挑戦を実行へと移さない抑止力を行使しているのですが、果たしてその能力が実戦でどのくらい通じるのか、これを身を以て知るために高度な訓練に参加する必要があります。国内の戦技競技に加え、国内では実行不可能な広大な地域を現場とし、厳しい訓練に向かう必要性がある訳です。

Img_89401  最大規模の実戦を再現する演習として、レッドフラッグアラスカへ今年も航空自衛隊は参加する事となりました。この演習について、朝雲新聞HPに掲載の記事から引用です。6/3日付: ニュース トップ 「レッド・フラッグ・アラスカ」始まる・・・米国アラスカ州のアイルソン、エレメンドルフ両空軍基地と同周辺空域で6月2日から米空軍の演習「レッド・フラッグ・アラスカ」が始まった。

Img_6639  7月2日までの訓練期間中、航空総隊と支援集団各隷下の7空団、警空、1輸空などから、人員約330人、F15戦闘機計6機、E767早期警戒管制機1機、C130H輸送機3機、KC767空中給油・輸送機2機、携SAM追随訓練器材6セットが参加する。空自F15は往路、米空軍の空中給油機から給油を受けながら太平洋を横断。

Img_4439   基地周辺空域で慣熟飛行訓練後、戦術技量と日米共同対処能力の向上を目的に、戦闘計画の立案から発進、帰投までを米空軍のアグレッサー部隊と対抗形式で演練する。今回初参加のKC767空中給油・輸送機による訓練空域での空中給油訓練も行う。空自がアラスカでの米軍演習に参加するのは、「コープサンダー」を含め平成8年度以降、今回で14回目

Img_3631  レッドフラッグは実戦を最大限再現した激しく効果的な訓練により未経験の戦闘機パイロットに戦場での生存技術を教えることが目的の演習で、世界中の航空部隊が参加します。支援部隊は整備要員、航空管制要員だけで約3000、昼夜問わず広大な空域と地域を舞台として実施されます。

Img_8779  訓練参加部隊は10回の任務飛行を通じて事故を防止し戦闘能力の向上を狙います。派遣期間は一ヶ月ですが、演習の中で実際に訓練が連続するのは二週間程度とのことで、一週間程度を通じて空域や地域の慣熟飛行や交歓を行い、二週間の訓練に臨みます。この二週間の厳しさは本当の戦争以上と言われています。

Img_7359  米軍では戦闘機搭乗員が過去の戦訓から実戦における10回の実任務飛行を果たすまでの死傷率が高く、逆に10回の実任務飛行を果たした後には損耗率が劇的に低減されることに着目し、それならば10回の実戦に匹敵する厳しい訓練を、と1975年からこのレッドフラッグ演習を開始しました。

Img_2630  訓練は実戦が訓練の延長と思えるような高度な模擬戦を志向しており、もちろん、ついてこれないような過酷さだけが売りの訓練というのではなく習熟度に応じて難易度が上がるという方針で、あらゆる実戦環境に打ち勝つために、実際に想定される脅威よりも厳しい想定が為されているとのことです。

Img_8924_2  厳しい想定とは、例えば航空優勢確保に加えて化学兵器工場や通信施設の破壊、防空網制圧、指揮能力への打撃や電子戦の訓練が緻密な想定のもとで行われます。特にヴェトナム戦争で和解パイロットが実戦訓練が不十分であったことから多くの損耗を出した事に教訓をもって実施されている訓練です。

Img_3603  ブリーフィングから与えられる訓練や実行、それにより得られるものまで責任を持って実施されます。どんな困難にも実戦で打ち勝つには何が必要か、それがすべてだとのこと。アラスカでの演習は、2006年までコープサンダー演習とされていましたが、このコープサンダーは1976年にネリス空軍基地で行われていたレッドフラッグ演習と同等の規模の実戦演習を太平洋軍で行う事が目的として開始されたのですが、2006年にコープサンダー演習からレッドフラッグアラスカ演習と名を改めました。

Img_9049  日本は1996年からコープサンダー演習への航空自衛隊の参加を開始しています。日本周辺空域で米空軍との訓練を繰り返し、対領空侵犯措置任務でも豊富な経験がある航空自衛隊ですが、演習空域の制約が多いのが日本の難点で、加えて基地周辺の騒音を気にしなくてよいアメリカでの演習には参加の意義が大きいです。

Img_0068  今回、航空自衛隊はKC-767空中給油輸送機を初参加させたのですが、E-767にF-15J,C-130Hと参加航空機の機種は豊富で、かなりの規模を参加させている、という印象です。数百kmの距離で目標を発見し、探知し追跡するE-767の参加は日本の能力を最大限発揮することになりますし、いつかはXC-2がC-2輸送機としてこの演習に参加する事にもなるのでしょうね。

Img_8208  一方でレッドフラッグ演習では全面戦争における戦力投射までを想定した展開が為されていて、化学兵器工場破壊や弾道ミサイルの無力化という想定も盛り込まれているのですから、日本もこうした演習に参加する以上、F-15のような制空戦闘機の重要性は大きい一方で、F-2のような対地攻撃能力のある機体の位置づけも考えるべきなのかな、と。

Img_8162  また、こうした演習に積極的にに参加することで、実際の防衛出動に際して、生存性を高め、能力を最大限に発揮させる事にも繋がるのですけれども、一方で全ての戦闘機部隊、支援戦闘機部隊が対領空侵犯措置任務に就いているという状況、有事の際には損耗、というものを考えなければなりませんので、予備の飛行隊、という概念も演習参加を通じて学ぶとともに、予算を司る政治も、この現実を直視する必要があるのでは、と思ったりします。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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福島県沖地震(2010.06.13)に伴う自衛隊派遣状況 万一に備え航空機部隊が出動

2010-06-14 22:18:41 | 防衛・安全保障

◆有事即応、あまり報道されない自衛隊の対応

 岩手駐屯地祭で第9戦車大隊に新しく配備された96式装輪装甲車2型が式典に参加したそうです。増加装甲が装着、機銃の防盾も近代化され、観閲行進や訓練展示模擬戦に活躍、改編された第9師団の象徴的な車両、といえるでしょう。

Img_8016_1  そんな日曜日ですが、自衛隊が日曜日も関係なく万一の有事、有事には災害も含めてですが、即応態勢を固めている事が象徴されるような事案がありました。東北地方を襲った震度五弱の地震、NHKも緊急報道を組むことは無く、災害派遣要請は出ていませんが、自衛隊は出動していました。本日はその紹介。

Img_9840  自衛隊関連行事では式典を行っている最中、時間帯としては記念行事、観閲行進に引き続く模擬戦が終了し車両の撤収が始まる頃でしょうか、13日1232時に福島県沖でマグニチュード6.2の地震が発生しました。ちょうどお昼時でしたので、ニュース速報をご覧になられた方も多いのではないでしょうか。

Img_5038  インド洋大津波以降、こうした地震災害の度に津波被害を警戒するのですが幸いにして今回も津波被害はありませんでした。福島県相馬市と浪江町で震度五弱、福島市で震度四の揺れが観測されたのですが、けが人などは確認されていないとのことで、東北新幹線が御山~一ノ関間で10分間安全確認の停車、高速道路の50km/h徐行が行われたほか、JR常磐線で運休などがありました。

Img_6327  しかし、防衛省自衛隊では相応の対応を執って被害に備えていました。情報確認が第一、もし局地的な被害があり、出動要請が県知事より発令された場合にも即応できるように地震発生から三分後には防衛省に災害対策連絡室を設置しています。現地からの情報収集と連絡隊でい確保が目的ですね。

Img_7894 十三分後の1245時には福島駐屯地の第44普通科連隊から連絡員2名が車両1両、福島地方協力本部から1名が福島県庁へ出発しました。こうした素早い対応が出来るよう陸上自衛隊の駐屯地では災害即応車両が指定されていて、緊急時にはすぐに自治体や中央との連絡体制を確保できるようになっています。

Img_8214  東北方面隊は情報収集の開始を指示、これに応じて1255時、宮城県仙台市の霞目駐屯地より映像伝送装置を搭載した東北方面航空隊の多用途ヘリコプターUH-1が離陸、上空からの情報収集と画像情報の伝送を開始します。映像伝送装置は方面航空隊にそれぞれ配備されている装備です。

Img_9379  続いて1321時、第6師団隷下の第6飛行隊に所属する多用途ヘリコプターUH-1が山形県東根市の神町駐屯地を離陸、情報収集に入りました。第6飛行隊は福島県に最寄りの飛行隊ということもあり、続いて1434時にも神町駐屯地よりUH-1が情報収集活動のために発進しています。山崩れや路肩陥没、施設被害などを情報収集するのが任務です。

Img_6633  海上自衛隊も情報収集の為に航空集団が情報収集の命令を発令、1321時に厚木航空基地の第4航空群がP-3C哨戒機を発進させました。P-3Cは対潜哨戒機として潜水艦を捜索する目的で調達されたものですが洋上哨戒機として、広い地域を捜索、情報収集することが可能となっています。

Img_11051  航空自衛隊も上空からの情報収集を支援する事となっており、1356時に百里救難隊に所属する救難機U-125Aが茨城県の百里基地を離陸、情報収集活動を実施しました。U-125Aは救難捜索を行うための航空機です。この時点で陸海空自衛隊の航空機が上空から情報収集に当たっていた訳です。

Img_9110  福島県沖を震源とする地震の発生は1232時、自衛隊は即応し情報収集と連絡体制を確立、こうして上空からの情報収集活動が行われたのですが、上空からの被害は確認されず、このため1634時、地震発生から四時間以上が経った事もあり航空機による情報収集活動は終了、航空機は駐屯地、航空基地、基地へと帰投しました。

Img_7256  今回はマグニチュード6.2という規模の地震でしたが、人的被害は報告されていません。しかし、万一の事もある訳ですから、情報収集と災害派遣要請が出された際への準備を日曜日でも当然のように実施、という事は、自衛隊の即応体制の高さを象徴しているような事例、といえるでしょう。あまり報道されない事例ですが、このように日夜災害に備えている訳です。

HARUNA

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修理完了!ヘリコプター搭載護衛艦くらま、母港佐世保基地へ帰港!!

2010-06-13 22:12:59 | 海上自衛隊 催事

◆修理費用7億1000万、16日にも任務復帰

 満タンの日本酒五合瓶と半分は残ってたバーボンのボトルが空になってました。空の境界(違)。何故そんな事が?と思われるでしょうが一本の記事。

Img_7764  護衛艦「くらま」修理を終え、佐世保帰港・・・佐世保港に帰港した護衛艦「くらま」 昨年10月、関門海峡で韓国のコンテナ船と衝突した海上自衛隊佐世保基地(佐世保市)所属の護衛艦「くらま」(5200トン、約270人乗り組み)が12日、船体の主要な修理を終え、佐世保市の佐世保港に帰港した。 

Img_6886  海自佐世保地方総監部によると、長崎市の三菱重工業長崎造船所で1月24日から約4か月半にわたり、大破した艦首部分を修理し、船体を塗装した。今月9日からは、五島沖でエンジンや機器類の試運転を行った。修理費は約7億1000万円という。15日までの最終点検で機能に問題がなければ、16日から通常任務に就く予定。(2010年6月13日  読売新聞http://kyushu.yomiuri.co.jp/local/nagasaki/20100613-OYS1T00332.htm
Img_7893  観艦式から母港佐世保基地への帰路、韓国貨物船カリナスターが九州と本州を隔てた関門海峡において航路を逸脱して、くらま、に衝突。火災を発しました。狭い航路で追い越しを図ったカリナスターが反航する航路に飛びだした事で生じた事故なのですが、くらま、は艦首を大きく破損し、一時は除籍もあり得るのでは、と囁かれ、本当に不安でした。

Img_6766 くらま、といえば京都の北から都を守り、毘沙門天を祀る鞍馬山の名を冠した護衛艦、旧海軍の巡洋戦艦鞍馬を継ぐ艦であると共に、佐世保第2護衛隊群旗艦として名を馳せた一隻、中国原潜対処海上警備行動や第一次インド洋派遣任務部隊旗艦など、先代や鞍馬山の名に恥じない活躍を続ける護衛艦です。

Img_7756  そんな海上自衛隊を代表する護衛艦と言える一隻、しかも幾度も足を運び馴染みのある京都の山の名を冠した一隻が、貨物船に衝突されたという理由で除籍、ともなれば海上自衛隊今後100年の歴史に影を落とします。修理が決定し一安心、そしてその修理が完了し、佐世保に帰港と聞きまして祝杯を挙げました次第。

Img_0024_1  日本の防衛、という観点からも、くらま復帰は重要です。ヘリコプター搭載護衛艦は、潜水艦の天敵である哨戒ヘリコプター多数を運用して、同時に整備することで長期的な対潜哨戒を行う事が出来ます。普通の護衛艦ではヘリコプターを搭載することが出来ても整備能力の面で限界がありました、この点、天敵を多数運用できるヘリコプター搭載護衛艦の意義は大きい訳です。

Img_0138_1  海上自衛隊は、就役後慣熟訓練中の最新鋭艦ひゅうが、そして、しらね、くらま、ひえい、の四隻を運用しているのですが、しらね、は修理中、くらま、も修理中でしたので、有事の際に即応できるのは最古参の、ひえい、だけだった訳ですね。その中で、くらま、は第一線に復帰するのですから意義が大きい訳です。

Img_0046_1  貿易立国であるとともに資源や食糧などを海運に頼る日本としては海洋の自由は死活的利益にかかわる問題です。また第二次大戦中はアジアと日本本土、最終的には朝鮮半島や青函地区の輸送までも潜水艦と機雷により遮断され飢餓線上に追いやられた事で戦争継続が出来なくなった、という歴史があります。日本の繁栄は世界の公共財、日本の安定あってこその世界の繁栄、こういう意味から海上自衛隊の重責は大きい訳です。

Img_0088_1  シーレーンの維持は日本の防衛にとってαでありΩ、そして日本の周辺は多数の潜水艦を運用しつつ海洋の自由という国際公序を理解せず不可解な行動を執る政治主体がある訳で、こうした状況に対処する護衛艦、その中でも歴史と伝統、実績を背負う、くらま、が、ひえい、に加わる、という事は相応の意味がある事でしょう。修理完了おめでとうございます。

HARUNA

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MQ-9リーパー 防衛大綱想定外の任務には防衛大綱枠外の装備を

2010-06-12 23:34:33 | 防衛・安全保障

◆想定外の策源地攻撃と枠外の無人機

 先日友人との会話で少し出たのですけれども、無人機で航空自衛隊や海上自衛隊が飛行隊を編成する場合、これは防衛大綱の定数枠外に置けるのかな、と話題が転じました。

Img_2271  無人機の写真が無くて恐縮なのですが、F-2BにR-2D2を搭載した試作無人型概念展示を掲載。ここでいう無人機は、米軍が運用しているMQ-9リーパーのように偵察任務や監視任務に就く事も出来るのだけれども、必要に応じて対地攻撃や空対空戦闘も実施することが出来る無人機を示します。

Img_9921  MQ-9の場合、JDAMやヘルファイアミサイルを搭載して、例えば策源地攻撃や拠点攻撃に用いることが出来る訳で、遠隔操作により安全な場所から任務に当たる事が出来る訳ですね。さすがにF-2並とは言えませんが、搭載量では誤解を恐れずに表現するならばAH-1S並のものがあります。

Img_2631  無人機について、作戦機を補完する、と書いたのは現在の防衛大綱に基づく戦闘機定数では、日本の周辺に台湾海峡、朝鮮半島、極東ロシア軍という存在を勘案すると、防空任務を完遂しつつ、高度な対地攻撃能力を、というのは少々難しいように考えられるからです。日本列島は広大ですからね。

Img_7869  そしてもう一つは、策源地攻撃というかたちで対地攻撃を行うにしても、日本国内では支援戦闘機を米空軍の部隊並に低空侵攻訓練や射爆撃訓練を行うには充分な演習場や地上上空の演習空域を確保できない、という問題があります。海外で訓練が出来ればいいのですが、それでは防空任務と両立も難しくなりますし。

Img_3412  この点、無人機飛行隊がある程度有人偵察機を補完する情報収集を行えば、作戦遂行が効率的に行えますし、F-2飛行隊の露払いや、可能な限りの打撃を加えることが出来るならば、F-2を始め戦闘機の飛行隊は防空任務と航空優勢確保に専念することが出来ます。もっとも、大型の無人機の保有上限が別途防衛大綱に明記されれば話は変わるのですが、ね。

Img_6154  もっとも、日本が策源地攻撃を行うだろう対象は、陸上自衛隊ほどではないにしろ近代的な防空能力を備えていて、無人機は有人機よりも小型であるからレーダーに捕捉されにくいとはいっても低速で飛行する無人機が任務を遂行できるのか、と問われれば、少々不安になるところもあります。

Img_9321  また、無人機に武装させ飛行させることは現在の無人機が航空法でどのような扱いを受けるのかという事と加え、日本での運用を難しくするやもしれません。都市部に隣接する自衛隊基地は多くありますので都市部上空を爆装した無人機を飛行させるには解決させなければならない面も多いでしょう。

Img_9757  そして、無人機の運用を実現させるために通信支援設備の構築など難しい問題は山積しているのですけれども、現時点で無人機の防衛大綱における上限はするされていないのですから、防衛大綱が制定された際には求められなかった策源地攻撃能力を大綱に明示されていない無人機に求める、というのは一つの選択肢といえるやもしれません。

HARUNA

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平成二十二年度六月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報2

2010-06-11 22:42:28 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今週末の自衛隊関連行事ですが、第二師団創設記念行事旭川駐屯地祭が最も大規模なのでしょうか、ブルイーンパルスも参加するようです。

Img_5521  まず最初に、自衛隊は日本有事に備えるとともにソマリア沖やゴラン高原などで厳しい実任務に就いていますが、現在宮崎県の口蹄疫事案では、都城市に感染が拡大、一時小康状態にあった西都市でも感染が再度確認され、宮崎県職員、全国から派遣された獣医師とともに感染阻止任務に当たっています。この事を忘れずに行事について見てゆきましょう。

Img_5667  自衛隊関連行事ですが、那覇航空基地の第五航空群が創立38周年を迎えます。航空基地祭は行われませんが、佐世保音楽隊により那覇市民会館において演奏会が行われます。入場整理券が必要ですが配布場所などについてはHPをご覧ください。舞鶴音楽隊の演奏を聴いた際には震えました、音楽が本職の方々の演奏です。

Img_4335  第2師団創設記念行事。第2師団は北海道北部の防衛警備及び災害派遣を担当する師団ですが、北海道北部というソ連の圧力を冷戦時代最も受けていた師団です。戦車連隊には90式戦車が配備され、第3普通科連隊は装甲化、特科連隊には99式自走榴弾砲が配備されています。旭川空港に隣接して駐屯地がありますので、この点交通の利便性は高いので、足を運ばれてはいかがでしょうか。

Img_1862  東北町分屯基地、青森県にあるここは三沢基地の分屯基地で第4補給処の分処が置かれているのですが、ここも一般公開されます。行事の規模は大きくは無いようですがチビッコマラソンが行われるとのこと、マラソンに先んじてF-2戦闘機がリモートで参加する、ともいわれています。

Img_0423  岩手駐屯地は第9特科連隊が駐屯している駐屯地です。特科連隊に加えて第9戦車大隊、第9高射特科大隊も駐屯していて、第9師団の打撃力を司る駐屯地です。師団改編を受け、一部は縮小されていますが、特科大隊や戦車中隊の数では本土師団最大級の部隊を維持していました、こちらも出駐屯地祭です。

Img_0728  古河駐屯地、第1施設団本部と関東補給処古河支処、第102施設直接支援大隊が駐屯している駐屯地ですが、こちらでも駐屯地祭が行われます。各種施設装備の観閲行進や訓練展示に加えて、勝田の施設学校から07式機動施設橋が展示されるか、興味がわいてくる行事です。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

6月12日:那覇航空基地創設38周年市民会館音楽の夕べ・・・http://www.mod.go.jp/msdf/naha/VOL00/index.html
6月13日:第2師団創設60周年・旭川駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/2d/
6月13日:東北町分屯基地開庁記念行事・・・http://www.mod.go.jp/asdf/nadf/top/index.htm
6月13日:岩手駐屯地創設53周年記念行事・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/neae/9d/
6月13日:第1施設団創設49周年・古河駐屯地祭・・・http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/kogasta/P3.html

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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