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【防衛情報】F-15J改修全面見直しと米イーグルⅡ,韓国KF-21ボラメ公開と米X-58無人機

2021-05-10 20:00:52 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 ファントムが漸く引退しましたが、数の上では主力である航空自衛隊のF-15Jイーグルは今後どうなるのでしょうか。

 航空自衛隊のF-15戦闘機近代化改修計画が4月7日、全面的に見直しが決定しました。アメリカのボーイング社による改修費用について当初見積もりより大幅に価格が高騰した為で2027年度までに20機を改修する構想は事実上頓挫した構図です。高騰の度合いは当初2019年度と2020年度に802億円を計上、しかしボーイングが追加213億円を要求します。

 ボーイング社は、しかしこの追加213億円でも不充分であるとし2021年度に更なる追加を数百億円規模で要請したい姿勢を示し、岸防衛大臣は計画予算の全体像が見えないとして事実上の全面見直しを要求した構図です。一方、この改修は射程900kmのJASSM-ERミサイル運用能力付与等、事実上の支援戦闘機へ改修する計画でした、この中止は厳しい。

 F-15近代化改修は、初度費として計上された350億円の返還を求めるという、ボーイング社の丼勘定への防衛省の厳しい姿勢を示したものですが、実際この調子で高騰すれば製造終了から30年の既存機改修に新造機並みの予算が求められかねず、妥当な判断でした。そこでF-15について、アメリカ空軍は無理な改修は積み上げず、新造機を代替とするもよう。

 アメリカ空軍はF-15EX戦闘機について公式愛称をイーグルⅡと正式に決定しました。F-15EX戦闘機の第一線納入は3月から開始されていますが、アメリカ空軍は4月7日、フロリダ州のエグリン空軍基地においてイーグルⅡ命名式を挙行、F-15EXはF-15イーグルとF-15Eストライクイーグルとは一線を画する新世代の戦闘爆撃機という位置づけです。

 F-15EX戦闘機はストライクイーグルのカタール空軍仕様最新型であるF-15QAをアメリカ空軍仕様としたものでADCP-IIミッションコンピューター、イーグルパッシヴ&アクティヴ警戒機体自衛システムなどを搭載しており、アメリカ空軍では旧式化と老朽化が進むF-15C戦闘機の後継として先ず79億ドルを投じて76機を取得、144機導入を目指します。

 イーグルⅡはF-35ライトニングⅡと並行して調達される事となりますが、完全なステルス機であり第五世代戦闘機であるF-35に対して、F-15EXはF-15が有する卓越した搭載能力を有し、また機体にはウェポンベイを備えたCFT外装式タンクを備えている事から限定的なステルス性を備え、2020年度予算で8機、2021年度予算では12機が取得されます。

 アメリカ空軍はプラット&ホイットニー社よりF-15EX後期生産用のF-100-PW-229エンジンの提案を受けたとのこと。F-100-PW-229エンジンは既存エンジンを元に整備間隔を4300時間から6000時間に、重整備を7年間隔から10年間隔へ拡張したもので、F-15シリーズ全般に採用されているF-100エンジンの整備治具や補給体系を応用できるとのこと。

 F-100-PW-229エンジンの搭載は第2ロットから第9ロットまでの製造機体へ搭載する提案です。F-15EX戦闘機は老朽化したF-15Cの後継機であり、先ずフロリダ州兵空軍、続いてオレゴン州兵空軍へ配備されます。F-100-PW-229エンジンはF-15EX戦闘機のほかに最新のF-16V戦闘機へも搭載されるエンジンで、世界中のアメリカ空軍基地で整備可能です。

 日本の場合はF-35戦闘機の調達を進めるとともにF-2戦闘機後継機の国産開発が開始されています、実際X-2試験機の飛行試験も実施されており、安易に不可能とは言い切れません。そして継続は力なり、という訳ではありませんが、隣国韓国では実に20年以上の期間を要して国産機を開発しています。F-15に拘らない視点として韓国は参考とすべき点です。

 韓国空軍が開発を進めるKF-X韓国国産戦闘機の試作初号機が4月10日に発表されました。KF-Xはこの発表に際して名称をKF-21ボラメ、と発表されています。KF-Xの開発は2000年に金大中大統領により開始され、事後21年間、丹念に技術開発を構成要素の分野から進めており、T-50等の実績を経て今回試作機の全体が発表されることとなりました。

 KF-21戦闘機は全長が16.9mで全幅は11.2m、全高は4.7mとなっています。エンジンはF414-GE-400Kの双発で最大搭載量は7700kgとなっていまして、エンジン推力はアメリカのF/A-18Eスーパーホーネットと同じですが兵装搭載能力は若干低く抑えられています、ただ、機体形状はステルス性を大きく配慮し、准第五世代戦闘機という位置づけという。

 試作初号機は今後2022年まで地上試験を実施し2022年に初飛行を目指しています。マルチロールファイターという位置づけですが、2028年までに先ず空対空戦闘能力の獲得をめざし40機を量産、対地攻撃能力等を加えた完全型を開発した上で2032年までに更に80機を量産する構想です。KF-X計画にはこれまでに79億ドルの開発費が投じられています。

 第五世代戦闘機、しかし価格が高騰しているのは現実であり、韓国は敢えて准五世代機という中途半端と云われつつも手堅い選択肢でKF-21を開発しています。しかし、もう一つ、無人機という選択肢が。現時点では搭載センサー性能から対航空機戦闘に能力において第四世代戦闘機にも遠く及ばない水準ではありますが、アメリカの挑戦を視てみましょう。

 アメリカ空軍は3月26日、画期的なXQ-58A無人航空機の機内兵装庫発射試験を成功させたとのこと。XQ-58Aはステルス性を有する自律型無人機であるが、画期的な点は高性能化と共に年々機体費用が肥大化している無人航空機体系において、ステルス性を有する安価な汎用機体に必要なセンサーや兵装を搭載するというコンセプトで開発が進められた。

 XQ-58A無人航空機は愛称がカクタス、その初飛行は2019年3月5日、今回の試験でALTIUS-600小型無人航空機を発進させたという。XQ-58A無人航空機は機体単体の製造費が数百万ドル程度とされ、自律飛行可能である設計は、誤解を恐れず概念を示せば子弾投射能力を有するトマホーク巡航ミサイルを往還型としたものといえるかもしれない。

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1 コメント

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Unknown (成層圏)
2021-05-13 20:53:49
これは痛いですが、部品が足りない(イーグル2と共用)ので仕方ないですね。改修できないF15の代わりにスーパーホーネットでも配備できないのでしょうか。
さすがにF3配備までは機体が持たないと思いますので。
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