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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【25】NIFC-CA統合情報網とF-35データリンクMADL

2018-12-03 20:04:36 | 先端軍事テクノロジー
■F-35戦闘機100機追加調達
 海上自衛隊の運用体系を見ますとAV-8攻撃機がイージスシステムに選定優先度で低く想定されて以降、空母艦載機による艦隊防空ではなく、艦隊防空への一要素、という認識が強くなっているようにも。

F-35戦闘機最大100機の増備が決定したとの報道が先週世界を駆け巡り、アルゼンチンブエノスアイレスにて開催のG20会議に併せた日米首脳会談ではトランプ米大統領が安倍総理大臣へF-35戦闘機追加取得へ謝意を表明する一幕がありました。航空自衛隊はこのF-35をF-4戦闘機後継に加え、アナログ配線初期型のF-15J-Pre-MSIP機後継に充てるという。

F-15J後継機へF-35戦闘機採用はほぼ既定路線でした。こういいますのもF-15J初号機の日本到着は1981年と古く後継機選定へ余裕が無い点が一つ。そしてF-35以外の入手可能な第五世代戦闘機が存在しない点が一つ。更に、三菱名古屋FACOとして最終組立施設を日本国内誘致しながら現行導入計画42機での調達終了は費用対効果で有り得ない点が一つ。

護衛艦へ搭載可能であるF-35BとF-35Aを混成で100機導入、との報道ですが留意する点が一つ、これが新防衛大綱へ盛り込まれるかが未知数という点です。防衛大綱は以前、長期的な防衛計画として最短で中期防衛力整備計画二期分の十年先を見越す政治決定でしたが、現在は実質五年毎に見直されています。五年間で100機のF-35取得は、可能であるか。

100機のF-35戦闘機は新防衛大綱へ明示し毎年20機を取得する、現在のF-15J旧式化と国際情勢を考えれば、この程度の施策が必要とも考えますが、F-2戦闘機近代化改修とF-15戦闘機段階近代化改修の費用、更に航空自衛隊だけでもC-2輸送機とE-2D早期警戒機取得という防衛事業が重なる時機であり、更にF-2後継次期戦闘機開発やT-4練習機後継時期と重なる。

防衛大綱と連動する中期防衛力整備計画へF-35戦闘機100機を明記するかは財政上の政治的決定が必要です。ただ、F-35戦闘機は取得費用が100億円を超える故に高価格の報道に対し、F-15戦闘機は導入決定時点で為替レートの関係上一機180億円と云われていましたし、F-2戦闘機も最終的には取得費用80億円へ落ち着きましたが初期は123億円を要した。

ヘリコプター搭載護衛艦へのF-35B運用能力付与、この点については新防衛大綱へ明記される見通しです。注意しなければならないのは、この新防衛大綱明記と上記100機報道を混同しないように、ということ。そして、航空自衛隊が自衛隊基地の他、代替滑走路や地方空港に米軍艦艇等数多いF-35B戦闘機の発着拠点の一つに護衛艦を、という部分です。すると、海上自衛隊が想定するF-35運用とは若干異なる可能性が。

 F-35B戦闘機を固定翼艦上哨戒機としてセンサープラットフォームに用いる。これは現在のSH-60J/K哨戒ヘリコプター運用におけるセンサーノードとしてではなく、早期警戒機のような運用も可能となるかもしれません。具体的にはイージス艦を筆頭に護衛艦から運用される長射程のSM-6艦対空ミサイルの索敵や目標標定と誘導に用いるというもの。

 SM-6艦対空ミサイルの射程は370kmといい、AIM-120空対空ミサイルのレーダーを部分流用しており、終末誘導を必要としない撃ち放しが可能です。しかし、電波は直進するため、イージス艦のSPY-1レーダーでは水平線向こうの低空目標を370kmもの遠距離に渡り探知は出来ません。500km以遠を探知するSPY-1も水平線に隠れた目標は捕捉できない。

 共同交戦能力CECとしてアメリカ海軍ではE-2D早期警戒機へ、SPY-1レーダーの覆域外標定を行う運用を予定、航空自衛隊へ導入されるE-2Dについても当初は予算面からCEC関連機材を後日装備とする方針でしたが、最終的にCEC器材搭載へ転換しています。もちろんCECは包括情報優位を期したもの、このSM-6誘導は単なる一端に過ぎないのですが。

 CEC能力をF-35B戦闘機に対応させる事は出来ないか、この視点はアメリカ海軍において2016年から試験中です。理由はF-35B戦闘機の運用に在ります。海軍はニミッツ級原子力空母と新型のジェラルドフォード級原子力空母に長大な航続距離を誇るF-35C戦闘機とE-2D早期警戒機を運用する方針ですが、F-35Bは空母の他に強襲揚陸艦でも運用される。

 ワスプ級強襲揚陸艦やアメリカ級強襲揚陸艦、F-35Bは現在、佐世保基地に前方展開している強襲揚陸艦ワスプ艦上において運用中です。これは制海艦運用といい、垂直離着陸可能なAV-8攻撃機が導入された際にも研究された揚陸艦の軽空母運用なのですが、アメリカ海軍では巨大化高コスト化を続ける原子力空母を補完する装備として再認識されています。

 E-2D早期警戒機、航空自衛隊もE-2C早期警戒機の後継機として採用する、アメリカ海軍の将来空母艦載早期警戒機の主力となる空飛ぶレーダーサイトですが、しかし、発艦に艦上30ノット以上の速力にて蒸気カタパルトから発進する必要があり、蒸気カタパルトを搭載せず、速力も両用戦艦であり航空母艦ではない強襲揚陸艦は22ノット、運用できません。

 F-35B戦闘機に限定的な早期警戒機としての運用は可能ではないか、そうしなければ独立運用が難しい。アメリカ海兵隊は2016年よりニューメキシコ州海軍試験施設においてF-35B戦闘機情報をイージスシステムと連接させる評価試験が開始され、標的機に対しSM-6ミサイルの標定と捕捉追尾に中間指令誘導へF-35Bを用いる試験を成功させました。

 MiG-31戦闘機やF-14戦闘機等、戦闘機を早期警戒機として用いる事例は皆無ではありません。MiG-31は広大なソ連領空を防空するべく飛行中隊規模でレーダーネットワークを形成し空中警戒へデータリンク機能がありますし、イラン空軍のF-14Aはイランイラク戦争中、優れたレーダー機能を利用し一種の空中警戒機として運用された事例があるのです。

 センサープラットフォームとしてのF-35Bはもう少し先進的で、NIFC-CA海軍統合火器管制情報網とF-35用多機能データリンクシステムMADLを連接させ、艦隊の一部として運用させる事が可能です。センサープラットフォームというよりも海軍では一歩進んだ情報連携能力へネットワークセントリック、という表現でF-35の有用性を強調している程です。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-12-03 22:19:18
導入決定の42機を含めて100機なのか、追加が100機で合計142機なのか、142機なら日本はイギリスの138機を超えて世界第二のライトニング国となる
Unknown (軍事オタク)
2018-12-04 11:34:11
賛成です!
F-35Bの可能性は広いですよね。
ヘリとでは次元が違う。

ただ、尊敬する
織田元空将はF-35B不要論者です。

航続距離は短い、重い、機動性は悪い、積載量も小さくなる機体を何故買うのか!
と話されています。

確かに空自目線からすれば
スクランブルで要撃戦闘に優れた最高機種が欲しいのはわかりますが、
遠方洋上での防空や敵艦隊索敵攻撃能力、
遠方や上陸支援敵攻撃能力等を考えれば艦載戦闘機があるのと無いのでは大人と子供の違いがある。
是非装備運用して頂きたいですね。

いずも級以外にも、F-35B装備の空母や多目的母艦を保有して頂きたいものです。

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