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北大路機関

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インド初の国産空母ヴィグラント進水式を挙行、2018年就役と空母四隻体制整備へ前進

2013-08-13 23:45:43 | 先端軍事テクノロジー

◆戦後アジアの空母先進国インドの挑戦

 インド海軍は12日、初の国産空母ヴィグラントの進水式をコチ造船所において挙行し、満載排水量37500tの船体が海へと進みました。

Vimg_4089 我が国は世界初の新造空母鳳翔を91年前の1922年に就役させ、世界海軍史における空母運用の先進国として第二次大戦を戦い抜きました。しかし、一時期は世界最大の空母部隊を有した帝国海軍は第二次大戦の敗戦と共に航空母艦運用に終止符を打ち、1970年代より漸く洋上航空部隊の再構築に着手、全通飛行甲板型護衛艦という新しい運用体系確立は2010年代を待たねばなりませんでした。他方、アジアでは第二次大戦後早い時期から海軍空母戦力に着手した国があります。

Vimg_4675 インド海軍がそれにあたり、1961年にイギリス海軍より満載排水量19500tのマジェスティック級軽空母ハーキュリーズを導入、空母ヴィクラントとして運用を開始、シーホーク艦上戦闘機などを搭載し、印パ戦争における洋上航空打撃力の担いなど、実戦経験を積み重ねました。1985年にはイギリスより満載排水量28000tの空母ハーミーズを取得、ヴィラートと改名し、シーハリアー攻撃機の導入などにより空母二隻体制を確立しました。オーストラリア海軍などが中古空母を一時期運用したことはありますが、その後断絶し、こうした中でインドは戦後アジア最大の空母運用実績を有するといっても過言ではありません。

Vimg_2705 インド海軍は1989年に既存のイギリス製中古空母の代替艦建造計画を発表、1991年には予算不足からイタリア製11000t級軽空母の導入計画へ下方修正しましたが、1997年に17000t級軽空母計画を海軍が内閣へ打診、紆余曲折を経て内閣は1999年に24000t乃至32000tの空母建造を承認、2001年に一隻5億ドルの予算で新空母の建造が決定します。加えてインド海軍は良好な関係が続くロシア海軍との間で、火災事故により保管状態にあった空母アドミラルゴルシコフを正規空母へ改修し、MiG-29艦載機を運用する空母の導入契約を妥結、こちらは空母ヴィクラマディーチャとして遠からず就役します。

Vimg_4688 インド海軍の空母ヴィクラントは、先代のイギリス空母ハーキュリーズの後身から二代目となり、国産戦闘機テジャス艦載型やMiG-29艦載型などを運用する計画です。ただ、2002年に空母の概要は決定しましたが、設計などでフランスのDCNS社やイタリアのフィンカンティエーリ社からの技術支援を受けたにもかかわらず技術的困難に直面し起工式は2009年にずれ込み、建造費は22億ドルまで高騰、当初は2015年就役を見込んで建造が進められていましたが早くとも2018年頃に就役する建造度合となっているもよう。

Vimg_1943 これにより、当面はロシアから導入する空母ヴィクラマディーチャが現在のヴィラートとともに二隻体制を構築し、2019年にヴィラートの除籍が予定されていることからヴィグラントがヴィラートを置き換え、空母二隻体制を維持することになります。また、今回進水式を迎えた空母ヴィグラントは、ヴィグラント級空母の一番艦となり、二番艦と三番艦の建造が計画されており、二番艦以降は満載排水量60000t規模へ大型化が為されるとのことですから、拡大改良型となります。ヴィグラントの建造費高騰から、実現時期は未知数ながら、アジア最大規模の空母運用国としての地位を固めてゆくことでしょう。

Vimg_0567 現在、海上自衛隊ではヘリコプター搭載護衛艦いずも型が建造されていますが2012年12月のインド海軍ジョシ海軍参謀長の発言として、インド海軍は中国海軍のインド洋進出を注視しており、必要であれば艦隊を南シナ海へ派遣し、哨戒任務を行う可能性を示唆しました。インドは1950年に隣国のチベットが中国軍に武力併合されて以来警戒を強めており、この危惧は杞憂に終わらず1962年に中国軍の侵攻を受け中印国境紛争が勃発、奇襲攻撃を受けインド軍は三千以上の戦死者を出す事態となりました。

Vimg_4701 こうしてインドは中国に対し最大の警戒を払う中、インド洋沿岸に中国海軍が進出し、パキスタンやミャンマーより海軍基地や泊地の租借を実施、インド海軍はこの緊張下での海軍増強を決意した、というのが今回の空母建造の背景です。インド海軍は前述の通り、自国の技術は未だ途上の水準にあることは否めませんが、同様の中国がロシア製兵器の模倣を行い国際市場に提示したことを受けロシア側より不快感と禁輸措置を受けた事例と対照的に、インドはロシア側との協同により装備開発を進め、今に至ります。

Vimg_4197 他方、インド海軍は昨年、水上戦闘艦四隻と補給艦から成る五隻の艦隊を横須賀基地へ親善訪問させ、我が国との防衛面以外も含めた包括的な関係強化の模索を進めています。海上自衛隊は、満載排水量で4000t以上の外洋航行を想定した大型水上戦闘艦保有数で米海軍に次ぐ世界第二位の規模を維持しており、併せて中国の軍事的圧力に曝されています。防衛協力は我が国の場合憲法上の制約が大きいですが、我が国との関係強化を志向するインドが、航空母艦建造を進めていることは、一つ知識として思考の片隅においても良いかもしれません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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9 コメント

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ヴィクラントⅡnd進水オメ、と盛り上がった横で (専ら読む側)
2013-08-14 20:27:50
ヴィクラントⅡnd進水オメ、と盛り上がった横で
SSKが大爆発orz・・・・・・海軍を極める道は遠大
と痛感(めげる同胞を支え進むことが最高峰の
哀悼と言うものDeath!)
返信する
潜水艦の大爆発事故すら起こすようなインドに空母... (市民の目)
2013-08-15 03:28:08
潜水艦の大爆発事故すら起こすようなインドに空母は早すぎますよ。インドは識字率も低い後進国です。軍拡に金を使うより、国民の福祉や教育にこそ金をつぎ込むのが急務でしょ。
インドの空母保有に反対します。
返信する
市民の目殿 (通りすがりの者)
2013-08-16 00:11:41
市民の目殿

色々とブーメランなコメだな。
あんた所の国は、軍拡に回す金有るなら社会福祉や環境対策に回せよ(爆)
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数年前、仕事でインドに行ったのですが、そこで古... (ジャコップ08)
2013-08-16 10:43:55
数年前、仕事でインドに行ったのですが、そこで古し懐かしシーハリアーの飛行を見ていたく感動した記憶があります。
紆余曲折はあるでしょうが、やはり努力し続ける国はすごいものです。

〉死民の目
誰も頼んでもいないのに毎度毎度釣りネタを投下するのはいいんですけど、「識字率の低い後進国は空母持つな」とか、日本のみならずインドまで貶めるのはやめましょう。
どうせもう人間やめてるんでしょうし無駄だとは思いますけど。
返信する
市民の目 さん へ (厚木基地常連)
2013-08-16 13:02:25
市民の目 さん へ

そうはいいましても、どうも最近は我が日本国の識字率も相当低下しているようで心配です

識字率低下の実例として、あなたは、記事本文に“インド海軍がそれにあたり、1961年にイギリス海軍より満載排水量19500tのマジェスティック級軽空母ハーキュリーズを導入”という一文が読めませんでしたよね

我が国は相当教育や福祉に予算を投入しているのですが、市民の目さんのように未だに文字を読めない方がいるということは、これは早急に手を打たなければならないでしょう

とりあえずあなたは国語の勉強を行うことが急務です、識字率の低下に反対します
返信する
市民の目 へ。 (瀬戸の住人)
2013-08-16 20:16:34
市民の目 へ。

8月13日夜に発生したインドのキロ級潜水艦「シンドゥラクシャク」爆沈事故の発生を喜んでいる様ですが「犠牲者に対して不謹慎」と言う以前に、実は中国海軍も人の事は言えません。
何故なら…。

1.1985年に「夏」級・原子力弾道ミサイル潜水艦の2番艦を事故で喪失したと言われている。
2.中国海軍では「漢」級・原子力攻撃型潜水艦の初期型で放射能漏れが頻発した結果、乗組員の被爆治療の為に専用の病院「海軍409核傷専科医院」まで作ったという事実がある。
3.その「漢」級は5隻建造されたが、建造期間が1968~1990年までの22年間に及んでおり、初期型で相当の不具合が生じたと言われている(放射能漏れだけでなく、雑音レベルが高すぎる、搭載予定の魚3型魚雷の配備遅れ等が指摘されている)。
また、最近でも「宋」級潜水艦の1番艦は1991年に起工したのに、公試で問題点が多発した結果、部隊配備は1999年と8年間もかかっている。
このクラスは登場時、セイルに段差があったものの、その後段差の無い常識的な形状になった事を覚えている方も多いはず。
4.現在、最新鋭原子力弾道ミサイル潜水艦「晋」級は2隻(2007、09年に就役)配備されているが、搭載するJL-2・SLBMが未だ完成していない為、戦力化されておらず、開店休業状態のまま。

以上の様な状況にもかかわらず、軍拡を20年以上も続けている中国こそ、通りすがりの者様が仰っていた様に、軍拡に金を使うよりも、人民の福祉や教育に金を注ぎ込むのが急務じゃないでしょうか?

ついでに言えば、今回の記事にも書かれていますが、インドは航空母艦の運用に関しては、中国よりもはるかに先輩です。幾ら建造計画が遅れているからと言っても、第三次印パ戦争では空母を実戦投入した経験まであるインド海軍に対して「空母は早すぎますよ」と言うのは、事実誤認も甚だしい妄言ですよ(笑)。
返信する
瀬戸の住人への反論 (市民の目)
2013-08-19 14:56:02
瀬戸の住人への反論

私はインド海軍潜水艦の犠牲者を喜んでいません。彼らは文字通り犠牲者です。事故で命を失い、しかもそれがインド政府の政策による犠牲なのですから。二重の意味でかわいそうです。

中国海軍の事を事細かく取り上げていますが、私の発言と中国海軍は全く関係ありません。
勝手に中国の代弁者のように扱い、反中的暴言を私に向けるのはやめなさい。
返信する
市民の目へ (Unknown)
2013-08-19 16:55:45
市民の目へ

横から失礼。
いつも支離滅裂なコメント楽しく読ませてもらっています。
気になったものですから。

反中的暴言を私に向けるのはやめなさい?

ならば沖縄や日本はもとよりインドに対するあんたの暴言はどう説明するんだよ。

返信する
市民の目 様へ。 (瀬戸の住人)
2013-08-19 20:50:04
市民の目 様へ。

返信ありがとうございます。

ただ、今回のあなたの発言に関しては「潜水艦の大爆発事故すら起こすようなインドに空母は早すぎますよ」と書いた時点でアウトだと思いました。
まず、本件の主題であるインドの国産空母と潜水艦の爆発事故に直接の関連があるのかと言う疑問があった上、「インドは識字率も低い後進国です」と続いて述べていたのでは、客観的に見て「不謹慎」かつ「事故(犠牲者、とは書いていない!!)の発生を喜んでいる」と思わざるを得ませんでした。
だから、心の底から皮肉った訳ですが、逆に言えば今回、反論が来た事で私の「皮肉」は図に当たっていたのかなと思っております。

なお私は、今回の潜水艦「シンドゥラクシャク」爆発事故による殉職者に対して、心からご冥福をお祈りする次第です。
ただ、市民の目様とは異なり、彼らは事故で命を失った犠牲者と言うよりは、軍人としての使命を果たしながらも、結果として不幸な事故で命を落とした殉職者であると認識しております。

あと、最後に一言。あなたは「私の発言と中国海軍は全く関係ありません」と言いますが、それでは何故、これまでの投稿で沖縄は日本、フィリピン等に関連する記事の中で、あたかも中国の代弁者の様な発言を繰り返すのか、ご説明頂けないでしょうか。
反中的暴言を向けられるのが嫌なら、今までのあなたの発言を振り返るべきですよ。
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