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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

戦車三〇〇両時代の10式戦車【3】三菱重工と日本戦車産業-300両では維持不能と探る防衛産業継続の選択肢

2023-09-12 20:22:15 | 先端軍事テクノロジー
■戦車-設計開始時900両
 10式戦車について完成した際には戦車定数は600両となっていましたが開発開始当時は1000両が900両に削減されたばかりの頃であり産業として成り立つ余地がありました。

 10式戦車は戦車300両時代を認識して量産しているのか、この疑問は戦車が設計された時点で戦車定数は900両であり、戦闘での損耗があったとしても900両の戦車を量産するには年産30両から40両が必要となりますので、製造中のラインで修理することも、また破損した戦車を増産により置き換えることも可能だったのかもしれません、ただししかし。

 300両となると、年間生産数も予備部品も、戦闘に対応するのかが疑問なのですね。輸出用に自衛隊所要とは別に毎年20両30両を製造しているならば別なのかもしれませんが、そもそも10式戦車は輸出されませんし、自衛隊戦車はアメリカ本土での射撃訓練以外、そもそも海外での多国間共同演習には参加しない、世界で観れば一種の謎の戦車となっている。

 輸出する方法は一応ないには無い、とも思うのですけれども、これは別の機会に整理するとしまして、装備の共通化を考えてみましょう。ロシアのBMPT戦車支援車は考えたものだと、15年以上前でしたか、妙に感心したものですが、結局帯に短し襷に流し、というところでしょうか、ロシア軍がウクライナで焦がした装備を増やしただけとなっていました。

 BMPT,要するに戦車の数を欧州通常戦力削減条約で制限されたロシアがT-72の車体に30mm双連機関砲と各種ミサイルを搭載し戦車を航空攻撃や歩兵の近接攻撃から防護する構想でしたが、砲兵の曳火射撃で破壊されやすいものを上部に集めた、戦車と協同するには難しいものでした。構造上アクティヴ防護装置も搭載出来ず、簡単に破壊されたもよう。

 戦車と装甲戦闘車の部品を共有できれば、と思われるでしょう。いや実際、ドイツのラインメタル社は50tもあるリンクス装甲戦闘車、歩兵の人数が多い分だけ装甲車は一両破壊されると死傷者が戦車複数分となる、こうしたものが開発されています、そのリンクス装甲戦闘車は120mm低圧砲を備えたリンクス120という50tの機動砲を開発したのです。

 リンクス120は、その手があったかという印象で、しかもリンクス装甲戦闘車そのものはオーストラリアの次期装甲戦闘車選定、決定は遅延されましたが韓国のK21装甲戦闘車を改良したレッドバック装甲車を相手に激烈な評価試験を繰り広げていますし、なんとハンガリー軍はリンクスを採用、現地生産も含め装備は輸出実績を積むこととなっています。

 現実をみよう、となりますと陸上自衛隊に驚くほどに装甲戦闘車増産の動きはありません、戦車と共通車体を開発しようという動きは研究されたことさえ聞きません。ロシアのアルマータ共通車両計画、T-14アルマータ戦車は一両もウクライナ侵攻に投入されない理由が謎で嘲笑の的ですが、このほかアメリカの中止されたFCS将来戦闘車計画のような、ね。

 T-14アルマータ戦車はおそらく無人砲塔と車体に乗員を集中防護隔壁内側に収容する方式が、ロシアのカメラ技術ではまだ無人砲塔でまともな戦車戦が行えない、ということなのでしょう。FCS計画についてはアメリカがC-130輸送機での輸送能力に固執したために25tの戦闘重量しか見込めず、70tのM-1A2戦車の代替になり得ないとして中止された。

 FCS計画については、戦車を置き換える機動砲以外は実用化されると思いきや計画そのものが無かったことになりまして驚いたものです。しかしドイツのリンクスについては、まずハンガリーの輸出実績ができましたので、オーストラリアでの採用が実現した場合、なにより不具合続くプーマ装甲戦闘車の代替にドイツ連邦軍が採用した場合には、或いは。

 プーマ装甲戦闘車、不具合が多いことは指摘されていますが、一両あたり邦貨換算4億5000万円を投じてもエンジン不良と砲塔動かず、車内電線火災とを繰り返しており、ドイツ国内ではせっかく1両邦貨換算14億円もする車両を350両もそろえたものの、早期退役させるほかないのだが、8億ユーロを投じてもう一度不具合改修するか、ドイツで議論がある。

 プーマよりもリンクスの方が良いのではないか、もちろんドイツ連邦軍はプーマ装甲戦闘車をその運用体系に内部化してきましたので、いきなり同じドイツ製とはいえクラウスマッファイ社とラインメタル社、特にラインメタル社がプライベートベンチャーにより開発したものという事で抵抗感はあるかもしれません、ただ、採用の可能性はないのか、とも。

 リンクスがドイツに採用され、もし続いてリンクス120が採用された場合には、重装甲の装甲戦闘車を第三世代戦車相当の能力をもつ機動砲とし、戦車に置き換える前例を構築できます、前例ができたならば日本も同様の手段を模索するべきなのかもしれませんが、要するに10式戦車の現在の量産体制ではできることが少ないことは、確かなのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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