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航空防衛作戦部隊論(第五二回):航空防衛再論,緊急発進一一〇〇回時代の戦闘機定数

2017-11-13 20:11:55 | 防衛・安全保障
■再論:現戦闘機二八〇機体制
 総集編では、280機の戦闘機でも運用次第で可能な運用は広がる、としました。しかし、緊急発進が1100回を超える現状では、この状況を継続できるのか、という視点も必要かもしれません。

 航空防衛力、航空自衛隊は2014年の防衛大綱改訂の際、中国航空機の我が国領空接近異常な増大を前に、戦闘機定数を冷戦後初めて増強に転じさせました。しかし、その増強は270機定数を280機としただけにすぎません。冷戦時代の戦闘機定数は350機で、実のところ冷戦時代から財政難を理由に削減し続け、結果、270機にまで減少していただけでした。

 対領空侵犯措置任務戦闘機緊急発進、昨年度は遂に1100回に達し、毎日数回の緊急発進が実施されていたこととなります。冷戦時代にもっとも緊張していた年度でも940回であり、1000回の大台を越えても留まらず1100回となったことは驚きといえるでしょう。今年度は昨年度と比較したならばそれほど大規模な国籍不明機接近という状況にはありません。

 しかし、緊張緩和に至った訳ではなく、そして脅威の空軍力は健在です。周辺国空軍力は引き続き近代化を進めており、脅威という問題では解決していません。航空自衛隊の任務は有事における制空権の維持であり、平時の対領空侵犯措置任務はその一環でしかありません。しかし、対領空侵犯措置任務が平時には最も表面化する戦闘機運用の実数でもある。

 冷戦後は200回を下回ったこともあり、この状況で脅威度の増大を財務当局や有権者へ理解させることは難しいものでした。ただ、難しいから放棄する、という方式は賛同できません、脅威度の増大を認識し航空防衛力の継続的な整備を強調し続けるべきだったといえます。脅威が増大する前に対応する事が理想、この意味で後手に回った事は否めません。

 制空権維持、脅威は質で変動します。例えば、旧型で防空用として戦闘行動半径が大きくはないソ連製MiG21やそのコピー機改造の殲撃7戦闘機が周辺国の主力であった時代ならば、最盛期に4000機の保有数を持っていた中国空軍は日本への脅威とはなりません、なぜならば中国本土から戦闘行動半径を計算した場合に日本全土の大半がその圏外となる。

 しかし、Su-27とそのコピー機などの戦闘行動半径が日本のほぼ全域を覆う戦闘機、J-11等新世代機で我が国領空を経て深部までを戦闘行動半径に納める戦闘機が1000機あれば、それは非常に憂慮すべき脅威といわざるを得ません。4000機の戦闘機でも日本まで到達できない戦闘機ばかりならば脅威ではないが、1000機でも日本に到達できれば脅威そのもの。

 周辺国空軍力は、近代化にあわせ戦闘機を質へと転換し、その質的向上の共通点は戦闘行動半径の増大と、さらに戦闘機装備体系の変容により防空専用機から対地攻撃能力を相応に重視した多用途戦闘機へと転換している共通点があります。現在に防空専用機といえば、アメリカのF-22やF-15C,日本がライセンス生産しているF-15J,ソ連製MiG-31,くらい。

 防空戦闘機が多用途戦闘機に置き換わった事で、航空攻撃を地上に加える機種は増えた、戦闘機の大半は多用途任務に対応するものへと転換しています。このため、この構造そのものに問題点を見いだすつもりはありません、しかし問題点は、この転換にあわせ日本の航空防衛力を270機か280機か、という議論に実に長期間を費やしてしまった点にある。

 戦闘機は集中運用を行い、機動展開能力と分散運用基地などの長期的な防空能力を維持できる体制を構築するならば、280機で対応できる。当方の視点は緊急発進回数が900回台の時点では大丈夫である、との認識でした。しかし、1100回を越え、影響は顕著その脅威を及ぼす航空戦力が更に数的増大を続けている事を考えますと、戦闘機は現状足りません。

北大路機関:はるな くらま
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2 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2017-11-14 13:44:55
那覇空港南側の海を埋めて大幅に拡張して
誘導路も南側にも設けて4個飛行隊25機X4の100機体制にして欲しいですね。
滑走路2本では足らないなら3本へ。
勿論全機シェルター運用で。
築城、新田原等他の基地も田んぼや林等を潰して拡張、シェルタ-運用、
空自飛行隊は全て25機全機シエルター体制ですかね。
16飛行隊25機定数 合計375機+予備+アグレッサー部隊+教育所要なんやかんやで
450機くらいになるかな?
空母用の100機分と岩国沖再度埋め立て+滑走路1本追加は別枠
合わせれば合計550機
Unknown (流線形)
2017-11-16 23:19:34
新田原は、道路と古墳の関係で拡張は厳しいかもしれません。
近い宮崎空港の敷地内には、まだ戦闘機用の小型掩体が残っているんですが、あれにはT4がギリギリ入るかな?無理だなあ…。
重爆用の掩体もまだ残っているんですけど、住宅地の中にあるしね…。
本郷中学校の下にまだ2つとバイパスの脇に1つ、計3つは少なくても残っていると思いますね。
Googleマップでも確認できますよ。
どれ程の強度が保たれているかは疑問ですが…。

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