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航空集団が必要だ!混迷の陸上自衛隊航空部隊再編案【2】各方面隊にヘリコプターを派遣

2019-09-09 20:17:56 | 防衛・安全保障
■ACE航空戦闘隊方式の提案
 航空集団を新編させ整備補給を一元化せねば減少し続けるヘリコプター部隊の全国への運用基盤を維持できない、この前回の視点をもう少し深めましょう。

 陸上自衛隊の減り続けるヘリコプター、最終的には航空集団を創設し各方面隊の方面航空隊へヘリコプター隊、若しくはヘリコプター連隊を配属する方式、というものが現実的でしょう。ヘリコプター連隊から方面隊隷下の師団や旅団飛行隊へ数機づつを方面ヘリコプター分遣隊、という方式で派遣する。要するに現在のNATOで行われる方式のようなもの。

 現実にどの程度のヘリコプターが方面隊に必要であるのか、航空祭の地上展示ではないのですから最低限、部隊が行動を行える規模を確保しなければ、方面隊は隷下の師団に対し航空支援を行う事が出来ません。すると、一つの実績ある参考としてアメリカ海兵隊のMEU海兵遠征群、その隷下に置かれている航空部隊の保有数が挙げられるかもしれません。

 MEU海兵遠征群のACE航空戦闘隊はAH-1Z攻撃ヘリコプター4機、UH-1Y軽輸送ヘリコプター3機、MV-22可動翼機12機、CH-53G重輸送ヘリコプター6機、F-35B戦闘機6機、以上31機を定数としています。この定数をそのまま陸上自衛隊へ、という訳ではありませんが、MEUは海兵大隊を中心とした海兵大隊戦闘群という諸兵科連合部隊である。

 このうち航空部隊は海兵大隊C中隊が空中機動専門部隊、つまり一個中隊を空輸しつつ戦域優勢を確保する上での必要な定数として、この航空部隊を編成しています。即応機動連隊や中央即応連隊など、即応を冠した部隊は陸上自衛隊へ徐々に創設されていますが、海兵隊の即応はローテーションで中隊を集約しており即応の意味合いが日米で根本から違う。

 もともと陸上自衛隊方面航空部隊は一個普通科中隊の空中機動を主眼に、突き詰めれば西部方面隊が冷戦時代に対馬へ一個中隊を増援へ派遣することを念頭に多用途ヘリコプターの定数などが算定されていまして、MEUの航空戦闘部隊航空機定数、一応参考となる部分は多いよう考えます。ACE航空戦闘部隊を念頭に、中央と第一線の関係は構築できないか。

 ACEを参考、陸上自衛隊へも現在水陸機動団用に導入が決定しているMV-22の17機に加え更に多数を、と提言するつもりはありません。航空自衛隊に導入予定のF-35Bを方面航空隊へ有事の際に編入というつもりもありません、AH-64DのつぎはAH-1Zにしようというつもりもありません。参考としたいのは定数のほう、機数により可能な任務について。

 要するに航空集団を中央へ置き、パッケージ化された部隊を分遣するということ。OH-1観測ヘリコプター3機、UH-1J多用途ヘリコプター12機、AH-1S/AH-64D戦闘ヘリコプター5機、CH-47J/JA輸送ヘリコプター3機、こうしたところか。ACE航空戦闘部隊と比較しますと、UH-1JとMV-22では速力が段違い、AH-1SとAH-1Zでは世代が二つ違い。

 F-35Bにあたる機種はそもそも陸上自衛隊にありません。6機を1単位として、各方面隊へローテーション配置する、という方式を考えたい。陸上総隊隷下にあって、各方面隊は有事の際に統合任務部隊を編成し、その前線指揮にあたります。上記規模の部隊をローテーション方式により即応態勢へ置く事ができるならば、指揮官の裁量を高められるでしょう。

 方面隊隷下師団や旅団の連隊戦闘団をもとに一種のMEU型任務対処能力を付与することもできるでしょう。この規模で充分なのか、という懸念は最後まで残りますが、経済成長が停滞し、社会保障費用が増大する中、政治決定は尊重せねばなりません。ただ、理想を挙げるならば、もう少し、先進国なのですから導入計画の数を責任と共に調達すべきです。

 OH-1観測ヘリコプターの調達が終了し、次期観測ヘリコプターが未定である現在、OH-6Dの後継機はすっぱりと諦め形式廃止し、UH-1Jへ映像伝送装置の配備を強化し観測ヘリコプターの任務を統合するかたちで、UH-1の装備数を大幅に強化するか、MV-22は費用が高く多数配備は無理としても、同程度の人員を輸送可能な機種が導入出来れば、理想的だ。

 MV-22と同程度の輸送力、川崎重工がライセンス生産し海上自衛隊も運用するCH-101か、三菱重工の警視庁が採用しましたS-92あたりを多用途ヘリコプターに充てるのが、理想です。もちろん1:1の比率で置き換えることは不可能ですが、飛行隊定数は、人員輸送能力の大きな機体を導入できれば、少ない機体でも多数を輸送できる事はいうまでもありません。

 NH-90やS-92,理想としては必要な機体なのですが現実的にはUH-2多用途ヘリコプターに収斂するでしょう。可能ならば20機を各方面隊へ配属し、その20機から各師団飛行隊や旅団飛行隊へ分遣隊を派遣する。ただ現在UH-2調達は今年度の7機で来年度要求には盛り込まれず停滞しており、上記の通り12機程度という規模も覚悟せねばならないでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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Unknown (軍事オタク)
2019-09-10 11:12:45
NH-90いいですよね。

UH-60より室内容積が大きくて、室内高さも高いし、
お尻が開くので積載もしやすい。
でも採用しない。

三菱重工でUH-60系が陸海空で実績があって機体の操作性や機動力に優れているのかUH-60系は今後も長く自衛隊に使われるのでしょうね。

S-92もエンジンが2発で3発のCH-101よりずっと整備性が良くなると思うのですが、CH-101も同じような理由で使われていくのでしょうかね。
でも、CH-101は一回り大きいから別のもかな?
3発は心強いし、積載量も大きいかな。
ところで、S-92テールローター折り畳みできるよね?

分遣隊ですか。
今のような編成で必要に応じて派遣する現在の方法でもいいのかな~とも考えていましたが、
どうなんでしょうかね?
もちろん、陸自飛行隊の量と質の更なる充実は希望します。

もしかすると、陸自のMV-22には海自の補給ヘリとしての役割も付与するのではないかと邪推しています。
海自の次期多用途ヘリコプターの調達計画が進まないからです。

遠距離の補給や輸送等はMV-22が海自基地等とDDHの間を飛ぶのかな?と妄想中
陸とは別に海自が予算取って配備してほしいですが・・・

陸自V-22には特殊作戦様に改修された機体も数機配備してくれるものと期待しています(最低6機以上)。
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