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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

現代日本と巡洋艦(第三回):ヘリコプター搭載護衛艦と大型ヘリコプター搭載巡視船

2015-05-04 23:44:04 | 防衛・安全保障
■護衛艦の能力と巡視船の能力
 前回までに線の日本の巡洋艦構想、研究課題となり実現しなかった艦艇の計画などを示してみました。

 ヘリコプター巡洋艦構想はそのままヘリコプター搭載護衛艦はるな型に収まり、その後の巡洋艦隊構想や全通飛行甲板型護衛艦構想は一旦ヘリコプター搭載護衛艦しらね型として完成し、ハリアー等の艦載機導入計画も幾度か検討されたようですが、イージスシステムの導入、イージスシステムはハリアー一個航空隊波の費用を要しますが、代替されたかたち。

 ただ、全通飛行甲板型の艦艇は長くその有用性などが研究され、はるな型護衛艦を置き換えた平成16年度計画護衛艦、いわゆる16DDH、現在の護衛艦ひゅうが型は全通飛行甲板型護衛艦として完成、続く護衛艦いずも型は飛行甲板をさらに大型化させた設計となっており、上記ヘリコプター搭載護衛艦に関する全通飛行甲板研究が反映されているといえるでしょう。

 一方、北大路機関では毎年八月八日を八八艦隊の日、としまして、現在の護衛艦隊機動運用部隊である四個護衛隊群の四個護衛隊に各一隻の全通飛行甲板型護衛艦と弾道ミサイル防衛任務対応イージス艦の配備を、8隻のヘリコプター搭載護衛艦と8隻のイージス艦からなる8個の均一編成の護衛隊編成を提唱してきましたが、示す巡洋艦の方向はこれとはことなるもの。

 将来必要な艦艇、勿論ヘリコプター搭載護衛艦の能力であれば航続距離も大きく多様な航空機を搭載して長期間の運用に対応できるものですが、ヘリコプター搭載護衛艦の数が限られている為、あまり稼動艦を遠隔地に常時遊弋させ、任務へ対応させることは望ましくなく、むしろ本土周辺での対潜戦闘や戦力投射任務等へ備える運用が望ましいでしょう。

 一方、重武装が不要であるならば護衛艦ではなく海上保安庁が運用する巡視船においてこの種の任務は対応できないか、との視点はあり得るでしょう。実際問題、自衛隊のアフリカ沖での海賊対処任務が開始された際、海賊対処法規の成立まで海上警備行動命令の拡大解釈を行い任務を推進して参りましたが、この点へ国会にて一部政党から海上保安庁を充てるべき、との反論がありました。

 結論から先に述べますと、現在の海上保安庁巡視船は、しきしま型の巡視船しきしま、あきつしま、を含め海賊対処任務へ対応することはいくつかの点で難しいといわざるを得ません。一つは、海賊対処が多国間統合任務として実施されているためです、即ち巡視船は護衛艦に搭載されるリンク16に代表されるデータリンク能力を持たないため、多国間の海賊対処へ、円滑に対応するだけの能力をもちません。

 もう一つは、航空機との協同で、海上保安庁の航空機は警備救難情報の独自方式を採用しており、連接し運用できません、航空機を搭載し運用する能力を有していても、水上戦闘艦艇には航空機は艦載装備の延長線上、マストに置くか機上におくかとの違いしかないのに対し、海上保安庁の警備救難船の艦載機は航空機が独立し、いわば陸上飛行場から運用するか、船舶から運用するかの発着場の相違でしかないのです。

 しかし、巡視船しきしま型はOPS-16レーダーなど護衛艦と同等の装備を一部に搭載し、35mm連装機銃か40mm機関砲を2門と20mm多銃身機銃2門など装備が一定水準あり、特殊部隊運用能力と大型ヘリコプター2機を搭載しております。テロリストの攻撃に備えダメージコントロール能力を設計に盛り込むなど巡視船としては破格の高性能といえるものではあります。

北大路機関:はるな
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Unknown (PAN)
2015-05-05 10:13:29
はるな様

またまた、おじゃまいたします。
今回の記事は、前回に差し上げた僕のコメントに対するご回答を意識していただいたと認識しております。まことに痛み入ります。

はるな様が想定される巡洋艦が、海保のしきしま型に近いものであり、それに護衛艦が備えるリンクシステムや航空機連動システム等、足りない部分を補ったものであること。基本的には同意です。
しかし、財政状況が潤沢ではない現在において、海自がそのような限定的な武装しかもたない艦を新たに配備することは、現実的でしょうか?
大は小を兼ねるという例えがありますが、現在のむらさめ型以降の護衛艦で十分に勤まる任務である以上、そのためだけにさらに専用艦艇を建造配備することはないように思います。
(もちろん、海保にこの任務を担えと言ってるわけではありません。海保こそ、日本周辺海域の任務を最優先すべきですから)

また、4個艦隊を八八艦隊として充実を図るべきとのご意見には完全同意です。ただ、ひとつ異なるなと思うのは、まったく能力の等しい4個艦隊をローテーションするのではないのではと思うこと。
対潜や哨戒等の能力を充実させ、日本近海の守りを重視した艦隊が2個群、PKO任務支援などの遠距離作戦遂行能力に長けた艦隊を2個群。という構想が現に進みつつあるんじゃないでしょうか?

というのも、注目すべきは各群の中核となる、2タイプのDDHの性格の違いにあります。よくいずも型はひゅうが型の単なる拡大版との論調が多いようですが、似て非なるものと考えております。

ひゅうが型は、現在の護衛艦すべての中でも最高の対潜能力を備えた戦闘艦です。対潜ヘリの運用能力はもちろんのこと、最高性能のソナーを備え個艦戦闘能力も高く、またESSM+FC-3を持つことで個艦防空能力もかなりハイレベルです。
一方でいずも型は、車両輸送能力や僚船給油能力、高い艦隊司令部機能を備えた多目的艦です。ただし、そのトレードオフとして失ったものは、個艦戦闘能力と個艦防御能力です。
つまり、それぞれに主任務として想定されたものが異なるということではないでしょうか?

そう考えると、海自は2種類の性格をもった艦隊を2個群ずつ持ったことになります。ただ実際には八八艦隊とはいえ、4隻の護衛隊×2ですから、PKO任務等を担うのは、いずも型を中心とした2個護衛隊のローテーション。で残りの6個護衛隊が日本近海の守りにつきます。
本来でしたら、同一能力を持つ艦隊3個のローテーションが望ましいのは、かねてから言われていることですが、現実にはそれを実現しているのは、米海軍のみ。あとの多くの国々が、2艦隊によるローテーション体制です。(ただ、NATOの場合は、多国間でのローテーションも想定されているようですが。)

そういう構想を背景に前回、いずも型を中核とし小回りの利く新型DEを配置した、母船団方式をご提案したしだいです。
(もちろん、有事にはいずも型の艦隊も、日本近海のミッションに参加します。その場合もまた、ひゅうが型とは少々異なるミッション、例えば着上陸作戦支援などの中心となることでしょう)

ぜひ、いずも型母船団方式による海外PKO派遣の是非について、はるな様のご意見をお聞かせください。
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Unknown (市民の目)
2015-05-05 12:05:14
海上保安庁の法律には、海上保安庁を軍隊として扱ってはいけないと書いてあります。海賊討伐には各国の軍隊が対応しており、海上保安庁を使うのはダメです。
海上保安庁が軍事組織でないということにもう少し留意すべきです。例えば尖閣諸島に海上保安庁を使っているのは、軍事組織である海上自衛隊を出せば、中国海軍が尖閣に入ることが許されます。ですから日本は海上保安庁を使っているのです。
返信する
Unknown (ドナルド)
2015-05-05 22:37:36
はるな様

海保の「しきしま」「あきつしま」に、インド洋海賊対処任務ができるかと言われれば、普通にできると思います。

1:おっしゃるネットワークの点は問題ですが、link-16はかなり高価ですが、link-11はそうでもなさそうです(色々な小国海軍でも装備している)。そして、link-11 はまだまだ現役です。

例えば、インド洋任務の「常連」であるNZ海軍のフリゲートは、現時点ではlink-11しか搭載していない。(2-3年以内にlink-16を搭載する予定。しかし、link-11は当面維持し、将来的にlink-22にするよう)

しきしま型にlink-11 (今からなら link-22)を搭載するのは難しくないと思います。link-16は過剰でしょうから不要でしょう。


2:航空機運用について

運用の基準の違いには、正直詳しくないのですが、パキスタン海軍のフリゲートや、シンガポール海軍のLSDも参加しており、少なくとも、全てのヘリがlink16等で連接されている訳ではない。海保もヘリからのTV画像伝送装置等も持っており、ネットが全く繋がっていない訳ではないでしょうし、大きな問題ではないのでは?


3:能力の問題ではなく、忙しさの問題なのでは?

上記のことから、個人的には、インド洋任務は2隻中1隻は、海保の大型巡視船にしてよいと思っていま「した」、特に初期の頃は。

海自の船と比べて、海保の船は簡素で乗組員も少ない。「しきしま」型なら船体も軍艦構造で、兵装の軽さ、戦闘システムの有無以外、つまり海を行く船としての性能には、大きな差は無い(戦う軍艦としての性能は、桁違いですが)。

おそらくはるなさんが本稿で提案される「巡洋艦」はデンマークのアプサロン級のようなものだと思うのですが、それと比べても、安価・効率的で、有効な装備となるでしょう。

さらなるメリットとして、インド洋任務の半分を海保に押し付けることで、海自の負担が半減。防衛費ではなく、交通省予算でできる。1隻を常時展開させるケースでも、「しきしま」型が最低2隻、おそらく3隻は必要で、その建造予算も防衛費枠外。さらに、常時海保+海自の連携作戦を実施することで、自ずと両組織の連携が取れてくる。これは日本の有事対策に極めて重要なことと理解しています。


しかし、尖閣の問題のせいで、いまや海保は海自よりも忙しい組織になってしまいました。海保の増備は急務で、インド洋任務を押し付けているような余裕はありません。


海自にも余裕がある訳ではないので、はるなさんがどのような提案をされるのか、楽しみです。

一つには、DDを2隻貼付ける=6隻ほどを専任にすることになる負担を下げたい。一方で、インド洋任務にあったより軽武装のフリゲート?を新たに建造するにしても、本来の任務=日本近海での実践を考慮してあまり軽武装にもできない。

個人的には満載4000t級で、NZのアンザック級(テカハ級)の近代化版(最近予算が通り、カナダのハリファックス級改相当の船となります)のような軽フリゲートにし、有事にはDDGの防空の傘の下で護衛隊群の一翼を担ったり、米国とのシーレーンの対潜警備などにあたるような船のイメージですが。。。

返信する
海保が (専ら読む側)
2015-05-05 23:32:26
海賊討伐(公船を以て追い回し捕まえる、若しくは駆除する)など行っていると弄する証拠とやらを自慢の鼻で嗅ぎ付け捕まえて来いとしか申せませんな
附記:当方は僭称市民=共産バカと即断
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