北大路機関

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【京都幕間旅情】廬山寺-紫式部邸宅跡,源氏物語創作の聖地に遷座した摂家門跡御黒戸四箇院

2020-03-17 20:15:10 | 写真
■広小路散策路と千年の物語
 散策というものはあまり混雑の無い道を思慮とともに歩み進めるのが風情ですが、其処でも歴史と巡り合うのは日常の香辛料となる。

 廬山寺。上京区寺町通広小路上ル北之辺町の、わかりやすくは御所東に鎮座しています天台系天台圓淨宗本山で単立仏教寺院です。御所東といいますが通り隔て直ぐに御所に接する梨木神社が曲り松の木を青々と讃えていますので本当に御所の隣に位置する寺院です。

 紫式部の邸宅跡として知られます。京都幕間旅情、散策していますと京都には突如として日本史や世界史に関わりの延びる錦糸のような辿れば絹糸から歴史絵巻へと繋がる端緒が道々に静かな次の歴史絵巻を継いでいまして、御所東を散策していまして巡り合ったもの。

 藤原兼輔、堤中納言であり紫式部の曽祖父である人物が此処に邸宅を立てていまして、紫式部の父親藤原為時の時代に書庫を広げたとも伝わります。藤原為時は官位では交換ではありませんでしたが花山天皇漢学侍読を勤めており和魂洋才いや和魂漢才であったという。

 紫式部は山城守藤原宣孝に嫁ぎましたが、藤原兼輔邸宅に暮らし一人娘の賢子をこの地の邸宅で育てたとも伝わりますが幼くして早世し、藤原宣孝も若くして亡くなっています。しかし、藤原道長に請われ朝廷に出仕する事となり藤原為時の和魂漢才を継いで開花する。

 一条天皇中宮彰子、即ち藤原道長の長女なのですが、女房兼家庭教師役として宮中に使え、この頃に源氏物語を執筆したようです。千年と少し前、ここで執筆されていたのですね。千年を超える物語を描いた紫式部、その墓所は今日、北大路堀川の直ぐ近くにあります。

 紫式部の邸宅跡、しかし遺構はなにも残っていません、廬山寺があるのみ。それでもこの周囲であった事は確かなようでして、戦後の昭和40年、紫式部邸堤邸跡として史跡となりました。現在の庭園は昭和期に源氏庭としまして平安朝の栄華を印象付けて作庭したもの。

 慈恵大師、比叡山延暦寺の高僧により、天慶元年即ち938年に建立された廬山寺。いやその建立は紫式部生誕よりも遡るのですが、建立当時は船岡山南麓に在り與願金剛院と称していました。応安元年の1368年に廬山天台講寺と改めているのです。廬山寺の始りです。

 円密戒浄という、天台宗に真言密教と律宗に浄土宗の四宗兼学道場となりました。応仁の乱の頃には幸い船岡山は戦災を免れ、延暦寺との縁も織田信長の比叡山焼討に際しても正親町天皇により女房奉書を経て残りましたが、庵は小さく、豊臣秀吉により寄進がすすむ。

 京都大改造、豊臣秀吉による応仁の乱以降荒廃から抜け出せない京都復興に際し、戦災の色濃い御所周辺に寺町を造営する事となり、廬山天台講寺、この頃は天台宗と他の宗派の調和を図り廬山寺、このお寺も寺町へ遷座する事となり、其処が紫式部邸宅跡地であった。

 仙洞御所の一部を寛政年間の1794年に移築したものが現在の本堂でして、実はこの地も多々火災の災禍に見舞われています。宮中仏事司る御黒戸四箇院というものがありまして、廬山寺、二尊院、般舟院、遣迎院、四院が列せられています。此処そのひとつなのですね。

 御黒戸四箇院は摂家門跡として四院のみでしたが、多くは東京遷都と神仏分離という歴史の転換期に失われ、今は廬山寺が残るのみ。明治初期に再度天台宗に戻りますが、戦後に再度四宗兼学の天台圓淨宗として今に至ります。そして紫式部邸宅跡として有名になる。

 源氏物語、この廬山寺は寺院としてはそれ程大きくは無いのですが、源氏物語を執筆した場所、全篇ではないとしましても着想を得た場所の跡地に建立されているという事実だけでも、何かこう、大きく見えて、歴史浪漫に浸れるような感慨を胸に抱く事が出来ます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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