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北大路機関

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XP-1/P-X 海上自衛隊 次期固定翼哨戒機 2008年最初の試験飛行

2008-02-15 13:37:22 | 北大路機関特別企画

■30万アクセス突破特別企画

 2月13日、相模原市では陸上自衛隊次期主力戦車となる新戦車が報道陣に一般公開されたが、同日、岐阜基地では次期哨戒機の試験飛行が行われ、確かな(?)情報をもとに展開した。ようやく撮影できたXP-1を30万アクセス突破記念記事として掲載したい。

Img_7940  2007年9月28日に初飛行を果たした海上自衛隊次期固定翼哨戒機。川崎重工を主契約企業として技術研究本部が開発を実施。輸入したリベットの欠陥などにより初飛行は計画よりもやや遅れたものの、2月13日には今年に入って初の飛行試験を実施した。四回目(五回目か?)の試験飛行ということで、遠からず海上自衛隊に引き渡されるものといわれている。

Img_7922  岐阜基地に着陸するXP-1と随伴機であるP-3C。最大の相違は双方とも四発機であるが、P-3Cがターボプロップ方式のプロペラ機であるのに対して、XP-1は四発ジェット機であるという点。実用四発ジェット機の国産開発は日本航空史上初の快挙であり、これにより海上自衛隊の航空哨戒能力は大幅に向上する。

Img_7814  ジェット化により、巡航高度はP-3Cの8800㍍から11000㍍となる。無人偵察機グローバルホークは高度10000㍍の位置から120km先に遊弋する水上艦を光学情報として探知することができるとされ、レーダー索敵のように逆探知されない光学機器による哨戒などでは、この高高度飛行性能は大きな威力を発揮する。対艦ミサイルの運用も可能とされるので、水上艦が搭載する最大射程の対空ミサイルをもアウトレンジして攻撃することが可能だ。

Img_7828  巡航速度もP-3Cの620km/hに対してXP-1は830km/h。航続距離は8000kmあり(フェリー航続距離ではなく、実用航続距離といわれる)、対艦ミサイルを運用した洋上阻止任務に用いた場合、戦闘行動半径では旧ソ連のTu-22Mバックファイアを凌駕する。実用試験が最近行われていないとの話を聞くが、航空自衛隊の超音速対艦ミサイルXASM-3が将来的に運用できれば、その能力は大きく向上する。

Img_7833  航空自衛隊との統合運用が強化されれば、近隣諸国で空母機動部隊を有する海軍が、わが国に対して脅威を及ぼした場合でも、低空進入能力を有するF-2支援戦闘機が敵航空母艦をミサイルにより無力化し、洋上航空作戦能力を無力化すれば、水上戦闘艦に対してXP-1が無力化任務を遂行することも可能となる。加えて経空脅威が無い状況では、GPS誘導爆弾JDAMを搭載し、イラク戦争において戦略爆撃機B-52が行ったように携帯対空火器の射程外である成層圏から近接航空支援を行うことも技術的には可能となる。

Img_7854  随伴機として飛行するP-3C.P-3C哨戒機の後継として導入されるXP-1は将来的にはOP-3C画像データ収集機、EP-3電子データ収集機、UP-3D電子戦訓練支援機の後継となるのだろうが、増槽を搭載して航続距離をTu-95ベアやRC-135リベットジョイント並の15000kmに伸ばし、偵察機として運用してみては、と思ったりする。E-2Cの後継機としてレーダーを搭載して早期警戒型としたり、機体後部にあるソノブイ格納部とMADまでの延長部を利用して空中給油機型を開発しては、と考えたりする。

Img_7874  岐阜基地上空をフライパスし、着陸のために旋回するXP-1.『平成19年度防衛予算概算要求の概要』によれば、海上自衛隊航空集団は部隊再編により固定翼哨戒機部隊は四個航空群隷下の8個航空隊を4個航空隊に再編する構想があり、XP-1の生産数は100機を揃えたP-3Cの調達数よりも縮小される計画とされる。それでも70機の調達が構想されており、性能向上を踏まえれば作戦遂行能力はむしろ向上すると考える。

Img_7894  XP-1は、主任務を対潜哨戒、そして洋上哨戒とするが、艦隊間のデータ中継や指揮通信支援など、陸海空自衛隊全般の共同交戦能力発揮にも用いられることとなろう。乗員はP-3Cの11名から13名に増加するとされ、これは多用途化の象徴と考えてもいいのではないか。

Img_7930  現在、米国では米海軍の現用P-3C後継機として次期哨戒機P-8Aの開発が行われている。ボーイング737型旅客機を母体とした機体だけに、様々な電子機器を搭載する余裕があるのだが、対潜哨戒を行う為には、低空を低速飛行する必要があり、航空を経済巡航速度で飛行する双発旅客機を流用するには技術的な問題があり、対潜能力では無人機と併用する苦肉の案を模索している。737Multimission Maritime Aircraftというだけあって、多用途性能は高いのは確かであるが、近年、西太平洋において潜水艦脅威が高まる中、このP-8の対潜哨戒機としての性能ではXP-1に劣っているように思えてならない。また、価格も早期警戒機並、もしくはそれ以上となるようで、米軍でも調達数は108機の調達を計画するに留まっており、開発費高騰から開発は大きく遅延している。

Img_7941  XP-1初撮影は、順光という最高の撮影環境でカメラに収めることが出来た。当日、京都は大雪、こんなんで本当に飛ぶのか、と思いきや東海地方は曇り。午後から雪となったが、XP-1が着陸に向かう瞬間に青空と日光が射してきたことは、運に感謝したい。11日には32万アクセスを突破、お昼には325405アクセスを記録していた。たくさんのアクセスに感謝したい。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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10 コメント

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おお、XP-1ですか。 (ひろ)
2008-02-15 19:55:33
おお、XP-1ですか。
C-Xはいつ飛ぶのでしょうかね(´ー`)

そしてようやくKC-767が到着するようです。一時期昨年の3月に到着すると言われていたような…
返信する
XP-1です (はるな)
2008-02-15 21:20:13
XP-1です

もう、この写真撮る為に何度岐阜の丘陵に展開したか・・・。でも、これで完了です!!

C-Xですが、これは邪推ですが、防衛調達情報をみてゆきますと、エンジン関係の初度調達品が山田洋行絡みですので、その関係があるのかな、と。

KC-767ですが、もうすぐ、だそうで(どこの寿司屋の出前やねん!)。でも、こんどこそ間もなく、だそうです。
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管理人さま (通行人)
2008-02-16 10:01:53
管理人さま

>四回目(五回目か?)の試験飛行ということで、

5回目ですね。昨年は9月に1回、10月に2回、11月に1回飛んでいます
返信する
情報どうもです。 (はるな)
2008-02-16 18:18:55
情報どうもです。

そろそろ海上自衛隊に引渡しでしょうかね!?
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私は、住まいが横浜市戸塚区で、厚木基地に比較的... (矢崎 宏)
2009-07-14 21:37:52
私は、住まいが横浜市戸塚区で、厚木基地に比較的近い為、毎週月火休みには向かいの公園へ見に行くのですが、最近毎日のように1号機と2号機が交互にテスト飛行行ってます。いよいよ実戦の為のテストに入ったようです。このまま順調に進めば、早ければ今年の末には部隊使用認可が下りそうな勢いです。あと3年後にはP-3Cに替わってP-1が当たり前のように飛んでる姿が我が家の近くでも見られることでしょう。
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矢崎 様 はじめまして (はるな)
2009-07-14 22:49:15
矢崎 様 はじめまして

厚木ということは、艦載機も、空母が横須賀に入っている時には相応に発着するところが見れるのでしょうか。

戸塚ということは、大船経由で横須賀も近くなのですね。2号機は一度しか見たこと無いので、あの塗装が実用機の塗装になるのか、ちょっと気になります。

ところで、XP-1がP-1として生産が本格化すれば、生産工場である川崎重工岐阜工場で、現在、P-3Cの整備も行っていますが、これが厚木航空基地隣接の日本飛行機に移りますので、P-3Cの飛行も増えるやもしれませんね。
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Boeing787等の記事に比較して、日本の航空機に関す... (Yukio Hiraiwa)
2010-01-03 00:29:25
Boeing787等の記事に比較して、日本の航空機に関するメーカーや、クライエント等の意見が圧倒的に少ない。このPR不足の慣習を早急に改めないと、国営企業の中国の宣伝や、日本政府の仕分け作業の対象になって航空機産業の衰退を招くのではないか。
常に国民に向かって指針や技術をアピールする努力が必要と思います。
返信する
Yukio Hiraiwa 様 (はるな)
2010-01-04 00:05:41
Yukio Hiraiwa 様

P-1やF-2で培った技術は、それまでの日本航空産業技術の集大成であるとともにボーイング旅客機などへの開発参加を行う場合、大きな技術実績としてバックグラウンドとなっている訳ですから、対外的には評価されているのですよね。

航空産業全般では三菱重工のMRJなど、これから上りがはじまるわけなのですが、防衛航空産業という面では、将来の防衛省需要の不透明さもあり、民需転換を図りたい、という背景があるように見えてきます。

この点、防衛省需要の航空機への参加意義を提示するためにも広報を、国民や代議士に適切に行う必要は大きいでしょうね。
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これでいよいよステルス競争勃発、の印象ですね。 ()
2010-01-30 07:35:50
これでいよいよステルス競争勃発、の印象ですね。

中国も数年以内に必ず初飛行させるでしょう。

そうすると、相手の性能をどれだけ正確に把握するか?
アビオニクス、レーダーの性能の差異が勝負を決めるのでしょう。
まさに格闘技ですね。
ラプターは別格として、わが国です。
実証機をどこの国の戦闘機にも負けないようにするには、

F2を自国で選りすぐれた性能の改良したり、
ユーロファイターの中身を自国製品で改良するという
努力は、将来の
防衛産業技術維持という点で、大変重要になりますね。

とこれではるなさん、日本はエンジン技術が、例えばラプター級の作る技術がないといわれているのですが、

その技術格差を少しでも早く追いつくには、具体的にどのような努力をわが国はしなければいけないと思いますか?
返信する
い 様 こんにちは (はるな)
2010-01-30 11:46:15
い 様 こんにちは

次世代戦闘機を国産するうえで第一に絶対必要なのは政治家の理解、第二に継続的な予算の支出でしょう。毎年500億円ほどエンジン開発やレーダー開発、機体形状の研究に支出すれば、十年ほどで現世代機を開発できる程度に追いつき、二十年で次世代戦闘機を開発できるように技術が錬成できるでしょう。

F-22Aですが、持ち上げられていますけれども、搭載されているF-119エンジンは、高性能ではあるのですけれども、決して新しいエンジンではないのですよね。仰るように今からF-22に対抗できる機体をしまして、二十年を経て2030年に完成したとしても、その時点でF-22は1997年の初飛行から33年を経ていますので、その頃に33年前のアメリカの水準に追いついた!と喜ぶのは、ちょっとナンセンスなのでは、と思います。

大雑把なエンジン推力を並べますと
F-22搭載のF-119エンジンの推力は155880kg
F-35搭載のF-135エンジンの計画値が19000kg
F-15C搭載のF-100PW100の推力が11250kg
F-2搭載のF-110GE129の推力は13430kg
トーネード搭載のRB199-34R-Mk104で7260kg
ラファール搭載のSNECMA M-88-2が7650kg
タイフーンのユーロジェットEJ200で9200kg
ファントム搭載の古いJ-79エンジンが8120kgです。

しかし、高性能な戦闘機用エンジン国産化が成功すれば、武器輸出三原則を緩和したうえで、国際市場にエンジンを供給することで、戦闘機を国産したい他の国々に、という選択肢も生まれてくるかもしれません。

ちなみに、アメリカがF-35の新しいエンジン開発のために提示され、ホワイトハウスが不要として拒否権を行使して中止になった新エンジンの開発費が、確か5億㌦でした。
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