goo blog サービス終了のお知らせ 

北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

大卒・防大卒以外の幹部昇進を制限へ 自衛隊幹部新人事制度導入案を国会提出へ

2010-04-17 23:52:40 | 防衛・安全保障

◆上級曹長制度を新設

 アイスランド南部エイヤフィヤトラヨークトル氷河での火山活動、欧州中部・北部全域に火山灰による航空航路閉鎖の影響がでているようで、火山爆発指数(VEI)は現時点で3以上とのこと、4を越えると今度は農業、畜産業へ影響が懸念されます。話は変わって、本日は時事的話題。過去の最先任上級曹長制度導入は、このための準備だったのでしょうか。

Img_4409 自衛隊幹部 新人事制度導入へ :4月17日 4時36分 ・・・防衛省は、自衛隊幹部の若返りを図る必要があるとして、中学校や高校卒業の自衛官の幹部への昇級を制限するとした新たな人事制度の導入を目指すことになりました。 およそ25万人いる自衛官のうち、「3尉」以上の階級に当たる幹部は4万人余りいますが、終身雇用制度をとっていることから、幹部の平均年齢は、アメリカ軍と比べて7歳高い41歳と、高齢化が課題となっています。

Img_6531  防衛省は、幹部の高齢化がさらに進めば部隊の運用に支障が出かねず、若返りを図る必要があるとして、新たな人事制度の導入を目指すことになりました。それによりますと、現在、おおむね40歳代で幹部に昇級している中学校や高校を卒業した自衛官について、幹部への昇級を制限し、幹部の補佐や小規模の部隊の指揮などに当たる「上級曹長」という階級を新たに設けて処遇することにしています。

Img_1099  これにより、幹部に昇級できるのは、原則として防衛大学校や幹部学校、それに一般の大学を卒業した自衛官に限られることになります。防衛省は、こうした人事制度を来年度から導入するため、夏の概算要求に組織改編に必要な予算額を盛り込んだうえで、来年の通常国会に法律の改正案を提出したいとしています。http://<wbr></wbr>www3.nh<wbr></wbr>k.or.jp<wbr></wbr>/news/h<wbr></wbr>tml/201<wbr></wbr>00417/k<wbr></wbr>1001390<wbr></wbr>4091000<wbr></wbr>.html

Img_6813  幹部学校ではなく、幹部候補学校とNHKは勘違いしているようですが、幹部学校は陸上自衛隊ではCGSなどの教育を行う機関、幹部候補学校は久留米で候補生の教育を行う機関です。自衛隊に曹長という制度ができたのは第二混成団が善通寺に新編された頃の話です。曹長制度ができた頃は一曹の数が多くなりすぎたことで、もう一つの階級を加えた、という経緯がありました。

Img_6907  今回は、原則として中卒、高卒の自衛官を幹部に昇進できないようにする、という前提を加えた上で、上級曹長という階級を新設する、という部分が曹長制度を導入した頃とは異なっています。幹部自衛官へ部内選抜で昇級させる制度について、これを改めるという提案はどうなのでしょうか。

Img_2263  目的は幹部の高齢化、ということが挙げられているのですけれども、戦闘職種であっても経験は相応に能力に反映されるわけなのですし、必ずしも体力が第一、という任務だけが自衛隊の任務ではありません。例えば本部管理中隊や管理業務における幹部自衛官の職務は体力よりも経験が重要になってきます、そこまで年齢というものは大きく反映されるものなのでしょうか。

Img_6525  もう一つ、幹部自衛官への道は開かれている、というものは旧日本軍以来の伝統です。特に将校が諸外国ではいわゆる貴族階級に独占されていたという国が多数を占めていた時代においても、二等兵から将校への道が、非常に狭き門でありながら開かれていたわけでして、これが士気に及ぼした影響というものは証言や回顧録などを読むかぎりあったようです。

Img_6758_1  幹部に昇進しなくとも、例えば米軍の精度のようにプロフェッショナルとしての曹という位置づけが完全に定着していれば問題はないのでしょうが、いきなり導入される上級曹長という制度はそれに当たるのか、議論は充分なされたのか、そして旧軍以来の昇進制度を改めて、という方式では少し不安が残ります。

Img_9600  曹士から幹部へ、という現行の制度にも部内を含め難色は皆無ではないのですけれども、たとえば幹部としての資質などの問題や適性の問題を省みずに進んでしまった場合、こうしたことによる弊害は、もちろん、この種の問題は、どういった組織にとってもあり得ることなのですけれども、自衛隊でも例外ではない、という話は聞きます。しかしだからといって道を閉ざす、という制度上の転換に置き換えてしまうのも考えが浅いのではないでしょうか。

Img_2260  例えば、一等准尉、二等准尉、三等准尉、上級曹長にも最上級曹長制度などを階級に反映させて、制度が定着したのちに、幹部への昇級制度というものを再考する、というかたちでもいいのではないでしょうか。議論を不十分に進める、もしくは制度交渉を充分でないまま進めるというのは将来にリスクを残します。

Img_6738_1  今回、目的の一つに人件費の削減、というものが少しでもあるのならば、考え直すべきでしょう。米軍では司令部付最上級曹長や上級准尉の給与では中佐クラスの給与を支給されているわけで、大きな経験のある兵士というものはそれだけに軍事機構にあっては不可欠な人材、というように考えられているわけです。

Img_2351  もっとも米軍では体力検定などから予備役に落とされる兵士もいるわけなのですから、必ずしも自衛隊と併せて考えることはできないのですが、経験と能力に応じて、国は国防の責務にあたる方へは応じなければならないのであって、幹部への昇級制度を新しい制度でもって絶つのならば、准幹部制度については慎重に考えるべきでしょう。

Img_0888  一方で、諸外国の制度を参考にするというのは、短絡的であるし反対です。人事制度や階級制度はその国の軍事機構の変遷や歴史によって培われた部分が大きいのですから、都合のいい制度をそのまま持ってくると失敗します。もっとも都合のいい制度だけを持ってくる、という事での失敗は必ずしも軍事機構などの制度だけではないのですけれどもね。

Img_2067  曹長から初級幹部へ、部内選抜で昇進したとしても、もちろん、困難はいろいろあります。職域によってこれは事なるのですけれども、艦艇勤務であれば初級幹部よりも先任海曹という立場の方が環境が良い場合もあるでしょうし、幹部となれば転勤が定期的にあります。しかし、そうした困難を乗り越えて、という方は大切にした方がいいのではないか、とも考えます。

Img_1171  もうひとつは、飛行学生制度などの面での昇級制度をどう扱うか、ということです。定義の上では幹部に昇進できないことになるのですが、防大、一般大学出身の搭乗員と、高校からの飛行学生出身の搭乗員とのあいだでの区別、というものがでてくるのか、ということについても少し疑問が湧いてきます。そしてもう一つ、曹と幹部では定年が違ってくるのですが、自衛官経験の長い隊員は管理業務などで欠くことのできない人材、それをあたかも正社員と契約社員のように昇進制度に壁を設け、派遣切りのごとく若い定年で退官させる、ということには無理があるようにも思います。予備役制度が脆弱で、しかも管理業務では軍属にあたる登用方式を採らない自衛隊の制度では、やはり現行制度の維持が重要で、他方、幹部にならないままで准幹部として昇級する制度を構築しないまま、昇進制度を閉ざす、ということには大きな疑問を感じます。日本型としてこれまで培ったものがあるのですから、無理にかえる必要はないのではないでしょうか。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 京王電鉄 2010年に開業... | トップ | 駒門駐屯地創設50周年記念... »
最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
NHKのニュースには誤りがあるようです。 (アイゼンシュタイン)
2010-04-18 12:25:26
NHKのニュースには誤りがあるようです。
ブログ主さまはご存知かと思いますが、曹出身で幹部になるコースには2種類ありますよね。
主として2・3曹くらいで部内幹部候補生(通称I課程)と、曹長・准尉くらいになって選抜される3尉候補者。このうち、廃止が検討されているのは、後者のみだそうです。
平成19年に出された「防衛力の人的側面についての抜本的改革報告書」にも、この点は触れられています。
返信する
横から失礼します。 (アルフォンス)
2010-04-18 14:25:40
横から失礼します。


今回の人事制度改革についてはアイゼンシュタイン様のおっしゃる通りで、海自でいうところの、C幹(いわゆる父っつぁん幹候)の廃止ということで、B2幹部すなわち部内選抜幹部はむしろ採用拡大だそうです。

確かに幹部への昇任意欲がある人はそもそもB幹に行くでしょうし、分先や伍長要員がC幹で抜けてしまうのは大変痛い。(本人も望んでおられないケースが圧倒的に多い)

なので今回の件は個人的には賛成なのですけど、一部、噂で聞こえる准尉の廃止というのはいただけないと思いますね。

それこそ経験を活かす配置が無くなってしまうのではないかと思います。
返信する
こんばんは。 (ウルトラマン)
2010-04-18 22:40:14
こんばんは。

アイゼンシュタインさんが正しいのなら安心しました。
この内容を聞いて情けなかったのでコメントも書くことができないほどでしたから。
まあ、C幹は定年まじかで娘が結婚する時までに幹部で出席するために頑張るというようなデマも聞きますしね。
返信する
アイゼンシュタイン 様 情報どうもです (はるな)
2010-04-19 00:08:04
アイゼンシュタイン 様 情報どうもです

しかし、准尉からの昇進、准尉から1尉までは定年は同じ54歳ですが、管理業務には必要な人材とおもうのですがどうでしょうかね。
返信する
アルフォンス 様 どうもです (はるな)
2010-04-19 00:10:01
アルフォンス 様 どうもです

准尉廃止、という噂があるのですか・・・。むしろ上級曹長制度の上に准尉制度を持ってきた方がメリハリはつくようにも・・・。いわば、自衛隊の表も裏も、社会の世情まで知り尽くしたベテラン隊員を充てる、という意味で・・・。
返信する
ウルトラマン 様 こんばんは (はるな)
2010-04-19 00:10:54
ウルトラマン 様 こんばんは

当方の情報検証の不十分で誤解を招いてしまい申し訳ないです。
返信する
一般大卒学士の資格者を増額し、他の官公庁職員と... (残業ぐるーぷ)
2014-06-06 08:39:15
一般大卒学士の資格者を増額し、他の官公庁職員との交流を増やす。防大校卒者を減、この効果は一流大学卒幹部自衛官を将クラスに引き上げ防衛能力の人的物的戦闘力を強化できる。B幹部すなわち高卒出の30歳前後で幹部になる物達については、知能が大卒者に劣らない人材であり人事の施策に疑問。減した場合、B幹部の起案、指揮の職務を大卒者の幹部がしなければならなくなる事実関係はご存知ですか?減するとA幹部を二倍以上増加しなければなりません。早急に動く必要があるのはC幹部の廃止と幹部の再任用の廃止です、年齢高く人件費が大問題ですよ。
返信する
54歳と55歳の定年退職者の再任用の人件費と幹部の... (正論)
2014-06-06 11:25:26
54歳と55歳の定年退職者の再任用の人件費と幹部の年齢を引き上げる.
ます、俸給賞与については、1尉は309000円毎月受給、賞与は6月は1.10で12月は1.25受給、再任用とならない物で民間企業に就職するだい多数者は俸給がなんと15万円から12万円と再任用者の俸給との格差があることをご存知ですか。広報で目に付く表現に優秀な人材を安く戦力として活用するとありますが、現実はそれらのとおりという人材はいません。ちなみになんとC幹部が多くを占めているのが現実で政府が施行、自衛隊側が考案した施策案を採用しています。ここに大きな矛盾が生じていることをご存知でしょうか。ちなみに2尉で289800円の俸給があります。
結論、若い10代の自衛官を増加して欲しい。人件費を若い将来のある戦える人を増やし、しがみつく再任用幹部を廃止、日本の経済、税金徴収率の向上と年金、健康保険納付率の向上にもつながります。若い人を雇用して日本のために真実を見極めてください。
返信する
54歳と55歳の定年退職者の再任用の人件費と幹部の... (正論)
2014-06-06 11:27:09
54歳と55歳の定年退職者の再任用の人件費と幹部の年齢を引き上げる.
ます、俸給賞与については、1尉は309000円毎月受給、賞与は6月は1.10で12月は1.25受給、再任用とならない物で民間企業に就職するだい多数者は俸給がなんと15万円から12万円と再任用者の俸給との格差があることをご存知ですか。広報で目に付く表現に優秀な人材を安く戦力として活用するとありますが、現実はそれらのとおりという人材はいません。ちなみになんとC幹部が多くを占めているのが現実で政府が施行、自衛隊側が考案した施策案を採用しています。ここに大きな矛盾が生じていることをご存知でしょうか。ちなみに2尉で289800円の俸給があります。
結論、若い10代の自衛官を増加して欲しい。人件費を若い将来のある戦える人を増やし、しがみつく再任用幹部を廃止、日本の経済、税金徴収率の向上と年金、健康保険納付率の向上にもつながります。若い人を雇用して日本のために真実を見極めてください。
返信する
Unknown (ジェームス・ボンド)
2020-06-19 11:11:04
人権侵害の記事だね。優秀な人材を下から昇進させないとバランスが取れないよ。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事