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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

航空防衛作戦部隊論(第四六回):航空防衛力、戦略航空拠点成田国際空港と長期航空戦継続

2017-01-12 21:59:27 | 防衛・安全保障
■国際空港の航空兵站拠点化
 航空防衛作戦部隊論も第四六回を迎えましたが、南西諸島への中国による軍事圧力の増大は、実のところ当方が想定したよりも遥かに緊迫度を増してきまして、沖縄鹿児島上空での限定的な衝突という可能性も現実味を帯びてきました。

 第一回の掲載は2015年7月23日、比較しましても中国軍機による南西諸島での異常な行動は増加傾向にあり、つい先日も爆撃機編隊を南西諸島へ展開との状況、作戦基盤を分散させ第一撃に耐え、防空体制の再構築と航空優勢維持を両立する、という方式でも限界が見えてきました。実際のところ、当方もここまでの状況緊迫化、戦後一貫して良好化の努力を続けてきました日中関係が、中国の周辺国へ継続した拡大路線の前に一蹴される懸念、予見できなかった点は反省の一つ。

 戦略航空拠点、日本本土防空と防空作戦が長期化し、地域的な着上陸の蓋然性が高まった場合には、従来の航空自衛隊飛行場だけでは物資運用拠点を十分確保出来なくなる可能性があります。こうした状況に際し、敵攻撃の圏外に置いて物資集約拠点となり得る飛行場を確保し、戦略輸送と戦術輸送のハブ機能を付与する必要があります、具体的には国際空港の機能を戦略拠点として運用するという方法が考えられるでしょう。

 成田の拠点化、踏み込み過ぎたように思われるかもしれませんが、C-2輸送機により日本本土からアメリカ西海岸を結ぶ航空輸送体制、後方連絡線構築の可能性を示しましたが、航空自衛隊の空輸能力にはどうしても限界があります。専守防衛とする事は外征、周辺地域の安定へ日本からの関与を省くことで軍事費を最小限と出来るのですが、これは税金を節約する分、国民が有事の際に後払いを求められる構図を執る、これが専守防衛の実態です、そこで国内の施設を最大限活用する事となる。

 こうした上で必要となるのが武力攻撃事態法に基づく指定公共企業による空輸支援体制です、民間航空には太平洋を渡る事が可能な機種が相当数蓄積されていまして、旅客機には貨物区画が配置されています、もちろん弾薬などの空輸支援を望むことには制約がありますが、予備部品などの空輸には支援の有無が防空作戦全般を大きく左右する事でしょう。ここで民間航空の輸送能力に協力を仰ぐほか、大陸からの全面攻撃が現実化した場合の現状での航空優勢維持手段は、ない。

 日本貨物航空は貨物輸送型のボーイング747-400Fとボーイング747-8Fを13機運用しています。ボーイング777は777-200ERや777-300等各種機材を合わせ日本航空が41機と全日空が56機、ボーイング767は767-300ERや767-300等を日本航空は42機と全日空が52機、ボーイング787を発注分など含め日本航空は27機と全日空は50機、エアバスA350を日本航空が31機発注しています。

 こうして太平洋を越える事が可能な旅客機と貨物航空機は日本貨物航空と日本航空に全日空の三社を合わせた場合、実に231機に達します。日米安全保障条約に基づく物品相互供与協定を最大限活用するには、国際空港の貨物区画が有する能力と民間航空が有する旅客機及び貨物機の協力が不可欠となるでしょう。

 一方、国際空港の能力を敢えて我が国防衛力へ応用する意味ですが、航空自衛隊補給処の補給物資分配能力には限界があります。物資集積の用語としまして、アイアンマウンテン、というものがありまして、これは有事の際に必要な物資を大量に前方手蓄積するものの輸送能力に処理が追いつかず、積み上げられた物資の山積状況を揶揄したもの。

 現在は電子タグや物流管理システムの導入によりかなり解決されたようですが、それでも急激に物資の必要総量が増大した際には十分とは言切れないものがあります、ただ、これは自衛隊が平時からの大量物資流通、湯時と平時の必要な物資管理能力が異なるために生じたもので、こればかりは経験が無ければ必要な管理体制を構築する事は出来ません。

 平時から兵站と物流管理へ要員を充分配分できれば問題は無いのですが、正面装備に大きな近代化という課題と人員を集約しなければならない状況、やはり、大規模な有事の管理よりも平時の対領空侵犯措置と事態の早期集束への即応能力が重視される事は否めません。そこで、我が国は専守防衛として国土を戦場とし戦い抜く、やむを得ない武力攻撃には他国ではなく自国に戦場を求めるという平和憲法に基づく一国平和主義を標榜しているわけです。

 一方で国土を戦場とするまで具体的措置を禁じた専守防衛と両立して国民の平和的生存権を維持しなければならない、この為にはどうするか。国土に存在する施設は最大限駆使し、国内での損害を最小限にとどめる必要があるでしょう。そこで、貨物流通量が大きく、更に航空攻撃などから脆弱性を最小限とした空港設備ですが、脅威正面の位置にもよりますが、成田国際空港、関西国際空港、中部国際空港、羽田空港、福岡空港、千歳空港等が挙げられるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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