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【榛名備防録】戦艦大和の再検討-新戦艦時代,日本の巨大戦艦はほんとうに無駄であったか

2021-07-31 14:10:38 | 防衛・安全保障
■大和型戦艦と翔鶴型空母
 本日から土曜日午後に第一の記事とは別の土日特集の記事を掲載します。第二記事故に備忘録的な備防録という話題を掲載してみましょう。

 日本海軍は戦艦大和のような戦艦ではなく航空母艦を建造すべきだった、こういう指摘が散見されます。翔鶴型航空母艦の建造費は8450万円、大和型戦艦の建造費は1億3780万円ですので、翔鶴型を2隻から3隻増やせた計算です。すると航空戦隊をもうひとつ増強できた計算となるのですが、一つ忘れてはならないことがあります、新戦艦への対抗だ。

 戦艦は空母艦載機で集中攻撃するならば簡単に撃沈できる、こう理解されている方が多いのですが、冷静に思い出して欲しいのは、真珠湾攻撃以降、日本海軍はアメリカの戦艦を撃沈できていません、空母艦載機で相当叩いていますが、大破にさえ陥っていません。日本の戦艦も第一艦隊を決戦兵力として温存していましたので、1944年末まで同様だ。

 アメリカ海軍の戦艦は新戦艦という、ワシントン海軍軍縮条約失効後に建造された戦艦がかなり数に余裕がありましたので、第一線に進出しているのですが、日本海軍の航空攻撃にかなり耐えているのですよね。ただ、空母艦載機を集中させれば戦艦を撃沈できます、1944年の戦艦武蔵、1945年の戦艦大和、ともにアメリカは充分な数で攻撃しました。

 大和撃沈、アメリカは空母12隻を集中しています。1945年4月7日の坊ノ岬沖海戦には、空母ホーネット、空母ベニントン、軽空母ベローウッド、空母サンジャシント、空母エセックス、空母バンカーヒル、空母ハンコック、軽空母カボット、軽空母バターン、空母ヨークタウン、空母イントレピッド、軽空母ラングレー、これだけ投入しているのです。

 新戦艦、ノースカロライナ級戦艦2隻にサウスダコダ級戦艦4隻、そしてアイオワ級戦艦6隻、アイオワ級の5番艦6番艦は日本が戦艦建造を中断したことで、新戦艦は10隻あれば大和型2隻に対抗できるとして建造中止していますが、空母に随伴しうる高速戦艦が10隻建造されているのですね。実際欧州では空母が巡洋戦艦に追いつかれ撃沈の例もある。

 日本が新戦艦に対抗するには、まさか長門型戦艦を高速改装するにも限度が、船体形状を一新させるには新造と変わらぬ手間、がありますし、新戦艦に対抗しうる速力を持つのは1910年代に建造された金剛型戦艦のみでさすがに古い、すると何らかの新戦艦を建造する必要があるのですよね。大和型を否定でも、代替案が必要で空母ではまだ対抗できない。

 大和型戦艦が大きすぎるという視点を仮に首肯するとしましても、戦艦を全否定するには、日本にアメリカの新戦艦へ対抗する手段を欠くことはリスクが余りに大きい、大和型戦艦の頑丈さと日本海軍航空隊のアメリカ戦艦について、真珠湾攻撃に際して停泊中の戦艦を撃沈した以外の作戦行動中のアメリカ戦艦を撃沈できていない現実をみるべきだと思う。

 加賀型戦艦、ワシントン海軍軍縮条約で建造中止となり一番艦加賀のみ航空母艦に改装され、二番艦土佐は標的艦として沈んでいますが、16インチ砲10門搭載で39900tの高速戦艦、もちろんこの設計は古すぎますので要求性能を維持した上で新設計するというところでしょうか、アメリカの新戦艦に対抗するには最低限、この性能が必要となります。

 ただ、大和型戦艦に代えて仮に加賀型戦艦再設計した艦を建造したとして、それほど建造費が変わるよう思えません。少なくとも建造しても空母の建造費を捻出できるほどは無理で、陽炎型駆逐艦数隻分の節約が限界ではないか、大和型は大蔵省に建造費を秘匿するべく陽炎型駆逐艦の架空建造費を上乗せしました、節約できるのはこのくらいでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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