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南九州口蹄疫感染拡大事案:宮崎県知事による災害派遣要請後の自衛隊対応状況

2010-05-08 23:38:47 | 防衛・安全保障

◆農水省、ヒトへの感染はあり得ない

 宮崎県を中心に広範囲の畜産業に打撃を与えている家畜の伝染病、口蹄疫事案ですが5月1日に宮崎県知事より防衛省へ災害派遣要請が出されていました。この程防衛省より対応状況が発表されたので、紹介します。

Img_4151  4月20日に宮崎県で確認された口蹄疫について、宮崎県は宮崎県口蹄疫防疫対策本部を設置、農政水産部とともに総力を挙げて検査及び感染家畜の殺処分、そして消毒剤の配布など拡大防止措置を行っていたものの、感染拡大が続いていた川南町から、28日には遠く離れた場所えびの市でも感染が確認、同じく28日には川南町にある宮崎県の畜産試験場でも感染が確認されました。個体数も増加の一途をたどり29日までの感染数は2940頭に対し、派遣要請前日には1429頭を新たに対処する必要が生じています。

Img_9756  口蹄疫感染拡大の結果、自治体の殺処分能力を超えた個体が確認され、5月1日1200時、宮崎県知事より都城駐屯地第43普通科連隊に対して災害派遣が要請されました。この要請では、宮崎県より陸上自衛隊に対し、宮崎県児湯群川南町において埋却場所の掘削、殺処分後の死体及び汚染物品の運搬及び埋却、消毒作業の三点の支援を要請しました。この5月1日には感染状況がさらに拡大しています、具体的数字を挙げると新たに3882頭が感染対処を行う必要が新たに生じ、いよいよ大規模拡大の様相を呈しています。

Img_6438  口蹄疫は家畜の伝染病で、水疱が口中や舌部などに発生、これが破裂することで激痛が走り、歩行不能や化膿などにより消耗し、死に至る例があります。ヒトに感染することはありませんし、感染した家畜の肉を食用した場合でもヒトの健康に影響が及ぶ事は無いと農林水産省は発表しています。実は過去にイギリスで感染した家畜と接触したヒトに感染し、死者が出た事もあるようなのですが、日常生活では、水疱の破裂を浴びたりしなければ大丈夫なようです。しかし、この病気の恐ろしいのは飛沫感染することで、10km程度先まで空気感染するということです。

Img_6783  口蹄疫の現状について。宮崎県HPを見ますと、7日までに43の農場において口蹄疫の感染が確認されました。この確認は抽出方式で数頭に対しPCR検査を実施、概ね3~5頭の調査を行うのですが、多い場合全ての検体が感染しているという場合があり、その場合殺処分と汚染物品の埋却、畜舎の消毒を実施します。肉牛繁殖経営、酪農業、養豚業、肉牛肥育経営、種豚等現在までに対応した家畜数は第40例までの58300頭、43例までを含めれば牛3329頭、豚55775頭の計59104頭、確かに災害派遣要請が必要な数値といえるでしょう。

Img_6280  宮崎県知事からの派遣要請を受け、防衛省は陸上自衛隊、航空自衛隊の派遣を決定。北熊本駐屯地第8師団を中心として、都城駐屯地の第43普通科連隊、方面直轄部隊で同じく都城駐屯地に駐屯する第376施設中隊、川内駐屯地の第8施設大隊が陸上自衛隊派遣部隊として任務にあたり、航空自衛隊からは新田原基地に展開する第五航空団から派遣部隊を編成することとなりました。派遣規模は人員100名、車両30両を基本とし、本日までに延べ750名、290両がこの任務へ参加しています。

Img_6656  1日、陸上自衛隊では災害派遣要請に先だって早朝に第8師団司令部、及び第8施設大隊、第43普通科連隊より宮崎県庁へ連絡員が出発。1200時、制式に災害派遣要請が出されました。これを受け1330時に都城駐屯地より先行班10名、車両5両が出発。続いて連隊より派遣部隊本隊が1350時に出発しました、派遣部隊本体は隊員100名、大型トラック×2、油圧ショベル×2、バケットローダ×2、ダンプ×2、小型ドーザ×2という編成です。先行班は1550時に川南町へ、続いて1602時に本隊が到着し、自治体や政府関係者と調整に入りました。

Img_1460  2日、航空自衛隊新田原基地より、連絡員7名が車両2両に分乗し、川南町役場へ出発しました。前日までに展開した第43普通科連隊は、人員60名を以て0835時から第八例が確認された農場において所定の任務を開始、1100時には第13例、及び第15例が確認された農場へ展開、ダンプ×2、油圧ショベル×2、バケットローダ×1、セミトレーラ×4を含む20両の車両を以て掘削作業を開始、任務は夜間まで継続されました。以後、この要領で任務は継続され、交代部隊とともに祭日祝日休日を問わず任務を遂行、本日も任務は実施されています。

Img_3265  農林水産省HPを見ましたらば、第49例まで感染が拡大していると本日2200時の発表にありました。自衛隊以外からも農林水産省職員、都道府県獣医師等から8日までに延べ709名が消毒作業に従事しています。新型インフルエンザの感染拡大は、休校や集会行事などの抑制、公衆衛生呼び掛けと言った迅速な措置により先進国中最も低い死亡率に抑えることが出来ましたが、今回の口蹄疫については、自治体の立ち上がりの早さに対して政府の反応が遅かったように見えまして、政治家の発言ではむしろ野党自民党の方が積極的でした。日本の畜産業の根底を揺るがす事態にも発展し得る訳で、現在も感染拡大阻止に全力を挙げている自治体と自衛隊を的確に支えられ、畜産業の復興を迅速に行えるよう人員、物資、資金の遅滞無い集約と投入を政府には期待したいです。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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2 コメント

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こんにちは。 (ウルトラマン)
2010-05-09 17:04:27
こんにちは。

政治主導の影響でしょう。
ただ、素人の政治家が指揮する政治主導がこの体たらくの原因なのではないでしょうか。
まだ、農水省お抱え議員のほうがましでしたね。
本来なら、農水省が声をあげて議員にせッついて防衛省を動かす。旧自民党ならそうしたでしょう。
でも、民主党にも農業や防衛に詳しい議員はいることはわかっていますからたぶん上層部が・・・・・。
自衛隊のみなさん!御苦労をおかけしますが宜しくお願いいたします。
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ウルトラマン 様 こんばんは (はるな)
2010-05-09 20:02:20
ウルトラマン 様 こんばんは

ううむ、この非常時に地球の裏側まで外遊に行く農水大臣ですから、・・・、なんというか、事の重大さを知らなかっただけ、なのかもしれません。

下手をすれば日本の畜産業が壊滅的な打撃を受けるかもしれないという、文字通り緊急事態。“赤松農林水産大臣は、4月30日から5月8日の間、メキシコ、キューバ、コロンビアを歴訪し、EPA、農業協力等について各国要人と会談しました。 ”と農水省HPに出てました。
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