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陸上防衛作戦部隊論(第十八回):広域師団直轄部隊案、後方支援の師団と旅団

2015-07-08 22:10:45 | 防衛・安全保障
■師団後方支援部隊
広域師団直轄部隊案、後方支援の師団と旅団の関係について。今回は師団と旅団の区分における師団の役割、その他の方面隊後方支援体制と旅団後方支援については次回以降に。

後方支援隊、師団後方支援隊は師団直轄部隊に対する支援に重点を置くべきでしょう。米陸軍では例えば軍団隷下に軍団支援司令部を置き、司令部隷下に装備管理部、機動統制部、3個支援群、輸送大隊、衛生大隊を置き、各支援群は隷下に輸送大隊と整備大隊及び軍団支援大隊に支援大隊を置き師団を支援しています。

そして師団は師団支援司令部を師団隷下に置き、その編成は装備管理部、主支援大隊、3個前方支援大隊、航空支援大隊、という編成となっています。前方支援大隊3個は師団隷下の歩兵旅団支援に充てるもので、航空支援大隊は師団航空旅団の支援にあたる部隊、という編成なのですが。

これを広域師団に代入しますと、装備管理部と主支援大隊、装甲機動旅団支援へ前方支援大隊、航空機動旅団支援に航空整備大隊、という形になるのでしょうが、この編成は米軍の師団隷下の旅団が後方支援部隊に当たる戦闘支援能力の多くを師団に依存しているところからきております。

この場合広域師団個装甲機動旅団と航空機動旅団に後方支援連隊や後方支援隊を配置するか否かがこの編成を採るか、直轄部隊のみの後方支援部隊に特化するかが影響してくるところ。米軍の編成を観ますと、全般支援大隊の編成は本部付隊、整備中隊、補給中隊、衛生中隊、との編成というもの。

整備中隊が2個戦車システム支援小隊と2個機械化歩兵システム支援小隊、という編成、自衛隊の第1整備大隊が米軍の主支援大隊で第2整備大隊が前方支援大隊を、即ち戦車直接支援小隊や普通科直接支援中隊という自衛隊の後方支援部隊の編制がこの部分を参考としているところが読み取れます。

衛生部隊、難しい所で旅団策源地へ野戦病院を開設し野外手術システムと救急車小隊を集約運用するのか、救急航空隊を師団隷下に置き航空機による負傷者搬送体制を構築し、師団策源地を置き十分な医療体制を構築するのか、方面隊が対処するのかと選択肢はいくつか考えられるでしょう。

この第一線救命救急、米軍では軍団隷下に衛生航空隊を配置しUH-60多用途ヘリコプター32機程度を集約し、航空救急体制を構築しています、ただ、これを行うと航空機動旅団のヘリコプター隊に匹敵する航空機が必要となる他、自衛隊は外征型ではなく専守防衛であるため、米軍の戦域の縦深と分けて考える必要があり、この当たりは方面隊の項目にて再検証する事とします。

航空支援大隊は、本部と補給中隊に地上整備中隊と航空整備中隊という編成です。そして主支援大隊は、本部付隊と補給支援中隊に自動車輸送中隊と重整備中隊と電子整備中隊に衛生支援中隊、というもの。選択肢としては直轄部隊以外に全般支援のみを扱うというものが考えられるでしょう。

広域師団に現在の自衛隊後方支援連隊での第1整備大隊を二つの機動旅団より抽出し、後方支援隊ではなく後方支援連隊とし、旅団に米軍の前方支援大隊としての機能を自衛隊方式でいうところの第2整備大隊の機能と補給及び衛生機能を付与し後方支援隊、とする選択肢も考えられるやもしれません。

しかし、航空機動旅団と装甲機動旅団は進出速度が異なりますし、広域を管区として作戦を担当できるが故の広域師団の呼称、旅団の独立した運用能力を付与させる観点からは、必ずしも師団からの全般支援に関する支援を受けずとも、指揮統制のみに特化し自由に機動運用する観点からは、独立した後方支援能力を有する事が望ましいでしょう。

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Unknown (ドナルド)
2015-07-08 23:47:10
はるなさま

旅団の後方支援部隊は、独立しているべきであり、師団隷下には、より後方の輸送や重整備、そして野戦病院を管理する後方支援群を別途おくべきと考えます。

1個の広域師団だけで戦線に対応するケースはほぼないでしょう。旅団が、自分の方面隊管区内にとどまることはありえません。機動すべきです。固定配備は兵法の根本に反しており、各個撃破されるだけですから。戦力は機動し、集中してこそです。

この前提で考えれば、各方面隊から抽出した重旅団が2-3個存在する戦域と、航空機動旅団が存在する戦域、そして予備兵力としての1-2こ旅団という体制で戦線が構築されるはずです。もちろん、元々の「重旅団+航空機同旅団」という師団編成は解消されます。それ故に、必要な兵站は旅団に付随していないといけません。

一方で、弾薬や燃料の補給、輸送という膨大な作業量を担う部隊は、高度な専門性を持ち、効率よく物資輸送を行う必要があります。配送のトレーサビリティーやオンデマンド配送など、物流のプロがなしているサービスと同等以上のレベルが要求されるのです。なぜなら、兵站は当然敵の第1攻撃目標であり、攻撃を避けたり、損害があっても最低限の物資が届くような、重厚な補給・輸送計画が必要とされるからです。

そうでないと、銃弾が大量に必要な戦線に、ATMが山積みされたり、燃料が前線に行き渡らず戦車がただの鉄の棺桶と化したりするわけです。

こうした専門部隊を、後方支援群(あるいは団)として整備し、日頃から徹底した訓練を行う必要があります。これは師団隷下におき、必要に応じて前線に展開する。

その人員や予算をどう確保するかは簡単で、前線兵力を削減すればよい。補給の無い兵など存在しないのと同じです。そして敵精鋭部隊の補給を断ち、精鋭で無くしてしまうこと(=敵主戦力の無力化)こそが、戦術の要諦=敵が最初に狙うことですから。。。

#敵の主戦力を弱体化しない状態で、真っ正直に戦力をぶつけるなど、損害を増やすだけ、戦術的に愚の骨頂ですからね。。。

と、私は、考えます。(長くなってしまいました:笑)
返信する
東日本大震災の戦力回復センターを参考に (はるな)
2015-07-27 12:20:09
ドナルド 様 どうもです

当方の広域師団案では、旅団はそれぞれが後方支援連隊を有し、師団は指揮系統と電子通信面での全般支援を行う、という想定です

そして、方面隊は本土における着上陸事案での統合任務部隊司令部を司る為、全般的な後方支援を担当する部隊、というかたちをとるもの

東日本大震災の戦力回復センターを参考に、統合任務部隊管区方面隊における駐屯地を全て戦力回復センターと位置づけ、重整備は勿論、人員の休息から損耗部隊の再編制、必要に応じ即応予備人員による方面混成団からの人員抽出までを担う、そういった意味での後方支援基盤を想定します

そして、他方面隊の駐屯地は物資集積基地であり、用途廃止装備からの予備部品抽出、さらに部隊移動の中継点としての役割を担う、という運用が必要だと考えています

普通科連隊の項目で、第二大隊として予備役部隊中心の部隊を提示しましたのは、連隊区での輸送支援と駐屯地維持に必要な基盤的防衛力が存在する、という視点でしたが、目的はこの為です

他方、方面隊の全般支援能力の不足に関しては、他方面隊より、予備人員の招集と並行し現役要員を派出し第一線の統合任務部隊へ増強に充てる、という、有事と平時の転換は柔軟に行われるべきとも考えます
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