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北大路機関

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AMX-10RC-40mm機関砲は105mm低圧砲を代替できるか,2000年代装甲戦闘車両の疑問符

2023-01-20 07:00:58 | 先端軍事テクノロジー
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナへレオパルド2が供与されるかという視点がこの数日間の欧州安全保障論争を左右している問題ではありますが。

 40mm機関砲は105mm低圧砲をほんとうに代替できるのか、ウクライナ軍へのフランスからのAMX-10RC装甲偵察車供与にさいして、長年の疑問とされた命題が再度蒸し返す可能性が出てきました。まず、薬莢を小型化し非常に高い連射速度を実現している40mmCTA機関砲は極めて強力な装備です、寸秒で数発をほぼ同一箇所に命中させられる水準だ。

 AP弾の能力向上も凄まじいもので、40mm機関砲弾の貫徹力は第二次大戦中の76mm砲弾を凌駕しており、特に機動力に重点を置いた第二世代戦車などは正面装甲を一発で貫徹される水準となっています。一発だけでは貫徹できなくとも毎秒発射速度の高さから数発を同一箇所に命中させるならば破壊できずとも砲塔を破損、機能不随に追い込めます。

 LAV-25軽装甲車、1991年の湾岸戦争では海兵隊の軽装甲偵察中隊に所属するLAV-25軽装甲車が25mm機関砲によりイラク軍のT-55戦車を機動力を活かし側面から射撃し撃破していますので、装甲車も対戦車ミサイルを使わずとも戦車を撃破しうる、こうした実例を残しているのですが、しかし、105mm低圧砲ならば、数発といわず一発でしとめうる。

 AMX-10RCには105mm低圧砲が搭載されています、低圧砲であるのはAMX-10RCの車体は軽量であり、L7系105mm戦車砲が搭載できないためでもあるのですが、このためにAPFSDS弾は初速がかなり低くなります、しかしHEAT弾の場合は化学エネルギーによるメタルジェットで装甲を貫徹するため命中時初速は関係なく、低圧砲はこれを重視します。

 ジャガー装甲偵察車、40mmCTA機関砲を搭載しています、これはAMX-10RCの後継車両として開発されたのですが105mm砲では地域紛争においては威力が大きすぎ、このために多用途性、つまり装甲車を十分撃破できるし建造物などにも威力を発揮する一方で建物を壊しすぎず、また数発命中させることができれば戦車を撃破しうる、という論理だ。

 しかし、戦車が動いていた場合に何発も命中させることは理論上可能なのか、という問題、出来るといわれても一発では貫徹させられない主砲だけで戦闘にあたるという、ジャガー乗員の視点はどうなのか、という疑問符があります。もちろんジャガーには戦車を一発で撃破する対戦車ミサイルも搭載はされているのですが、即応は2発にすぎない。

 低圧砲でも十分な威力を発揮できるのか、これはウクライナ軍が今後AMX-10RCをロシア軍に対して運用することで判明することでしょう。AMX-10RCは軽量で装甲は薄いために主力戦車と打ち合うことは不可能です、なにしろ1978年の設計ですので当時としては十分な水準であったためなのですが、ジャガーは装甲を増し、火力を減じています。

 フランス軍ではすでにジャガーが大量生産開始され部隊配備が開始されていますので、いまさら105mm砲でなければ、という急転換にはならないでしょう、しかし40mm機関砲弾で戦車を撃破できるのかという疑問も常に残ります、むろんウクライナへ40mmCTA機関砲は一切供与されていませんが、低圧砲の威力は、実戦で証明されるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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