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戦闘機国産技術存続の道① F-2を海上自衛隊の訓練支援機にできないか

2009-08-10 22:32:08 | 防衛・安全保障

◆第二回戦闘機の生産技術に関する懇談会、開催

 朝雲新聞によれば、7月29日に行われた第二回戦闘機の生産技術に関する懇談会では、F-2支援戦闘機の生産が終了すると、数年以内に日本国内での戦闘機生産技術と、部品供給技術が失われるとの実情が示された。

Img_0024  防衛産業に占める企業のうち、大手企業を望み、特に下請けの分野では、企業規模の小さなところが多く、防衛省からの受注に依存度が高い企業も少なくない。そうした企業の中には、他の企業では生産できない分野の部品などを供給している企業もあり、国内で生産された機体であっても、これら企業から生産技術が失われれば、最終的に現在運用されているF-15Jなどの予備部品の供給や、整備に対しても支障を来す可能性がある。

Img_1963  この種の問題で提唱されるのは、武器輸出三原則の緩和による海外市場の開拓であるが、F-2の場合はどうか。F-2支援戦闘機は、対艦攻撃を行う支援戦闘機として、搭載するミサイルや、航法技術など、極めて優秀な機体ではあるものの、しかし、F-2は輸出出来るかと言えば、日本のように海からの着上陸の可能性がある島国で、しかも、経済的に余裕のある国でなければ、必ずしも必要な機体ではない。したがって別の機体かもしくは国内でF-2生産を継続させる道を探す必要が出てくる。

Img_9909  航空自衛隊以外にF-2を配備するわけにはいかないか。そこで海上自衛隊が運用している訓練支援機U-36の後継に、F-2を充てられないかということを検討してはどうか。U-36は、1987年から岩国航空基地の第91航空隊に配備が始まった機体で、4機が調達された。標的曳航装置とECM装置を搭載し、護衛艦に対して模擬攻撃をかけるのが目的の機体である。

Img_7711  かつて、YS-11の生産が伸び悩んだとき、苦肉の策としてP-2J哨戒機の後継にYS-11の対潜哨戒機を開発できないかとメーカーから防衛庁に打診されたが、結局特性が合わない、との理由で実現には至らず、真っ当なP-3Cが導入されている。したがって、訓練支援の名目で海上自衛隊にF-2を押し付けるというのは、必ずしも妥当な方法ではないものの、戦闘機の国内生産技術を維持し、そして以て航空機の支援能力を維持させる観点からは、方法として検討の余地はあると思う。

Img_9552  U-36の後継機、1987年導入であるから、そろそろ後継機の選定は必要ということで、F-2も候補に含めて考えたはどうか、という提案なのだが、U-36の後継機として、必要な機数は、10機以下、4~6機ということにもなり得る、時間稼ぎは二年が限度だ。しかもF-2の運用経費はリアジェットのU-36よりも遥かに高いのだが、もともと対艦攻撃を念頭に設計されたF-2であるから、性能は相応のものが期待できる。なお、標的曳航機として導入するならばF-2Bであろう。

Img_9475  F-4戦闘機後継の選定が、ここまで難航するとは思われなかったため、現在、防衛産業の航空分野は、深刻な分岐点に達しようとしている。他方、言い換えれば、これまでは赤字すれすれの状況を耐え忍んで経営努力を続けてきた防衛産業により、日本の航空自衛隊は戦闘機を高い稼働率に保たせることができた訳で、あって当たり前と勘違いしてきたともいえる恩恵は、無くなって初めて気づくもの。そうなる前に、なにか具体的な施策を撮る必要はないのか、と考える次第。

HARUNA

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8 コメント

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はるなさんこんばんは (通りがかりの敗残兵)
2009-08-10 23:06:43
はるなさんこんばんは
このブログを見ていると戦闘機技術の危機であるということがひしひしと伝わってきます。
早いとこF-Xでライセンス生産できるいい機体が見つかると言いのですが今はそういう期待がないのも事実。やはりF-2の増産で時間稼ぎをするというのがベストではないにせよベターではあるといった感じでしょうか。しかし海自の訓練支援機と言うのはおそらく大した数は揃えられないのでは、結局その場しのぎにもならないのではないか?とも思ったりもしますがどうなんでしょうか
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通りがかりの敗残兵 様 (はるな)
2009-08-11 00:30:53
通りがかりの敗残兵 様

現状はかなり深刻なのですが、過去十年、ライセンス生産よりも輸入の方が安い、と専門誌などに掲載し続けた軍事評論家にも責任の一端はあるように。国内の基盤が無くなるというのは、様々な不都合がある訳でして、それが異なる形で表面化しようとしているのが実情。

他方、海自の訓練支援機に採用されれば、年間3~5機調達で、生産ラインを二年、最大で三年維持することは辛うじて出来ます。

一見、焼け石に水のようですが、実際には干天の慈雨なのかも。すなわち、その場しのぎでも、その場をしのげるだけ、まだマシなのでは、と考える次第。無理があるのは判っています。
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こんにちは。 (ウルトラマン)
2009-08-11 07:41:43
こんにちは。

どちらにしても選挙後の政権がどう考えるかですね。
民主党では、どうなるかわからないですけどね。
もうタイフーンだなんて言ってられない状況ですのでF-2でいいや!※なげやり!!(笑)
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ウルトラマン 様 (はるな)
2009-08-11 12:14:27
ウルトラマン 様

F-2って、最近俄かに支持が多くなったような。

ちなみに他の候補機と比べて、国内産業にF-2は多少寄与しますよ!
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初めまして。 (アルフォンス)
2009-08-11 13:29:24
初めまして。
ことここに至っては、F-2調達中止はなんと言う愚かな選択肢だったのかと思わずにはいられません。(調達中止当時の軍事評論家等は概ね賛成の論調だったと記憶してます)

調達予定数通り装備しておれば、F-4後継としてシームレスに生産でき、結果として最も安い代替が出来たはずであり、この点、石破元大臣の責任は相当に大きいと言わざるを得ません。
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アルフォンス 様 (はるな)
2009-08-11 23:12:47
アルフォンス 様

石破大臣の決定もさることながら、長期的スパンで国内での製造基盤維持の重要性を説明し得なかった当時の側近にも責任はあるやもしれません。

他方で、当時としては、ここまでF-22の導入の可否の結果が出るまで長期間を要し、F-35が転ぶとは考えられず、F-2に続く機体の導入までの真空を予測できなかったのかもしれませんが。

また、F-2に関しては、日米共同生産ですので、日米どちらかが(あえてどちらとはいいませんが)、日本型の少数長期間調達に悲鳴をあげたという背景も無視できないように思います。
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このような問題は実際のところ、整備をはじめとし... (アルフォンス)
2009-08-12 01:15:44
このような問題は実際のところ、整備をはじめとした後方部門や、メーカーサイドはかなり早くから認識し、警鐘を鳴らしてたのですが…(海自MH-53Eと言うわかりやすい前例があっただけに)


性能第一主義の運用側や、ミーハーな一部の軍事評論家(いわゆる識者と呼ばれる人々)には理解されず今日の事態を招いたと言えます。

F-2にしても、日米間のワークシェア見直しなど、ライフサイクルコストを含めたトータルのコストダウン策がまだ残されていたのにも関わらず、調達中止は本当に残念でした。


当時、これを英断とした軍事アナリストの多かったこと!
製造や後方に携わっている人間からすれば、責任者出てこい!と言う気分にさせられます。
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アルフォンス 様 (はるな)
2009-08-12 01:23:41
アルフォンス 様

高い稼働率を以て、現行の機数でも防空の重責を担っている訳ですが、他方で、防衛白書でも、作戦空域の広さを勘案せず、単純に機数の比較だけ乗せて、周辺国との戦力比を載せていたわけで、結局全般的な不理解が背景にあるのだろう、と。

F-2生産中断ですが、英断というよりも、ジャパンミリタリレビュー社の軍事研究誌などは、問題として捉えていましたし、もろ手をあげて生産終了万歳、という雰囲気は無かったようにも。
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