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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ情勢再燃!、東部ハリコフで親ロ住民暴動勃発とロシア軍動向懸念

2014-04-08 23:56:12 | 国際・政治

◆最大の懸念は抑止力均衡の破綻

 ハリコフで暴動が発生、市庁舎などがロシア系住民により占拠され、自治領としての独立や連邦制を求める主張が出されています。

Uimg_0934 ウクライナ民主化暴動により親ロ政権が崩壊して後、ロシア軍がウクライナ及びNATO加盟国との境界線付近での大規模な演習を展開しNATOを牽制しつつ、ロシア黒海艦隊基地が置かれるウクライナのクリミア半島へロシア軍が介入、ロシア系住民による一方的住民投票を以てロシアへ併合されました。

Img_7102  我が国をはじめ欧米各国から非難を受けましたが、その後もウクライナ国境地帯へ大規模な部隊を集中させ続けました。この間、NATOは本来行うべき平和維持軍のウクライナ派遣打診やロシア衛星国及び国境への大規模演習への対抗した演習を実施せず、ロシア側へ誤ったメッセージを送っています。

Uimg_1146 ウクライナはロシアのソ連時代における歴史的関係と地政学上の関係、更に第二次大戦におけるウクライナ地域での戦闘などの歴史があり、ロシアとしては衛星国か友好国としての位置づけを継続させることを必要とした地域ですが、欧州連合を中心にウクライナとの関係を強化、ロシアとしては看過しにくい状況が成立しつつありました。

Img_6725_1s  この際に欧州連合に確たる意図や覚悟を以ての関係強化を行っていたならば、今回の対応は異なったのでしょうが、対ロ政策について欧州連合内の意見は各国の対ロ政策や対ロ経済依存度等の関係から不一致を極め、NATOの意思決定も遅すぎました。

Uimg_2108 今回、ロシア側はアメリカを中心とした限定的な経済制裁とG8会議からのロシア除名という制裁に影響は留まり、ロシアにとって避けるべき状況、即ち、ウクライナ暴動後の情勢を放置し親欧州政権が樹立した上でロシアとの距離を大きくすることが考えられたわけです。

Img_7912i  その後の展開は、例えば欧州連合経済圏やその先のNATO加盟やNATOとの連携協定締結という、ロシアのモスクワ南数百kmに脅威が生じる状況を待つよりは、思い切った軍事行動を採ったことは、結果としてロシア側に容認できる結果に収めることが出来たところ。

Uimg_1177 その一方で最も懸念するのは、現在のアメリカ外交と欧州連合は武力を用いた冒険的行動に対して行使できる制裁行動は限られているため、結果的に言えば、ロシア以外の地域において軍事行動を以て政治的難題を解決するための手段や領土割譲を軍事力により強行する行動は、損害に比べれば、と。

Img_9912  即ち、必ずしも避けるべき命題ではない、という誤った印象を諸国へ投じたことにならないのか、という事です。もちろん、我が国南方地域へこうした行為が行われた場合、幸いにして政治的停滞さえなければ、現在の我が国の場合は防衛力で充分制圧は可能ではありますが。

Uimg_2975 しかしながら、例えば南シナ海地域での地域紛争に際し当事者間の国際法に基づく紛争解決を拒否し実力行動に出た際や、無人島を一方的に本土行政区へ編入し一方的な住民選挙を行い正統性を主張する状況や、事実上の独立国を一方的に交戦団体扱いしている状況に際しその領域全土もしくは一部に対し軍事介入を行う、という可能性があります。

Eimg_4233  これに対しては専守防衛の我が国には、能力的には当事国が日本の支援を求め基地施設などの提供を行った場合には限定的にその戦力投射により抑止力を提供できますが、政治的に無理です。海上交通路維持等の死活的利益がある場合でも防衛力での対応は現行法と憲政下では採りえません。

Uimg_1488 特に我が国周辺地域ではASEAN地域フォーラムや上海協力機構等の地域的枠組みの模索は行われているのですが、主権の共有などの政治的共同体としての能力は低く、欧州連合のような決定力と実力は持ちませんし、それ以上に意思決定過程が複雑すぎ、対応できることはこの地域で同様の状況が生じた際にさらに限られる。

Nimg_0355 更にこの地域での軍事的影響力の大きなアメリカが朝鮮半島での戦時指揮権韓国返還と国防費縮小に伴う展開兵力への影響が、実戦力ではなく政治的な象徴としての抑止力へ影響を及ぼす可能性があり、我が国としては今回の欧州情勢を注視しつつ、同様の状況が我が国周辺で生じた際の研究を行う必要があるでしょう。

北大路機関:はるな

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1 コメント

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キレイな武力行使(ぶつかる領域は国外然も公海 (専ら読む側)
2014-04-09 22:10:11
キレイな武力行使(ぶつかる領域は国外然も公海
上と一方的に想定)指向の国防計画?は早晩修正
を迫られること必至と痛感
>NATO諸国
エアランドバトル(NATO地上軍版漸減邀撃戦)の
頃では考えられぬ弛緩振りでしたな
MOOTWを本務に据えたツケは払い切れぬ程に高
額だとの見本を示してくれたと戦慄するばかり
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