■特報:世界の防衛,最新論点
今回は中東のミサイル防衛についてイスラエルとサウジアラビアの実例を見てみましょう。

イスラエル国防省は弾道ミサイル迎撃ミサイルアロー3の大気圏外への射撃試験を成功させたことを発表しました。アロー3の発射実験は2022年1月8日にIMDOイスラエルミサイル防衛機構とアメリカのMDAミサイル防衛局が共同で実施したといい、発射施設はイスラエル中部のミサイル施設であるとしています。実験に使用されたのは2発とのこと。

アロー3弾道ミサイル迎撃ミサイルはイスラエルが1990年湾岸戦争の際にイラクからの弾道ミサイル攻撃を受け開発されたアロー迎撃ミサイルシリーズの最新型で、アメリカから供与されたペトリオットミサイルPAC-2では弾頭の威力不足から落下するイラクの弾道ミサイルに命中させても完全に破砕するには至らない事から大型弾頭を用い開発されました。

アロー1とアロー2は大型弾頭による破片効果での弾道ミサイル破壊を目指していましたが、アロー3からは日米が共同開発したスタンダードSM-3のキネティック弾頭のような大気圏外迎撃弾頭を採用しており、また近年脅威が認識される機動性の高い弾道飛行を迎撃するべく推力偏向ノズルを採用しており、将来の弾道ミサイルへも迎撃能力を確保しています。
■北朝鮮人民軍ミサイル実験
トランプ政権が抑え込んだ北朝鮮ミサイル実験が再開し頻度が異常な事となっていました。

北朝鮮人民軍は2022年に入り相次ぎ各種弾道ミサイルの発射実験を繰り返している、既に一月中旬までに四度に渡り六発のミサイル実験を繰り返しており、極超音速ミサイルや戦術誘導弾と称するものの開発を急いでいると認識されている。ただ、極超音速ミサイルは既存弾道ミサイルを低軌道で高速飛翔させているのみで、極超音速滑空兵器ではない。

ミサイル実験について北朝鮮は1月20日、現在停止しているICBM大陸間弾道弾の実験再開も示唆しており、これはアメリカ政府がトランプ政権からバイデン政権に政権交代した後にも一向に進まない米朝交渉、特にトランプ政権時代の様な首脳会談の目処が立たないとともに、在朝中国大使の出国後に後任大使未定という異例の国際関係も影響していよう。

2022年に入り相次ぐミサイル実験を受け、1月下旬には原子力空母カールビンソンなどアメリカ海軍は北朝鮮周辺に即座に展開し得る東シナ海や南シナ海地域に航空母艦や強襲揚陸艦を展開させているが、これが逆に中国周辺の行動により中国海軍を刺激すると共に中東地域でのアメリカ海軍空母及び強襲揚陸艦の不在という抑止力の不均衡も醸成している。
■北朝鮮中距離弾道弾実験
火星12型中距離弾道ミサイルの試験が久々に行われましたが日本本土上空を飛行する試験も再開するのでしょうか。

北朝鮮の朝鮮人民軍は2022年1月30日に2017年以来となる中距離弾道弾の発射実験を行った。1月30日に実施された発射実験は発射後ミサイルが上昇を続けその高度は2000kmに到達した上で発射地点から800km先の目標、朝鮮半島近海の日本海上離島へ正確に命中したとしている。高高度を飛翔する軌道は落下速度を稼ぐロフテッド軌道という。

火星12型中距離弾道ミサイルと考えられるこのミサイル発射試験は、ロフテッド軌道を描かず通常高度で飛行させた場合の射程は3500kmから5500kmに達するとされる。通常5500km以上の射程のミサイルは中距離弾道弾に区分され、朝鮮半島から沖縄や東京首都圏の米軍施設は勿論、後方拠点とされたグアムの米軍施設もその射程に収めると考えられる。

弾道ミサイル実験は2022年に入り六度目となり、この規模のミサイル実験はアメリカのトランプ政権成立の頃と重なる。当時のトランプ政権は原子力空母3隻を日本海に展開させ開戦も辞さない前例のない軍事圧力を掛け北朝鮮のミサイル実験を封じ、交渉のテーブルへ着かせたが、現在のアメリカバイデン政権はこのミサイル実験へ声明以外出していない。
■サウジアラビアのTHAAD改良
イエメンへ弾道ミサイルを輸出しているのはイランの艦のが疑われていますがイランミサイルには北朝鮮の援助を受けたパキスタンとミサイルの闇市場の問題が指摘されています。

サウジアラビアが進めるTHAAD最終段階高高度迎撃ミサイルMIDS-LVT情報伝達装置近代化改修をアメリカ国務省が承認しました。MIDS-LVT情報伝達装置はTHAADミサイルと防空システムを連接させるデータリンク装置ですが、アメリカの対外有償軍事供与プログラムに基づくものでありアメリカ国務省による輸出許可が必要な装備となっています。

MIDS-LVT情報伝達装置はNATOのリンク16データリンクと同等の物で、今回の近代化改修はブロックアップグレード1 へ11基の大型端末、そして31基の携帯用端末の能力向上を含むもので、契約金額は全体で2310万ドルとのこと。サウジアラビアは2017年にTHAAD導入を契約しており、イエメンフーシ派からの弾道ミサイル攻撃に対応している。

THAAD最終段階高高度迎撃ミサイルのサウジアラビア導入は7射撃中隊分が導入、各中隊はAN/TPY-2レーダーが2基と発射装置6基より成り、予備を含めレーダーは16基と発射装置は44基、そしてミサイル本体360発と全体で150億ドルという導入契約を結びました。中東地域では潤沢な石油資金を投じて日常化する弾道ミサイル攻撃に対応しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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今回は中東のミサイル防衛についてイスラエルとサウジアラビアの実例を見てみましょう。

イスラエル国防省は弾道ミサイル迎撃ミサイルアロー3の大気圏外への射撃試験を成功させたことを発表しました。アロー3の発射実験は2022年1月8日にIMDOイスラエルミサイル防衛機構とアメリカのMDAミサイル防衛局が共同で実施したといい、発射施設はイスラエル中部のミサイル施設であるとしています。実験に使用されたのは2発とのこと。

アロー3弾道ミサイル迎撃ミサイルはイスラエルが1990年湾岸戦争の際にイラクからの弾道ミサイル攻撃を受け開発されたアロー迎撃ミサイルシリーズの最新型で、アメリカから供与されたペトリオットミサイルPAC-2では弾頭の威力不足から落下するイラクの弾道ミサイルに命中させても完全に破砕するには至らない事から大型弾頭を用い開発されました。

アロー1とアロー2は大型弾頭による破片効果での弾道ミサイル破壊を目指していましたが、アロー3からは日米が共同開発したスタンダードSM-3のキネティック弾頭のような大気圏外迎撃弾頭を採用しており、また近年脅威が認識される機動性の高い弾道飛行を迎撃するべく推力偏向ノズルを採用しており、将来の弾道ミサイルへも迎撃能力を確保しています。
■北朝鮮人民軍ミサイル実験
トランプ政権が抑え込んだ北朝鮮ミサイル実験が再開し頻度が異常な事となっていました。

北朝鮮人民軍は2022年に入り相次ぎ各種弾道ミサイルの発射実験を繰り返している、既に一月中旬までに四度に渡り六発のミサイル実験を繰り返しており、極超音速ミサイルや戦術誘導弾と称するものの開発を急いでいると認識されている。ただ、極超音速ミサイルは既存弾道ミサイルを低軌道で高速飛翔させているのみで、極超音速滑空兵器ではない。

ミサイル実験について北朝鮮は1月20日、現在停止しているICBM大陸間弾道弾の実験再開も示唆しており、これはアメリカ政府がトランプ政権からバイデン政権に政権交代した後にも一向に進まない米朝交渉、特にトランプ政権時代の様な首脳会談の目処が立たないとともに、在朝中国大使の出国後に後任大使未定という異例の国際関係も影響していよう。

2022年に入り相次ぐミサイル実験を受け、1月下旬には原子力空母カールビンソンなどアメリカ海軍は北朝鮮周辺に即座に展開し得る東シナ海や南シナ海地域に航空母艦や強襲揚陸艦を展開させているが、これが逆に中国周辺の行動により中国海軍を刺激すると共に中東地域でのアメリカ海軍空母及び強襲揚陸艦の不在という抑止力の不均衡も醸成している。
■北朝鮮中距離弾道弾実験
火星12型中距離弾道ミサイルの試験が久々に行われましたが日本本土上空を飛行する試験も再開するのでしょうか。

北朝鮮の朝鮮人民軍は2022年1月30日に2017年以来となる中距離弾道弾の発射実験を行った。1月30日に実施された発射実験は発射後ミサイルが上昇を続けその高度は2000kmに到達した上で発射地点から800km先の目標、朝鮮半島近海の日本海上離島へ正確に命中したとしている。高高度を飛翔する軌道は落下速度を稼ぐロフテッド軌道という。

火星12型中距離弾道ミサイルと考えられるこのミサイル発射試験は、ロフテッド軌道を描かず通常高度で飛行させた場合の射程は3500kmから5500kmに達するとされる。通常5500km以上の射程のミサイルは中距離弾道弾に区分され、朝鮮半島から沖縄や東京首都圏の米軍施設は勿論、後方拠点とされたグアムの米軍施設もその射程に収めると考えられる。

弾道ミサイル実験は2022年に入り六度目となり、この規模のミサイル実験はアメリカのトランプ政権成立の頃と重なる。当時のトランプ政権は原子力空母3隻を日本海に展開させ開戦も辞さない前例のない軍事圧力を掛け北朝鮮のミサイル実験を封じ、交渉のテーブルへ着かせたが、現在のアメリカバイデン政権はこのミサイル実験へ声明以外出していない。
■サウジアラビアのTHAAD改良
イエメンへ弾道ミサイルを輸出しているのはイランの艦のが疑われていますがイランミサイルには北朝鮮の援助を受けたパキスタンとミサイルの闇市場の問題が指摘されています。

サウジアラビアが進めるTHAAD最終段階高高度迎撃ミサイルMIDS-LVT情報伝達装置近代化改修をアメリカ国務省が承認しました。MIDS-LVT情報伝達装置はTHAADミサイルと防空システムを連接させるデータリンク装置ですが、アメリカの対外有償軍事供与プログラムに基づくものでありアメリカ国務省による輸出許可が必要な装備となっています。

MIDS-LVT情報伝達装置はNATOのリンク16データリンクと同等の物で、今回の近代化改修はブロックアップグレード1 へ11基の大型端末、そして31基の携帯用端末の能力向上を含むもので、契約金額は全体で2310万ドルとのこと。サウジアラビアは2017年にTHAAD導入を契約しており、イエメンフーシ派からの弾道ミサイル攻撃に対応している。

THAAD最終段階高高度迎撃ミサイルのサウジアラビア導入は7射撃中隊分が導入、各中隊はAN/TPY-2レーダーが2基と発射装置6基より成り、予備を含めレーダーは16基と発射装置は44基、そしてミサイル本体360発と全体で150億ドルという導入契約を結びました。中東地域では潤沢な石油資金を投じて日常化する弾道ミサイル攻撃に対応しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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