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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

朝鮮半島有事邦人救出検証(7)CH-47,韓国南部釜山-九州春日間緊急輸送と中継拠点対馬空港

2018-05-29 20:13:00 | 国際・政治
■国境の島,長崎県対馬の重要性
 朝鮮半島情勢はこのまま好転すれば終戦と核武装解除、しかし現時点で楽観要素は可能性でしかなく、核放棄が口約束に終われば米朝関係の展開に逆の可能性もある。

 朝鮮半島情勢はこのまま朝鮮戦争終戦に向かい、北朝鮮は核武装を解除しIAEA国際原子力機関の核兵器開発禁止国際秩序へ戻るのか、朝鮮半島情勢は現在安定化へ移行しようとしているのかを判断する上で、国際機関の査察を伴う核武装解除をいつ行うかが焦点となりますが、肝要である点は現時点で朝鮮半島情勢は浮動期、決して安定化していません。

 韓国在留邦人が最も多く居留しているのはソウル特別市、韓国の首都であると共に軍事境界線から70kmの距離にあり、北朝鮮軍榴弾砲やカノン砲の射程外ですがロケット砲一部の射程内にあります。ただ、韓国軍が陸軍の七割以上をこの地域の防衛に充てていまして、韓国の首都という事で交通機関も充実しており、外国人疎開の余裕は多少あると考える。

 ソウル以外での邦人救出任務について。釜山近郊へ自力避難した邦人については、陸上自衛隊と航空自衛隊のCHー47輸送ヘリコプターによる退避が可能です。この邦人輸送任務での問題は、釜山から福岡県の春日基地まで、空輸任務を行う場合の対馬空港の重要性、そして釜山でのヘリコプター空輸拠点での警備任務における日韓作戦協定の重要性です。

 対馬は長崎県の離島ですが、陸上自衛隊対馬警備隊と航空自衛隊防空監視所、海上自衛隊警備所がおかれている国境の拠点でもあります。冷戦時代、万一ソ連軍がこの対馬を占領した場合、朝鮮半島有事の際に在日米軍やアメリカ太平洋軍の日本を経由しての朝鮮半島への展開が阻害される。陸上自衛隊は対馬へその草創期から警備体制を構築してきました。

 第4師団隷下の対馬警備隊、対馬警備隊は本部管理中隊と普通科中隊を基幹とする編成ですが、対馬警備隊創設前には別府の第42普通科連隊より一個中隊が順番で対馬に駐屯し防備体制を固めてきました。一方、釜山から春日までの空輸に万一の問題が生じた際には対馬空港へ緊急着陸できることが、邦人輸送任務の現実性を高める一助となりましょう。

 九州から対馬への有事の際には草創期、自衛隊は一個普通科中隊を空中機動により同時空輸させる能力を方面航空部隊の作戦能力として要求しており、H-19輸送ヘリコプター時代からその能力整備に着手、現在、方面ヘリコプター隊の多用途ヘリコプター定数が20機となっている背景は、この一個中隊同時空輸という能力を反映させた水準ともなっています。

 CH-47による邦人救出任務、一方、輸送ヘリコプターを対馬に発着させる場合、ヘリコプター野整備隊や燃料補給などの面で平時から調整を行う必要性はいうまでもありません。同時に考える必要は警備体制、九州へ釜山からのヘリコプター空輸、ヘリコプター発着地域の警備体制です。多数の邦人を退避させる一点以外にも、この点を留意すべきでしょう。

 空中機動の拠点は民間空港であろうと防衛飛行場であろうと、発着機能そのものが軍事機能として攻撃目標になり得ます。このため、最低限の警備体制、最低でも発着地域周辺確保に一個小隊、邦人搭乗手続き区画の警備と誘導に一個小隊、必要となります。そして春日基地での警備体制、更に対馬空港の緊急着陸用地、最低三箇所を確保せねばならない。

 対馬への緊急展開、朝鮮半島湯時に際しては一見戦闘は南北軍事境界線付近で展開される為、対馬は完全な後方地域と思われるかもしれませんが、九州からの展開は必要です。そして韓国軍との釜山警備協力についても必要です。自衛隊の戦闘部隊が釜山付近を確保する事は両国の防衛協力城限界を超えていますが、韓国軍へ支援要請する事は可能でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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