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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第八回・・・軽歩兵部隊への装甲車配備

2015-02-15 18:02:12 | 防衛・安全保障
◆軽歩兵の任務は不変だが
 これまでに掲載しました点から、装甲車は陣地の発展形、野戦築城として人類が経験した戦争史の延長線上に位置するものと言えることが分かるでしょう。

 一方で装甲車そのものだけで陸上戦闘が展開できるようになったわけではありません。陣地防御の装甲車の位置づけ、築城は攻撃ではなく防御の要素であることから、防御に特化した用途での装甲車の位置づけ、ということが見て取れ、攻撃の面ではまた別の用途を見出す事が出来ます。

 それでは戦車はどういう位置づけなのか、という部分についてこれは別の機械に触れるべき点ですが、戦車は勿論防御戦闘における撃破や遅滞行動における持久は無論のこと、装甲車と共に攻撃の運用において大きな威力を発揮するため、防御戦闘を押しとどめたのちには戦果拡張へ攻撃前進に転換しなければなりません。

 ここで直接照準火器により対戦車戦闘の展開は、装甲車に乗車する歩兵が運用する対戦車ミサイルなどよりも射程や地形制約が少なく瞬発交戦能力があります。更に戦車の位置づけは装甲車が歩兵に割いている部分を機動力と防御力及び火力に振り分けられるため、完全に自己完結した装備とはなり得ず、一方を整備しただけで十分な能力を保持できない、とは留意すべき点でしょう。

 一方、軽歩兵へ転換が始まります、軽歩兵の中で如何に機械化が進んだとしてもその位置は不変であり特殊歩兵という形で残るであろう空中機動歩兵や空挺部隊ですが、ここへも装甲車両を導入する動きはあり、装甲車両が無い場合、そして装甲車両を随伴できない制約下に運用される部隊は工兵部隊の支援を受けにくい環境にある事から、陣地構築へ機械化力を利用しにくく、露出し損耗を重ねるよりは軽量な装甲車両を、という動きとなったわけです。

 自衛隊の空挺団でも軽装甲機動車を有していますし、ロシア軍のBMD-1やBMD-2にBMD-3といった空挺装甲戦闘車、ドイツ連邦軍のウィーゼル空挺装甲車やムンゴ空挺装甲車、フランス軍はERC-90戦車駆逐車とともに空挺旅団にてVBL軽装甲車やVAB軽装甲車を運用しており、空挺部隊への装甲化はすすめられている、と言えるところ。

 しかしそれ以上に大きな転換は、近年の対テロ戦争における警備任務の拡大と待ち伏せ攻撃などによる被害の拡大で、これは本稿がこれまでに示しました防御戦闘とは少々異なる部分ではありますが、警備任務における待ち伏せ攻撃による被害が看過できない水準となり、この種の国際平和維持活動へ派遣される諸国では軽歩兵部隊への軽装甲車両配備を進めています。

 この種の耐爆車両は不整地突破能力等の面で限界があるのですが、それに続く後継車両が取得されるのならば、少なくとも軽歩兵部隊にも装甲車両が配備され得る点を示したもので、程度の差はあれ、装甲車両というものが今後軽歩兵部隊に対しても普及し得る事を示唆している、といえるのかもしれないところです。

北大路機関:はるな
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Unknown (ドナルド)
2015-02-16 00:39:30
はるなさま

軽歩兵にも装甲を、というのは米軍のJLTVを見ても分かる通り、トレンドとして存在すると思います。しかし、「機甲部隊を軽歩兵と同じくらい迅速に空輸/海上輸送/陸上展開する」のは、昔からある夢・理想なわけで、「ただ輸送力は有限ですよ」という現実と戦う必要がある訳です。

米軍の編成で考えれば、一定の輸送力で、例えば、軽歩兵を4個旅団投入するか、ストライカー旅団を2個か、機械化旅団を1個か、その選択の余地を残すことが大事な訳です。(重量比が、「軽歩兵:ストライカー:機械化=1:2:4」)

日本で言えば、まともな機械化部隊が「機甲旅団」相当の第7「師団」しか存在しない中で、他の軽歩兵部隊を軽装甲化するのを優先するのか、一定数の部隊をきちんとした機械化部隊にするのを優先するのか。。。

私の意見は、「兵力の1/3はきちんとした機械化部隊にする代わりに、他は軽歩兵として整備する」というものです。

一方で、予算(調達もそうですが、むしろ維持費が問題)と、整備・兵站部隊の人員を捻出すれば、1/2機械化、1/2軽装甲化という話しもあり得ると思います。結局はこの予算と人員の捻出が鍵を握りますね。(これまでの発言の通り、私は、陸自兵力削減でこれを捻出すべきという立場です)
返信する
Unknown (専ら読む側)
2015-02-16 23:00:19
以下雑感を申しまする
>陸自兵力削減
「少数精鋭」同様、歪な軍備好きを呼ぶ呪文ですな
削りたいだけ削った挙げ句眼前の任務に潰され焦るEU小国の真似など御免
削って捨てたくば有象無象の地対地誘導武器を狙うべきと愚考(戦車、自走砲、装甲戦闘車の運用正常化とも)
現状の兵站が許容し得る正面しか持ってはいけないと考えること自体思考停止と思われ
「軍事界隈の越後之守」の金言を守りたくば守って下さい誰も相手にしませぬ故と断言
以下蛇足
短い鏃しか撃てぬ90TKは、勿体無くとも向こう20年で消え去る運命と憶測

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Unknown (陸自は安く・軽く・少なく)
2015-02-16 23:27:07
いつも思うんです。我が国にとって戦車の開発・製造基盤って柔軟な装備整備計画も障害にしかなってないんじゃと思います。

まず我が国が最高水準の開発基盤は必要性はありません。だって戦車は金を出せばふつうに買えます。そしてそれ最高水準である必要はない。
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Unknown (無学)
2015-02-17 01:08:20
歩兵の基本戦闘力を上げる(直掩の輸送力があれば重武装化も可能)ことは防衛に大きく寄与するかと。
ドナルドさんは機甲戦力の拡充を主張されていますが北海道を除けば、日本の代表的な地形は山岳、市街地、田圃とどれでも機動戦を行うことはできません。
しかし、歩兵による待ち伏せが有効な地形です。ならば歩兵の展開力を増強し、
防御陣地構築の猶予を稼ぐ方がいいかと。
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Unknown (ドナルド)
2015-02-18 00:01:58
専ら読む側さま

レスポンスありがとうございます。

陸自兵力削減には、いつも反対意見を述べていらっしゃるので、首尾一貫した主張と思います。ATM嫌いも首尾一貫ですね。おつかれさまです。

2点ちょっとすみませんが、確認させてください。

1:「現状の兵站が許容し得る正面しか持ってはいけないと考えること自体思考停止」

ご承知と思いますが、私の主張は3段階です。
A: 前線兵力と兵站をバランス良く持つべき(当然)
B: 現状では、兵站が足りない/前線が多い方向にバランスが悪い
C: このため予算も人員も増えない現実を目にすれば、貧弱にすぎる兵站を、前線部隊を削って強化するのが当然(それをできていない現状こそ、完全な思考停止状態)
D: さらに、海空重視を考えれば、陸自は10-15%ほど「予算削減」をする必要があるだろう
というものです。

Aは当然のことなので、反対はなされていないと思います。Bもおそらくは賛成いただけるかと。。。

Cは微妙ですが、言い方を変えて、「兵站強化のために予算を増やすべき(前線兵力は現状で止めておいても)」とすれば、おそらくは賛成いただけると思います(ただ、全然増えないのですが)。

つまり、反対されているのは(Cの言い方と)Dの内容ですよね?

そうであれば、私の意見とは異なりますが、陸自重視の意見があることは承知していますし、一定の説得力があることも理解しています。



2:「越後之守」

大変申し訳ないのですが、無学故か、「越後之守」の意味が分かりません。。。すみません。


よろしくお願いします。
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Unknown (PAN)
2015-02-18 00:22:03
はるな様

軽歩兵や空挺部隊にとって、必ずしも装甲車がマストな装備とは限らないんじゃないでしょうか?どうも、はるな様の論を読んでいくと、第一線での装甲のないソフトスキン車両を軽視しすぎているように思えます。

“軽”装甲車とはいえ、やはりソフトスキンの車両に比べると、倍以上の重量になります。例えば1/2tトラックは軽装甲機動車の半分以下の重量ですので、空輸などをする場合は単純計算して倍の人員に機動力を与えることができるわけです。

20人に機動力を与えることが必要なのか、半分の10人に軽装甲と機動力の両方を与えることが必要なのかは、正直ケースバイケースでしょう。
例えば最近の米軍空挺や海兵隊には、戦場の簡易な脚として自転車すら装備されています。
http://matome.naver.jp/odai/2134156076879272701

まあ、これは極端な例としても、必ずしも機械化=装甲化ではありません。それこそ無学様が書かれているように、軽歩兵の展開力を増強することも、機械化の範疇だと思うのですが。
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