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【くらま】日本DDH物語 《第五五回》巡洋艦隊構想,ヘリコプター巡洋艦&ミサイル巡洋艦

2019-03-30 20:13:45 | 先端軍事テクノロジー
■戦後日本の巡洋艦隊再建構想
 護衛艦が19500tまで大型化した現代では若干想像力が必要ですが、巡洋艦規模の護衛艦建造は1970年代の日本には非常に難しいものでした。

 8300t型ヘリコプター巡洋艦構想と6000t型ミサイル護衛艦構想、もちろん実現していません、しかし実現していましたらば、海上自衛隊は巡洋艦隊を護衛隊群の中枢に置く編成となっていたのかもしれません。そして現実的な脅威として、ソ連太平洋艦隊の増強が顕在化しており、太平洋正面はアメリカ海軍が全体の安定化を、とは不確定要素が生まれる。

 カリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦がベルナップ級ミサイル巡洋艦に続いて建造されますが、こちらはMk13発射装置を前後に配置しています。そしてイルミネータとしてSPG51Dを四基、前後に各二基を搭載しました。ソ連の超音速対艦ミサイルを運用する超音速ミサイル爆撃機へ、空母を護る為にはこうした強力な防空艦が必要となった訳です。

 実際のところミサイル発射装置の即応性やイルミネータの配置がどのように影響するのかは、前方からの脅威への対応、ミサイルの知識が十分ではなく申し訳ないのですが、海上自衛隊は最終的に護衛艦はたかぜ型としてMk13を艦首側に配置したミサイル護衛艦を建造し、たちかぜ型に後部、はたかぜ型に艦隊前方を警戒するとの運用に収斂してゆきます。

 8300t型ヘリコプター巡洋艦構想と錯綜した6000t型ミサイル護衛艦構想は、しかし、8300t型ヘリコプター搭載護衛艦がターターシステムを搭載していた場合、飛行甲板にMk10単装発射装置を並べるとは考えられませんので、ミサイル発射装置は艦首側の前部に配置されていたことでしょう。ここで艦隊前方の防空警戒が実現していた可能性は、ありますね。

 具体的には護衛艦はるな型検討当時になんとか基準排水量を5000t規模としてターターシステムを搭載する構想はあったのですから、8300t型ヘリコプター巡洋艦構想に盛り込めなかった影響が違う形で検討されたのでしょうか。しかし、実現していれば6000t型は巡洋艦規模といって過言ではなく、海上自衛隊に巡洋艦隊が整備されていたこととなりました。

 しかし、たちかぜ型建造は、第一次石油危機の影響長期化と第二次石油危機という不安定な時代を背景に長期化し、6000t型ミサイル護衛艦構想というものは実現しませんでした。しかしながら、6000t型ミサイル護衛艦構想はソ連海軍のカーラ級対潜巡洋艦の6600t、クレスタⅡ級対潜巡洋艦の5700t、キンダ級ミサイル巡洋艦の4700tよりも大型の構想です。

 8300t型ヘリコプター巡洋艦構想と6000t型ミサイル護衛艦構想、もちろん実現していません、しかし、思い起こせば7200t型ミサイル護衛艦こんごう型、13500t型ヘリコプター搭載護衛艦ひゅうが型、7700t型ミサイル護衛艦あたご型、19500t型ヘリコプター搭載護衛艦いずも型、8200t型ミサイル護衛艦まや型、一世代遅れまして実現はしているのですね。

 超音速爆撃機Tu-22Mバックファイア、海上自衛隊が護衛艦の将来計画を検討するなか、1969年に初飛行を迎えたソ連の最新鋭機は1972年より大量生産に移行します。射程600kmのKh-22は超音速対艦ミサイルで、数十機が飽和攻撃を自衛隊に対しかける可能性は、バックファイアの目標が米空母である為に低いのですが可能性は皆無でもありません。

 8700t型ヘリコプター搭載護衛艦として、全通飛行甲板構造を採用する新しい護衛艦の構想はこの頃から検討の課題となりました、8300t型ヘリコプター巡洋艦とは設計思想が異なる構造で、イギリスにおいて開発されたハリアー攻撃機を搭載し、AIM-9空対空ミサイルを搭載し、バックファイアのミサイル攻撃を迎撃しよう、という研究が、開始された訳です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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