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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

極超音速滑空兵器を迎撃せよ!防衛省のレールガン開発とアメリカのクロスドメイン指揮統制

2022-04-29 20:13:26 | 先端軍事テクノロジー
■二〇三〇年代の新たな脅威!
 技術開発には膨大な予算を必要とする為に方向性が的外れなのかどうかという所は大きな関心事です。そこで今回は日米の二つの取り組みをみてみましょう。

 極超音速滑空兵器、これは21世紀の、いや2030年代の現実的に大きな軍事的脅威となります。極超音速に対しては理論上光速まで加速し得るレールガンが最適、こうした認識のもとで防衛省は実用レールガンを開発開始、中国とアメリカはレールガン実用砲を開発し、アメリカは実用化断念しました。アメリカは意外な方法での迎撃を検討しているようです。

 日本のレールガン開発は、すると一周遅れの時代錯誤なのでしょうか、そこで今回はレールガン開発とアメリカがレールガン以外の方法での極超音速滑空兵器迎撃を目指すクロスドメインデータリンクやスターリンク衛星計画というものを見てみましょう。実のところ、日本もアメリカも方法は違うのですが、得意分野や現実的なアプローチを図っているよう。

 アメリカ陸軍はクロスドメイン指揮統制に基づくERCA拡張型砲兵兵器システムの射撃試験を実施しました。従来、音速の十倍という速度と不規則軌道を描き長距離攻撃を行う極超音速滑空兵器の迎撃には電磁方式により天文学的初速により弾薬を投射するレールガンによる直接射撃が必要と考えられていましたが、当れば通常の野砲でも撃墜可能です。

 M-1299-ERCA自走榴弾砲はこの試験に参加しています。M-1299-ERCAは58口径の長砲身155mm榴弾砲と、追加搭載される自動装填装置により31発の砲弾を搭載し毎分10発の射撃が可能となります、ただ車体基部がM-109A7自走榴弾砲の改良型である為に自動装填装置は現在の車体には搭載出来ず、将来的には主砲システムのみ別の車両に搭載する。

 DEVCOM-AC陸軍戦闘兵器能力開発司令部では、極超音速兵器の迎撃には精密な弾道計算が必要としており、今回の試験では砲弾にBSIM精密弾道シミュレータ技術構成要素の計測装置を搭載しています。技術が完成すれば極超音速滑空兵器が如何に高速でも、暴走オートバイに立ちはだかるカラーコーンの役割を担い、相手の運動エネルギーで破壊します。

 アメリカ軍は近年増す極超音速滑空兵器の早期探知へ172基の低軌道監視衛星を展開させる構想です。これはスターリング衛星という一つの打ち上げロケットから数十機の小型人工衛星を低軌道に投入する新技術を用い、144基の追跡衛星と28基の監視衛星を数基のロケットにより展開させ、極超音速兵器が大気圏内の摩擦熱で発する特性を識別するもの。

 クロスドメイン指揮統制といい、アメリカでは極超音速滑空兵器迎撃に初速の高いレールガン投入を構想し開発していましたが、早期探知さえできるならば、極超音速滑空兵器は機動が読めれば多数が既に配備されるごく普通155mm野砲の誘導砲弾であっても進路上に展開させ迎撃可能と方針転換しています、この為に早期探知が必要とされていました。

 弾道ミサイルよりも低高度を飛翔するとともに大気との摩擦熱で特徴的な赤外線を大量に発し、小型衛星からの探知は可能です。衛星同士はレーザーデータ通信を実施し、コンマ秒単位で目標情報を伝送し、これを一瞬の間も置かず野砲弾にて超音速滑空兵器の進路上に障害として展開させる、クロスドメイン指揮統制を実現する為の大量衛星と云う事です。

 防衛省は極超音速兵器迎撃を主眼にレールガン開発を本格化させる方針で来年度予算へ65億円の開発費を盛り込むとのこと。防衛省は防衛庁時代から高射機関砲の後継としてレールガン研究を行っており、1980年代後期からアルミペレットを投射する研究を行っていますが、基本的に攻撃ヘリコプター等を迎撃する35mm高射機関砲の後継が主眼でした。

 防衛装備庁では2010年代にレールガン試作砲により2000m/sという戦車砲弾を上回る初速を実現しています、極超音速兵器迎撃には発見と同時に初速の早いレールガンにより素早く叩き落とす必要がありますが、この研究で先行していたアメリカ海軍では射程200kmを示しつつ、電源確保等の問題から従来砲を用いるクロスドメイン防衛に転換しています。

 アメリカでは野砲をスターリング衛星によるデータリンクにより極超音速滑空弾を早期探知し迎撃する指針に転換していますが、アメリカでは艦船の発電能力かレールガンを難しくした事とは対照的に、日本の場合は野砲ではなく専守防衛の特性上地上に置き、レールガンが必要とする大量の電力を発電施設から有線式により取得するという運用が可能です。

 日本は宇宙開発分野で大きな遅れが在ります、それはアメリカでいうアポロ計画のような熱狂が裾野分野を大きく広げて産業化させた様な、宇宙にロケットを上げるならば採算度外視でも予算が集まる、こうした期間はバブル期に終わっており、例えば日本の宇宙産業も予算を考えるならばスタンダードSM-3製造や滑空兵器開発の参画する以外活路が無い。

 スターリンク衛星のような迅速に宇宙へ監視体制を打ち上げる技術も施設も、そもそも宇宙産業そのものが小規模すぎます。しかし、レールガンでしたらば得意分野と云う訳ではありませんが、基礎研究も古く高度磁石や電源技術にもまだ世界水準のものがあります、するとレールガンもスターリンク衛星も、日米が得意技術で課題に臨む、こうした姿勢が見えてくるのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-舞鶴,戦後自衛隊の文化は上陸ビールを中舞鶴で嗜む

2022-04-29 14:19:19 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 舞鶴を探訪するならば上陸ビールという戦後自衛隊の文化も堪能して欲しい、喩え見学の乗艦であっても上陸なのですからね。

 舞鶴基地、本日は舞鶴グリーンフェスタが行われている所なのですけれども、舞鶴まで歩み伸ばしたならば、是非とも海軍の伝統と云いますか寧ろこれは海上自衛隊の伝統と云うべきか、味わってほしいものですよね。それは基地の街の文化ともいえるかもしれない。

 中舞鶴、舞鶴基地を舞鶴地方総監部の横を国道27号線に沿って400mほど進みますと、いや400mといっても北吸岸壁の長さに比べれば微々たるものですよ、すると昔ながらの喫茶店のようなお店が見えてくるのです、コーヒー和光、なにか時計店や埼玉の地名のよう。

 喫茶店なのですが、中高生お断りとありますので、まあ珈琲以外に大人の飲み物も供するお店なのですよ、という。雰囲気は入りずらいという方もいるにはいるようなのですけれども、入ってしまえば落ち着いた店内と空調に寧ろ落着きというものでして、さてさて。

 レスカ。いやアメリカ海軍は長らく艦内禁酒の内規がある為に、コカコーラかペプシコーラを艦内で呷ってビールの代替としているという悲しい歴史があるので、日本は上陸してもレスカ、レモンスカッシュだ、という訳ではありません、まずは水分を摂らないと、ね。

 海上自衛隊は艦内禁酒だ、旧海軍では酒保で買えたのに今の時代はパソコンのwordも酒保を変換できない時代です、すると上陸ビールという、新しい言葉が生まれるのですね、要するに艦隊勤務を終えて上陸の際に一杯やる、という。もう春夏秋冬関係なくビールです。

 旭日輝くアサヒビール。ここ、喫茶店なのですが生ビールを頂けるのですよね。喫茶店といいますか、パブのような雰囲気、いやここは珈琲を頂くのはお酒が苦手な方、という印象なのでしょうか、まずカウンターに落ち着き、そして周りの方に挨拶しつつたしなむ。

 上陸ビール、飲み方は名刺代わりというところでしょうか、打ち解ける最初の仕草というところです、此処は舞鶴、海軍の街であり造船の街であり自衛隊の街、ふとした会話もいろいろと勉強になるものでして、そしてなによりここ府下一番の暑さ、ビールが心地よい。

 舞鶴という街は海軍の街ですので入港し上陸ビールを嗜む方は多いですし、造船の街ですので仕事上がりのビールも多いのでしょう、そういった意味で初めてのお客人にも馴染みやすい雰囲気がありまして、ここは京都でも湊町なのだなあ、と気分を味わえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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プーチン大統領-作戦干渉ならば電撃的対応,現実味帯びるウクライナ有事拡大と対ロシア反撃能力行使の是非

2022-04-29 07:00:44 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ有事がそのまま日本の周辺事態となる懸念を真剣に検討し法整備を行った方が良いのではないか。

 ロシア軍のウクライナ侵攻が周辺国に飛び火した場合、隣国には複数のNATO加盟国がりますが、欧州地域での大規模紛争となった場合、日本はどのような対応を迫られるのでしょうか。日米防衛協力が進む現状、ウクライナ有事を遠い東欧の事態であるとの認識が多いようですが、侵略しているのはロシアでありロシアは隣国であるとの認識が必要です。

 日米防衛協力の視点から考えておかねばならない視点は、第一に太平洋正面へ戦火が拡大する懸念、第二に在日米軍が欧州正面へ転用される際の抑止力低下という可能性、この二つです。太平洋正面とは、在日米軍基地が攻撃される事態と米艦防護任務の際の不測事態という可能性で、特に三沢基地や車力分屯基地など、ロシアに近い日米共同施設がある。

 反撃能力、政府はこれから従来の敵基地攻撃能力を反撃能力と転換するようですがこの論理は北朝鮮のミサイル脅威などを念頭としていました、しかし、例えば三沢基地などにカリブル巡航ミサイルが撃ち込まれた場合、ウラジオストクの太平洋艦隊司令部や水上戦闘艦、ハバロフスクの指揮中枢等に対し、行使の余地があるのかは、法整備を急ぐべきです。

 プーチン大統領は27日、作戦干渉ならば電撃的対応を行う、日本を含む欧米のウクライナ支援とロシア経済制裁に対して、こうした恣意的な発言を行いました。電撃的事態が何を示すのかは不明ですが、ロシア軍のウクライナ侵攻が周辺国に飛び火した場合という視点は最早想定外で済まされるものではありません、更にプーチン大統領の発言はこう続いた。

 ロシアはソ連が崩壊した後にも最強の核保有国の一つである、こう発言している事を、電撃的対応には核兵器による恫喝、恫喝には当然投射も含め選択肢に含まれているのではないかという懸念が生じる訳です。ただ、いきなり戦略核を投射し全面核戦争の戦端を切るという可能性は低いのでしょうが、経済制裁は国際法上武力行使に含まれるのが現実です。

 電撃的対応を行うとして、やはり懸念するのは、ロシア側が定義した上での僅かな攻撃、反撃を意図せずNATOに対して僅かな軍事攻撃、例えばミサイル数十発による飽和攻撃、こうしたものがNATOとの全面戦争に展開する可能性も否定できません。この点、日本は恒久法整備は曖昧であり、想定外を塞ぐ法整備を進めなければ、不測の事態はありえます。

 ウクライナ有事の周辺事態への拡大と自衛隊法の関係ですが、例えば現行法での反撃能力、元々は策源地攻撃能力として日本国内へ脅威を及ぼすミサイル施設などに対する攻撃能力を、分り易く敵基地攻撃能力と示したものが、逆に先制攻撃を意図するとの誤解を回避する為に反撃能力と言い換える検討が進められているのですが、当初の展望と相違が。

 北朝鮮ミサイル部隊等に対する反撃能力等が考えられていたのですが、特措法でも無く法整備は曖昧に対象国を示していない為、法整備が行われるならば、ロシア軍が日米共用機地に対して攻撃を行った際に、例えばの表現と前置きしたうえで、三沢基地の米軍F-16戦闘機と共に自衛隊のF-35戦闘機が“反撃能力を行使”する事も法的に可能となります。

 周辺事態へ拡大する可能性は、今のところ低いのですが、今年二月中旬までは多くの方の視点で、ロシア軍がウクライナ全土へ全面侵攻する可能性を高いとは考えていませんでした。また、ロシア軍がモルドバ侵攻の可能性を示唆し、そして偽旗作戦ととれる挑発行為を受け、在欧米軍などはポーランドに加えルーマニアへ展開を開始、先が読めないのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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