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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ポーランドM-1A2戦車250両導入決定とT-14無人走行にルクレルク新迷彩

2021-09-06 20:01:04 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 戦車に関する最新情報です。ラリーボンド氏の小説”ヨーロッパ最終戦争”のようにポーランドがエイブラムス戦車の導入を決定しました、欧州では初です。

 ポーランドのブルワチク国防大臣はアメリカ製M-1A2エイブラムス戦車250両の導入を発表しました。これは7月15日の記者会見において明らかにしたもので、ブルワチク国防大臣は戦車の導入を、ロシアのT-14アルマータ戦車に対抗するうえで性能が証明された最高性能を持つ戦車としてM-1A2の最新型M-1A2SEP-2V-3を選定した、としています。

 M-1A2SEP-2V-3の採用について、ロシアのT-14アルマータ戦車は2023年にも大量生産が開始されるとされ、現在の主砲は125mm戦車砲ですが、自動化された砲塔システムはより大口径の戦車砲に対応し、遠距離交戦能力も従来ロシア戦車よりも強化、ロシアの友好国ベラルーシを挟んでロシアと対峙するポーランド軍には重大脅威と認識されています。

 M-1A2SEP-2V-3はM-1エイブラムスシリーズの最新型です、ただ、アメリカ軍仕様に採用されるもオーストラリアなどの同盟国へ輸出されていない劣化ウラン装甲等を搭載しているのかは明らかにされていません。ポーランド軍は主力戦車としてドイツ製レオパルド2A4の近代化改修型やT-72戦車を独自発展させたPT-91,PT-16戦車などを運用しています。
■ポーランドM-1A2は60億ドル
 日本の戦車に関する政策も増強の方へそろそろ再構築すべきではないかと考える。

 ポーランドのM-1A2エイブラムス戦車250両取得費用は60億ドルに昇るとのこと。M-1A2SEP-2V-3は最新型であるとともに、M-1エイブラムスシリーズはオーストラリアや中東地域へ多数輸出されているが、ヨーロッパではレオパルド2やルクレルク戦車、チャレンジャー2主力戦車など戦車を国産する諸国が多く欧州NATO諸国では初の採用となる。

 M-1A2SEP-2V-3主力戦車について、ポーランドの国防費は年間120億ドル程度であるため60億ドルの戦車取得計画は巨額の防衛装備調達となるが、ポーランドでは旧式化したソ連製T-72戦車や国産化した独自仕様のPT-91をM-1A2SEP-2V-3により置換える構想という。すると現在ポーランドが開発しているPT-16戦車の開発が継続されるのか、焦点と成ろう。

 ポーランドはワルシャワ条約機構時代より戦車国産化を進めており、上掲のPT-91が代表例として挙げられるが、近年にもスウェーデン製CV-90の120mm砲搭載型を独自に再設計し、ステルス車体を採用したPL-01を試作、旧式化したT-72戦車後継に充てる構想があった。しかしPL-01は不採用となり、ポーランドの戦車生産基盤去就が注目されていた。
■T-14アルマータ無人走行試験
 第2師団が受け持つ北海道北部の対岸であるロシアではこうした新型戦車の運用が開始されつつある。

 ロシア国防省はT-14アルマータ戦車の無人走行試験を7月までに開始した。T-14アルマータ戦車は無人砲塔を採用し乗員は車内の装甲カプセル内から戦闘を展開させる新世代の戦車であるが、製造を担うウラルヴァゴンザヴォド社は装甲カプセルからの戦闘や操行能力は同時に遠隔操作による無人戦闘を念頭とした設計である、とかねてより発表している。

 T-14アルマータ戦車の無人操縦については2020年8月に実施された陸軍2020兵器展において間もなく開始すると発表しており、間もなく一年を経る2021年7月までに試験開始を発表する意味が在ったとも考え得る。T-14アルマータ戦車は画期的な戦車だが、量産は遅れ気味、ロシア戦車として非常に大柄で、ロシア軍は旧型のT-72B3改修等を優先している。

 T-14アルマータ戦車は戦闘重量55t、正面装甲は圧延均一鋼鈑換算で1400mmに達し125mmの2A82M1戦車砲を搭載するとともに最高速度は80km/h以上を発揮する。2015年モスクワ対独戦勝軍事パレードにて発表されたが、その後の量産が遅々として進まず試作戦車という分析が一部に為されたが、2023年から大規模部隊配備を行うと発表された。
■テールドフランス新迷彩
 フランスでは新型戦車の開発と共に不思議な色の戦車が出てきました。日本の二色迷彩はしかしこう考えると遠方では識別が難しくなる効果も期待できるのかも。

 フランス軍は7月14日に挙行されたフランス革命記念軍事パレードにおいてテールドフランス新迷彩を発表した。テールドフランス迷彩は海老茶色または赤葡萄色の単色迷彩で、陸軍が長年研究した新迷彩、一定以上の距離において肉眼による検出時間を16%延長させる効果があり、また光学カメラや暗視装置などに対する秘匿性も向上させているという。

 テールドフランス迷彩が採用された背景には戦闘の遠距離化が挙げられ、一般に迷彩は従来、近距離用のきめ細やかなものから大型の遠距離用に分けられた一方、戦闘距離が数km単位となった場合は単色迷彩のほうが逆に目立たないとの研究がある。これは一見第二次大戦中のイギリス軍北アフリカ塗装と似たものだが、欧州地域での研究結果でもある。

 革命記念軍事パレードでは、テールドフランス迷彩はVBCI装甲戦闘車やグリフィン装甲車、MLRSやカエサル簡易自走榴弾砲、VAB軽装甲車やVBL軽装甲機動車などほぼすべての車両へほどこされ、例外は地対空ミサイルが伝統的なNATO迷彩により参加、またパリ消防旅団は指揮官のアクマッドトラック以外の消防車両が伝統的な赤色で参加している。
■時事:防災の日,大規模訓練なし
 此処からは時事の中でも最新の話題を紹介しましょう。

 日本政府は9月1日、防災の日に併せて中央防災訓練を実施しました。しかし、目下感染状況が非常に厳しいCOVID-19新型コロナウィルス感染症の状況に鑑み、大規模な防災訓練を行うものではなく、首相官邸や各省庁、東京都や神奈川県庁など限られた期間がインターネット回線による訓練と、官庁への緊急の徒歩出勤を演練するにとどまっています。

 訓練の想定は東京都直下型マグニチュード7.3という地震が発生し、連絡手順などを確認するものですが、COVID-19感染拡大前に行われたような自衛隊が参加しての架橋訓練や集合訓練、大規模火災対処や重症者航空搬送訓練等の実動訓練は今年も行われていません。西日本では地震を想定し机の下などに隠れる訓練に5万2000名が室内で参加しました。
■時事:サウジがミサイル迎撃戦
 サウジアラビアにまたしてもイエメンフーシ派武装勢力より弾道ミサイル攻撃が加えられました。

 サウジアラビア国防省は9月4日に石油関連施設が弾道ミサイル攻撃を受け迎撃したと発表しました。国防省とサウジアラビアの国営サウジ通信などによれば弾道ミサイル攻撃が在ったのはサウジアラビア東部ダンマーム郊外上空、迎撃により十四の建物が損傷し子供2名が負傷したと発表、弾道ミサイルはイエメンから発射されたものとみられています。

 サウジアラビアの国営アラムコ石油関連施設を狙ったものとみられ、国防省は当初の発表では弾道ミサイル攻撃ではなく無人機3基を迎撃したとしていました、産油国であるサウジアラビアにとり、国営アラムコの石油施設は戦略的重要性がある一方、2019年9月のミサイル攻撃では半分の施設が麻痺した教訓から防空軍などは防空体制を強化していました。
■時事:アフガン北東部の激戦
 激戦が続くアフガン情勢、アフガニスタン正規軍残存部隊を何とか空から物資や武器などでアメリカは支援できないのでしょうか。

 アフガニスタン北東部パンジール州ではタリバーンがアフガニスタン正規軍により撃退され、まだアフガニスタン正規軍の抵抗が続いている事が5日、明らかとなりました。タリバーンは一時、パンジール州制圧を発表しましたが、その直後にアフガニスタン正規軍残存部隊からなるNRFAアフガン抵抗戦線がが制圧を否定する発表を現地から行いました。

 アフガニスタン正規軍残存部隊を率いるのはアフマドマスード将軍、彼は国民的英雄で同時多発テロ直前の2001年に暗殺されたマスード将軍の実子です。タリバーンは先週にも新政府樹立を発表する予定でしたが、パンジールでは一時的に撃退されたとの情報もあり、また鹵獲により武器を確保したタリバーンは米軍撤退により物資を絶たれている状況です。


北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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