◆東北地方太平洋沖地震災害派遣任務事実上の完了
東日本大震災に係る大規模震災災害派遣の終結について 平成23年8月31日防衛省
1 東日本大震災にかかる自衛隊の大規模震災災害派遣は、災害派遣の活動の現状及び現地ニーズ等を踏まえ、8月31日をもって終結いたします。
2 現在、福島県において実施している入浴支援については、東北方面総監が継続して実施いたします。また、福島県において実施している原子力災害に係る除染支援等についても東北方面総監等が継続して実施いたします。
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2011/08/31a.html

本日防衛省より上記のとおり発表がありました。戦後最大の地震津波災害ということもあり、最大時には10万6000名の派遣が実施された東日本大震災への災害派遣でしたが、これでようやく3月11日以来の大規模災害派遣が完了した、ということです。

地震発生とともに自衛隊の派遣要請規模が幾度も政治主導により無理に上昇、そもそも首都直下型地震への災害派遣が5万名の派遣を想定していましたので、東京直下型地震の倍という規模の派遣が行われたのですが、結果論として間違ってはいなかったのだろうと思います。

他方で、自衛隊では実任務として創設以来初めての予備自衛官召集が行われ、また非常に残念なことで張るのですが派遣隊員のなかには過労死という事態も発生しています。原子力災害派遣では被曝した隊員もかなりの数に上るわけで、得られた教訓は反映させなければなりません。

削られる一方であった人員と予算と装備に関して、予備動員や後方支援体制の在り方、部隊の即応と集中を両立させるための基盤的防衛力と動的防衛力両立の必要性、戦略予備という概念の必要性、加えて施設や装備面、人員面だけではなくこれらの充実を考えてゆかなければなりません。

また、被曝した隊員、すでに福島第一原発の作業員には急性白血病による死者が出ています。東京電力では死亡した当日に原発事故との因果関係は皆無、と主張していますが当日に皆無と主張できる妥当性はありませんし、同様に自衛官の後発性障害の可能性は残っており、国は一生涯に責任を持った支援を行う必要があるでしょう。

歴史上まれにみる無能な総理は原子力災害の拡大を放置し、被災地復旧を特措法も組むことなく平時の手続きで未曾有の規模の被災地へ遅滞した復旧を試み、最後まで権力の座に固執したことで新首相に予算概算要求への関与の機会を奪った歴史的な事態にあります。しかし、こうしたなかで自衛隊は求められた能力以上のものまでもを実現しました。特に第一線の創意工夫と上級指揮官の機転、自衛隊の教育訓練体系が間違っていなかったことを示しました。

さて、かつて安倍総理大臣は戦後レジームからの脱却を提示し、国家構造の革新を試み道半ばに退陣への道を歩みましたが、脱原発によるエネルギー政策の刷新と震災対応の失敗による周辺国への安全保障情勢への影響は予想しない形で戦後レジームからの脱却を強いることになりそうです。

この点課題は多く、財政再建を強いられている中でばらまき政策によりこの問題を拡大させた新与党に拡大阻止できなかった震災の復興費用という巨額の負担がのしかかっています。他方で上記のとおり安全保障環境の激変は自衛隊にさらなる期待を強いるものとなっており、国民的合意として今後の政策を考えてゆくことがあると考えます。

ともあれ、課題は山積しているものの災害派遣任務を達成した、ということは世界に誇れる事実です。派遣隊員には略章ではない防衛記念徽章を発行し名誉を担うとともに、次の大規模災害への備えも忘れずに精強な自衛隊を維持することができるよう、希望したいです。
北大路機関:はるな
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