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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

警察用拳銃にクラック アメリカ製回転式拳銃で同型拳銃は二万五千丁を保有

2011-01-15 23:12:50 | 先端軍事テクノロジー

◆S&W M360拳銃200丁でクラック発生

 イギリスのガーディアン紙にユーロファイターに関する気になる記事があったのですが、本日は警察拳銃の話題。

Img_1051  警察拳銃に不具合=200丁、全国に回収指示-納入業者に原因究明要請・警察当局・・・ 全国の警察官が使用する米国製の拳銃約200丁に小さな亀裂が入る不具合が相次いで見つかったことが13日、警察関係者への取材で分かった。警察庁は全国の警察本部に不具合の見つかった拳銃の回収を指示。国内の納入業者に対しては、原因究明をするように要請した。関係者によると、不具合が見つかったのは米メーカーの回転式拳銃で通称「サクラ」。材質にアルミ合金を使用するなどして小型、軽量化しており、米国で流通している同種の拳銃が日本の警察向けに改良されている。  

Img_1143  サクラは、それまで採用されていた米メーカーの別の拳銃が製造中止になったため、耐久性を高めた後継の銃として2006年から導入。現在は日本の警察官が使う拳銃の約1割に当たる約2万5000丁が、全国の警察本部に配備されている。不具合は09年1月、県警の拳銃担当者から「ひびが入った」との報告があり発覚。この際は新品に交換したが、昨年春から夏にかけ、他の複数の県警からも同様の報告が寄せられた。購入から2~3年の新しい拳銃だったことから経年劣化の可能性は低く、警察庁は昨年9月、不具合の実態を調べるため、全国の警察本部にサクラの一斉点検を指示。11月までに銃内部に亀裂のある拳銃約200丁が見つかったという。(2011/01/13-20:28http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011011300888 

Img_0946  警察用拳銃でクラックが見つかったとのことです。警察用拳銃で“サクラ”というものが使用されているのは知っていましたが、てっきりミネベアのニューナンブM-60,これは38口径五連発回転式拳銃として警察用に開発された拳銃、正確には警察では拳銃を短銃、装甲車を警備車と呼ぶようですが、ここは便宜的に拳銃と、さて、これを長く制式用として取得しており、この派生型で銃身を精密化した輸出用試作型にニューナンブサクラというのがありましたので、これを装備していると思いきやアメリカ製を輸入して使用していたのですね。S&W-M-360SAKURA,これはM-36の発展型とのことです。しかしニューナンブM-60はS&W M-36に範を採った拳銃で個人的に大型グリップの採用や安全装置の形状工夫や引き金部の安全装置など安全性重視の設計は注目していたのですが。しかし、昨今の都道府県警視閲式等の報道で装備している拳銃にはSIGP-230やS&Wの自動拳銃(S&W M6904のような中型だったと記憶)の姿も見られますので、いろいろと使ってはいるようですが。

Img_1010  先日、ポリマーフレーム拳銃の話題を紹介した際にお教え頂いた事で、海上保安庁が採用したSIG P-226自動拳銃について、アルミフレームの部分が疲労によりクラックが入った、という事例があったのですが、なるほど警察拳銃でもこうした事例が起きましたか。警察用のニューナンブM-60は銃身3インチの型式を制服警官用、2インチの型式を私服警察官の警備用として装備化させていたのですが、90年代より軽量化を重視して2インチ型を制服警察官にも支給していたとのこと、拳銃の軽量化は日本における趨勢だったのですね。しかし、こうした事例も起きうる、ということでした。それにしても、警察庁には陸自の富士学校装備実験隊のような、導入予定の拳銃を北海道から沖縄まで運用し、数千発単位の射撃試験を行い強度試験を行うよな部署は無いのでしょうか。不具合が発生しても輸入業者任せ、というのでは、輸入業者にしても日本国内の企業しか入札できないのに日本国内に持ち込んで射撃試験を行う事も出来ないでしょうに。

Img_0974  しかし、今回の事案、もっとも気の毒なのは現場の警察官です。日本において拳銃を使用する法執行業務は少ないのですけれども、ただし使用する瞬間はそれだけ切迫している状況です。陸上自衛隊の64式小銃や62式機関銃等は部品脱落の話はよく耳にして、現場が苦労している話は聞くのですけれども導入数年でクラックが発生、というのは余り聞きません。命を託すものなのですから、まず最初に記事にあるように発見と処置が必要ですが、続いてどうしてこうした拳銃を選定したのか、選定作業に際してこうした問題の可能性が想定出来なかったのか、責任者を探すのではなく次にこうした選定が行われないよう方式を見直す必要があるのではないでしょうか。

Img_5311  今回の事案を俯瞰しますと、警察拳銃とはいえ輸入に依存することはある程度リスクがあり、ライセンス生産を行うべきだったのかな、と考えたりもします。螺旋吸生産しての日本国内での不具合発生ならば、製造メーカーがそのまま対処する事も出来ますからね。また、国土交通省、厚生労働省、警察庁と法執行機関には拳銃等の装備を扱う部門が多々ありますので、統括した性能試験の機関を設けるか防衛省に委託するか等評価試験を行う体制は必要ではないかな、と少し思ったりしました。そして、テロ対策等の現状に考えればH&K USPやSIG P-220、ベレッタPx-4等もう少し耐久性と執行能力に重点を置いた装備の取得も検討されてしかるべきなのでは、と思ったりもした次第です。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (16)
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