平地治美の漢方ブログ 

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村井弦斎「食道楽」の面白さ

2014年02月20日 | 散策
先日から話題にしている村井弦斎について。
朝のドラマ「ごちそうさん」に登場する文士・室井幸斎は村井弦斎へのオマージュとして
登場させたものだそうです。

代表作「食道楽」は、今読んでもとても面白くためになります。
まず始めの「緒言」では


緒言
 「小説なお食品のごとし。味佳なるも滋養分なきものあり、味淡なるも滋養分饒ゆたけきものあり、余は常に後者を執とりていささか世人に益せん事を想おもう。.............食物の滋養分は能よくこれを消化して而しかして吸収せざれば人体の用を成さず。知らず余が小説よく読者に消化吸収せらるるや否いなや。」


と、小説を食品に例えてこれからの連載における心構えを表明しております。

「学のないおばあさんが読んだとしても、面白くためになるものを書く」

というポリシーに従い、まずは胃腸を「胃吉」「腸蔵」と人に例えた第一話から面白い。
以下のように、正月からこき使われる互いの身を愚痴る場面から始まります。


第一 腹中の新年

 ..............腹の中にて新年を祝する胃吉と腸蔵「オイ胃吉さん、おめでとう」胃吉「ヤアこれは腸蔵さん、去年中は色々お世話さまでしたね。また相変りませずか、アハハ。時に腸蔵さん、今日は正月の元日といって一年に一度の日だからお互たがいに少し楽をしたいね。私たち位年中忙しくってみじめなものはないぜ。娑婆しゃばの人間は日曜日だの暑中休暇だのと一年中には沢山な休みがある。いくら忙しい奉公人でも盆と正月に藪入やぶいりがあるけれども私たちばかりは一年中休みなしだ。私は一日に三度ずつ働いていれば自分の役が済むのにここでは間食あいだぐいが好きで三度の外ほかにヤレ菓子が飛込む、団子だんごが飛込む、酒も折々流れ込むからホントに溜たまったものでない。それだから自然と仕事も粗末になって荒ごなしの物を和郎おまえさんの方へ送って進あげて毎度剣突けんつくを喰くうがこれからはお互に仲を好よくしようではないか」............
(「食道楽 春の巻」 より)


他の篇も、決して説教臭くなく面白い中に教訓があり、料理レシピあり、恋愛ありの
盛りだくさんの内容です。

「これは文学作品ではなくレシピ集だ」と、文壇からは馬鹿にされる傾向があったそうですが、
10万部も売れて皆に愛された作品だったことは間違いないですし、世間に与えた影響も大きかった
と思われます。

夏の巻以外は青空文庫が読みやすいですし、岩波からも再版されています。

春の巻
秋の巻
冬の巻


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