ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

「ミュージックテープ・コレクション」

2021-07-19 14:15:29 | コレクション

 
コレクションって言えるほど数は持ってないんだけど、もしかしたらレアな代物も混じってるかも知れないので、私の部屋に残ってるミュージックテープをご紹介したいと思います。

レコードからダビングすればミュージックテープは簡単に作れたワケだけど、一般のカセットテープより長持ちする利点があったし、かさばるLPジャケットに比べて超コンパクトなパッケージも可愛いし、レコードとは違うオリジナルの選曲&編成が楽しめたりするのもミュージックテープの魅力でした。



まずは私が持ってないワケがない『太陽にほえろ!』のベストアルバム。アナログレコードは集めてたけど、カセットテープはこれ1本しか買ってません。

ボン&ロッキー時代にアポロン社から発売されたBGMセレクションで、友人が持ってたカセット『太陽にほえろ!総集編(ポリドール版とは別物)』に対抗して買ったんだけど、アッチの方が多彩なラインナップで充実してましたw こちらはお馴染みのキャラクターテーマばかりで正直つまんないです。



『太陽にほえろ!』の全楽曲を創られた大野克夫さんは、ジュリー=沢田研二さんの全盛期を支えられた作曲家でもあり、バック演奏も同じ井上堯之バンドでした。

けど、私が『危険なふたり』や『時の過ぎゆくままに』を聴いてジュリーのファンになった頃は、まだ『太陽~』と同じ人が作曲されてることは知らなかったと思います。

『太陽~』の曲を聴き続けて大野メロディに耳が馴染み、無意識にジュリーの楽曲にも惹かれたのかも知れないけど、インストルメンタルのレコードとしては日本一売れたと云われる『太陽~』のサントラとジュリーの全盛期を担った大野克夫さんは、とにかく偉大としか言いようがありません。

ジュリーに関してはなぜかミュージックテープばかり買って、レコードは1枚も持ってません。『ダーリング』をフィーチャーしたベストセレクションのテープも持ってたけど、友人にあげちゃいました。

特に好きなのは上記3曲のほか『勝手にしやがれ』『カサブランカ・ダンディ』『あなたに今夜はワインをふりかけ』『おまえがパラダイス』『ストリッパー』あたりでしょうか。テープの発売元は『太陽にほえろ!ベストアルバム』と同じアポロン社です。



ジュリーと並んで好きだった歌手が、石野真子さん。初めて本格的にファンになった女性アイドルです。

当然、まずはルックスに惹かれた(初恋の子に似てる!)ワケだけど、吉田拓郎さん作曲によるデビュー曲『狼なんか怖くない』と『わたしの首領(ドン)』が琴線に触れまくったのも大きいです。

以降、拓郎さんが抜けても『失恋記念日』『日曜日はストレンジャー』『ジュリーがライバル』と魅力的な楽曲が続いたのに、『ワンダー・ブギ』あたりから妙に子供ウケを狙った感じになってしまい、チャイルディッシュなものに拒否反応が出ちゃう年頃だった私は急激に冷めていきました。

ピンクレディーなんかもそうだったけど、アイドルが子供ウケを狙い始めると凋落の兆しで、その時期を過ぎると今度は凡庸な(明らかに制作予算を削られた)楽曲ばかりになり、引退や解散に至るパターンが多かった印象があります。

テープの発売元はビクターで、『MAKOライブ1』はタイトル通りファーストコンサートツアーを良いとこ録りしたアルバム、『恋のディスク・ジョッキー』は真子さんのDJ風ナレーションを挟んで「ジュリーがライバル」や「春ラララ」等の楽曲を収録した4thアルバムのカセット版。



富田靖子さんの『思春期・前期』は、映画『さびしんぼう』の主題歌とBGM2曲を含んだ、たぶんセカンドアルバムのカセット版かと思われます。『さびしんぼう』に感動しすぎた余波で衝動買いしちゃいました。

ショパンの『別れの曲』に大林宣彦監督が詞をつけられた『さびしんぼう』の主題歌は、いかにも'80年代風のPOPなアレンジが映画の余韻をぶち壊すとして不評みたいだけど、私は意外に好きです。残酷で切ない結末の映画だから、かえって救いに感じたんですよね。



テープの発売元はコロンビア。歌詞カードには富田靖子さんによる手書きのメッセージも印刷されてます。靖子さん、アイドルだったんですね!w

私は石野真子さん(つまりタヌキ顔)がタイプだから、どちらかと言えばキツネ寄りの靖子さんはストライクゾーンから外れるんだけど、それでも好きにさせちゃう魔力が『さびしんぼう』にはあったワケです。

ちなみに富田靖子さんと言えばアミューズ事務局、アミューズと言えばサザンオールスターズ。ジュリーと真子さんを経て、中3あたりから私はサザンに傾倒していき、『キック・オフ!』ってタイトルのミュージックテープも買いました。

『勝手にシンドバッド』から『涙のアベニュー』あたりまでのシングル曲とアルバムからのセレクト曲(オープニングは『いなせなロコモーション』!)を集めた、カセットならではの内容で名作だったと思うけど、友人にあげちゃいました。今、もしかしたらプレミアがついてるかも?

高校時代、私はほとんどサザンと『太陽にほえろ!』しか聴いてませんでしたw あ、寺尾聰さんの『リフレクションズ』も擦りきれるほど聴きましたね。ちなみに親友Hが傾倒してたオフコースは大嫌いでしたw(甲高い美声の男性ボーカルがチョー苦手なんです)



オマケとして、中学時代に自作したカセットテープのジャケットも載せときます。勉強しなかったもんだからヒマを持て余してたんですねえw

宮内淳さんのファーストアルバム『ひとりのメロディ』をダビングしたものと、ファーストアルバム&セカンドアルバムからのセレクションにアルバム未収録のシングル曲、さらに『太陽にほえろ!』と『あさひが丘の大統領』のBGMまで入ってる夢のベストアルバムw、そして『あさひが丘の大統領』サントラ盤に『徹子の部屋』(宮内淳さん出演回) の音声を付録したオリジナル編集のカセットテープ。

こういうのを作るのが好きだったんですねえ。もちろんパソコンなど影も形もない時代だから、雑誌のグラビア写真などをコラージュした100%手作りのジャケット。字がとても雑ですw

当時、雑誌にそれ用の(切り取ればカセットテープのジャケットになる)ピンナップが付録されたりしてましたから、石野真子さんのはそれを使ったみたいです。いや~、懐かしい!

ちなみに大槻ケンヂさんが石野真子さんを「永遠のオナペット」と評されてましたが、激しく同意ですw


 

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「日本人の顔に見えない!」

2021-07-15 09:45:10 | 日記

 
いちおう大河ドラマを毎週観てますけど、もはや惰性で、視聴をやめる準備は万端に整ってます。

主役の若手俳優をはじめ、出てくる若い人がみんなアンドロイドかCGみたいに見えて、全然感情移入できないのです。

現代の俳優たちが演じるんだから、描かれた時代の日本人に見えないのは仕方がない。当然それは分かってるんだけど、人間にさえ見えなくなっちゃったら観続けるのはツラい。

自分がトシを食ってしまっただけの話なんでしょうか? 私より上の世代は、例えば草刈正雄さんが時代劇に出て来られた時点で「こんな日本人あの時代におるか!」って感じだったのかも?

でも、草刈さんの場合はその役を際立たせる狙いがあってのキャスティングだと思うけど、今の大河は明らかに違う。ただ女性視聴者を呼び込むため、とにかく片っ端から美形を揃えちゃえ!ってな意図が見え見えになっちゃってる。今の大河を好意的に観てる人もそこは同じように感じておられるのでは?

それが悪いとは言ってません。若い視聴者に時代劇を楽しんでもらうには、まず若い客を寄せるパンダが必要だろうから仕方がない。ただ、私はとても感情移入できない。そう言いたかっただけです。

いや、大河だけじゃないですね。時代劇だから余計にそう感じるだけで、シュッとした無味無臭の若い俳優ばかり出てくる昨今のドラマ総てに言えることです。



それともう1つ、近年の大河ドラマに物凄く白々しさを感じてしまうのが、女性キャラの扱われ方。私の少年時代でさえ男尊女卑の文化がまだ色濃く残ってたのに、江戸や明治の時代に、いくら何でもそれは有り得んやろ!っていつも思っちゃう。

あくまでファンタジーとして、こうだったらいいなあって思いながら観ればいいとしても、そこにあからさまな「媚び」を感じちゃうのがどうにも気持ち悪い。昨今の男性ミュージシャンによるラブソングも、同じ理由で聴くに耐えません。正直、ヘドが出そうです。

男尊女卑を推奨したいワケじゃ勿論ありません。ただ、いくら何でも、そこまで媚びんでもええやろ!っていう、ただ自分を売り込みたいだけの人たちに対する気持ち悪さです。

要するにそういう事です。別にイケメンが悪いワケじゃない。天下の大河ドラマがそこまで媚びを売らなあかんのかい!?って、だからもう気持ち悪くて観てられない!っていうお話でした。


 

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『ハコヅメ/たたかう!交番女子』2021

2021-07-14 00:05:11 | 刑事ドラマ HISTORY






 
2021年夏シーズン、日本テレビ系列の水曜夜10時枠でスタートした、日本テレビ&日テレアックスオン制作による警察ドラマ。泰三子さんの人気コミックを実写化した作品です。

これはイイ! 『刑事7人』『緊急取調室』そして『ボイス/110緊急指令室』と、なぜ人気があるのかサッパリ分かんない番組の続編ばかり並んじゃった絶望的なこのシーズン、唯一の期待作だった『ハコヅメ/たたかう!交番女子』が期待を裏切りませんでした!

安定職を求めて公務員試験を受けまくり、唯一受かった警察に就職して埼玉県警の町山交番に配属されたものの、あまりの激務に耐えきれず辞める寸前だった新米婦警=川合麻依(永野芽郁)が、捜査一課から飛ばされて来た元エース刑事=藤聖子(戸田恵梨香)の指導を受け、共に働くことで一人前の警察官に成長していくという王道ストーリー。

二人の直属の上司となる交番所長=伊賀崎にムロツヨシ、聖子と同期生だった町山署捜査一係の刑事=源に三浦翔平、その相棒刑事=山田に山田裕貴、聖子の後任として一係に配属された新撰組オタクの女性刑事=牧高に西野七瀬が扮するほか、平山祐介、千原せいじ、渕野右登、深沢敦etc…といったキャスト陣が脇を固めてます。

まずは主役の2人が飛びっきり魅力的! ポンコツ婦警を演じる永野芽郁さんは究極にキュートだし、クールな笑顔の裏に猛毒を秘めた戸田恵梨香さんはさすがのコメディエンヌぶり。

で、そんなお二人のそれぞれ父親役と大恋愛の相手役を過去に演じて来られた、ムロツヨシさんがそばで見守ってる構図にも温かみを感じるし、とにかく観ててすこぶる心地が好い!



そして捜査一係の刑事たちが、交番女子を差別したり目の敵にするような糞ワンパターン芝居を一切しないのも好印象!

ちょっとイカれた感じの三浦翔平くんと、天然キャラの山田裕貴くんっていう、曲者どうしの若手コンビも良いスパイスになってます。山田くんはあの若さで刑事ドラマにいったい何本出てるんでしょう?(またキミか!?って言っちゃったよw)



原作者の泰三子さんが実際に女性警察官(10年間勤務!)だったお陰で、警察組織や勤務の描かれ方がすこぶるリアルで、かつ日常的であることも高ポイント。

制服巡査を主役にしたドラマは、遠い過去にも『俺はおまわり君』とか『俺たちルーキーコップ!』等が存在したけど、いずれも内容はイマイチでした。

その理由はたぶん、リアルじゃなかったから。捜査課の刑事みたいに殺人犯と対決したりしない、制服巡査の地味な日常を描いてもドラマにならないっていう思い込みから、話をあまりに盛り過ぎたり喜劇に寄せ過ぎたせいで、いかにも嘘っぽくて誰も共感できないドラマになっちゃった。

その点、この『ハコヅメ』は嘘をついてないことが(現実の警察内部を知らなくても)伝わって来て、あの『踊る大捜査線』TVシリーズを初めて観たときの新鮮さが甦りました。

で、その『踊る~』の原点である『太陽にほえろ!』のスピリットも、私は強烈に感じるワケです。新米婦警の麻依がヘマして凹んでる姿が、まさに先日リバイバル掲載したばかりの第1話『マカロニ刑事登場!』の若きショーケンさんとダブって見えて、私はうっかり泣いちゃいました。

これですよ! これが本当の警察ドラマなんです! 謎解きも要らない、組織内のいざこざも要らない! いや、別にあってもいいけどそんなのばっかじゃつまんない! マジでもうウンザリなんですよ!!

そんな状況下だから余計に輝いて見えちゃうってのも確かにあるけど、絶対それだけじゃない。少なくとも、制服巡査を主役にした連ドラとしては初のエポック、これぞ決定版!と呼ぶに相応しい作品がようやく生まれたと、私は断言します。オススメ!

セクシーショットはもちろん永野芽郁さん、戸田恵梨香さん、西野七瀬さんです。


 

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『太陽にほえろ!』#001

2021-07-12 08:20:09 | 刑事ドラマ'70年代

 
レジェンド番組の初回レビューが続きましたので、ずいぶん過去の記事ではありますが、画像を大幅増量して「真打ち」をリニューアル掲載したいと思います。

ディープな『太陽にほえろ!』ファンにとっては『桃太郎』や『浦島太郎』並みにエヴァーグリーンな作品なんだけどw、そうでない方には意外と知られてないかも知れません。(一般的には殉職エピソードの方が広く観られ、記憶に残ってるんじゃないでしょうか?)



「新番組・太陽にほえろ! 型破りの刑事達が都会の谷間を舞台に、男どうしで渡り合う悪への挑戦!」

「見かけはどうでも刑事は腕だ! 今日に命を燃やす新米刑事がベテラン刑事に囲まれて、激しく燃やす正義への情熱!」

「若さゆえにあらゆる可能性を信じ、強さゆえに恐れを知らない彼ら。裕次郎とショーケンを中心に、魅力の男達が巻き起こす大型アクション! 太陽にほえろ! 来週、この時間にでっかく登場! どうぞご期待下さい!」

↑ ビデオソフトが発売されるまで私自身も観た事が無かった、予告CMのナレーションです。BGMにはメインテーマではなく、マカロニのテーマ(アコースティック・バージョン)が使われてました。

ちなみにテロップのコピーは『正義への情熱を叩きつける魅力の男たち!』『NOWな刑事たちの物語!』でしたw 時代ですねぇ~。でも実際『太陽にほえろ!』のビジュアルとサウンドは、当時としては飛び抜けてポップであり、本当に新しくて格好良かったんですよね。



☆第1話『マカロニ刑事登場!』

(1972.7.21.OA/脚本=小川 英&長野 洋/監督=竹林 進)

このエピソード、私自身もリアルタイムでは観てません。私が『太陽~』と出逢ったのは翌々年、ジーパン(松田優作)時代の後期なんです。

だから、初めて第1話を観たのは夕方の再放送。すでに本放送はボン(宮内 淳)&ロッキー(木之元 亮)の時代に入ってたかと思います。ストーリーはノベライズ本を読んで知ってたけど、それでもマカロニ刑事の初陣はサプライズに溢れてました。

まず驚いたのは、この回のみアヴァンタイトルが存在すること。新番組としては別に珍しい事じゃ無いんだけど、まずOPタイトルから始まり、曲のイントロ部分でその回のダイジェスト(NGフィルム使用)を見せる『太陽~』の定番スタイルに、私はすっかり慣らされてましたから……

「マカロニ刑事のテーマ(別名:行動のテーマ)」をバックに、愛車のSUZUKIジムニーを走らせる早見 淳(萩原健一)を、正面から捉えたショットで『太陽にほえろ!』は幕を開けます。

信号待ちの間、淳は煙草を吸おうとするんだけどライターが無い。で、そこに通りかかったバイク乗りにライターを借りて火を点ける。信号が青になると、淳はそのままジムニーを走らせちゃうw

慌てて追いかけて来たバイク乗りに「ライター返せよ、ライター!」って言われ、やっと自分が借りパチしてる事に気づいた淳が、照れ笑いしながら「どーもすいません」って頭を下げ、ライターを返したところで、あのイントロが流れ出すw そしてメインタイトルへ。

えーっ、これが『太陽にほえろ!』のファーストシーンなの!?ってw、私は二重に驚いたもんです。全然カッコ良くもなければ刑事物っぽくもない。かと言って奇をてらったワケでもなく、ショーケンらしさを前面に押し出した感じですよね。

そして始まるオープニングタイトルも、七曲署のレギュラー刑事達に混じって小料理屋のオヤジ役=ハナ肇さんまで単独ショットで紹介されてたり、後半のボス歩きに挿まれるフラッシュショットで殿下と長さんがセット扱いされてる等、黎明期ならではの光景が観られて逆に新鮮でした。

とは言え、メンバー紹介のパターンや、中盤における新人刑事の全力疾走、そして後半のボス歩きへと流れて行く『太陽』タイトルバックの黄金パターンは、既に出来上がってました。

オープニングのみならず、この第1話は『太陽』がこれから15年に渡って描いて行くテーマが、ほとんど全て網羅されてるんですよね。正味45分で番組のスピリットを語り切った、本当に見事なファーストエピソードです。



タイトル明けは七曲署の玄関口。早見淳がジムニーを乗り付け、颯爽と階段を上がって行くものの、全開になった「社会の窓」を警官に注意されるというw、恐らく日本の刑事ドラマとしては前代未聞だったであろう、コミカルな初出勤シーン。

なお、我々の記憶に残るお馴染みの七曲署(外観のみ海上自衛隊の官舎を使用)の玄関口には、階段がありません。最初期は違う建物が使われてたみたいです。

建物内部は『俺たちの勲章』や『華麗なる刑事』等でも使われた、国際放映のスタジオセット。廊下を進む淳が最初に遭遇したのは、少年係の婦警「シンコ」こと内田伸子(関根恵子=高橋惠子)でした。

「ちょっとキミ。交通課ならね、あっちよ。何やったの? 違うの? ごめんなさい、あなた、洋服の月賦屋さんだっけ?」

いくらお巡りさんとは言え、見ず知らずの相手に向かって何と失礼な言い草でしょうかw 淳でなくてもそりゃカチンと来ますw

「可愛いコだけどねぇ、あんまり人をからかっちゃいけないよ」

「あんた誰よ」

「俺は、刑事なんだよ」

「ええっ!?」

そんなに驚かんでもって思うけどw、この当時なら無理もありません。長髪の警察官なんて前代未聞な上、三つ揃いのスーツにノーネクタイっていう淳の服装も、刑事としては有り得ない時代だった事でしょう。



そしていよいよ、カメラは一係室の中へ。まだ机や椅子は木製で、電話機はダイヤル式(いわゆる黒電話)、空調は無くて常に扇風機が回ってるという、実に懐かしい昭和の風景です。

「いや~逃げた逃げた(笑)」

「ゴリさんらしいなぁ(笑)」

↑ と、刑事達が意味不明な世間話をしてる所に、勢いよくドアを開けて入って来た淳が、おもむろに「おはよぉーございます」と挨拶します。

「なんだお前?」

最初に口を開いたのは石塚刑事(竜 雷太)でした。髪型がお馴染みのヘルメットスタイルではなく、少し長めの髪を七三に分けた、まだ若々しい「ゴリさん」です。

いきなり「お前」呼ばわりされてムッとした顔の淳は、ふてぶてしく「早見淳です」って答えます。初日からこれほど態度がデカい新人刑事は、『太陽~』の長い歴史においても彼が最初で最後でしたw

「ああ、あんたかね。今日からウチに配属になったというのは」

やや緊張した空気を、温かい笑顔で一瞬にして和らげたのが「長さん」こと野崎刑事(下川辰平)、階級は巡査部長。長さんもまた、後にお馴染みとなる坊主頭ではなく、少し長めのヘアスタイルでした。そして……

「初日から滑り込みとはいい度胸だな」

ドスの効いた声が響き、いよいよ「ボス」=藤堂係長(石原裕次郎)が登場します。机に足を乗せて新聞を読んでるという、最初期にしか見られないお行儀の悪さは、まだ日活時代のイメージを引きずってる感じです。

そんなボスを見て、淳がハッと緊張するような描写がシナリオにはあったけど、映像の中の淳はちっとも物怖じしてませんw

普通なら、天下の大スター=石原裕次郎を目の前にしたら、若手俳優でなくとも最初はガチガチに緊張しちゃうもんなのに、ショーケンさんと優作さんだけは全くそんな様子が無かったそうです。最初から器が違ってるんですよね。

それでもシナリオに「緊張する」って書いてあるなら、緊張する芝居をしなくちゃいけないワケだけど、ショーケンさんにはその理屈が通用しない。

自分は歌手であって役者じゃないから、自分自身とかけ離れた芝居は出来ない。そう主張するショーケンさんは、自分の役がやたら半人前に描かれたシナリオを見て「俺はこんな子供じみた人間じゃない。出来ない。やだ。降りる」とか言って、クランクイン前日まで製作側と揉めてたんだそうですw

なのでチーフプロデューサーの岡田晋吉さんは、撮影日にショーケンさんがちゃんと現場に現れてくれるのか、気が気でなかったと自著で回想されてます。

そしてもう1人、岡田さんをヤキモキさせたのは誰あろう、ボス=石原裕次郎さん。本来、テレビ出演には乗り気じゃなかった上に、病後すぐだった事もあって、事前の打ち合わせは全てマネージャー経由だったとか。

つまりチーフプロデューサーでさえ、クランクイン当日が裕次郎さんとの初対面だった。本当に裕次郎さんはスタジオに来てくれるのか? テレビの現場にうまく馴染んでくれるだろうか? 前夜は緊張と不安で一睡も出来なかったと、これも岡田さんは自著に書かれてます。まったく、すごい世界ですよね。

で、スタジオに現れた裕次郎さんは撮影用のカメラを見るなり「こんなオモチャみたいな機材で撮れるのかよ?」なんて言うもんだから、現場の空気は一瞬、凍りついちゃった。

映画撮影で使われるのは35ミリフィルムなのに対して、TVドラマは16ミリフィルムですから、カメラも小さくなります。嫌味でも何でもなく、裕次郎さんは純粋に「大丈夫なの?」って思われたんでしょう。

そんな感じで、当初はテレビの現場に対して懐疑的だった裕次郎さん。自らのプロダクションが抱える借金返済の為にやむなく引き受けた仕事ゆえ、契約は1クールのみ。

約束の3ヵ月を消化した時には、裕次郎さん宅に乗り込んだ竜雷太さんが徹夜で説得し、まき子夫人の後押しもあって、なんとか降板を思いとどまってもらったそうです。

そんな風に、主役が2人とも乗り気じゃないままスタートした番組が、やがて爆発的な大ヒットを飛ばし、約15年ものロングランを果たすワケですから、世の中ホントに何がどう転ぶか分かりません。

でも、ショーケンさんが文句タラタラ言いながらも1年間全力で走り続けたのも、裕次郎さんが降板を思いとどまったのも、結局は『太陽にほえろ!』っていう作品そのものに魅力があったからだろうと私は思います。でなきゃ、お2人共あんなに素晴らしい演技は残さないでしょう。

……さて、ボスに促されて配備係から拳銃とホルスターを受け取って来た淳は、なんだか嬉しそう。その様子を見て、初期はクールなプレイボーイ的キャラだった「殿下」=島刑事(小野寺昭)がからかいます。

「よぉ、マカロニウェスタンにこんな格好したヤツいなかったか?」

この時から、早見淳は「マカロニ」と呼ばれるようになりました。横文字のニックネームを持つ新人刑事、その第1号が生まれた瞬間です。恐らく日本初でありましょう。

で、事件は一体いつ起こるんだ?って、皆さん思われてるかも知れませんが、番組開始からまだ10分ぐらいしか経ってませんw ドラマ自体はテンポ良く進んでるんだけど、私の文章が無駄に長いワケですねw

だって、さすがに記念すべき第1話ですから、語りたい事が沢山あり過ぎるワケでして…m(_ _)m ここからはサクサク行く予定ですw

「ゴリさん? あっ、ゴリラのゴリですか!」

「なんだと?」

マカロニのニックネームが決まった所で、あらためて先輩刑事たちの徒名も紹介されました。

ゴリさんのゴリはゴリ押し(で捜査する)のゴリで、殿下は貴公子然とした風貌から、そして長さんは巡査部長という階級からの命名。

そして、これは過去の記事にも書きましたが、早見淳は本来「坊や」と呼ばれる予定でした。だけどショーケンさんが「俺は坊やじゃない!」ってw、猛抗議されたんですね。

岡田Pが「君じゃなくて、早見淳というキャラクターが坊やなんだ」っていくら説明しても、ショーケンさんは頑として聞き入れなかった。それで仕方なく「マカロニ」って徒名がひねり出されたんだそうです。

これはショーケンさんの単なるワガママに見えるけど……いや実際ワガママなんだけどw、もし当初の予定通り「坊や」がニックネームになってたら、どうだったでしょう? 『太陽にほえろ!』は、あんなにヒットしなかったかも知れません。

何が若い世代にウケて、何がウケないかを、ショーケンさんは本能的な部分で察知されてたんじゃないでしょうか? そういうずば抜けた感性を持ちながら、ご本人は自覚してないもんだから「ワガママを言う」「ダダをこねる」ってやり方でしか表現出来なかったのかも知れません。

音楽担当に大野克夫さんを強引に推した事も、最後に殉職って形で番組を(これまた強引に)降りた事も、またしかりです。

ショーケンさんのワガママがたまたま、ケガの功名で番組を大ヒットに導いたように見えるけど、潜在意識下では「こうした方がウケる」っていう予感があったんじゃないでしょうか?

当時のショーケンさんは、本当に感性だけで芝居されてる感じでした。悲しい時にはこんな表情、悔しい時にはこんな動き……みたいな、定形パターンには全くハマらない演技で、ホントに何をしでかすか分からない。

それが我々視聴者にとって新鮮で刺激的で、あれだけの人気を呼んだワケだけど、ご本人は決して意識上では計算されてない。今あらためて見ても本当に神がかり的な感じで、もう「天才」としか言いようがありません。

だけど、後年のショーケンさんにはそんな感じが無いんですよね。黒澤明監督の映画に出演された辺りから、普通の……どちらかと言えば不器用な俳優さんになっちゃった気がします。

巨匠に揉まれて俳優としての自我に目覚め、計算して芝居をするようになった事が、天才少年を普通のオトナに変えてしまった。全くもって私の勝手な解釈だけど、そんな気がしてなりません。



「はい、捜査一係。……なに、殺し?」

ようやく事件です、お待たせしましたw ボスのデスクの電話が鳴るのが事件発生の合図みたいなもんで、全ての出来事を刑事側から描く『太陽』ならではの作劇パターンです。

現場に行こうとしたマカロニはボスに止められ、近くの雀荘にあの人を迎えに行くよう命じられます。勤務中に麻雀を打ってるアウトローな刑事、ボスに次いで七曲署を象徴するあの人=「落としの山さん」こと山村警部補(露口 茂)です。

15年の歴史の中で、山さんほどイメージが変わって行った人はいないと思います。初期の山さんは長さんより髪が短かく、べらんめぇ口調でよく喋るし「へっへっへ!」なんてスケベそうな笑い方をするw、江戸っ子風のキャラクターでした。

それがジーパン時代の後半あたりから刑事コロンボ化し、テキサス(勝野 洋)時代を経てスコッチ(沖 雅也)が登場する頃には、お馴染みのインテリジェントな大学教授風キャラに落ち着きます。

さらに後期になると「第2のボス」みたいな役目を担い、ボスの傍らに立つ構図が定着するんだけど、本来の山さんは独自のルートで情報を収集し、勝手に動いて手掛かりを土産に戻って来る、いたって自由な存在でした。

雀荘に入り浸るのも情報収集の一環であり、さっそく情報屋とコンタクトした山さんは、殺されたシローという男が拳銃密売組織と繋がってたらしい事を突き止めます。

そして、シローを撃ち殺した犯人がマモルという青年である事も、すぐに判明します。マモル=記念すべき第1号の犯人を演じたのは、あの水谷豊さん。



俳優としては新人同然だったショーケンさんに、現場で色々アドバイスする教育係として、若きベテランの水谷さんが抜擢されたんだそうです。

後に第30話『また若者が死んだ』でも2人は共演し、やがて名作『傷だらけの天使』で探偵コンビを組む事にもなります。水谷さんは松田優作さんとも『太陽~』が縁で親友関係を結ばれました。

なお、この第1話には後に参議院議員となる山東昭子さんも雑誌記者の役で出演し、新聞記者(片岡五郎)とスクープを競いながら、山さんにまとわりついたりするコミカルな演技を披露されました。



この2人の事件記者はセミレギュラーとして、以後も活躍する予定だったのが中止になったそうです。確かに、取って付けたようなコント芝居は『太陽~』の空気に馴染まず、明らかに浮いてました。



さて、マカロニはマモルがよく出入りしてたスナック「パークサイド」を張り込み、恋人のユカ(鹿沼えり)をマークします。店内には『少年の魂』というレコード(唄=萩原健一)が流れてましたw

マモルが慕ってるらしい店のマスター(浜畑賢次)が、マモルと同世代で見るからに反体制っぽいマカロニに「なんで刑事なんかになったんだ?」と尋ねます。

「本当は、そのハジキ(拳銃)を持つのが嬉しいからじゃないのかい?」

「だったらどうなんだ?」

「あんた、正直だな。きっと、マモルもハジキを持ってみたかったんだよ」

つまり、マカロニもマモルも似た者どうし。一歩間違えればマカロニだって、人殺しになってたかも知れない……

こうして刑事と犯人の心情がリンクする作劇は、今でこそ古典的な手法と思われがちだけど、当時としては画期的だった筈です。『太陽』以降、ほとんどの刑事ドラマが同じスタイルに傾倒し、結果的に「よくあるパターン」になっただけなんですね。

「マモルが抵抗したら、撃つつもりなのかい?」

「撃つ。それが俺の仕事だ」

そしていよいよ、マモルが店に現れます。ちょうどマカロニと鉢合わせになったマモルは、ユカの「逃げて!」っていう叫びを聞いて、反射的に逃走します。すかさず追うマカロニ!



新宿の人混みの中を全力疾走するマモルとマカロニ。これ以前のドラマなら、すぐに拳銃を抜いてドンパチ始めちゃう所を、『太陽』の場合はまず走る。全力で、ひたすら走る。

これも以前の記事と重複しますが、クランクイン前日まで「やだ。出来ない。降りる」ってダダをこねてたショーケンさんをその気にさせたのは、メイン監督=竹林進さんの「君が全力で走る姿を撮りたいんだ」っていう口説き文句でした。

これもまた、ショーケンさんの中で(無意識に)閃くものがあったんじゃないでしょうか? 結果的に「とにかく刑事が全力で走る」映像が、「殉職」と並んで『太陽にほえろ!』の名物になるワケですから。

でなけりゃ、普通は「走る姿を撮りたい」って言われた位でその気にならないですよね? 本当にワガママなだけの役者なら「そんなの疲れるだけじゃん」で終わってた筈です。

ショーケンさんは本能的に、そういう決定打となる人物設定なり演出なりを、創り手側から引き出そうとされてたんじゃないでしょうか? 買いかぶり過ぎかも知れないけどw、そう解釈するとバッチリ辻褄が合うんですよね。



で、延々と走った挙げ句に袋小路に追い詰められたマモルは、拳銃を抜いてマカロニに銃口を向けます。そして反射的にマカロニも拳銃を抜いた!

「動くな、ぶっ放すぞ!」

……と、言ったものの、マカロニは固まっちゃいます。さっきマスターと交わした会話が影響してるのかも知れません。

「撃て! 撃ってみろコノヤロー!! 撃てねえのかよ? 撃つぞ!」

既に1人殺してるマモルですから、弾みで引金を引いちゃうかも知れません。

「危ない!」

駆けつけたゴリさんがマカロニをかばった瞬間、銃声が轟きます。ゴリさんは脚を撃たれ、マモルは逃走します。

遅れて駆けつけたボスが、ボーゼンと立ち尽くすマカロニを見て、怒鳴ります。

「馬鹿野郎っ、貴様それでも刑事か!?」

ゴリさんが撃たれて負傷するのも、ボスの「それでも刑事か!?」って台詞も、後々『太陽~』の定番メニューになって行きます。ゴリさんは包帯姿がトレードマーク化してましたからw



幸いゴリさんは軽傷(と言っても即入院ですが)で済んだものの、マカロニは凹みます。ボスの一喝が心に突き刺さったんですね。

一係メンバー行きつけの小料理屋「宗吉」のマスター=内田宗吉(ハナ肇)が、落ち込むマカロニに声をかけます。彼はシンコの父親であり、かつてボスと同僚だった元刑事でもあります。

「お前さん、ゴリさんがやられる前に犯人を撃ち殺した方が良かったと思ってんじゃないですかい? そんな事を気にするなら、よした方がいいねえ。人を撃つって事がね、どんな事かあんたには……」

宗吉はそこで口をつぐみます。彼にもまた拳銃にまつわるトラウマがあり、それが刑事を辞める原因にもなった。そのいきさつは、後に第13話『殺したいあいつ』で詳しく語られる事になります。



そして翌朝…… マカロニは町のタバコ屋さんで下宿しており、家主のウタさん(賀原夏子)もまたマカロニを心配します。

「昨日はあんなに張り切って出掛けたのに、今日は朝っぱらからギターなんか弾いちゃって…」

悩める時は弾き語りをするっていうのも、現在じゃパロディのネタにされかねない、昭和ならではの懐かしい光景です。



マカロニはスーツに着替えもせず、GジャンとGパン姿のままゴリさんを見舞いに行きます。

「俺、刑事に向いてねぇような気がする」

そんな腑抜けた台詞を吐くマカロニの顔に、記念すべき第1発目のゴリパンチが炸裂しますw これも後々、新人刑事の通過儀礼として恒例化する事になります。

「昨日、刑事部屋でデカい口叩いたのは、どこのどいつだ! 一度や二度怒鳴られたくらいで、何だそのザマは!?」

「怒鳴られて厭になったんじゃねぇんだ! 人を殺さないで責められるなんて、そんな商売が厭になったんだ」

「馬鹿野郎! ボスがお前を怒鳴ったのはな、お前が撃たなかったからじゃない、ホシを逃がしたからだ! 撃たなくて怒鳴られるぐらいなら、俺なんかとっくに……」

そこでゴリさんはおもむろに、枕元に置いたホルスターから拳銃を抜いてw、引き金を引きます。弾丸は入ってません。

「解ったか。ホシを追ってる時のデカには、後ろを振り向いてるヒマなんかねぇんだ。しっかりしろ!」

これも以前ご紹介した通り、ゴリさんはいつも拳銃に弾丸をこめない主義である事を示した場面ですが、上記の台詞だけじゃ視聴者に伝わらなかったかも知れません。

だけどマカロニにはしっかり伝わったようで、彼は再び捜査を開始します。そのバックに流れるのは「マカロニ刑事のテーマ(別名『行動のテーマ』)」で、この曲に乗せて刑事たちの捜査活動をモンタージュして見せる手法も後に定番となり、他の番組に模倣される事にもなります。



ユカのアパートを張り込みながら、マカロニは煙草を吸いまくりますw これも時代ですね。ショーケンさんの吸い方がまた独特で格好良くて、真似したくなっちゃいます。

この場面に流れる曲は『ブルージンの子守歌』(唄=萩原健一)、『太陽』挿入歌の第1号です。(スナックで流れた『少年の魂』はこれのB面)

ここで話は急展開します。口封じの為にマモルの生命を狙う拳銃密売組織が、マカロニの目の前でユカを拉致するのでした。

組織の連中はパークサイドのマスターをリンチし、それを見せつける事でユカにマモルの居場所を吐かせます。この組織は何だか無国籍な感じに描かれてて、ここにも日活アクションの名残りが感じられますね。

一方、七曲署チームも目撃者情報で組織のアジトを突き止め、舞台はトントン拍子に決戦の地(つまりマモルの居場所)=後楽園遊園地へと移ります。



『太陽にほえろ!』が掲げたポリシーの1つに「昼間のアクション」ってのがあって、従来の犯罪ドラマみたいな暗いイメージを避ける為、アクティブな撮影は昼間に、それも屋外ロケが多用されました。

だけど番組開始当時は、どこへ行っても(犯罪が描かれる事による)イメージダウンを恐れて、なかなか撮影許可が貰えなかったんだとか。

『太陽』は日本テレビ=読売系列って事で、何とか後楽園の使用が許可されたワケですが、番組の知名度が上がるまでは本当に苦労が絶えなかったそうです。(ヒットした途端にどこも手のひらを返して大歓迎。現金なもんです)

さすがは第1話だけあって、七曲署チームvs密売組織の大立ち回りにはボスも参加し、日活仕込みの華麗なるアクションを見せてくれてます。

この場面にゴリさん(入院中)がいないのが、唯一残念でした。ゴリさんのパワフルな立ち回りは『太陽』アクションを代表する見せ場ですからね。



マカロニはマモルを追って、再び走ります。遊園地から球場へと乱入し、ゴミだらけの客席をがむしゃらに走る2人の若者。追い詰められたマモルは、またもやマカロニに拳銃を向けます。

「撃てよ。お前もハジキ撃ってみろよ!」

「いや、俺は撃たねえ。拳銃置いて来たんだ。マモル! 俺だってお前と同じだよ。拳銃が好きだ。でも、俺が撃ちてぇのはお前みたいなヤツじゃねえんだ」

「うるせえーっ! 俺をナメやがって!」

逆上するマモルに、ボスの怒号が炸裂します。

「馬鹿者っ!」

ボスに睨まれると、あらゆる犯罪者がフリーズし、戦意を消失しちゃうんですよね。理由は、ボスだからですw

「早見の言う通りだ。俺たちは人殺しじゃない。お前だって人を殺したくて殺したワケじゃあるまい? 銃を捨てろ。捨てるんだ!」

「……俺、ただピストルが欲しかったんだ。持ってみたかったんだ。ピストルってカッコイイもんなぁ」

最後に犯人が、泣きながら犯行動機やいきさつを語る描写も、定番中の定番ですよねw 『太陽』以前の番組にそういうパターンがあったかどうかは不明ですが……

『太陽』の場合は特に、全ての出来事を刑事側から描くドラマですから、犯人に心情を吐露させるのはこのタイミングしか無いんですよね。マモルはどうやら、拳銃を買った相手から脅迫されて、弾みで撃っちゃったみたいです。

「俺、初めから誰も撃つ気なんか無かったんだ。ホントだよ! ホントに、誰も撃つ気なんか無かったんだよぉ~!」

後の『傷だらけの天使』における「アニキぃ~」を彷彿させるw、水谷さんの泣き演技でした。

「ご苦労だった、早見刑事」

ボスはそう言ってマカロニの肩をポンと叩き、颯爽とひとり、歩き去るのでした。このパターンは『大都会』『西部警察』の渡哲也さんに受け継がれて行きますw

この場面で、ボスが「マカロニ」じゃなくあえて「早見刑事」って呼んでるのが、ちょっと不思議だったりします。もし、マカロニを1人の刑事として認めた事を表してるのだとしたら、ニックネームが「坊や」だった初期シナリオの名残りなのかも知れません。



さて… 事件は解決し、ゴリさんの病室でビールを乾杯するw、一係の面々。シンコが花瓶に花を飾ろうとしたら、既にステキな花の贈り物がそこに。「えっ、いったい誰が!?」と色めき立つ刑事たち。

そこで照れ臭そうにして部屋を出て行くボス、ってな場面もまた、『太陽』定番メニューの1つですよねw

外に出て煙草を一服するボスの横に、マカロニがやって来ます。並んで歩きながら、ボスがマカロニに語りかけます。

「もし、あの時… 犯人が拳銃を捨ててなかったら、お前どうしてた?」

「……ボスならどうしますか?」

「さぁな、俺にもよく分からん。だが1つだけハッキリ分かってる事がある」

「……?」

「それはな、人間が人間を平気で撃てるようになったらお終いだって事だ」

↑ このボスの台詞こそが『太陽にほえろ!』全エピソードに通底するテーマであり、それを極めてシンプルなストーリーで語りきった、実に素晴らしいファーストエピソードです。

この番組ほど、拳銃という小道具に対して真剣に向き合い続けた刑事ドラマは他に無かったと思うんだけど、それもこの第1話に凝縮されてますよね。

もちろん新人刑事の成長物語として、個性豊かなキャラクタードラマとして、さらにアクションドラマとしての面白さも全部詰まってて、このシンプルさ。

15年の長きにわたる歴史、その幕開けに相応しい、これぞまさしく「神」エピソードと言えましょう。

セクシー画像は、ユカ役でゲスト出演された鹿沼えりさん、当時19歳。この『太陽にほえろ!』第1話が女優デビュー作でした。

'78年の日活映画『時には娼婦のように』主演からロマンポルノの看板女優として活躍、'82年に5歳下の俳優・古尾谷雅人さんと結婚し、女優業を引退されてます。


 

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『Gメン'75』#001

2021-07-10 22:10:04 | 刑事ドラマ'70年代







 
ディアゴスティーニ・ジャパン社から隔週刊『Gメン'75 DVDコレクション』が絶賛発売中! 全355話を119刊(各3話)に分けて完全収録、そのうち274話は初のDVD化なんだそうです。凄い! けど、買わない!w

と言いつつ、私は第1話をまだ観たことが無かったので、特別価格499円の増刊号だけは買いました。第2号からは1,799円となります。

第1話『エアポート捜査線』(脚本=高久 進/監督=鷹森立一)は1975年5月24日、TBS系列の夜9時枠で放映スタート。以降、番組は'82年まで7年間のロングランを果たすことになります。

最初期のGメンは黒木警視(丹波哲郎)を筆頭に、関屋警部補(原田大二郎)、草野刑事(倉田保昭)、津坂刑事(岡本富士太)、響刑事(藤田美保子)、山田刑事(藤木 悠)というメンバーに、協力者として本庁の小田切警視(夏木陽介)も絡んで来ます。

さらに、川地民夫、寺田農、室田日出男、田中真理、田中浩、中田博久etc…といった豪華かつ濃厚なゲスト俳優たちが次々登場するこの第1話は、前回レビューした『大空港』第1話にも負けないパワーとスケールを感じさせます。

『ダーティハリー』ばりに暴走バスの屋根にしがみつく倉田保昭さんや、『フレンチ・コネクション』ばりにモノレールを激追するカーチェイス等、アクションの見せ場もたっぷり。やっぱ大ヒットする作品は最初から気迫が違う!



ストーリーは、スチュワーデス暗殺事件の裏に麻薬密輸組織の匂いを嗅ぎ付けた、本庁捜査一課の関屋&津坂、三課の草野、四課の山田、そして外事課の潜入捜査官=響と、彼女を動かす謎のキイハンター=黒木警視らがそれぞれ別個に動き出し、最終的にGメンを結成するという展開。

偶然が偶然を呼びまくり、悲劇が更なる悲劇に連鎖していくチョー強引な『Gメン』節はもちろん初回から大炸裂! そしてもう1つの特色であるハードボイルド、情け容赦の無さじゃ西部警察やマッドポリスにも負けないGメンの「取調べ」という名の「拷問」もさっそく見られます。

運び屋の1人=恩田(室田日出男)に防弾チョッキを着させ、至近距離から左胸に弾丸をぶち込む黒木警視の無表情ぶり!(あの距離だと防弾チョッキ越しでも死ぬと思いますw)

「今度は防弾チョッキ無しだ。お前のようなウジ虫が1匹消えて無くなったってな、世の中はザワともしない」

そんなセリフを吐く丹波哲郎さんの棒読みぶり! この冷酷さに比べりゃ西部署の暴力尋問なんて温かいもんですw



そうそうたるゲスト陣の中でも、ひときわクールで強い印象を残すのが、ロングバレルのルガーP08を愛用する、ゴルゴ13並みに無口な殺し屋「北斗」を演じた寺田農さん。

特に銀座の雑踏内で、室田日出男さんに手際よく弾丸をぶち込む場面が超クール! 私は悪役に肩入れすることは滅多に無いんだけど、これにはシビれました。しかし2回も至近距離から撃たれちゃう室田さんがあまりに気の毒ですw



そして、そうとは知らず麻薬密輸に加担してしまい、口封じに消されパンチラまで見せちゃう美人スチュワーデス=節子(田中真理)は、今回の主人公=関屋警部補の婚約者だった!

勿論それだけじゃ『Gメン'75』は終わりません。



裏で糸を引いてた黒幕は、関屋がずっと敬愛して来た節子の兄=警視庁の朝倉警部(川地民夫)だった!

これがGメン節です。点と点と点を強引に結びつけ、二重・三重・四重の悲劇を用意し、出てくるキャラ全員をとことんまで不幸にした挙げ句、なんの救いもなく突き放すように終わっちゃう。

私はそんな『Gメン'75』の作劇が当時は嫌いだったけど、何でもかんでもハートフルにまとめちゃう昨今の連ドラに飽き飽きしてる今は、逆に新鮮に感じて面白いです。

ラストシーンもまた、黒木警視による血も涙もないセリフが光ります。裏切られた上に婚約者を殺された怒りで、朝倉警部を撃ち殺そうとする関屋をなだめるのに、他の番組のボスなら「お前は刑事なんだぞ!」って言うところを、丹波さんは例によって無表情&棒読みでこう言い放つのでした。

「殺すなよ。1発で殺すには罪が軽すぎる。冷たい独房の中へ放り込んで一生苦しめてやるんだ」

1発で殺すには罪が「重すぎる」が正しい日本語だと思うんだけどw、大霊界はあるんだから仕方がありません。

 

コメント (2)
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