ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『これ描いて死ね』01~03

2023-04-19 10:20:04 | エンタメ全般

マンガ本は滅多に買わないんだけど、大童澄瞳さんの『映像研には手を出すな!』はNHKのアニメ版にハマって、そして とよ田みのるさんの『これ描いて死ね』は朝の情報番組で紹介されてるのを観て、つまり両方ともテレビに影響されて買いました。

『これ描いて死ね』は「マンガ大賞2023」で大賞を獲ったばかりだけど、それはまったく関係ありません。テレビで紹介された粗筋にビビッと来たワケです。



いずれも女子高生グループが主人公で『映像研〜』は映像(アニメ)研究会を、そして『これ描いて〜』は漫画同好会を、それぞれゼロから立ち上げていくストーリー。

つまり創作の楽しさに目覚め、没頭していく「クリエイターの初期衝動」を活き活きと描いた作品であり、エロ描写はいっさい期待できない点も共通してますw

こういう作品に私が強く惹かれるのは、かつて自分自身が自主映画創りに没頭してたからだけど、単に創作の楽しさや苦しさを描いただけのストーリーなら、たぶん購入には至ってません。

『映像研〜』と『これ描いて〜』が私のハートを大きく揺さぶった最大のポイントは、先にも書いた「クリエイターの初期衝動」の活写だと思います。それは先日から記事にしてる庵野秀明さんや岡本太郎さんの話題にも通じること。



『これ描いて死ね』の主人公=安海 相(やすみ あい)は、東京都の離島・伊豆大島に住むマンガ大好き高校生。

特に『ロボ太とポコ太』って作品にどっぷりハマってるんだけど、なぜかマンガを忌み嫌う担任の手島先生にいつも叱られ、マンガなんてロクなもんじゃないと説教されてばかり。



そんなある日、相は知ってしまいます。この10年間、ずっと休止してた『ロボ太とポコ太』の新刊が、東京で開催されるコミティア(同人誌即売会)で販売されることを!

それで初めて1人で東京へ出向いた相は、恐らく彼女の人生を変えることになる、2つの大きな衝撃と出くわすことになります。

まず1つ目は、コミティアで同人誌を手売りしてる人たちが皆、そのマンガの作者であったこと。つまり、それまで相にとって「読むもの」でしかなかったマンガが、実は自分で描こうと思えば描けるものだった!という衝撃。



今さらかいっ?って思うけど、こういうキッカケが無ければ意外と気づかないもんかも知れません。

そして2つ目の衝撃。『ロボ太とポコ太』の新刊を手売りしてる女性=ずっとずっと憧れ続けてきたその作者が、実は担任の手島先生だった!



ええーーっ!? あんなにマンガを否定してたのにーっ!?💦

だけどそんな事より、10年ぶりの新作を読めるのが嬉しくてたまらない相は、憧れの先生に「マンガの描き方を教えて下さい!」と懇願するのでした。

最初はきっぱりと断る手島先生だけど、相が初めて自分で描いてきたマンガを読んでみて、これまた大きな衝撃を受けてしまう。



それはとてつもなく稚拙な作品なんだけど、作者のマンガに対する愛情がこれでもかと溢れまくってて……



思わず先生の涙腺が決壊してしまう!

10年前に先生がマンガ界を離れた理由は今のところ謎だけど、たぶん、プロになって締切りに追われながら、読者や編集者のニーズに合わせて描き続けることに疲れ果て、このままじゃマンガを嫌いになっちゃう!って感じたからでしょう。

だけど最初は……ただ趣味として描いてた頃は、今の相みたいにキラキラした眼をしてたはず。

手島先生は漫画同好会の顧問を引き受けるんだけど、1つだけ絶対的な条件を出します。それは……



「これ描いて死ね」などと、マンガに命を懸けないこと。教え子にはずっと、マンガを大好きなままでいて欲しいんでしょう。

10年前に手島先生が見失い、今の相をキラキラ輝かせてるのが、つまり「初期衝動」だと私は思うワケです。

『映像研には手を出すな!』の主人公=浅草氏には天才的な素質も見え隠れしてたけど、相にはそれが無いw だからこそ尚更、単純に好きだから描きたい!っていう衝動が際立って見える。

私もウルッと来ちゃいました。主人公よりも手島先生の側に感情移入してるワケです。

かつて……昭和の時代、高校生だった頃、初めて自主映画を撮ったときの私は、やっぱり輝いてたと思います。単純に好きなことを、ただ無邪気にやってただけだから。

それが2作目、3作目と続けて行くうち、色んな欲や打算、つまり邪気が沸いて来ちゃう。こればっかりは誰も避けられない。

だから、よく云われるように、ものを創る人は自分の処女作を永遠に超えられない。上達すればするほど、初期衝動のキラキラを失ってしまう。

まあ、ノスタルジーですよね。



これも勝手な憶測だけど、庵野秀明さんや岡本太郎さんがクリエイターの中でも特に異彩を放っておられるのは、この初期衝動ってヤツを決して諦めず、処女作の輝きを絶対に超えてやる!って、常にそう思いながら作品を創っておられる(おられた)からじゃないかと。

そんなのどう考えたって不可能なんだけど、あの人たちに常識は通じない。うまくあるな、きれいであるな、ここちよくあるな、マイナスにとび込めタローマンですよ!



『シン・仮面ライダー』のドキュメンタリーでチラッと紹介されてた、庵野監督が高校生時代に撮られた8ミリ映画『ナカムライダー』は処女作かどうか判らないけど、まさに初期衝動の塊みたいな作品で、無邪気そのもの!

自ら怪人を演じる庵野少年の、心底から楽しそうなあの姿!(タローマンにちょっと似てたw)

その新鮮さを無謀にも超えようとし続ける庵野秀明ってクリエイターは、やっぱり『エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウと同じ究極のモラトリアム人間なんだと思います。

岡本太郎さんはまぁ、モラトリアムと言うより「奇才」そのものって感じだけど、初期衝動の爆発力みたいなもんを追い続けてた点で、庵野さんと凄く似てる気がするんですよね。なんだこれはっ!?


 


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