売出しに失敗したロッキー(木之元 亮)とスニーカー(山下真司)の反省を踏まえて、大々的にプッシュされたラガー(渡辺 徹)はみごとブレイクに成功!……なんてことを再三、これまで書いて来ました。
確かに、今回も2週続けての主演作ですから、優遇されてたのは間違いない。
けど、渡辺徹さんが当時アイドルとして一気にブレイクされたのは、その売出し戦略のお陰だけじゃないってことが、この第478話をあらためて観るとよく解ります。
今後、何度となく制作されていく「ラガーの失恋ストーリー」の第1弾なワケだけど、なぜ、そうしてシリーズ化されることになったのか?
それは渡辺徹さんが、抜群にそういう演技がお上手だから!なんですよね、きっと。
ロッキーとスニーカーは、致命的にロマンス芝居が出来てなかったというか、そういうガラじゃなかった。ゆえに失恋ストーリーも創られにくかった。
ここで女性人気が爆発するかしないかの運命が、ハッキリ岐かれたんじゃないでしょうか?
ボン(宮内 淳)も上手かったけど、ラガーはその上をいってる。さすがに別格のマカロニ(萩原健一)を除けば、歴代ピカイチだったんじゃないかと私は思います。
☆第487話『ケガの功名』(1981.12.11.OA/脚本=鴨井達比古&小川 英/監督=鈴木一平)
学生時代に世話になった先輩が仕事で海外へ移住し、悪い虫がつかないようにと監視役を頼まれたラガーが「自分の妹のように可愛がってる」という、先輩の妹=恵子に扮したのがなんと、ボインぼよよ〜ん!な早乙女愛さん。
先輩の妹だから歳上の可能性も無くはないけど、それにしたってラガーが「妹のように可愛がる」には、ちょっと色っぽすぎる。
早乙女さんは当時22歳だけど実年齢より大人びてますからね。たぶん、意識して色気を抑えながら演じられたと思うけど、それでも滲み出るフェロモンが余計にラガーを子供っぽく見せちゃいます。
そういうアンバランスさは『太陽〜』あるあると言うか、昭和ドラマじゃ日常茶飯事だから眼を瞑るとして、その恵子から「彼氏にプロポーズされた」と聞かされ、ルビーの婚約指環まで見せられたラガーは、早くも撃沈。
そんな折り、サラ金会社が三人組の強盗に襲撃され、多額の現金が奪われる事件が発生。その手口から見て、最近頻発するビル荒らしグループによる犯行じゃないかと刑事たちは推理します。
その捜査でラガーとコンビを組んだドック先輩(神田正輝)は、休憩中に恵子と「ルビーの指環」の話を聞いて、イヤな予感を覚えます。
「それ、ひょっとしてクサイねえ」
「何がクサイんですか?」
ビル荒らしの一味は以前、宝石店を襲うにあたり前もって女性店員と親しくなり、巧みに店の情報を聞き出していた。
そして恵子が看護婦として務めてる内科医は、今回襲われたサラ金会社と同じビルにある。そう言えば宝石店から盗まれた品にはルビーの指環も含まれていた!
「いやまさか、そんな……」
とは言いつつラガー自身、恵子がその婚約者と知り合って僅か1ヶ月で、高価なルビーを贈られた事実には引っ掛かってたのでした。
調べてみると婚約者の坂井(本郷直樹)には怪しい点が多々あり、特に右手首に巻いてる包帯が、強盗被害に遭ったサラ金会社のガードマン=大島(市川好朗)の「右手首に傷痕があった」という証言を裏付けるようで、疑惑は深まる一方。
「キライよ! 竹本さんったら、刑事になってから何でも疑うんだから!」
幸せの絶頂に水を差された恵子は当然、ハイパー激怒。
だけど、ラガーの方が正しかった。警察にマークされてると知った途端、坂井は深夜にこっそり婚約者のアパートに忍び込み、自分がプレゼントしたルビーの指環を盗み出すのでした。
翌日、ラガーと一緒に恵子のアパートを訪れたドックは、部屋に残ったクロロホルムの微かな匂いに気づきます。どうやら坂井は就寝してた恵子をクロロホルムで更に眠らせ、部屋を物色してルビーを盗み出したらしい。
さすがに恵子も、夢から醒めるしかありません。急いで坂井のマンションを訪ねてみたら、ヤツは海外逃亡準備の真っ最中なのでした。
「私にプロポーズしたのは、嘘なの? 私に近づいたのは、お金が目的だったの?」
もう誤魔化せないと悟るや本性を表した坂井は、再びクロロホルムで恵子を眠らせようとします。
もちろん、これは刑事たちが仕掛けた罠で、隠れてたラガーが怒りのハートブレイクパンチ百万発を坂井にお見舞いし、大いに恵子を引かせます。
一件落着? いや、だけど、ドラマはまだ中盤だし、これじゃサブタイトル『ケガの功名』の意味が解りません。
「結婚詐欺? じゃあ、あのルビーの指環もニセモノ!?」
そう、坂井は確かに卑劣な悪党だけど、ビル荒らしの一味とは無関係だった! 右手首の包帯も、たまたまそこを火傷してただけ。
「じゃあ彼女、傷つくなあ……」
「まあまあ、お前のお陰で悪党一匹捕まえたじゃないか。恵子ちゃんだって感謝してるさ」
「はあ……」
それがケガの功名だったワケだけど、強盗事件の捜査は何も進んでないことになっちゃう。ここは山さん(露口 茂)のカンに頼るしかありません。
「こうなると、その坂井を犯人だと証言した大島が引っ掛かるな」
目撃者であるガードマンの大島は、逮捕された坂井を見て「多分、あの男だと思います」と証言した。けれども、事件より前に犯人と面識があったらしいのに、どこで会ったかは「思い出せない」の一点張り。なにせ演じてるのが市川好朗さんで、何か裏があるに決まってます。
長さん(下川辰平)が粘りの捜査で、大島が傷害致死罪の前科を隠してガードマンの仕事に就いた事実を突き止めます。右手首に傷のある男と知り合ったのは刑務所であり、だから曖昧な証言しか出来なかったのでした。
「いつかバレると思ってました……誰の責任でもない、自分の責任ですよ」
「結論を急ぐ必要は無い。我々が欲しいのはビル荒らしの犯人の手掛かりなんだ。マジメに勤務してるキミの過去を暴くつもりは無いよ」
急転直下、大島の新証言により強盗一味の正体が判明! 主犯格をドックとラガーが見事な連携プレーで逮捕します。ただ猪突猛進するラガーをドックが射撃の腕前でカバーするだけだけどw
いかにも女性ファンが喜びそうな、この「仲良し兄弟」っぽい感じがまた、ロッキーやスニーカーじゃ出せなかったんですよね。渡辺徹さんの若さ&明るさがあればこそで、『太陽にほえろ!』の新たな黄金期は間違いなく、ラガーが築いたと言って良いでしょう。
何よりラガーが女性視聴者をキュンとさせたのが、冒頭に書いた通り失恋シチュエーションにおける「ハートブレイク」演技だと私は思うワケです。
セリフで言わなくてもラガーが恵子を好きなのは伝わって来るし、特に、別れの切なさを笑顔で表現するアクトが絶品!
「そっか……僕もその方がいいと思うよ」
今回も、ラガーに頼るんじゃなくて故郷の北海道へ帰る決意をした、恵子からの電話に彼は笑顔でエールを送りました。
「心にも無いこと言っちゃって。アニキ代わりもツラいな」
「はい、ツラいです」
そうして言葉にしなくても、いかにも哀しそうな顔をしなくても、ラガーの切なさがちゃんと伝わって来る。きっとこの瞬間に、渡辺徹さんは’80年代を象徴するアイドルの1人になられたんだと思います。
たとえ、実際は早乙女愛さんのオッパイで頭がイッパイだったとしてもw