ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#272

2019-10-07 00:00:19 | 刑事ドラマ'70年代










 
☆第272話『秘密』(1977.10.14.OA/脚本=杉村のぼる&小川英/監督=櫻井一孝)

ある夜、書道教室として使われてるアパートの一室で、花瓶による撲殺事件が発生。殺されたのは中年の男性講師で、その部屋には生徒の律子(高沢順子)もいた。

悲鳴を聞いた警官が駆けつけた際、レコードのクラシック曲が流れる中で律子は気絶しており、何者かが逃走した気配もあったと云う。

意識を取り戻した律子が「見知らぬ男が侵入して来た」と証言し、また「いつも誰かに見張られてる気がする」とも言った事から、犯人の狙いは律子である可能性も高く、ロッキー(木之元 亮)が彼女を護衛することになります。

新米刑事が、天真爛漫に振る舞う被害者女性(しかも美人)と四六時中いっしょにいたら、そりゃ惹かれていくに決まってます。ドラマの中でなくても、我々だってそうなるのがまぁ自然でしょう。

だけどロッキーの場合、顔がぜんぶ毛で覆われてるせいかw、彼女のことをどう思ってるのか表情から全く読み取れません。

たぶん、女性として意識しないように自制してる(という芝居を木之元さんはされてる)んだと思うけど、単に捜査のことしか考えてないように見えちゃうのは、後の展開を考えると残念なところです。

で、ロッキーに心を開いた律子は、幼くして母親を亡くし、8年前には父親も事業に失敗して失踪、以降は叔母(町田博子)に育てられたという不遇な生い立ちを話します。

今はアパートで独り暮らしの律子は、父親が愛用したパイプを「いつ帰って来ても困らないように」と、ずっと大切に自分の部屋に置いてるのでした。

「きっと帰って来ますよ。お父さん」

……っていうロッキーの台詞回しがまた、硬いんですよねw 想いが全然伝わって来ない。ついこないだデビューしたばかりの新人俳優さんだから仕方ないんだけど、こういう演技に関してはボン先輩=宮内淳さんはデビュー当時から上手かった。惚れっぽいのは地ですからねw

そしてある日、律子はアパートの前で父親のライターを発見し、「お父さんが帰って来た!」と狂喜乱舞します。だけど結局、どこを探しても父親の姿は見当たらず、また意気消沈。

本当に父親が訪ねて来たのだとしたら、彼はどうやって律子の住む場所を知ったのか? 疑問に思ったロッキーは、律子を育てた叔母さん宅を訪ねますが、そこにも父親からの連絡は一切ないと云う。

律子に父親と会わせてあげたい一心の、ロッキーの熱意にほだされた叔母さんは、これまで誰にも話さなかった事実を彼に打ち明けます。それは、父親が失踪した直後、幼い律子の首に絞められたような痕跡があったという事実。律子に理由を尋ねても本人は何も憶えていなかったという。

もしかすると父親は、律子の首を絞めて無理心中を図ったのではないか? 父親想いの律子は、それが言い出せないでいるんじゃないか?

さらにロッキーは、父親の知り合いで律子の現住所を知ってるもう一人の人物=会社の同僚だった西島(富田浩太郎)を訪ね、驚愕の事実を聞き出します。

西島は律子の父親とよくレコードの貸し借りをしており、彼が失踪した直後に部屋を訪ねた時、自分の貸したレコードがプレイヤーのターンテーブルに乗ったままだったという。

そのレコードとは、バッハ作曲の「小フーガ」。それは、書道教室の先生が殺された現場でかかってたのと同じ曲! これは果たして、単なる偶然なのか?

よくよく調べてみれば、律子がアパートで見つけたライターも、実は父親の失踪時から律子自身が所持していたことが判明。じゃあ、彼女は自分でライターを置き、そこで発見したような芝居をしていたのか? いったい何の為に?

「……確かめたい事があるんです……」

ロッキーは今にも死にそうな暗い声でボス(石原裕次郎)に電話し、律子を書道教室の事件現場に連れて行くことを願い出ます。

「何を確かめるつもりなんだ?」

「それは……確かめてから報告します」

言う通りにしてやらないとロッキーが死にそうなのでw、ボスは他の刑事たちにも「ここは髭モジャに任せろ」と指示を送ります。

ロッキーは律子を事件現場へ連れて行くと、レコードプレイヤーで「小フーガ」を流し、律子に背を向けます。すると彼女は、何かに取り憑かれたようにガラス製の灰皿を手にし、ロッキーの頭に振り下ろそうとするのでした。

「律子さん……やっぱりキミが……キミが犯人だったのか!」

「やめて、パパ……やめて! パパ!」

律子の父親は失踪したのではなかった。8年前に律子の首を絞め、無理心中を迫った父親を、律子はそばにあった鈍器で殴り殺してしまった。そして無我夢中で死体を床下に埋め、その記憶を潜在意識下に封印したのでした。

だけど、ある条件が重なった時にだけ、記憶が甦ってしまう。それが「小フーガ」のレコードと、歳上の男。つまり書道教室の先生は何も知らずに、ただ彼女の前であのレコードをかけたが為に殺されちゃった。

「彼女は父親を愛しすぎたんです! 動機はそれだけなんです!……それだけなんです」

駆けつけた先輩刑事たちに、ロッキーは涙目でそう叫ぶのでした。

律子につきまとい、金を脅し取ろうとした男も逮捕されます。彼は書道教室に忍び込み、たまたま律子の犯行を目撃したコソ泥。演じたのは『どっきりカメラ』のレポーターでお馴染みの野呂圭介さんで、彼を警察に売るホームレス男を演じたのが丹古場鬼馬二さん。ちょい役ゲストの面々が濃すぎますw

「さぁ、病院へ行こう。怖がらないでいいんだ。もう終わったんだ」

ロッキーは、律子の肩を抱いてそう言いました。病院とはつまり精神科のことで、これは彼女の犯行を精神疾患の症状と捉えてる事になります。たぶん『太陽にほえろ!』では初めてのケースで、当時のTVドラマとしてもかなり珍しかったんじゃないでしょうか?

ただでさえ、幼い女の子が犯した殺人という衝撃。しかも本人はそれを記憶しておらず、条件反射で同じことを繰り返してしまうというサイコパスの恐怖。子供も観てる8時台にそんなの見せていいの!?って思うけどw、私自身も含め当時の子供たちには理解出来なかっただろうと思います。

そんな衝撃的な内容もさることながら、本作の見所は何と言っても、新米刑事が想いを寄せた女性が実は……っていう『太陽ほえろ!』恒例の通過儀式。その点については、何度も書いたように木之元さんの演技が硬すぎて切なさが伝わらず、ロッキーにはちょっと早すぎたエピソードと言わざるを得ません。相手役の高沢さんが素晴らしかっただけに惜しいです。

高沢順子さんは当時22歳。刑事ドラマへの客演は多く、本作含め『太陽にほえろ!』には#441、#619、#717と通算4回のご出演。天真爛漫さとアンニュイさを違和感なく演じ分け、肉感的でなくともセクシーな女優さんで、萌えますw

その高沢さんの幼少期を演じられたのが、当時の人気子役だった柿崎澄子さん(画像4枚目)。本作では柿崎純子とクレジットされてますが、たぶん誤植でしょう。

児童映画『四年三組のはた』や特撮ドラマ『透明ドリちゃん』では主演を務め、『太陽にほえろ!』には第384話『命』にも登場。『転校生』『さびしんぼう』『姉妹坂』『野ゆき山ゆき海べゆき』など大林宣彦監督の映画にも出演され、'80年代後半まで幅広く活躍されてます。
 
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