ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『華麗なる刑事』#31

2019-10-23 00:00:12 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第31話『拳銃の報酬』(1977.11.7.OA/脚本=鴨井達比古/監督=松森 健)

しがないチンピラの哲夫(鹿野浩四郎)が入院先の看護婦=早苗(風吹ジュン)と恋に落ち、結婚すべく暴力団から足を洗うことを決意するんだけど、もちろん簡単にはいきません。

兄貴分から「拳銃を調達して来たら認めてやる」と言われ、交番の老巡査=野田(松村彦次郎)を襲撃した哲夫は、奪った拳銃を暴発させて野田に重傷を負わせちゃう。

で、兄貴分にその拳銃を引き渡し、カタギに戻れたことを早苗に報告しに行ったら、なぜか彼女は真っ青な顔をしてる。どうしたのか尋ねてみたら「お父さんが交番で襲われて拳銃を奪われたの」って言うから驚いた!

そう、哲夫は、これから早苗との結婚を許してもらうべく挨拶に行くつもりだった、彼女の父親をそうとは知らず襲撃しちゃったのでした。

野田巡査は、城西署の華麗なる女刑事=三杉理恵(梶 芽衣子)がかつて世話になった恩人でもあり、当然ながら理恵は犯人探しに躍起になるんだけど、意識を取り戻した野田は自分を襲った犯人の顔を見ていないと言う。んなアホな!

実は野田巡査は早苗の交際相手を密かに調べたことがあり、彼の顔を知っていたのでした。娘を傷つけたくない野田は本当のことが言えず、そのせいで理恵の捜査は難航します。

そんな折り、南口署の管内で暴力団の会長が射殺される事件が発生、使用された拳銃は野田巡査が奪われた物と同一であることが判明! 理恵は南口署の高村(草刈正雄)や南郷(田中邦衛)らと合流し、華麗なる合同捜査を繰り広げるのでした。

会長を射殺したのは次期会長の座を狙う哲夫の兄貴分で、最初から全ての罪を哲夫になすりつける計画だった。カップルの心中に見せかけるため早苗をも拉致し、哲夫もろとも始末しようとする卑劣な連中のアジトに、それを察知した理恵が突っ込み、高村が必殺マグナム44をぶっ放す!

……と、こうして粗筋だけ追うと『Gメン'75』ばりのケレン味あふれるストーリーで、燃える展開を想像させるんだけど、なぜかそういうカタルシスが『華麗なる刑事』には感じられないんですよね。

今回は主役がセミレギュラーの三杉理恵で、演じるのがクールビューティーの梶芽衣子さん=感情をあまり表に出さないキャラクターだから、ていうのもあるんだけど、今回に限らず『華麗なる刑事』を観て「ああ面白かった!」「スカッとした!」と感じた記憶が、私にはほとんどありません。

シリーズの顔である草刈正雄さんも軽妙洒脱さが売りで、熱い芝居をするのは相方の田中邦衛さんだけ。その邦衛さんの出番が今回は極端に少ないもんだから、余計に淡々とした仕上がりになっちゃったのかも知れません。

草刈さんや梶さんが声を荒げて芝居するような場面はほぼ皆無だし、クライマックスの銃撃戦でもマグナムを1発撃っただけ(つまり敵を威嚇しただけ)で終わっちゃう。

これは多分、番組そのものが私みたいなアクション好きの昭和男子ではなく、イケメン(草刈さんや後輩刑事の加納 竜さん)目当ての女性視聴者の嗜好に合わせて創られてるから。つまりアクションなんかより正雄サマや竜ちゃんの笑顔が見たい!ってワケです。

『華麗なる刑事』っていうタイトルにも多分そういう意味がこめられてて、熱血や泥臭いアクションは似合わない。『太陽にほえろ!』や『Gメン'75』等の王道路線と差別化したい意図もあっての事でしょう。

だから我々も熱い展開はハナから期待せず、とにかく草刈さんの格好良さや軽妙さ、邦衛さんの個性的すぎる演技、そして芽衣子さんの美しさを堪能することに徹するのが得策かと思います。

今回はオマケに若き風吹ジュンさんのナース姿に萌えることも出来ますからね。陰影のある役が多かった当時の風吹さんにしては珍しく、ごく普通の恋する乙女を健気に演じておられます。

梶芽衣子さんは当時30歳。石原裕次郎さん等が活躍された時代の日活でスクリーンデビューし、東映に移籍後『女囚さそり』シリーズや『修羅雪姫』シリーズの主演で一躍スターになられた後の『華麗なる刑事』セミレギュラー(計5回)出演でした。

前述のとおりクールビューティーで、刑事役にはうってつけの方だと思うのに、本作以外では『キイハンター』と『相棒』に1回ずつゲスト出演されたくらいで、むしろ刑事ドラマとは縁遠い女優さん。それを思えばこれは貴重なフィルムと言えましょう。
 
コメント
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