ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『大都会 PART II 』#03―1

2018-10-06 22:22:43 | 刑事ドラマ'70年代









 
昨今の刑事ドラマは誠に不自然です。極悪非道な悪党どもに、例えば真木よう子さんみたいなセクシー美女が拉致監禁され、ロープで身動き取れなくされても、最後まで一糸乱れぬ綺麗な姿でいられるって、あり得ないでしょう?

まして強盗や殺人を犯した上での籠城となれば、犯人のアドレナリンは沸騰しまくりだろうし、もし捕まったら何年も刑務所で禁欲生活、あるいはそのまま一生を終えちゃうかも知れない。

そうなったら、やる事は1つしか無いですよね? そういう欲求がまるで無い、草を食って生きてるような犯人だとしても、人質が逃げられないようハダカにする位の事はするでしょう? するべきじゃないかな? 頼むからしてくれ!

だから昨今の刑事ドラマは面白くないワケです。美女が拉致監禁されても、まったく無傷で解放される事が最初っから判ってるんだから、誰もワクワク……いやハラハラしませんよね。アホかっ!?

’70年代は違ってました。当然あるべき事が、ちゃんと真摯に描かれてましたよ。だから我々は、ドラマの中で美女が拉致監禁される度にワクワク……いやハラハラしながらテレビにかじりついてたワケです。親の眼を盗みながら!

中学生の頃、私は夕方の再放送で『大都会 PART II 』のこのエピソードをたまたま観て、トラウマになるほどの悦楽……いや恐怖を覚えたもんです。まったく、素晴らしい時代でしたね!


☆第3話『白昼の狂騒』(1977.4.19.OA/脚本=永原秀一/監督=村川透)

「1977年東京都。人口1168万。警視庁警察官40267人。犯罪発生件数20万9千件。犯罪検挙率88%」

↑ 次元大介こと小林清志さんのナレーションで始まるOPタイトルは、GAMEの演奏によるミドルテンポなテーマ曲が象徴するように、前作『大都会/闘いの日々』の社会派シリアス路線と、次作『大都会 PART III 』以降エスカレートしていく活劇アクション路線の、ちょうど中間をイメージさせる感じでした。

ドラマの内容自体、派手なアクションを取り入れながらも、警察組織の横暴や矛盾を皮肉る社会派ドラマ的な要素も残ってて、後の『西部警察』シリーズみたいに単純かつ健全なヒーロー番組とは一味も二味も違う、見応えのあるエピソードが多かったです。

この第3話は、城西署捜査一課の部長刑事「クロ」こと黒岩頼介(渡 哲也)と、その右腕となる中堅刑事「トク」こと徳吉 功(松田優作)による、アパート一室への強行突入シーンで幕を開けます。

ところが、部屋はもぬけの殻。犯人=山崎は、自分が容疑者としてマークされてる事を新聞のスクープ記事で知り、一足早く逃走したのでした。

「課長! 徳吉ですよ! 山崎が逃げました、緊急配備お願いします! ええ? 分からないよそんなの! 俺たちが着く前に逃げたんですよ!」

電話越しとは言え、捜査一課で一番偉い上司に向かって、この口の聞き方w トクは一匹狼キャラってワケでもないんだけど、基本的に偉い人が嫌いみたいですw

石原プロの脇役専門俳優=武藤章生さん扮する新聞記者が、署に戻ったクロに犯人=山崎の逃走先を聞き出そうとしますが、クロは相手にしません。

「クロさん、まさか山崎に逃げられたのはウチの記事のせいだと思ってるんじゃ……」

「とぼけんなよ。どっからあのネタ仕入れたんだ? 誰があんたに喋ったんだ?」

「それは言えません。こういう結果になった以上、尚更です」

「ああ、そうかい。それじゃ喋んな。だいたい目星はついてる」

まだ若々しいクロ=渡哲也さんは眼光もパチキ(剃り込み)も鋭く、サングラス無しでも近寄りがたい迫力があり、本当に喧嘩が強そうに見えます。

そんなクロに「ちょっと来い」って睨まれ、取調室に連れ込まれた「坊さん(あるいは坊主)」こと大内刑事(小野武彦)は、きっとオシッコを3滴ほど漏らしたに違いありません。

「坊主。何だこれは?」

クロに例のスクープ記事が載った新聞を叩きつけられ、坊さんはたぶん恐怖で口が聞けなくなったんだと思いますが、クロの眼にはふてくされてるように見えたようです。

「何だ、その態度はっ!?」

問答無用でグーパンチを浴びせるクロが恐ろしすぎますw

「どうしてネタをバラしたんだ! テメエそれでもデカか!?」

坊さんは言い逃れすること無く、素直に「申し訳ありませんでした」って謝罪するんだけど、クロは許してくれません。

「ずいぶん簡単に頭を下げんだな。だいたいテメエにはな、ホシに身体ごとぶつかって行く度胸も無いし根性も無いんだ! 小細工ばっかりしやがって!」

「……クロさん、そりゃ言い過ぎですよ。確かにタイムスの記者に口を滑らせたのは軽率だと思……」

「軽率だと思うんだったら辞表書け! どうしたんだ、そんな覚悟もねえのか?」

何もそこまで言わんでも……って思うけど、逃がした山崎は殺人犯で、また新たな犠牲者が出ちゃう可能性を考えると、笑って済ませられる問題でもありません。

と、そこに課長の吉岡(小池朝雄)がやって来て、山崎が検問に引っかかって逮捕された事実を伝えます。

「黒岩くん。ホシも挙がった事だし、ここは一つ大人になって。な?」

課長役の故・小池朝雄さんは『刑事コロンボ』の初代声優さんとしても知られる方で、まさにピーター・フォーク氏に勝るとも劣らぬ個性的な容姿と味のある芝居で、我々を大いに楽しませてくれました。

それにしても、後に「団長」と呼ばれ、完全無欠の絶対的ヒーローとして君臨する渡哲也さんが、ここでは上司から「大人になって」なんて言われてます。

確かに坊さんのリークは軽率だったけど、悪気は無かったみたいだし、言い訳もしないで素直に謝ってるんだから、いきなり殴ることは無かったように思います。

「……俺も、言い過ぎた。気にせんでくれ」

どないやねん!?w いやしかし、凄く人間味がありますよね。後の「団長」のスーパーマンぶりも格好良いんだけど、まだ人間らしさを残してる当時のクロには違った魅力を感じます。ドラマとしてはやっぱり、こっちの方が面白いですよ。

「だけどな坊さん。課長がどう言ったか知らんけど、サラリーマン根性じゃデカは務まらんぞ」

坊さんは黙って頭を下げ、部屋を出て行きます。クロは、カッとなって彼を追い詰めたことを後悔してる様子……否、もしかすると悪い予感を覚えたのかも知れません。

そう、さっき坊さんに浴びせたクロの罵声が、後にとんでもない事態を招く事になるのです。

それは、趣味の悪い柄物のコートを羽織った男(三上 寛)が、路地から飛び出して来た出前持ちとぶつかった事が発端でした。

その弾みで、コートの内側から物騒な物が転がり落ちたのです。それは短く切り詰めた猟銃!

ビビった出前持ちを尻目に、男は猟銃を拾って2階建ての喫茶店へと乱入、通報で駆けつけた交番の巡査に発砲すると、ウェイトレス1人を人質に取って店の2階に立てこもったのでした。

定食屋さんでメシをヤケ食いしながら、警察病院の宗方医師(石原裕次郎)に愚痴をこぼしてたクロは、事件の知らせを聞いて食いかけの丼を残し、現場に急行します。

今回、裕次郎さんの出番はこれだけw 警察と病院は切っても切れない縁とはいえ、毎回ストーリーに医者を絡ませるのは大変だった事と思います。

医者役としては裕次郎さん、貫禄と華があり過ぎる気もしますがw、危険な現場に遭遇すると腰が引けた感じを巧みに演じておられたりして、このシリーズでは役者・石原裕次郎の顔もしっかりアピールされてたように思います。

さて、現場に駆けつけたクロ&トクは、先行した坊さんから状況報告を受けます。犯人はこの店の常連客=手塚という男で、人質にされたウェイトレスのみどり(伊佐山ひろ子)をしつこくデートに誘っていたという。

どうやら最初からみどりが目的で店に押し入り、連れ出そうとしたけど抵抗され、ドタバタやってる内に警官が駆けつけた為、仕方なく2階に籠城したらしいとの事。

「サル」こと上条刑事(峰 竜太)、「ヒラ」こと平原刑事(粟津 號)、そしてベテランの「マルさん」こと丸山刑事(高品 格)も駆けつけ、僅かな時間に調べ上げた手塚の素性をクロに報告します。

年齢は31歳で岩手県出身、建築現場の労務者で、隣の城北署管内で強盗をやらかしたその足で此処に来た模様。猟銃は同僚から盗んだ物で、弾丸は約30発も所持しているらしい!

ほんの数十分でそこまで判るか!?って話ですがw、これは昨今の主流である「捜査(あるいは謎解き)ドラマ」じゃなくて、あくまで「刑事ドラマ」なんです。刑事の活躍や葛藤をメインに描くドラマであって、捜査の過程なんかどうでも良いワケです。

「こっちにはな、人質がいるんだでや! 手出し出来ねえべ? ざまぁ見やがれ!」

本来の脚本では、この手塚という犯人は標準語で喋ってるんだけど、演じる三上寛さんが青森県出身って事で、東北弁にアレンジされたんだそうです。

それが物凄く効いてるんですよね! 都会に馴染めず、好きになった女にも無視され、ヤケッパチになった男の哀愁が伝わって来るもんだからリアリティーがある。

三上寛さんが小柄で、とてもハンサムとは言えないルックスなのがまたリアルです。最近のドラマにおけるこのテの犯人は、ヘンにシュッとした二枚目野郎が多くて白けますよね。めちゃくちゃ嘘っぽいし薄っぺらい。

それはともかく、犯人の手塚は階下にいる刑事達に、音楽を流すよう要求して来ます。何だか、嬉しい予感……いや悪い予感がして来ました。

トクが店のステレオプレーヤー(まだアナログレコードの時代です)でレコードをかけると、それはベートーベンのクラシック音楽でした。

「何だばこりゃあ? もっと派手なヤツかけろ、派手なヤツ!」

「あのハゲ豚、曲を選んでるタマか!」

↑ この台詞は脚本にあったんでしょうか? 優作さんのアドリブっぽいですねw この『大都会 PART II 』って作品は、ハードボイルドな世界観の中で1人、優作さんだけアドリブギャグをかましまくってる事でも有名なんですw

次にトクが選んだレコードはノリノリのロックンロールで、ハゲ豚さんもお気に召した様子です。

以下、犯人=手塚と人質=みどりの会話ですが、三上寛さんの東北訛りがあまりに強くて台詞が聞き取れないので、だいたいのニュアンスを標準語に訳してお伝え致しますm(_ _)m

「銭だけはナンボでもあるんだ。おめえと2人で逃げても、しばらくは暮らせるようにな……今じゃただの紙切れさ。初めから2人で逃げてりゃ、こんな事にならなかったんだ!」

「ごめん。私、怖くて足がすくんじゃったの」

「うるせぇ! その気も無いくせにテキトーなこと言いやがって! どいつもこいつも、俺のこと田舎もんだと思ってバカにして……」

解るなぁ……w ただでさえコンプレックスを抱えてるのに、東京みたいな街に来て、ちょっと綺麗な女に鼻であしらわれ……そりゃヤケにもなりますよ。

そんな時に、たまたま同僚が猟銃なんか持ってた日にゃあ……私だって魔が差しちゃうかも知れません。銃を持って、強盗して大金をつかんで、好きだった女が今、目の前にいるワケですよ。

しかも、それまで自分を鼻であしらってた女が、銃口の前じゃ従順な乙女を演じてる。もう既に警官まで撃っちゃったし、階下には刑事達が潜んでる。逃げ場はありません。

さて、あなたならどうしますか? やる事は1つしか無いですよね? 格好つけてる場合じゃないでしょう?

「脱げや……」

キターーーーーーっ!!w

「蜂の巣になりたくねぇなら、脱げや!」

そうだよね! そりゃそうだよね! 女の裸を見ずして、一体なんの為の籠城か!?

「全部だでや! 全部!」

当たり前でしょう! 上着とか靴下だけ脱がれても意味あらへんがな!

みどりは、素直にブラウスとスカートとシュミーズを脱ぎ捨て、下着姿になります。伊佐山ひろ子さんのふっくらしたカラダが妙になまめかしくて、下着が残ってても充分にエロチックです。

実際、最近になってDVDで再見するまで、私は伊佐山さんがこの場面でトップレスになったものと思い込んでました。乳首が見えてようとなかろうと、伊佐山さんの発するフェロンがハンパないんですよね。

「踊れや。踊って見せろでや! ほら、腰ふって! ヒッヒッヒ、なかなかええど。脚、上げて。おっぱい寄せて。ウヒヒヒヒヒ!」

ハゲ豚に言われるがまま踊る伊佐山さんの腰つきがまた、めちゃくちゃエロいんですよね、ウヒヒヒヒヒ!

ところで階下では、遅れて駆けつけた吉岡課長がクロに状況を尋ねてます。

「逮捕の手立てはあるのかね? せめて人質だけでも何とかならんかな……」

「もうしばらく時間を。時間が経てば、必ず手塚は何かを要求して来ます」

「そんな悠長なこと言ってる場合じゃないだろう? 警察の威信がかかってるんだよ!」

『大都会』シリーズから『西部警察』シリーズを通して歴代、渡さん直属の上司はこんなキャラですw 事なかれ主義で口うるさくて、だけど何となく憎めない人間味がある。小池朝雄さんは特に、コミカルな要素も強かったですね。

「よし、私が説得しよう。音楽を切りたまえ。早く切れと言っとるんだ!」

偉そうに部下達を叱咤した吉岡課長は、ここで上司としての威厳を示すべく、颯爽と手塚の説得に向かうのですが、すかさず猟銃乱射の返礼を受けて階段から転がり落ち、クロに抱き止めてもらうという、最高に格好悪い姿を披露しますw 巻き込まれた部下達はたまったもんじゃありませんw

「参った参った、俺の美しい顔が課長みたいな顔になるとこだった」

「バカ!」

↑ 優作さんと小池さんのアドリブですw 脚本には普通に「蜂の巣になるとこだった」と書いてあったそうですw

「いやぁクロさん、危なかった。助かったよ、ありがとう」って、課長……w これは脚本の段階で既に、笑いを狙ってますよねw 石原プロ作品でこのテのユーモアが見られるのって、この『大都会 PART II 』が唯一かも知れません。

しかし、これでは埒が開きません。犯人逮捕はともかく、早く人質を救い出さねば事態は悪化する一方です。そこで、課長がこんな提案をしました。

「警察の面目を保つ為にも、俺が替わりに人質になるよ。クロさん、奴がそれを受け入れる可能性あるかね?」

「分かりませんね。今だいぶ刺激しちゃいましたからね」

「ちっ!」

課長、あんたのせいやがな!w

その会話を、じっと眉をひそめて聞いていた坊さんが、静かに立ち上がります。彼は仲間に気づかれないよう自分の拳銃と手錠をテーブルに置くと、いきなり2階へと駆け上がるのでした。

「坊さん、何やってんだ!?」

そう、坊さんは、自分が人質になろうとしているのでした。クロは慌てて彼を止めようとしますが、振り切った坊さんは2階フロアに飛び込んでしまいました。

「坊主、やめろ! やめてくれ! 坊主! やめてくれ!」

必死に叫ぶクロの脳裏に、自らが言い放った坊さんへの罵声が蘇ります。

「だいたいテメエにはな、ホシに身体ごとぶつかっていく度胸も無いし根性も無いんだ!」

……自分が、坊さんを追い詰めてしまった……暴走する狂犬の前に、可愛い部下を飛び込ませてしまった……。ここまで焦燥しまくる渡さんの顔も、なかなか見られないんじゃないでしょうか?

さて、坊さんの運命やいかに!? 伊佐山さんの身代わりになって、下着姿で腰を振るんでしょうか? そんな事になったら私は即刻テレビを消しますw

ある意味、それよりも遥かに過酷で、遥かに恥ずかしい運命が、坊さんを待ち構えているのでしたw

(つづく)
 
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『大都会 PART II 』1977~1978

2018-10-06 12:50:15 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1976年、石原プロモーションがメインライターに倉本聰さんを迎え、満を持して製作した初の連続TVドラマ『大都会/闘いの日々』は、クオリティーの高さを誇りながらも決して一般受けはしませんでした。

先に大ヒットして刑事ドラマのブームを巻き起こした『太陽にほえろ!』との明確な違いを打ち出す為に、倉本さんはリアリズムを追求し、刑事を決してヒロイックに描かない姿勢を徹底したんですね。

まず拳銃は使わないし、主人公の黒岩刑事(渡 哲也)は上層部の理不尽な命令にも黙って従い、時には権力者の悪事をあえて見逃したりもしなければいけない。

現実の警察ってのは一般企業以上にサラリーマン的な縦社会であり、その中において所轄署の一刑事が、如何に無力な存在であるか… その悲哀をリアルに描いて見せたワケです。

結果、社会派の人間ドラマとしては非常に見応えある作品になったけど、すこぶる暗くて地味でカタルシスもゼロという、大方の一般視聴者が刑事物に求める内容とは、およそ程遠い番組になっちゃった。

私自身も、そんな大方の一般視聴者の1人です。観たのは中学生の頃で夕方の再放送だったけど、そもそも暗いのが苦手だし、『太陽』の作劇に慣れ過ぎてるせいもあって、『大都会』をどう楽しめば良いのか当時の私には分かりませんでした。

最近になってレンタルDVDで観直し、創り手の情熱と志しの高さを感じてリスペクトするようになったものの、それでも何度となく睡魔に襲われ、目覚めたらもう終わってた、みたいなパターンになっちゃうんですよね。

刑事物はやっぱり、走って撃って殴って蹴っての、躍動感があってナンボだと私は思います。ファンタジーで良いのです。西部劇みたいなもんで、嘘をつかなきゃ成立しないんです。

最低限のリアリティは必要だけど、警察の現実を知りたいならドキュメンタリーを観ればいい。深い人間ドラマを求めるなら、刑事よりもっと身近な職業を描いた方が感情移入し易い筈です。

「今度は数字(視聴率)を取りに行こうよ」という社長=石原裕次郎の一声で、1977年4月からスタートした続編『大都会 PART II』は、一転してB級アクション活劇へと生まれ変わり、'78年3月まで全52話が放映されました。

主人公は前作から引き続いて渡 哲也扮するクロさん=黒岩刑事ですが、所属部署が城西署の捜査四課(マル暴担当)から捜査一課へと異動、と同時に階級も巡査部長に格上げとなりました。

そればかりかクロさん、あんなに組織の歯車の悲哀を漂わせて悩んでばかりいたのに……いや、だからこそか、いきなり非情な一匹狼キャラへと変貌、ウジウジした自分とサヨナラして、考える前にとりあえず殴る蹴る、そして迷わず撃つという、実に分かり易くて清々しい暴力刑事へと成長を遂げたのでした。

髪型も中途半端な七三分けをやめて、バッチリ剃り込みを入せた厳つい角刈りに。そして後々トレードマークとなるサングラス&ショットガンの「団長スタイル」も、このシリーズ中盤で完成する事になります。

前作では新聞記者だった裕次郎さんが、今回は警察病院の外科医に転職。クロさん達から殴る蹴るの体罰を受けた、気の毒な犯罪者を治療する役目に回ります。

しかし本作の目玉は何と言っても、黒岩の右腕として活躍する「トク」こと徳吉刑事=松田優作の存在に尽きるんじゃないでしょうか?

純朴キャラのジーパン刑事(太陽にほえろ!)から、ハードでクールな中野刑事(俺たちの勲章)を経て、後の『探偵物語』で披露する軽妙酒脱な魅力へと繋がる、橋渡し的なキャラクターがこの徳吉刑事と言えましょう。

基本的に暴力刑事である事はジーパン時代から一貫してるけどw、ボクシングを取り入れた徳吉刑事のキレ味鋭いアクションは、優作さん歴代の刑事キャラ中でもナンバー1の格好良さ。

それに加えて、隙あらば挿入されるユーモラスなアドリブ。例えば犯人追跡中に髪が乱れると「くそっ、昨日パーマあてたばっかりなのに!」とか、同じゲスト俳優が違う役で出て来たら「お前、この前のヤツと似てるな」とかw

泣く子も黙る渡哲也が相手でも容赦無しで、難事件解決後にタバコを一服しながら「クロさん、あそこ行きましょうよ、あそこ」なんていきなり言い出して、渡さんを素で苦笑させるw

天下の渡哲也にアドリブを仕掛けて許されるのは、恐らく松田優作ならではの事で、それに応えてアドリブを返したりする、渡さんの極めてレアな姿が見られるのも、本作の大きな見所かと私は思います。

そんな2人を中心に高品 格(マルさん)、小野武彦(坊さん)、峰 竜太(サル)、粟津 號(ヒラ)といった面々が一係の刑事を演じてます。途中でヒラが殉職し、神田正輝(ジン)、苅谷俊介(ベンケイ)も新加入。

そして口うるさい事なかれ主義の係長役を、小池朝雄、小山田宗徳、滝田裕介といったベテラン俳優陣が交代で演じ、『西部警察』の二宮係長へとバトンを継承して行きます。

本作のB級アクション路線は狙い通りに高視聴率を稼ぎ、翌年にはアクション描写を更にエスカレートさせた『大都会 PART III』がスタート、より凶悪度を増した城西署捜査一係は「黒岩軍団」と呼ばれるようになります。

そう、いよいよ渡哲也が「団長」化して絶対的な存在となり、やたらパトカーが横転炎上し、全てが暴力と銃撃だけで解決しちゃう『西部警察』の世界が構築されて行くのでした。

それはそれで楽しいのだけど、あんまりドンパチ中心で人間ドラマが希薄になると、観てる我々も気持ちが入らなくなっちゃう。気持ちが入らないと、せっかくの派手なアクションにカタルシスが生まれない。

勝手なこと言いますが、いくら躍動感があっても人間ドラマが無さ過ぎると又、面白くないんですよね。両方がバランス良く盛り込まれてこそアクションが活かされる。

その点で、私は一連の石原プロ作品の中でも、この『大都会 PART II』が一番バランスの取れた傑作じゃないかと思ってます。

前作『闘いの日々』のシビアな人間ドラマを残しつつ、『PART III』『西部警察』へと繋がって行くハードアクションも見られ、更に優作さんを中心にしたユーモアまで加味されて、1本1本が楽しく見応えある中編の「映画」なんですよね。

事件の内容も他の刑事物に比べてドライと言うか、刑事も犯人も決して感傷的にならない所が、また良かったりするんです。これと言った動機の無い衝動殺人犯とかテロリストが相手なんで、最後に射殺しても全然ウェットにならない。

それが『PART III』になるとやり過ぎてマンガみたいになっちゃうんだけど、『PART II』にはまだ辛うじて現実感が残ってる。適度にエロもあるw

第3話で喫茶店に立てこもった犯人が人質の若いウェイトレスに銃を向けて「服を脱げ! そこで踊れ!」って命令するシーンがあって、当時中学生だった私には「物凄くエロいもん見た」っていう強烈な印象が残り、商品化されたら真っ先にその回を観ようと思ってましたw

で、実際に観直したら、そのウェイトレスはブラジャー姿しか見せてないんですよね。だけど演じてるのがポルノ出身の伊佐山ひろ子さんなもんで、醸し出すフェロモンが半端なく(地味な役柄だから余計に)エロくて、私の記憶を増長させてたみたいです。

そんな話はどーでも良いのですがw、とにかくこの『大都会 PART II』は超オススメです。レンタル化もされてますから、後の『西部警察』等とはまた違ったハードボイルドな魅力を、是非ご堪能あれ。
 
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『華麗なる刑事』#03

2018-10-06 10:00:28 | 刑事ドラマ'70年代









 
☆第3話『人質交換』(1977.4.18.OA/脚本=鴨井達比古/監督=松森 健)

高村刑事(草刈正雄)と南郷刑事(田中邦衛)が、少年係の青井婦警(壇ふみ)を誘って入ったレストランで爆破テロが発生。

高村&南郷は現場にバッグを置いて行った男=神山(竜崎 勝)を緊急逮捕するんだけど、徹底して黙秘を続ける神山の身辺を調べたら驚いた! 彼は4年前に死んだ筈の男だったのです。どうやら神山は某国の諜報組織に属するスパイで、爆破は無差別テロじゃなくて何者かを狙う暗殺だった。

組織は神山の息子と青井婦警を拉致し、神山との身柄交換を要求して来るんだけど、政治的な圧力がかかって警察は身動き取れない状態。痺れを切らせた高村&南郷は、クビを覚悟で神山を連れ出し、組織との取引に臨むのでした。

『太陽にほえろ!』(日テレ)が絶頂期だった’77年に、その対抗馬としてフジテレビが放った刑事アクションが『華麗なる刑事』でした。

最後まで正体が明かされないスパイ組織や、ルールを無視して殺人犯を釈放しちゃう主役刑事など、生真面目な『太陽~』じゃなかなか出来ない荒唐無稽さです。

ヒット作をコピーするんじゃなくて、それとは違った内容で勝負をかける創り手の心意気。昨今のテレビ業界じゃすっかり失われた熱気を感じます。草刈正雄&田中邦衛という、ワケの解らない組み合わせがまた素晴らしいですw

前にも書いた通り、両者の個性的すぎる演技を観てるだけで楽しめるし、邦衛さんがあくまで二枚目を演じ、草刈さんが三枚目を意識した芝居をする事で、不思議なバランス感覚が生まれてるように思います。

また、『太陽』の対抗馬として企画されながら『太陽』と同じ国際放映スタジオで製作されてる為、見覚えあるセットや聴き覚えあるブリッジ音楽が満載だったりもします。

さて本作のヒロインは、当時23歳の壇ふみさん。『俺たちの旅』や『連想ゲーム』の解答者などが印象深い女優さんです。

このブログを読んでると、私という人間は綺麗な女性なら見境無く萌えてると思われそうだけど、そりゃ例外だってありますw 失礼ながら壇ふみさんや、その親友である阿川佐知子さんには全く色気を感じませんw

育ちが良くて聡明で気が強くて、要するにスキが無さそうなタイプですよね。当時23歳と言えばフェロモンがほとばしるようなお年頃なのに、以下省略。

だからこそ草刈正雄さんの相手役に選ばれたのかも知れません。まだ色気が無かった頃の多部未華子さんが、ジャニーズのドラマによくキャスティングされたのと同じように。

つまり、女性視聴者の嫉妬や反感を買わないタイプである事が絶対条件だったんじゃないでしょうか? 同じく婦警役でレギュラー出演されてた沢たまきさんや、セミレギュラーの梶 芽衣子さんもしかり。

若手刑事役に甘いルックスの加納 竜さんがキャスティングされてる点から見ても、本作のターゲットは明らかに女性視聴者。草刈さんの相棒が邦衛さんなのも、失礼ながら草刈さんの二枚目ぶりを引き立てる為でしょうw だけどホント、ルックスだけが二枚目の条件じゃないって事を、邦衛さんの熱演が証明してくれてます。

この第3話には、壇さんと同じく『俺たちの旅』で注目された上村香子さんが、神山の妻としてゲスト出演されてます。神山を演じた竜崎 勝さんは刑事ドラマじゃお馴染みの名バイプレーヤーですが、人気アナウンサー・高島 彩さんの実父なんだそうです。
 
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『華麗なる刑事』1977

2018-10-06 00:30:28 | 刑事ドラマ HISTORY









 
1977年の4月から11月まで、フジテレビ系列の月曜夜8時枠で全32話が放映されました。制作はフジテレビ&東宝。

あの頃「草刈正雄」と言えば二枚目の代名詞で、よく松田優作さんあたりに映画やドラマで「草刈正雄のどこがいいんだ」なんて、ひがみのネタに使われる程の存在でした。

そんな人気絶頂の草刈さんが満を持しての主演って事で、当時やはり人気絶頂だった日テレの刑事ドラマ『太陽にほえろ!』に対抗する本命馬として注目されてたのをよく憶えてます。

更に、当時はまだ「青大将」のイメージが強かった田中邦衛さんが相棒刑事としてダブル主演。どちらも連続ドラマでの刑事役は初めてだったかと思います。

ロス帰りのスーパーコップ=高村一平が草刈さんで、鹿児島から来たハミダシ刑事=南郷五郎が邦衛さん。この2人が同時に東京・南口署の刑事課に赴任する所からドラマはスタートします。

草刈さんが主演でタイトルが『華麗なる刑事』だと、『あぶない刑事』を先取りしたようなオシャレでスタイリッシュな世界観を想像しちゃうんだけど、実際は全然違いましたねw

草刈さんはどちらかと言えばコメディ志向の俳優さんで、格好つけるのが苦手なタイプらしく、照れ隠しにヘンな事ばかりする傾向があり、回を追う毎に悪ふざけが目立つようになります。

拳銃の扱い方なんか見ても、決して見映えの良い構え方はしない。格好良さよりもリアリティにこだわった感じで、あくまで見映え優先の舘ひろしさんや柴田恭兵さんとは真逆のアプローチなんです。

使用するのが当時「世界一強力なハンドガン」と謳われた44マグナムって事で、草刈さんは地面に両膝をつき、両手でゆっくり慎重に狙って1発だけ撃つ。少しでも危険があれば撃たずに諦めちゃう。全然カッコ良くないw

余談ですがあの頃は44マグナムが大人気で、アクション系ドラマの主人公はみんな使ってたような印象があります。『俺たちの勲章』の優作さんや『大都会 PART III』の寺尾聰さん、『爆走!ドーベルマン刑事』の黒沢年男さん、『警視庁殺人課』の菅原文太さん等も44マグナムを使ってました。あれは熊を撃つのに使う狩猟用の銃なんですけどw

で、かえって相方の田中邦衛さんの方が「華麗さ」を意識されてる節があり、銃さばきにしろ立ち回りにしろ結構スタイリッシュで、意外に……って言うと失礼だけどw、格好良くて画になってたりします。

刑事ドラマとしては正直、凡庸な出来だった印象だけど、とにかく主役2人が半端じゃないアクの強さを持ってるんで、独特な世界観が味わえます。

草刈さんも邦衛さんも、台詞を普通には絶対に言わない人ですからねw 草刈節、邦衛節とも言える独自の言い回しで、両者ともヘンに間を溜めるもんだからテンポが悪い事この上ないw

でも、そこが最大の見所で面白い部分だと私は思います。刑事ドラマとしてのクオリティーではやっぱ『太陽にほえろ!』に勝てないし、アクションの派手さじゃ石原プロ作品に適わない。本作はあくまで、華麗なる怪優2人による、チョー個性的な演技合戦を楽しむドラマだと私は思います。

その他キャストは、南口署刑事課の課長に佐野浅夫、同僚刑事に新 克利、加納 竜、婦警に沢たまき、壇ふみ、署長に有島一郎、隣接する北口署の署長に岸田森といった布陣。

また3クール目から『女囚さそり』シリーズや『修羅雪姫』等でタランティーノ監督も憧れたクールビューティー・梶芽衣子さんが、3人目の華麗なる刑事として終盤を盛り上げてくれました。

なお、草刈さん演じる高村一平は後年、『太陽にほえろ!』のスニーカー(山下真司)や『噂の刑事トミーとマツ』のトミー(国広富之)と並んで、平成の深夜ドラマ『ケータイ刑事』シリーズで復活を遂げる事になります。
 
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