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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#418

2021-01-03 00:00:19 | 刑事ドラマ'80年代









 
☆第418話『ルポライター』

(1980.8.8.OA/脚本=小川 英&古内一成&渡辺由自/監督=山本迪夫)

土木省の入札工事に絡んだ、東郷建設の不正行為を告発する匿名のルポが出版社に送られて来ます。が、東郷建設のバックには暴力団=響組が控えており、これまで重要証人が次々と暗殺されて来た。

このルポを書いた謎のライターも消されてしまう可能性があり、扱いに困った編集長は七曲署・藤堂チームにルポライター探しを依頼するのでした。

で、東郷建設の岩田社長(神田 隆)が通う高級クラブに潜入したスコッチ(沖 雅也)は、岩田のお気に入りとされるホステス=博子(田島令子)を一目見て、ある匂いを感じます。

「私、誰かに似てます?」

「似てます。なんとなく」

「どなたかしら。奥さま? それとも、昔の恋人?」

「ある場合の、俺にね」

「あなたに?」

「そう。疲れきってヘトヘトなのに、必死で何かを貫こうとしてる」

「…………」

「もしかすると命懸けで……違いますか?」

そう、スコッチは博子がルポの送り主だと直感したのでした。

それで博子の身辺を調べてみたら、かつて彼女が雑誌記者を夢見てたこと、そして白血病で半年の余命宣告を受けていることも判明し、確信を得たスコッチは彼女から証言を聞き出そうとするのですが……

その矢先に、鉄橋の下で博子の転落死体が発見されてしまいます。病気を苦にした自殺に見えるけど、命懸けで巨悪を告発しようとした彼女がそんなことで死ぬ筈がない!

スコッチは、博子が記したルポの中で、鍵となる人物の名前が1つだけ伏せてあることに気づきます。その人物とは恐らく、土木省の役人である三浦(矢吹 渡)。博子は情報を得るため三浦に近づき、いつしか愛するようになってしまった。

「ルポは彼女の夢だ。しかし、あと僅かしか生きられない彼女にとっては、命を懸けて男を愛することも……最後の夢だったんだろう」

そんな彼女が告発ルポを書いてる事実を岩田社長に密告し、響組に殺させるよう手引きしたのが誰あろう、その三浦であることを察したスコッチは、いよいよ怒りを爆発させます。

「お前にはまだ分からんのか? 彼女は本気でお前を愛していたんだ。命懸けでお前を愛していたんだ!」

そう言って三浦にCOLTトルーパー6インチの銃口を向けるスコッチの眼は、いつになく潤んでました。博子に同情したというよりも、自分自身と重ねて共鳴したのかも知れません。

黒幕の名前を吐いて響組に殺されるか、今すぐスコッチに殺されるか究極の選択を迫られた三浦が、どっちの地獄を選んだかは言うまでもありません。人間、1分1秒でも長く生きたいもんです。

センチメンタルなお話は個人的に好まないし、スコッチにはもっとクールでいて欲しいんだけど、元来スコッチってのは女々しいヤツなんですよねw C調な (って死語?) 後輩=ドック(神田正輝)の方がよっぽどハードボイルドかも知れません。

今回、響組にガサ入れする場面で一係メンバーが颯爽とヤクザたちと格闘する傍らで、運悪くスーパー・リキ(アクション系のドラマに度々登場される巨漢)に出くわしたドックが、即座に愛銃M59で制圧しちゃう卑怯な姿に、私はハードボイルドを感じましたw

そんな変化球に拒否反応を示す『太陽~』ファンもいたみたいだけど、私はやっぱり大、大、大、大歓迎! ロッキー(木之元 亮)やスニーカー(山下真司)が大して上手くもない殺陣で凡庸に闘ってる姿を見ても、はっきり言って退屈なワケです。

実は神田さんの方が遥かによく動けるのに、あえて手を抜いて見せる姿勢はやっぱハードボイルドですよ。ハードボイルドって言葉の意味を私はよく知らないけどw

スコッチがまだ元気で、ドックが新風を吹き込んでるこの時期の『太陽にほえろ!』は、どのエピソードも面白いし見応えがあります。やがてボス=石原裕次郎さんが長期離脱され、沖さんも休みがちになっちゃうからホントこれは貴重なシーズン。まさに黄金時代の再来です。

ゲストの田島令子さんは当時31歳。'71年から現在まで活躍を続けておられる大ベテラン女優で、海外ドラマ『バイオニック・ジェニー』やアニメ『ベルサイユのバラ』『クイーン・エメラルダス』等でヒロインを演じられた声優さんとしても知られてます。

『太陽にほえろ!』には今回のほか#329、#589にもご出演、さらに『特別機動捜査隊』『キイハンター』『夜明けの刑事』『七人の刑事』『噂の刑事トミーとマツ』『非情のライセンス』『大捜査線』『誇りの報酬』『NEWジャングル』『もっとあぶない刑事』『女捜査官』『私鉄沿線97分署』『特捜最前線』等々、昭和作品に限定してもこれだけゲスト出演されてますから、我々としては刑事ドラマのミューズと呼びたくなる女優さん。沖雅也さんとは『俺たちは天使だ!』#20でも共演されてます。
 
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『太陽にほえろ!』#417

2021-01-02 00:00:03 | 刑事ドラマ'80年代









 
ドック(神田正輝)登場編の次に放映された#416『ゴリさんが殺人犯?』はそのタイトル通り、何者かの罠によってゴリさん(竜 雷太)が殺人容疑者にされちゃうストーリー。アクション系の刑事ドラマじゃよくあるパターンだけど、意外と『太陽にほえろ!』ではそれまでやって来ませんでした。

最近レビューした#408『スコッチ誘拐』みたいな(人質を取られて刑事が犯罪に加担させられちゃう)話もそうだし、スコッチ(沖 雅也)復帰を境にアクションシーンが増えただけでなく、番組がこれまで避けて来た荒唐無稽な活劇調のエピソードも増えて来ました。

後期『太陽~』を否定する人たちは、もしかしたらこういうのを「軽い」とか「リアリティーがない」と感じて嫌ってるのかも知れないけど、私は大、大、大、大歓迎!でした。正直、こういうのをずっと待っていた!

今回のエピソードもその系譜に入る作品で、私は当時ワクワクしながら観てました。


☆第417話『ボスの誕生日』

(1980.8.1.OA/脚本=小川英&尾西兼一&小木曽豊一/監督=山本迪夫)

ボス(石原裕次郎)の誕生日プレゼントを買いに出かけたナーコ(友 直子)が行方不明になります。

犯人の沢木(堀内正美)は身代金3千万円を要求して来るんだけど、本当の目的は藤堂チームへの復讐。片想いしてた女性が半年前に入院し、そのお見舞いに丹精込めて造り上げた帆船のミニチュア模型を、犯人追跡中のスニーカー(山下真司)に壊されちゃったのを恨んでの犯行。

沢木は、ボスの誕生日プレゼント(Yシャツ?)をズタズタに引き裂いて「そんなボロ屑が嬉しいか?」と嘲笑います。

「これがお前にはボロ屑に見えるのか?」

スニーカーに代わって沢木と対峙するボスが言いました。

「俺には心のこもった素晴らしいプレゼントに見える。お前、分からんのか? プレゼントってのは形だけじゃない。贈る人間の心だ」

「うるせええええぇぇぇぇーっ!!!!」

なおも逆上する沢木に、ボスはゴリさんの拳銃を握らせます。

「じゃあ、やってみろ。それでお前の気が済むなら、五代を殺せ」

「よ、よぅし、やってやるよ! ぶっ殺してやるっ!!」

だけど、さっきのボスの言葉が響いたんでしょう。沢木に引金は引けませんでした。

「撃たなかったからいいようなものの、七曲署ってのはメチャクチャな所だな!」

新顔のドックが憤慨しますが、もちろん他のメンバーたちは皆、ゴリさんがいつも拳銃に弾丸を込めてないことを知ってたのでした。

スニーカーが登場してからしばらく続いた、あの暗くてやたら複雑な『太陽にほえろ!』と同じ番組とは思えない、このシンプルさ! レビューするのもラクちんで非常に有難いw

ただ、こういうエピソードの見どころは粗筋や台詞じゃなく、犯人と刑事たちとの攻防戦の描かれ方にあるので、その面白さを文字で伝えられないのはちょっと残念。せめて画像で楽しんで頂ければと思います。

この時期の藤堂チームが屋外ロケで全員(ナーコまで!)勢揃いするのは極めて稀れで、特にスコッチがリードする若手カルテットの銃を構えてる画は壮観! 私なんかはもう、それだけで大満足です。

そして今回はナーコが初めて主役級の活躍を見せたことでも記憶に残るエピソード。気がつけば彼女も登場してから2年が経っており、演技力も上達されてます。

だけどそれより何より、友直子さんは「ボスとハグ出来る」ことが嬉しかったんだそうですw
 
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『太陽にほえろ!』#415

2021-01-01 00:00:02 | 刑事ドラマ'80年代










 
明けましておめでとうございます。2021年新春1発目はこれで行こうと決めてました。『太陽にほえろ!』を救った立役者=ドック(神田正輝)の華々しい初仕事。彼がなぜ救世主になり得たのか、じっくり解析してみようと思います。


☆第415話『ドクター刑事登場!』

(1980.7.18.OA/脚本=長野 洋/監督=澤田幸弘)

ついに降板する殿下=小野寺昭さんの後任が神田正輝さんに決まったと聞いて、私は当初なんの期待も抱きませんでした。

いかにも正統派イケメン枠(私にとっては一番つまんないキャラクター)をそのまま引き継いだようなキャスティングだし、実際それまで『ゆうひが丘の総理大臣』や『俺たちは天使だ!』等で観てきた神田さんはまさに、そういうポジションの役者さんでした。つまり、殿下がちょっと若返っただけの人が来るんだなと。

ところが! 実際に登場した「ドック刑事」こと西條昭を見て驚いた! 面白い! そしてカッコいい! 神田正輝さんって、こんなに面白くてカッコいい役者さんだっけ?! と。

いやしかし、神田さんが『俺たちは天使だ!』で演じられた探偵の「ジュン」も同じように弾けたキャラだけど、ドック刑事ほど魅力的には(少なくとも私は)感じませんでした。この違いは一体なぜ生まれたのか?

大きな理由が3つあると思います。どれも過去の記事に書いて来たことだけど、この機会におさらいしておこうと思います。

まず1つは、くそマジメ熱血集団=七曲署捜査一係の従来メンバーたちとのコントラスト。これが何と言ってもでかい!

『俺たちは天使だ!』には柴田恭兵さん&渡辺篤史さんという、神田さんを凌駕する軽妙キャラがそばにいたし、主役の沖雅也さんも従来イメージをかなぐり捨てる弾けっぷりで、無個性イケメンのジュンは埋没するしかありませんでした。

それがボン(宮内 淳)が抜けて以降のマジメ一直線『太陽にほえろ!』の中だと、神田さんの軽妙さが際立つワケです。恭兵さんや篤史さんだとたぶん浮いてしまうんだけど、神田さんは絶妙にマッチした。

だから、ドックは殿下の後釜ではあるけど、実質的にはボンの後継者で、約1年間ぬけたままだった穴をようやく埋めてくれたワケです。

でも! 実はそれだけじゃなかった。同じムードメーカーでありつつも、ドックにはボンと違った新しい個性がありました。それは、くそマジメ一直線の熱血七曲署イズムをやんわり否定し、笑いのネタにしちゃうという、ある種のニヒリズム!

実際にドック刑事は「気張らない」「走らない」をモットーに、あの全身ニヒリストのスコッチ(沖 雅也)が汗水流して走ってるのを横目で見ながら、悠々と車で先回りしちゃう合理主義者。つまりスコッチ以上にクールでありながら、あの爽やか笑顔。そりゃカッコいいに決まってます!

そんなドック刑事のニヒリズムこそが『太陽にほえろ!』を救ったんだと、今になって私は思うワケです。

当時すでに『太陽~』が標榜する熱血イズムは、世間的に時代遅れで「ダサい」ものになってました。けど、それをやめたら『太陽~』が『太陽~』でなくなってしまう。

ところがドックが番組内でそれをはっきり「ダサい」と言ってくれたお陰で、『太陽~』は『太陽~』のままでいられたんですよね!

もし仮に、それまで以上の熱血キャラであるラガー(渡辺 徹)やボギー(世良公則)が登場した時に、ドックがいなかったとしたら? 「この番組はまだこんな事やってんのか」って、少なくとも若い視聴者はソッポを向いたんじゃないでしょうか?

そうならなかったのは間違いなく、ドックがいてくれたから。ラガーやボギーの言動を「古くさい」「ダサい」って、番組の中心にいるドックがからかってくれたお陰で、番組そのものが「古くさい」「ダサい」と世間から思われずに済んだ。

2020年で私が一番ハマったテレビ番組はアニメ『映像研には手を出すな!』だけど、そこにも「金森氏」っていうドック的な人物がいるんですよね。自分が創ったアニメで「みんなを笑顔にしたい」なんて言うヤツは「気持ち悪い」って彼女がはっきり言うことで、創作に熱中する浅草氏や水崎氏が世間から剥離されずに済む。金森氏がパイプ役になってるワケです。

ドック刑事が救ったのは番組の視聴率だけでなく、番組の基本スピリットを(あえて否定することで)守り抜いてくれた。それが何よりの救いだったと私は思うワケです。それが無かったら『太陽~』は10周年を迎える前に沈んだに違いないと。

で、2つ目の理由は、ボス=石原裕次郎さんとの相性の良さ。神田正輝さんは石原プロモーション生え抜きの俳優であるだけでなく、裕次郎さんが自らスカウトしてデビューさせた唯一の人でもあります。

私は前述の『俺天』や『ゆうひが丘~』だけでなく、『大都会 PART II 』『ゴリラ/警視庁捜査第8班』『大捜査線』等で観る神田さんにもドックほどの魅力は感じられないんですよね。その違いは何なんだろう?って考えた時に、そういえば『太陽~』以外の番組では裕次郎さんがそばにいないぞ!と気づいたワケです。

いや、新聞記者役でデビューされた『大都会/闘いの日々』も直属の上司役が裕次郎さんですから『太陽~』に近い関係ではあるんだけど、あの時の神田さんは素人レベルだったしドックほど出番が多くないし、番組自体が渋すぎて私の好みに合わず、あまり観てないのでよく分かりませんw

でも、同じ石原プロ仲間でも渡哲也さんや舘ひろしさんと絡んでる時の神田さんは、あまり輝いてないと私は感じてしまう。裕次郎さんと一緒にいる時とは何かが違う。そこはもう相性の問題、組み合わせの妙としか言いようがありません。

だからこれに関しては、ドックが『太陽~』の救世主になった理由と言うよりも、神田さんが『太陽~』で役者として一皮剥けた理由と言うべきかも知れません。

そして、3つ目の理由。これはもしかすると男性視聴者限定、さらに言えばガンマニア限定の話になるかも知れません。そう、ドックの愛銃=S&W M59の登場です。

見慣れないツートンカラー仕様のオートマチック拳銃をバックサイド・ホルスターに忍ばせる斬新さと、なんとなくポップな感じがドック刑事のキャラと奇跡のマッチング。そしてそれを操作し、構える仕草の格好良さ。

オート拳銃を使う刑事はそれまでのTVドラマにも存在した(むしろハイパトが登場するまではオートが主流だった)けど、スライドを引いて初弾を装填したり、マガジン・チェンジしたり等の細かい操作をきっちり見せたのは、日本のテレビ番組じゃ神田さんが初めてだったと思います。構え方もアメリカ式のコンバット・シューティングで、最初は何コレ?って思ったけど見れば見るほどカッコいい! そういうマニアックな格好良さを感じたのはジーパン=松田優作さん以来かも知れません。

この第415話ではクライマックスでオート拳銃の特性を存分に活かしつつ、腰の位置から1発で犯人を仕留めちゃうドックがほんと神憑り的にカッコいい! 前任の殿下と違って、ドック刑事は拳銃さばきで我々男子のハートもばっちり掴んだワケです。

神田さんにこの男子特有のマニアックさが無ければ、ハンサムでスポーツマンで女子はメロメロでも、我々は(少なくとも私は)ついて行かなかった。これもやっぱり神田さんが番組を救い、番組が神田さんを救った大きな要因だと思うワケです。

神田さんが直前まで出演されてた『大捜査線』がせっかくのガバメントを1発も撃たせなかった事実を思えば、つくづく『太陽にほえろ!』は柔軟な番組なんです。ボンがいなくなって失いかけてたその長所を、裕次郎さんのヤンチャ精神を受け継いだ神田さんが呼び覚ましたとも言えます。

以上が、ドック刑事=神田正輝さんが『太陽にほえろ!』の救世主だったと私が断言する、その根拠です。ドックがいなかったらホントに『太陽~』は終わってました。

なのに、インターネットに張り付いてる自称『太陽~』ファンの人たちの中には、ドックや神田さんのこと、そしてドック登場以降の『太陽~』を「糞だ」とか言ってしつこくケナし続けてる恩知らずが、まぁほんの一部なんでしょうけどいるんですよね。

もちろん、好みは十人十色ですから気に食わない人がいるのは仕方がない。けど、気に食わないならサッサとファンをやめりゃ良かったじゃん!って、それだけは言ってやりたいです。楽しめないなら観なけりゃいいし、ファンサイトなんかに参加しなけりゃいい。ほんとワケの解らん連中です。

私は神田正輝さんのファンってワケじゃないけど、『太陽~』を救ってくれた恩だけはホントに、死ぬまで忘れません。ドック刑事、最高!

ところで今回のセクシーショットは、のちに映画『水のないプール』('82) や『十階のモスキート』('83) 等で注目される中村れい子さん、当時20歳。

デビュー時は「立花美英」名義で活動され、ドラマ初出演となる今回の『太陽~』では「日立絵里子」とクレジットされてます。刑事ドラマは他に『特捜最前線』#393、『私鉄沿線97分署』#70、『ゴリラ/警視庁捜査第8班』#15等にゲスト出演。いずれもブレイク後のご出演で、無名時代に起用した『太陽~』スタッフはやっぱりさすがです!

そんなワケで今年もよろしくお願いします!







 

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「本阿弥周子 in 大捜査線」―3

2020-12-22 23:30:04 | 刑事ドラマ'80年代










 
話数が20を越えて、四機捜・加納班の紅一点=都築悠子刑事(本阿弥周子)のチリチリ・ショートヘア姿もすっかり馴染んで来ました。

イメチェンすれば最初はどうしても違和感があるし、ストレートのセミロングがとても似合ってただけに「前の方が良かったのに」って正直思ったけど、馴染んでしまえばこっちも素敵だなと、土台の良さをあらためて認識した次第です。

外見だけでなくキャラクターも段階的にリニューアルされ、大和なでしこ的女性像から現代的キャリアウーマン像へとシフト。一歩引いて加納主任(杉 良太郎)をお慕い申し上げてる素振りはもう見られません。

今回レビューした#20と#23では目立った活躍が無かったけど、#22『女の詩 男を殺せ』(すごいサブタイトル!) ではセレブに化けてホストクラブに潜入しちゃうアクティブさと茶目っ気を披露 (画像7枚目)。水野刑事(赤塚真人)という後輩が出来たこともあって、よりカッコいい女性像が形成されてます。

さて、このあと#26 (レビュー済み) でいよいよ沢木刑事(神田正輝)が殉職し、#28から#30まで夏木刑事(佐藤仁哉)がイケメン枠を引き継ぎ、#31からは『大捜査線シリーズ/追跡』のタイトルで番組自体がリニューアル、南条刑事(大村波彦)と新田刑事(米田昌弘)が新加入し、さらに1クール(通算42話まで)続くことになります。

で、私は沢木刑事殉職までのエピソードを9割以上はチェックしたと思うんだけど、ついに神田さんのCOLTガバメントが火を吹く機会は(私が見た限り)一度も巡って来ませんでした。

いや、正確に言えば一度だけ、モロボシ・ダンこと森次晃嗣さんが犯人役で出演された#21『哀しみの一弾』にて、空に向かって威嚇射撃するシーンがあるにはあったんだけど、それも一瞬だし引きの画でよく見えないんですよねw

ただし! ちょっとマニアックな話になりますが、よく見えないながらも、ガバメントがちゃんとブローバックしてるのを私は見逃しませんでしたw

当時『西部警察』や『大激闘』じゃ相変わらず固定スライドの電気発火ピストルを使ってましたから、この『大捜査線』はかなり進んでたと言えます。なのに威嚇射撃1回だけとは、なんと勿体ない!

これは多分、神田さん個人のこだわりだったんだろうと私は思います。『大捜査線』のスタッフはほとんど時代劇畑の人ばかりで、銃撃の見せ方になど興味あるワケがないw

オートマチック拳銃のブローバックを初めて本格的に見せたTVドラマは『太陽にほえろ!』だと思うんだけど、それもドック刑事=神田さんが使う銃だけでしたからね。他の刑事たちはリボルバーだし、悪役が使うオート拳銃はやっぱり電気発火でした。

で、その『太陽~』で神田さんと共演された世良公則さんが『ベイシティ刑事』でブローバック描写を定着させちゃうワケだから、日本のTVドラマにおけるガンアクションが劇的に進化する、そのキッカケを作ったのは間違いなく神田正輝さん。

その神田さんに威嚇射撃1回だけしかさせないとは、ほんまに、アホかっ?!w

まぁしかし、そのフラストレーションがあればこそ『太陽~』で神田さんが弾けまくって本格ブレイクされるワケだから、結果的にはこれで良かったんだと思います。『大捜査線』はあくまで杉サマのドラマだし。

そんなワケで『大捜査線』のレビューはここまでにしたいと思います。なんだかんだ言いましたけど、これは昭和ポリスアクションにおける名作の1本だったと私は思います。
 

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『大捜査線』#23

2020-12-21 17:50:06 | 刑事ドラマ'80年代










 

☆第23話『誤認逮捕』(1980.7.17.OA/脚本=白井更正/監督=高橋繁男)

深夜タクシーの運転手が乗客に絞め殺され、売上金と腕時計を強奪される事件が発生し、四機捜の加納主任(杉 良太郎)は2年前のほろ苦い事件を思い出します。

やはりタクシー強盗で、手口は微妙に違うんだけど現金と一緒に腕時計を奪ってる点が共通しており、そのとき加納はパチンコで生活してる伊田という男(高木 均)を自信を持って逮捕したんだけど、奪われた現金と腕時計がどうしても見つからず、証拠不充分で不起訴になっちゃった。すなわち、誤認逮捕。

味をしめた伊田がまたやらかしたと加納は直感するんだけど、大滝隊長(山内 明)に「おい加納、感情的になるな」「頼むから慎重にやってくれ」「無茶するな」「ああだ」「こうだ」「乳首だ」と釘を刺されまくります。そりゃあ同じ男を二度も誤認逮捕したら、四機捜の存続を揺るがす不祥事になっちゃうから無理もありません。

だけど2年振りに伊田と再会し、その不敵な態度を見た加納はますます疑惑を深め、今度こそ動かぬ証拠を掴むべく奮起し、部下たちも主任を信じて支援するのでした。

結果、伊田が現在は離れて暮らす娘の明子(木村理恵)から6万円の借金をしてる事実が判明し、加納はピンと来ます。伊田は2年前にも、当時チョメチョメ関係だった女性に借金をしており、それを返済する際に小さな包みを彼女に預けていた。そして不起訴が決まった後にそれを取り戻していた。

そう、ヤツは盗んだ金を返済にあて、何も知らない相手に腕時計を預けることで、巧みに証拠を隠していた! そして今回は非道にも、実の娘を利用しようとしている!

ということは、明子がいま預かってるであろう腕時計を警察に渡してくれれば、それが証拠となって伊田を逮捕&起訴することが出来る。

だけど加納の訪問を受けた明子は、とっさに「何も預かってない」と嘘をつきます。ろくでなし親父のせいで母親にも捨てられ、ひたすら迷惑な存在でしかない相手なのに、なぜ彼女は庇うのか?

明子と同棲中の恋人=ヤっちゃん(小原秀明)がいいことを言いました。

「お前さ、いつも親父もお袋も他人だって言ってたけど、嘘なんだよな? 分かっていたよ、オレには。強がってやがるって」

「…………」

「だったら親父を庇ってやれよ。最後まで」

「でも……親父、何やったんだろ」

「何をやってもいいじゃないか。何をやっても庇ってやれよ。それが親子だろ?」

倫理的にはよろしくないんだろうけど、人間としてはそうありたいと私も思います。どんな親でも、やっぱり親は親ですから。

で、そのろくでなしのダメ親父=伊田は、沢木(神田正輝)&水野(赤塚真人)両刑事にマークされてるとも知らず飲み屋で乱闘騒ぎを起こし、傷害の現行犯で逮捕されます。

よし、チャンス! こうなったらヤツを取調室でフルボッコに……いや、じっくり尋問して2件の強盗殺人を何としても吐かしたる!と加納は息巻くんだけど、またもや大滝隊長がブレーキをかけて来ます。なんと飲み屋の喧嘩相手が示談に応じ、伊田の釈放が即決されちゃったのでした。

「傷害罪で起訴しても、しょせん誤認逮捕の腹いせと取られるよ」

「なに?」

ライバルの下条主任(垂水悟郎)にも水を差され、加納はムッとします。

「そうでなくてもだよ、示談で済むなら厄介な存在は放り出した方がいいんじゃないのか?」

「犯罪をやったヤツがいる。だからオレは追う。捜査とはそういうもんだと思ってる」

出ました杉良太郎オンステージ! 始まりましたワンマンショー! 杉サマ自ら作詞された主題歌『君は人のために死ねるか』のサビでもこう詠われてます。

♪許せないヤツがいる 許せない事がある だから倒れても倒れても 立ち上がる立ち上がる 俺の名前はポリスマン!

そんな杉良太郎スピリットがドラマの内容にも反映されてるんですよね。それがあってこその『大捜査線』なんです。

さて、伊田があっさり釈放されたことが、かえって追い風になります。もうこれで自分が疑われることも無いと油断した伊田は、まだ沢木&水野が張り込んでるとも知らずに明子のアパートを訪ね、預けた小さな包み=殺した相手から奪った腕時計を取り返そうとします。

で、明子に「この中身が何なのか言ってくれるまで返さない」と拒まれ、逆上した伊田は明子をかばうヤっちゃんをナイフで斬りつけ、刑事たちが踏み込むとあろうことか明子を、我が娘を人質にし、その喉もとにナイフを突きつけます。

「実の娘にナイフを突きつけてでも逃げたいのか? 娘に何ひとつ父親らしい事をしてやれないお前でも、娘さんはお前を庇おうとしたんだぞ。恥ずかしいと思わんのかっ?!」

こうしてクライマックスで杉サマが説教を垂れるのも『大捜査線』のお約束だけど、それで犯人が改心した試しはありませんw だって、そこで犯人が諦めたら「フルボッコ」という杉サマの見せ場が無くなっちゃうからw

伊田もその例にもれず、我が娘の前で悪あがきを続けます。

「車を用意しろ。そうだ、お前が運転しろ! 誤認逮捕に今度は逃走の手助けだ、ハハッ。こいつはいいや、ハハハハハッ!」

もちろん、どんなにあがこうが、加納主任の機転と部下たちの見事な連携により、結局は怒りのワッパが手首に食い込む羽目になります。

「誤認逮捕じゃない。そんなヘマはしないよ。甘く見るなよ、伊田」

幸い、このところ暴力控えめキャンペーン中につき、伊田はフルボッコの刑を免れました。私としては物足りないけど、さすがに今回は娘が見てる前なのでボッコ無しでも致し方ありません。

だけど明子は、自分を人質にし、ええ歳こいて杉サマに説教され、ぶざまに逮捕される父親の姿を目の当たりにしてもなお「お父ちゃん!」と泣いて、その胸にすがりつくのでした。それが親子なんですよね。


今回は木村理恵さんがゲストってことで、ドック刑事(神田正輝)とアッコの絡み(『太陽にほえろ!』では入れ違いで共演なし)が見られるかと思ったけど、残念ながらツーショットはありませんでした。同じ部屋にはいたんですけどね。(画像3枚目の尾行シーンが、同じフレームに写った唯一のショットです)

理恵さん、偶然かスタッフのイタズラか判らないけど、ここでも役名は「明子」でしたw 『太陽~』を卒業されてから約1年後のご出演で、ちょっと色っぽくなられたし演技も上達されてます。

さて、シリーズも後半になり、初期の時代劇テイスト=勧善懲悪バイオレンス路線は鳴りを潜め、都会的かつマイルドな人情路線、つまりごくノーマルな刑事ドラマに落ち着いた感があり、私としてはややつまんなくなりました。クオリティーは相変わらず高いのですが……

オープニング&エンディングのタイトルバックもリニューアル(都会的にイメチェン)され、主題歌もフツーの歌謡曲になっちゃったけど、やっぱり杉サマが唄い、杉サマしか画面に出て来ませんw

青木義郎、垂水悟郎、赤塚真人といった演技派の俳優さん達がレギュラー入りし、チームプレーの魅力が加味されたのは良かったけど、顔ぶれが地味すぎたせいか、視聴率アップには繋がりませんでした。

刑事ドラマって、視聴率が取れないと大抵ソフト路線に舵を切っちゃうんだけど、そうすることで数字が上がった試しがあるんでしょうか? たぶん無いですよね?

だったら最後までハード路線を貫いて欲しいんだけど、スポンサーの手前、女性視聴者が取っつきやすいようにするポーズだけでも示さないとダメなんでしょうか?

それと、視聴率低迷により予算が削られ、お金のかかるアクションシーンを減らさざるを得ない事情もあるかも知れません。なんだかんだ言ってもやっぱりお金、世の中すべてお金です。金をくれ!

そんな中でも、説教という形で番組のスピリットを死守される、当時の懸命な杉サマの姿には心打たれるものがあります。コロナ渦でガースー総理と会食してる場合じゃありませんw
 
 


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