明けましておめでとうございます。2021年新春1発目はこれで行こうと決めてました。『太陽にほえろ!』を救った立役者=ドック(神田正輝)の華々しい初仕事。彼がなぜ救世主になり得たのか、じっくり解析してみようと思います。
☆第415話『ドクター刑事登場!』
(1980.7.18.OA/脚本=長野 洋/監督=澤田幸弘)
ついに降板する殿下=小野寺昭さんの後任が神田正輝さんに決まったと聞いて、私は当初なんの期待も抱きませんでした。
いかにも正統派イケメン枠(私にとっては一番つまんないキャラクター)をそのまま引き継いだようなキャスティングだし、実際それまで『ゆうひが丘の総理大臣』や『俺たちは天使だ!』等で観てきた神田さんはまさに、そういうポジションの役者さんでした。つまり、殿下がちょっと若返っただけの人が来るんだなと。
ところが! 実際に登場した「ドック刑事」こと西條昭を見て驚いた! 面白い! そしてカッコいい! 神田正輝さんって、こんなに面白くてカッコいい役者さんだっけ?! と。
いやしかし、神田さんが『俺たちは天使だ!』で演じられた探偵の「ジュン」も同じように弾けたキャラだけど、ドック刑事ほど魅力的には(少なくとも私は)感じませんでした。この違いは一体なぜ生まれたのか?
大きな理由が3つあると思います。どれも過去の記事に書いて来たことだけど、この機会におさらいしておこうと思います。
まず1つは、くそマジメ熱血集団=七曲署捜査一係の従来メンバーたちとのコントラスト。これが何と言ってもでかい!
『俺たちは天使だ!』には柴田恭兵さん&渡辺篤史さんという、神田さんを凌駕する軽妙キャラがそばにいたし、主役の沖雅也さんも従来イメージをかなぐり捨てる弾けっぷりで、無個性イケメンのジュンは埋没するしかありませんでした。
それがボン(宮内 淳)が抜けて以降のマジメ一直線『太陽にほえろ!』の中だと、神田さんの軽妙さが際立つワケです。恭兵さんや篤史さんだとたぶん浮いてしまうんだけど、神田さんは絶妙にマッチした。
だから、ドックは殿下の後釜ではあるけど、実質的にはボンの後継者で、約1年間ぬけたままだった穴をようやく埋めてくれたワケです。
でも! 実はそれだけじゃなかった。同じムードメーカーでありつつも、ドックにはボンと違った新しい個性がありました。それは、くそマジメ一直線の熱血七曲署イズムをやんわり否定し、笑いのネタにしちゃうという、ある種のニヒリズム!
実際にドック刑事は「気張らない」「走らない」をモットーに、あの全身ニヒリストのスコッチ(沖 雅也)が汗水流して走ってるのを横目で見ながら、悠々と車で先回りしちゃう合理主義者。つまりスコッチ以上にクールでありながら、あの爽やか笑顔。そりゃカッコいいに決まってます!
そんなドック刑事のニヒリズムこそが『太陽にほえろ!』を救ったんだと、今になって私は思うワケです。
当時すでに『太陽~』が標榜する熱血イズムは、世間的に時代遅れで「ダサい」ものになってました。けど、それをやめたら『太陽~』が『太陽~』でなくなってしまう。
ところがドックが番組内でそれをはっきり「ダサい」と言ってくれたお陰で、『太陽~』は『太陽~』のままでいられたんですよね!
もし仮に、それまで以上の熱血キャラであるラガー(渡辺 徹)やボギー(世良公則)が登場した時に、ドックがいなかったとしたら? 「この番組はまだこんな事やってんのか」って、少なくとも若い視聴者はソッポを向いたんじゃないでしょうか?
そうならなかったのは間違いなく、ドックがいてくれたから。ラガーやボギーの言動を「古くさい」「ダサい」って、番組の中心にいるドックがからかってくれたお陰で、番組そのものが「古くさい」「ダサい」と世間から思われずに済んだ。
2020年で私が一番ハマったテレビ番組はアニメ『映像研には手を出すな!』だけど、そこにも「金森氏」っていうドック的な人物がいるんですよね。自分が創ったアニメで「みんなを笑顔にしたい」なんて言うヤツは「気持ち悪い」って彼女がはっきり言うことで、創作に熱中する浅草氏や水崎氏が世間から剥離されずに済む。金森氏がパイプ役になってるワケです。
ドック刑事が救ったのは番組の視聴率だけでなく、番組の基本スピリットを(あえて否定することで)守り抜いてくれた。それが何よりの救いだったと私は思うワケです。それが無かったら『太陽~』は10周年を迎える前に沈んだに違いないと。
で、2つ目の理由は、ボス=石原裕次郎さんとの相性の良さ。神田正輝さんは石原プロモーション生え抜きの俳優であるだけでなく、裕次郎さんが自らスカウトしてデビューさせた唯一の人でもあります。
私は前述の『俺天』や『ゆうひが丘~』だけでなく、『大都会 PART II 』『ゴリラ/警視庁捜査第8班』『大捜査線』等で観る神田さんにもドックほどの魅力は感じられないんですよね。その違いは何なんだろう?って考えた時に、そういえば『太陽~』以外の番組では裕次郎さんがそばにいないぞ!と気づいたワケです。
いや、新聞記者役でデビューされた『大都会/闘いの日々』も直属の上司役が裕次郎さんですから『太陽~』に近い関係ではあるんだけど、あの時の神田さんは素人レベルだったしドックほど出番が多くないし、番組自体が渋すぎて私の好みに合わず、あまり観てないのでよく分かりませんw
でも、同じ石原プロ仲間でも渡哲也さんや舘ひろしさんと絡んでる時の神田さんは、あまり輝いてないと私は感じてしまう。裕次郎さんと一緒にいる時とは何かが違う。そこはもう相性の問題、組み合わせの妙としか言いようがありません。
だからこれに関しては、ドックが『太陽~』の救世主になった理由と言うよりも、神田さんが『太陽~』で役者として一皮剥けた理由と言うべきかも知れません。
そして、3つ目の理由。これはもしかすると男性視聴者限定、さらに言えばガンマニア限定の話になるかも知れません。そう、ドックの愛銃=S&W M59の登場です。
見慣れないツートンカラー仕様のオートマチック拳銃をバックサイド・ホルスターに忍ばせる斬新さと、なんとなくポップな感じがドック刑事のキャラと奇跡のマッチング。そしてそれを操作し、構える仕草の格好良さ。
オート拳銃を使う刑事はそれまでのTVドラマにも存在した(むしろハイパトが登場するまではオートが主流だった)けど、スライドを引いて初弾を装填したり、マガジン・チェンジしたり等の細かい操作をきっちり見せたのは、日本のテレビ番組じゃ神田さんが初めてだったと思います。構え方もアメリカ式のコンバット・シューティングで、最初は何コレ?って思ったけど見れば見るほどカッコいい! そういうマニアックな格好良さを感じたのはジーパン=松田優作さん以来かも知れません。
この第415話ではクライマックスでオート拳銃の特性を存分に活かしつつ、腰の位置から1発で犯人を仕留めちゃうドックがほんと神憑り的にカッコいい! 前任の殿下と違って、ドック刑事は拳銃さばきで我々男子のハートもばっちり掴んだワケです。
神田さんにこの男子特有のマニアックさが無ければ、ハンサムでスポーツマンで女子はメロメロでも、我々は(少なくとも私は)ついて行かなかった。これもやっぱり神田さんが番組を救い、番組が神田さんを救った大きな要因だと思うワケです。
神田さんが直前まで出演されてた『大捜査線』がせっかくのガバメントを1発も撃たせなかった事実を思えば、つくづく『太陽にほえろ!』は柔軟な番組なんです。ボンがいなくなって失いかけてたその長所を、裕次郎さんのヤンチャ精神を受け継いだ神田さんが呼び覚ましたとも言えます。
以上が、ドック刑事=神田正輝さんが『太陽にほえろ!』の救世主だったと私が断言する、その根拠です。ドックがいなかったらホントに『太陽~』は終わってました。
なのに、インターネットに張り付いてる自称『太陽~』ファンの人たちの中には、ドックや神田さんのこと、そしてドック登場以降の『太陽~』を「糞だ」とか言ってしつこくケナし続けてる恩知らずが、まぁほんの一部なんでしょうけどいるんですよね。
もちろん、好みは十人十色ですから気に食わない人がいるのは仕方がない。けど、気に食わないならサッサとファンをやめりゃ良かったじゃん!って、それだけは言ってやりたいです。楽しめないなら観なけりゃいいし、ファンサイトなんかに参加しなけりゃいい。ほんとワケの解らん連中です。
私は神田正輝さんのファンってワケじゃないけど、『太陽~』を救ってくれた恩だけはホントに、死ぬまで忘れません。ドック刑事、最高!
ところで今回のセクシーショットは、のちに映画『水のないプール』('82) や『十階のモスキート』('83) 等で注目される中村れい子さん、当時20歳。
デビュー時は「立花美英」名義で活動され、ドラマ初出演となる今回の『太陽~』では「日立絵里子」とクレジットされてます。刑事ドラマは他に『特捜最前線』#393、『私鉄沿線97分署』#70、『ゴリラ/警視庁捜査第8班』#15等にゲスト出演。いずれもブレイク後のご出演で、無名時代に起用した『太陽~』スタッフはやっぱりさすがです!
そんなワケで今年もよろしくお願いします!
神田さん太陽以外でここまで魅力的なキャラはなかったですし太陽以降もないような気がします。そういう意味でははまり役に当たったのでしょうね。
私は旧来『太陽~』のくそ真面目さに飽き飽きしてましたから大歓迎で、のちに否定派がけっこう存在することを知って逆に驚きました。ほんとに人の好みは十人十色です。
そんなワケで今年もよろしくお願いします!
ドック刑事カッコいいですね!
太陽であだ名間違えて良いんですね笑
文章で吹きました笑
今年もよろしくお願いします!