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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『警視―K』#07

2021-08-05 00:15:07 | 刑事ドラマ'80年代



 
☆第7話『太陽が上に向いている』

(1980.11.18.OA/脚本=勝 新太郎&須川栄三/監督=勝 新太郎)

今回は『警視―K』にしては珍しい「燃える展開」のお話。まず、政界にも繋がる大手企業=新東亜建設の汚職を捜査中の賀津警視(勝新太郎)が、直属の上司である藤枝課長(北見治一)からやんわりと「手を引く」ことを促され、いきなり激昂します。

「俺たちは何のために国民から税金を貰ってるんだ!? こんな下らない話をしてる間にもどんどん証拠が無くなっていっちゃうんだよ! 悪いヤツが威張ってて、捕まえるほうがビクビクしてたんじゃもう世の中終わりだよっ!!」

全面的に賛成なんだけど、のっけからギア全開で唐突感がハンパないw(後で燃える展開が待ってるんだから、ここはまだそんなに怒らない方が良かったのでは?w)



で、賀津の依頼で新東亜建設の周辺を調べてた情報屋の「ワリちゃん」こと尾張(川谷拓三)が、コソ泥仲間の佐々村(梅津 栄)と置き引きして来たカバンの中身を見て驚きます。それは新東亜建設の汚職を裏づける証拠になるであろう、領収書の束と裏帳簿なのでした。

ここでワリちゃんに魔が差してしまう。現在ベタ惚れ中の呑み屋の女将=時ちゃん(松尾嘉代)に気前のいいとこ見せたくて、賀津にナイショで新東亜建設をユスりに掛かっちゃう。

事の重大さを解ってないワリちゃんは、せいぜい10万円程度の小遣いを稼ぐつもりだったのに、新東亜建設が渡して来たのは500万の札束。

もちろん裏でヤクザが絡んでおり、時ちゃんの店にやって来た用心棒2人組が、彼女のオッパイを指でつついて見せる挑発にまんまと引っ掛かったワリちゃんは、喧嘩を売って即座に撃たれちゃうのでした。



幸い命に別条は無かったものの、友達のワリちゃんが撃たれ、挙げ句に新東亜建設の汚職相手(つまり大事な証人)も口封じに暗殺され、賀津警視の怒りがいよいよ爆発!(のっけから怒ってたけどw)

例の用心棒2人組を引き連れ、高級キャバレーで呑んでる新東亜建設の社長、すなわち黒幕の高浜に近づいた賀津は、まず身分を隠して高浜を挑発。用心棒たちに自分を殴らせ、潜んでた部下たちに現行犯逮捕させます。

署に引っ張られた用心棒2人組は、賀津の狙いも知らずに「シャバに置いとかねえぞこの野郎!」とか言ってイキがります。

「おい、鼻クソ。寝言は寝てる時に言うんだ。眼ぇ覚まして言うもんじゃねえぞ。シャバへ置いとかねえ? それは俺が言うセリフだ!」

そして賀津は殴る、蹴る、髪を引きちぎる、首を絞めるなど高度な取調べスキルを披露し、こう言って用心棒たちを説得します。

「てめえら2人をこの窓から突き落としてな、自殺に見せることだって出来るんだぞ鼻くそっ!!」

そんな賀津の人情にほだされた用心棒たちは、あっさり黒幕の正体を自白。かくして高浜社長を取調室に招待した賀津は、呑んでたウィスキー(もちろん勤務中w)をぶっかけるという手厚い歓迎を施し、人情味あふれる温かい言葉で労をねぎらうのでした。

「お前の洋服はクリーニング屋に持っていきゃ綺麗になるけどな、お前が今までやって来たことはクリーニング屋じゃ綺麗にならねえぞ? 入るとこへ入って洗い直してこい!」

つくづく、これが刑事ドラマだと私は思う。こういうのが観たくて、私は刑事ドラマを追っかけ続けてるんです。

現実にはこんなにうまく行かない事はもちろん分かってます。だからこそ、せめてフィクションの世界でスッキリさせて欲しいワケです。

やっぱり『踊る大捜査線』あたりからですよね。暴力で得た自白は証拠にならないとか、そんなつまらん現実は知りたくなかったですよ。ファンタジーで良かったんです。

本当に追究すべきリアリティーは、まさにこの『警視―K』で描かれてる事だと私は思う。人はこんな局面に立った時、どんな反応をするか? どんな風に動いてどんな言葉を発するのか? それこそがリアルな世界であって、現実の警察組織はどうだの法律はどうだのなんか、ホント心底どーでもいい!

勝新さんは正しかった。あまりに正しすぎて、大方の凡庸な視聴者(もちろん私自身も含む)はついて行けなかった。近年になって再評価されてると言っても、ほんのひと握りのマニアにですからね。追いつくことは誰にも出来ません。



しかし一体どういういきさつなのか、新東亜建設の汚職摘発は全て辺見刑事(金子研三)の手柄として報道されw、何の勲章も貰えない賀津はいつものように、キャンピングカーで愛娘=正美(奥村真粧美)とイチャイチャしながら、愛情たっぷりの目玉焼きを作ってやるのでした。

「なんだよ、このバター」

「それバターじゃないよ、キャベツの芯だよ」

「目玉焼きのこと、英語で何て言うんだ?」

「サニーサイドアップ」

「サニーサイドアップ? どういう意味なんだ?」

「太陽が上に向いてるってこと」

「へえ」

というワケで、サブタイトルの『太陽が上に向いている』は本筋と何の関係もありませんでしたw すごい!w



ゲストの松尾嘉代さんは当時37歳。片平なぎささんが大活躍される前はこの方が「サスペンスの女王」と呼ばれてました。

が、なぜか刑事ドラマへのゲスト出演はごく少なかったようで、同じ時ちゃん役で再登場された『警視―K』第9話の他には『大都会25時』第11話と、あの『はぐれ刑事純情派』第1シリーズの記念すべき第1話があるくらい。

とにかく2時間サスペンスへのご出演が多く、1998年あたりまで色っぽい演技で我々を魅了して下さいました。


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『警視―K』#05

2021-08-02 19:00:08 | 刑事ドラマ'80年代

 
☆第5話『まぼろしのニューヨーク』

(1980.11.4.OA/脚本=柏原寛司/監督=黒木和雄)

「ダニ―」と呼ばれるバンドマンでバーの経営者でもある男が、とあるソープ嬢のアパートで他殺死体となって発見されます。賀津警視(勝 新太郎)ら今宿署の刑事たちが捜査に乗り出し、例によって本庁からやって来た辺見刑事(金子研三)も、エリート風を吹かせながら事件関係者たちとこんな会話を交わします。

「私は本庁の辺見だ」「えっ、ホンチョウの変態?」

「私ね、正子(しょうこ)っていうの」「証拠はあるのか?」

下らないですw しかも今回、辺見刑事の出番はこれだけw だんだん彼が好きになって来ましたw



で、バーで専属歌手を務めるジャズシンガーの洋子(宮崎正子)は、事件当夜ずっと取り立て屋の「大ちゃん」こと結城大(原田芳雄)とカード遊びをしていたって言うんだけど、その時間に結城がソープ嬢のアパート近くを歩いてる姿を目撃されており、賀津警視はこの2人に疑惑を抱きます。



ちなみに賀津と結城が初対面で交わした会話が、これ。

「私の名前ですか? 結城大(ゆうき だい)です」

「言う気ない?」

「言う気ないじゃなくて結城大です」

揃って名優で大スターでもある、あの勝新太郎と原田芳雄の会話とは思えませんw



捜査の結果、実力派シンガー・洋子のお陰で金儲けして来たダニ―が、本場ニューヨークで唱う夢を実現させつつあった(つまりバーを辞めようとしてた)洋子からパスポートを取り上げた事実が判明。それを取り戻そうとした洋子がダニ―と揉み合いになり、恐らく弾みで……



それを確かめるためバーを訪れた賀津に、結城がこんなセリフを吐きました。

「行きますか? コンチクショへ」

「コンチクショ?」

今宿署(こんじゅくしょ)に引っ掛けたダジャレで、勝新さんの反応から見てたぶん原田さんのアドリブですw



「刑事にでもなるかい?」

「ハハ、死にますよ。2日で」

「面白いぞ、刑事も」

続いて出たこれらのセリフも明らかにアドリブ。かくも独特なライブ感に『警視―K』の真骨頂、通常の刑事ドラマじゃ味わえない面白さがあるんですよね。



結城は、夜の街で働く女性たちを助けるため、格安のギャラで取り立て屋と子守りまで引き受けてるナイスガイ。

事件当夜に現場へ行ったのも恐らく、洋子がダニ―を殺した証拠を隠すため。ニューヨークで唱うという彼女の夢を叶えるべく、結城は全ての罪を被ろうとしてるのでした。

で、賀津は結城とポーカーで勝負し、負けたフリをするんですよね。もしかして賀津は、洋子の罪を見逃してやるつもりなのか?



罪悪感に耐えきれず、出発前夜にニューヨーク行きをやめると言い出した洋子に、結城は「お前1人の夢じゃねえんだぞ!」と言って尻を叩き、無理やり「ニューヨークに行きます」と約束させます。

で、翌日。空港でニューヨーク行きの便を見送った結城を、賀津が迎えに来ます。それで促されて覆面パトカーに乗り込もうとしたら、後部座席に手錠を掛けられた洋子が乗っていた! 賀津よ、見逃してやるんじゃなかったのか!?

「…………」

結城は、黙って賀津の顔にパンチをお見舞いします。

「…………」

賀津も、黙って結城を殴り返しますw



つまり今回、賀津警視=勝新さんは悪役に徹してるんですよね! たぶん、結城の優しさと器の大きさ=原田芳雄さんの魅力を引き立てることだけを考えて、こういう結末にした。

じゃあ、なんでポーカー勝負で負けたフリをしたの?っていう謎が残るんだけど、あの時は見逃してやる=自分がヒーローになるつもりでいたのかも知れません。けど、ラストシーンを撮る段になって気が変わったw なにせ『警視―K』っていう作品は全てがアドリブなんです。

大好きなゲストを引き立てる為なら、自分が悪役になることも厭わない。それが勝新太郎というスターであり、だからこそあんな不良で厄介者でも皆に愛されたんでしょう。

男から見ても感じる色気を持った二人のスターと、説明をいっさい省いたシンプルなストーリー、そしてどこまでも映画的なカメラワーク。現在のテレビ番組じゃ観られないものばかりで、いま観ればこそ新鮮だし、シビれます。



洋子役の宮崎正子さんは実際にジャズシンガーで、ソフトロックバンド「ザ・カルア」の元ボーカリスト。'78年にリリースされたソロデビュー曲『ゲット・マイ・ウェイブ』のレコードジャケットが劇中にも登場します。たぶん、勝新さんが彼女のために構想されたストーリーなんでしょう。

 

コメント (2)
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『太陽にほえろ!』#433

2021-07-05 21:21:15 | 刑事ドラマ'80年代






 
☆第433話『金髪のジェニー』(1980.11.21.OA/脚本=柏原寛司/監督=高瀬昌弘)

ゴリさん(竜 雷太)が、夜の酒場で聞き覚えある歌声を聴いてハッとします。

「源さん!」

かつて何度か捕まえ、面倒を見てきた窃盗常習犯の源次(梅津 栄)が、周りの迷惑もどこ吹く風でスティーブン・フォスターの『金髪のジェニー』を熱唱してるのでした。

1ヶ月前に出所したばかりの源次は、長い間会えなかった娘とやっと会えたし、もう足を洗ってマジメに生きていくんだとゴリさんには言うんだけど、嘘っぽいですw

「旦那だけだね……わしのことを心配して下さるのは」

とはいえ娘を想う気持ちだけは本当らしく、彼女が幼い頃によく唄ってたという『金髪のジェニー』を再び口ずさみながら、また夜の街へと消えていく源次なのでした。

もちろん、そんな時は翌朝、源次が溺死体となって発見されちゃうのがお約束。

ショックを受けつつ他殺と直感したゴリさんは、横浜でホステスとして働く源次の娘=ユミ(竹田かほり)に会いに行きます。なぜ横浜かと言えば、柏原寛司さんの脚本だからですw

ところが! ゴリさんの眼の前でユミが二人組の男にさらわれそうになり、駆けつけると彼らは黒塗りの外車で逃走! 源次がまた犯罪と関わってたのは間違いなさそうです。

しかし助けてもらったにも関わらず、ヤンキー気質のユミはゴリさんに礼も言わず、源次が亡くなったと聞いても動じません。

どうしょうもないロクデナシで、父親らしいことは何もしてくれなかった源次を「父親だなんて思ったことは一度もない」と言いきるユミは、彼が殺された理由を知りたがるゴリさんにこんな言葉を浴びせます。

「アンタと会ってたからじゃないの?」

「え?」

「アンタとあの人が会って、そのあと殺されたんでしょ? 警察にタレ込んだと思われたんじゃないの?」

「…………」

「それなら、オヤジ殺したのアンタみたいなもんね」

「!!」



目撃者の証言とゴリさんの記憶により、ユミを襲った外車は「海盛物産」の社用車であることが判るんだけど、社の幹部たち(小倉雄三、北川欽三)は「車を盗まれて被害届を出したばかりなんですよ」と、事件への関与を否定します。

が、海盛物産には以前からヘロイン密輸の黒い噂があり、恐らく源次はそこへ盗みに入って、ヘロインを持ち帰ったせいで殺された。娘のユミまで襲われたのは、そのヘロインがまだ見つかってないからだろうと藤堂チームは推理します。



やんちゃなユミは、源次から何も受け取ってないにも関わらず、カマをかけて海盛物産と取引しようとします。

「売ってやろうかと思ってね。オヤジの遺産」

それで1千万円を要求するんだけど、連中が探してるブツは5千万以上の値がつくヘロインなもんで、カマをかけたことが速攻でバレちゃって絶体絶命!

もちろん、間一髪のところでゴリさんたちが駆けつけ、まずは怒りのゴリパンチ108連発でフルボッコ!

さらにCOLTトルーパー6インチからS&W M29(44マグナム)8インチに乗り換えたスコッチ(沖 雅也)による問答無用のマグナム弾が炸裂!

おまけに毛むくじゃらの大男と運動靴の大男による容赦ないリンチまで加わり、悪党どもは死ぬ一歩手前で刑務所へと送られるのでした。こんな物騒な警察にだけは追われたくないもんですw

「オヤジさんの気持ちも解ってやれよ。酔うといつも『金髪のジェニー』唄ってたんだぜ? よっぽどキミが可愛かったんだな」

「そんな歌……私には関係ないもん」

さすがに懲りたかと思いきや、ユミは相変わらず突っ張った態度を崩しません。

「やり過ぎだよ。何も無いのにアイツらをユスるなんて!」

新婚のロッキー(木之元 亮)が顔を毛むくじゃらにして叱っても、ダサくて古臭いもんだからユミには通じません。

「オヤジだってやったのよ? 殺されなかった私の方が上手じゃない」

「なんてこと言うんだキミは!」

そんなユミの分厚い鎧を脱がせたのは誰あろう、もうこの世にはいない父親の源次でした。ユミのアパートに届いた小包を開けてみると、出てきたのは『金髪のジェニー』のメロディを奏でるオルゴール。

その内部を調べると案の定、ヘロインが隠されてはいたんだけど、源次はそれを知らなかったに違いありません。ゴリさんは全てを察します。

「源さんは、ヤツらをユスろうと思ってこいつを盗んだんじゃない。ただキミにプレゼントしたくて盗んだんだ」

「…………」

「これはね、源さんからキミへの最初のプレゼントだ。そして……最後のプレゼントだよ」

「…………」

たかがオルゴールを買うカネぐらい自分で稼げよ!と内心ツッコミながらw、初めて父親らしいことをして死んでったオヤジを想い、ようやくユミは優しい涙を流すのでした。



よくあるパターンのお話で、作品の良し悪しは全てゲストの女優さんに懸かって来るんだけど、竹田かほりさんなら文句なし。おそらく柏原寛司さんは竹田さんを想定して脚本を書かれただろうし、そもそも竹田さんが呼ばれたのも柏原さんのリクエストだったんじゃないでしょうか?

前述の通り横浜が舞台になるのも柏原脚本のお約束だし、神奈川県警の刑事が「水原」って名前なのも柏原さん流のお遊びに違いありません。(水原は横浜舞台の『大追跡』『プロハンター』における藤竜也さんの役名。今回の水原は藤さんに似ても似つかぬ普通のオジサンだけどw)

また、ゴリさんの相棒役を務めたロッキーの家庭事情(新妻の令子さんが妊娠中)も随所で語られ、「うちの令子が」「令子が」とロッキーがまるで「うちのカミさんが」のコロンボ刑事みたいになって来て存在感を増してるのも見所の1つ。結婚してほんとに良かったね、ロッキーw

にっかつロマンポルノ『桃尻娘』シリーズで知られる竹田かほりさんは、#368『事件の背景』に続く二度目の『太陽にほえろ!』ご登場で、今回の#433との間に松田優作さんの『探偵物語』にレギュラー出演されてました。

刑事ドラマは他に『Gメン'75』『大空港』『爆走!ドーベルマン刑事』等にゲスト出演。中でも『Gメン~』は計7回のご登場でほぼセミレギュラー扱い。宮内淳さんの『探偵同盟』にもレギュラー出演されてたし、我々にはとても馴染み深い女優さんでした。

が、'82年に甲斐バンドの甲斐よしひろさんと結婚され、潔く芸能界を引退。ちなみに甲斐さんは『太陽~』の新人刑事役をオファーされたけど断ってやったぜ!とラジオ番組か何かで自慢されてたそうだけど、真偽は怪しいもんです。


 


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『太陽にほえろ!』#430

2021-07-04 18:50:04 | 刑事ドラマ'80年代




 
☆第430話『東京大追跡』(1980.10.31.OA/脚本=小川英&四十物光男/監督=鈴木一平)

スニーカー(山下真司)を中心に、刑事たちが東京の街をひたすら駆け巡るシンプルなアクション編。私はこういう作品こそが観たいんです! 謎解きなんかもういらんっ!! 人情などクソ食らえっ!! 走れ! 殴れ! 撃て! チョメチョメーッ!!!!

スニーカーが城北署で指名手配されてた傷害犯=角田(真田英明)を七曲署管内で逮捕し、城北署の刑事たち(柄沢英二、関川慎二)と一緒に護送することになります。

ところがその途中、金融会社が拳銃を持った賊に襲撃されてるという連絡が入り、ちょうどその近くを通ってたスニーカーは、城北署の刑事たちの制止も聞かず緊急逮捕に向かい、街中で銃撃戦をおっ始めちゃいます。

で、賊はみごとに押さえたんだけど、そのスキに角田が城北署の刑事から拳銃を奪い、逃走してしまう! えらいこっちゃ!

「キミが余計なことするからだ! キミが悪い! キミの責任だ! ああキミたちがいてボクがいる!」という城北署連中の罵声を背に受けながら、スニーカーは野に放たれた野獣を追い、東京の街をひたすら疾走するのでした。

ところが協力を求めたタクシーの運転手は、日頃の取り締まりで警察を恨んでるのか「ここは20キロ以上出しちゃダメなんでしょ?」とか言ってスピードを出してくれない。その気持ちは解らなくもありませんw

次に協力を頼んだダンプカーの運転手は、ここぞとばかりに街中を暴走し、日頃のストレスを発散するもんだから危なっかしくて仕方がない。

かくも都民たちの協力を得られないどころか度重なる妨害に遭い、あえなくスニーカーは角田を取り逃がしちゃいます。

最初に逮捕した時、取調室で角田は「東京は怖い街だ」と呟いてました。調べると、彼は青森から上京して来た労働者で本来はおとなしい性格なのに、何度も人に騙され蹂躙されて、どうやら自暴自棄になってるらしい。

かつて沖縄から上京し、同じような眼に遭ってヤケになってた時にボン(宮内 淳)と出逢い、七曲署の刑事になったお陰で充実した日々を送ってるスニーカーは、同じ地方出身者の角田に同情します。

「東京は人を変えるんですよ。俺も東京に出てきた時、本当に恐い街だと思いました」

九州出身のゴリさん(竜 雷太)に、スニーカーは本音を吐露します。

「俺も七曲署に入らなかったら、今頃どうなってたか……でも角田には、七曲署が無かったんです」



角田が奪ったと思われる盗難車が発見され、刑事たちが追跡します。この時、ずっと洋モクをくわえたまま覆面パトカーをかっ飛ばし、箱乗りして拳銃を構えるスコッチ刑事(沖 雅也)が超絶カッコいい!! 隣にいるロッキー(木之元 亮)のダサさが絶妙にそれを引き立てますw

結局、盗難車を運転してたのは角田とは別人であることが判り、スニーカーは焦りを募らせます。角田はまだ、人を殺してない。そうなる前に何としてでも捕まえまいと!



角田が浜松町で発見され、警官を負傷させてさらに逃走! スニーカーは、青森の漁港に似た日の出桟橋あたりを、角田が水上バスからよく眺めてたらしいことを思い出し、乗り場へと向かいます。

間一髪、角田を乗せた水上バスが入れ違いに出航してしまい、スニーカーは幅狭い防波堤の上を全力疾走! そして浅草橋から下を通過する水上バスへと決死のダイビング! これが本当の刑事ドラマだ分かったか!



しかし、スニーカーが迫って来たことで角田はさらに逆上し、他の乗客たちに銃口を向けてしまう! もはや制止は不可能! 次の瞬間、スニーカーのCOLTパイソン4インチが火を放ち、角田のどてっ腹を357マグナム弾が貫きます。

初めての射殺はいつも、そのとき主人公が一番殺したくないヤツが相手という、七曲署の伝統をついにスニーカーも実践しちゃいました。

やるせない想いを背負い、またもや刑事を辞めることを考えながら並木道を歩くスニーカーに、ボス(石原裕次郎)が声をかけます。

「確かに都会は恐い。だから俺たちがいるんじゃないか?」



私自身、高校を卒業してから大学進学を諦めるまでの2年間と、のちに映像業界で働いた約3年間、東京に住んでましたけど、特に東京が恐いっていうイメージは抱いてません。生まれ故郷の布施(東大阪)の方がよっぽどガラが悪くて恐かったw

どこにいようが恐いのは人間という生きものであり、それがこの国で最も密集する場所が東京だから恐い、ってことでしょうね。

「大都会の孤独」ってテーマも『太陽にほえろ!』でよく描かれるけど、それも人間が密集する場所だからこそ感じる痛みでしょう。

私は1人でいるぶんにはちっとも淋しくないけど、集団の中にいると疎外感でいたたまれなくなります。今回の犯人もきっとそういうタイプで、そんな人は都会に住まない方が良いだろうと思います。私が現在「ひとりが一番」なんて言ってられるのも、田舎に住んでるお陰かも知れません。

私にとっての東京は、映画館やホビーショップ、風俗店などがいっぱいあって便利な街、そして芸能人やロケ現場をよく見かけるから嬉しい街っていう、ただそれだけのもんです。

人混みを歩いてると、すれ違う人がみんな肩肘張ってる感じがして、そういうのが「しょーもない」し「バカみたいやな」とは思ってました。みんな必死なのは解るけど、そんなに突っ張らんでもええやんって。

だから、また行きたいとは全く思いません。行ったところで『太陽にほえろ!』のロケはもうやってないですからね。(最初に住んだ2年間、『太陽~』のロケと2度、偶然出くわした時はなんて素晴らしい街だ!と思いましたw)
 

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『警視―K』#03

2021-06-15 00:33:08 | 刑事ドラマ'80年代

 
☆第3話『自白への道』(1980.10.21.OA/脚本・監督=勝 新太郎)

この第3話は佐木隆三さんの小説(ノンフィクション?)『殺人百科』より「何処へ行ったの?」というエピソードをピックアップし、脚色した作品らしいです。いや、脚色したというより粗筋だけ拝借し、例によって全て即興の演出&演技で創り上げたんでしょう。

いつものベタなユーモアは控えめに話は淡々と進み、全編BGMもSEもいっさい使わない!という徹底したドキュメントタッチ。

それでも全く退屈せず正味45分があっという間に過ぎますから、勝新太郎さんが役者としてだけじゃなく映画監督としても非常に優れておられたことがよく分かります。

そう、サイズは小さくてもこれはれっきとした「映画」で、劇場公開されても遜色ない作品だと私は思います。



2人の若い女性が失踪し、その両方と交際してたらしいチャラ男=池山(市道浩高)を、賀津警視(勝 新太郎)は重要参考人として今宿署に連行します。

証拠はなく、池山自身も半笑いで無実を主張するんだけど、こいつが2人を殺して遺体を遺棄したと確信する賀津は、執拗に取り調べを繰り返して地道な捜査で外堀を固め、徐々に池山を追い詰めていきます。

で、2人目の被害者である英子が生前、池山に聴かせたくてカセットテープに吹き込んだラブソングの歌声を聴かされ、情にほだされた様子の池山は、ついに殺害を認めるのですが……

池山が遺体を埋めたと自白した山をいくら掘り起こしても、なにも出てこない。焦燥する賀津をせせら笑いながら、池山はこう言います。

「英子の歌聴いとったら可哀想になってもうてな。どうせ誰かに殺されたんやったら、俺が殺した言うた方が喜ぶ思うてな!」



万策尽きた賀津は、池山がただひとり心を許す祖父(今福正雄)に泣きつき、説得を依頼します。「もし罪を犯したなら、責任を取らなあかん。おじいちゃんも一緒に責任取るさかい」と優しく祖父に諭された池山は、今度こそ本当に遺体を埋めた場所を自白するのでした。

で、賀津に遺体捜索現場の立ち会いを依頼され、祖父は「お供します」と答えたのですが……

当日、捜索が始まる1時間前に池山の祖父が自殺を遂げたという報告を受け、賀津は呟きます。

「お供しますっていうのは、そういう意味だったのか……」

そして賀津から「お前のじいちゃん、責任を取って死んだぞ」と聞かされた池山は、初めて人間らしく涙を流すのでした。



淡々とした演出だからこそ、このエピソードは見応えがありました。自殺の報告を受けた時の賀津の呟きも、普通の役者はありったけの感情を込めるもんだけど、勝さんはあえて棒読み。どっちをリアルと感じるかは人によるにせよ、「さあ、ここ! 泣くところでっせ!」ってな演出をされるより、どう受け止めるか観客自身に判断させる演出の方が絶対に正しい!と私は思うワケです。

とかく変人扱いされがちだった勝新さんだけど、こうした演技といい演出といい、そして妥協を許さないばかりに撮影が放映日に間に合わなくなっちゃったっていうクリエイターとしての姿勢といい、何もかも人一倍「正しい」んですよね!

正しく生きようとすればするほど、この世の中じゃ「ヘンな人」「迷惑な人」と見なされちゃう。まあ、麻薬をパンツに隠すのは正しくなかったかも知れないけどw、あの時の名言「もうパンツは穿かないよ」はエンターテイナーとして実に正しい!w いやホント、昨今の有名人は見習った方がいいです。



「言っとくぞ。ヒゲは絶対生やすなよ。大嫌いなんだから」

↑ これは本庁のエリート刑事=辺見(金子研三)が、エリート風を吹かせながら所轄の刑事たちに言ったセリフ。

その理由は勿論、いつも結果的に辺見をコケにしちゃう天敵=賀津がヒゲを生やしてるから。辺見は(立場的には格下の)賀津が嫌いというより、怖いんでしょうねw



聞き込んだ情報を(ライバル意識から)2人同時に報告しようとする若手刑事コンビ(谷崎弘一&水口晴幸)が、賀津に「ややこしいじゃないか!」と叱られ、どっちが報告するかジャンケンで決めようとする場面。

「ジャンケンじゃなくてどっちかが喋れよ、バカ野郎」

「……どっちがいいですか?」

「どっちがいいですかってお前、ジャンケンで勝った方が喋ればいいじゃないか」

「…………」

勝新さんは普段から、そんなことばっか仰ってたんでしょうねw



ラストシーン、いつものようにキャンピングカーで食事しながら、ちょっと落ち込んでる賀津を元気づけようと、愛娘の正美(奥村真粧美)がアメリカのスタンダップ・コメディみたいな下らないジョークを語って聞かせるんだけど、賀津はオチがついて5秒ぐらい経ってから、ふと思い出したように笑うんですよねw

「私が話してる時に笑わないで黙ってる時に笑うの、どうしてなんだろう?」

賀津は……というより勝新さんは、多分そのジョークが面白くて笑ったんじゃなく、そんな下らない話を我が娘から聞かされてる状況が、ふと可笑しくなって笑っちゃったんでしょうw

勿論このやり取りも脚本には無くて、たぶん勝監督は真粧美さんに「何を喋ってもいいからとにかく賀津を笑わせてくれ」とだけ指示してた。それで飛び出した話があまりに下らなくてw……と、そんな顛末だったんじゃないでしょうか。

ステキな親子関係ですよねw いやホントに、毎回癒されるし羨ましいです。


 

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