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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『逃亡者』2020

2020-12-09 00:00:22 | 刑事ドラマ2000年~










 
2020年12月5日と6日にテレビ朝日開局60周年記念作品として2夜連続で放映された、テレ朝とワーナーブラザース・インターナショナルテレビプロダクションの共同制作によるスペシャルドラマ。

言わずと知れた'60年代のアメリカ産大ヒットドラマのリメイクですが、これはハリソン・フォード主演による映画版『逃亡者』('93) の日本製リメイクと言った方がしっくり来ます。そのまんまのシーンがいっぱいありました。となると比較しないワケにはいきません。

映画版でハリソンが演じた主人公に渡辺謙が、トミー・リー・ジョーンズが演じた捜査官に豊川悦司が扮するほか、夏川結衣、余貴美子、稲森いずみ、原沙知絵、前田亜季、杉本哲太、宇梶剛士、火野正平、三浦翔平、藤本隆宏etc…といった豪華キャスト陣が脇を固めてます。

結論から先に書けば、映画版の面白さには遠く及ばない凡庸な出来、と言わざるを得ません。もちろん私がハリソン・フォード信者であることは関係なく。いや、多少は関係あるかも知れないけどw、渡辺謙さんの演技は素晴らしかったと思います。

これはもう、創り手側が『逃亡者』という作品をどう捉えてるかっていう、根本的な問題じゃないでしょうか?

アメリカ映画版はスティーヴン・セガール主演のドンパチアクション『沈黙の戦艦』を大ヒットさせたばかりだったアンドリュー・デイヴィス監督が、そして日本のスペシャルドラマ版は水谷豊さんがただ突っ立ってひたすら謎解きをする刑事ドラマ『相棒』のメイン・ディレクターである和泉聖治監督が、それぞれメガホンを執られてる。そこの違いですよ!

つまり『逃亡者』をアメリカ映画版はアクション映画として、日本版はミステリードラマとして捉えてる。同じストーリーをベースにしながら、そしてそっくりなシーンがいっぱいありながら、創り手のアプローチが全く違ってるワケです。

日本版のスタッフは、なぜ映画版『逃亡者』があれほどの大ヒットを飛ばしたのか、まるで理解してないとしか思えません。

そりゃあ当時のハリソンは無敵の人気を誇ってたけど、スターのネームバリューだけで映画がヒットする時代は既に終わってました。しかも『逃亡者』なんて古典中の古典ですから新鮮味も無かった。

なのにあれほど大成功したのは、元はサスペンスと人情のドラマだった『逃亡者』を思いきってアクション物にアレンジし、そういうのを一番得意とする監督に撮らせたからに他ありません。

それを日本版はよりによって、あの『相棒』のメイン監督に撮らせちゃった。同じストーリーでも、そっくりなシーンがいっぱいあっても、アプローチが違えば仕上がりも全然違っちゃうワケです。(アクションの激しさやスケールの大きさじゃなくて、見せ方の問題。リズム的なもの)

日本版『逃亡者』は完全にミステリードラマでした。血沸き肉踊るような演出が皆無だし、BGMも辛気臭くて単調でまったく盛り上らない。まさに『相棒』そのまんまの雰囲気です。

そもそも大長編ドラマを2時間に凝縮させたアメリカ映画版に対して、日本版ドラマはその映画をベースにしながら倍の4時間に引き伸ばしてるワケだから、甚だしくテンポが悪い。普通は長くなった分だけ深くもなるんだけど、これは引き伸ばしただけだから逆に薄くなったように感じちゃう。

まぁ確かに、アメリカ映画版は細部をハショリ過ぎて話が解りにくい部分がありました。日本版はそこをじっくり描いてるから実に解りやすい。クライマックスには『相棒』よろしく事件のからくりを回想交えて細かに説明してくれます。

でもねぇ、アメリカ映画版がそういうのをバッサリ省いたのは、必要が無いからですよ。事件のからくりを説明することよりも、ドラマの流れを停滞させないこと、観客に爽快感を与えることを優先したからです。だから面白いんですよ! だから大ヒットしたんです!

分からない方が面白い場合だって多々あるんです。例えば日本版のトヨエツ捜査官は、クライマックスに入る前に「これこれこういう理由で渡辺謙は犯人じゃない!」って宣言しちゃうんだけど、アメリカ映画版のジョーンズ捜査官はそこを曖昧にしたままクライマックスに入っちゃう。もしかしたらハリソンを射殺しちゃうかも知れない不安をあえて残してる。その方がハラハラして面白いに決まってるし、最後に味方してくれた時の安堵感や爽快感も増すワケです。

なんでもかんでも解りやすく説明してやらなきゃ、日本のテレビ視聴者はついて来れないんだって、創り手が思い込んでるとしか思えません。バカにしとんかいっ?!

ドラマの面白さって、そういう事じゃないでしょう? 刑事ドラマのレビューでも再三書いて来たことです。だから今の日本のメジャー映画やドラマは観る気になれないんですよ!

今リメイクするなら今なりの、新しい何かを見せてくれるのかと思いきや、まさかの「30年近く前の映画を『相棒』風に味付けして4時間に引き伸ばしただけ」という……

そりゃあ、さすがに渡辺謙さんが主役ですから、その体当たりの熱演だけでも見応えはあるんだけど、だからこそもっとやりようがあったんじゃないの?って、私は思っちゃう。ほんと残念です。
 

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『はぐれ刑事三世』2020.10.15

2020-10-19 00:00:05 | 刑事ドラマ2000年~










 
2020年10月15日、テレビ朝日系列の木曜夜8時枠で放映されたスペシャルドラマで、テレ朝の刑事物を代表するシリーズの1つ『はぐれ刑事純情派』にストレートなオマージュを捧げた作品。

お笑いトリオ・ネプチューンの原田泰造さんが令和のはぐれ刑事=警視庁捜査一課・川辺班所属の「やっさん」こと浦安吉之警部補に扮しておられます。

あの伝説のはぐれ刑事=安浦吉之助(藤田まこと)に名前が似ており、また極度の方向音痴ですぐに目的地からはぐれちゃうから、そして世代的にだいたい三代目だから「はぐれ刑事三世」と呼ばれてるというテキトーな設定w

そんな新やっさんに負けず劣らず方向音痴な相棒刑事=仁城華子に内田理央、川辺班長に立川談春、その片腕となる真島刑事にしゅはまはるみ、若手の玉瀬刑事に荒井敦史、やっさんの妻に真飛聖、娘に傳谷英里香、そして事件関係者に紺野まひる、逢沢りな、藤井美菜、佐戸井けん太、忍成修吾etc…といった個性派キャストが揃いました。

とりあえず、原田泰造さんが主役というだけで私は観たくなります。穏やかでお人好しで昼行燈のように見えるけど、ここぞって時に鋭さを発揮するやっさんのキャラは原田さんにピッタリだし、当然ながら笑いのセンスもバッチリ。藤田まことさんがコメディアン出身だったことも含め、まさに「この人しかいない」適役だと私は思います。

おまけに以前から贔屓にさせて頂いてる内田理央さんが相棒役だし、立川談春さん、しゅはまはるみさん、真飛聖さんなど単発ドラマの脇役としてはなんとも贅沢なキャスティング。シリーズ化はもちろん、明らかに連ドラ化も視野に入れた布陣と思われ、このメンバーなら是非とも毎週観たいです。

とはいえ、まぁ今の時代だから仕方ないんでしょうけど、やたら複雑な謎解きや人情に走りがちな作劇にはちょっと辟易したりもします。元祖『はぐれ刑事純情派』は(少なくとも私が観てた初期シリーズは)もうちょいハードボイルドな格好良さがあったはず。原田さんならそれもサマになると思うし、続きがあるならそこにも期待したいところです。

しかし何はともあれ、最初に書いたとおり原田泰造さんを観てるだけで楽しめますから、これは皆さんにもオススメしたいです。

セクシーショットは上から内田理央さん、傳谷英里香さん、逢沢りなさん、藤井美菜さん。女優陣も華やかで言うことなし!









 


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『警視庁・捜査一課長2020』最終回

2020-09-10 22:22:07 | 刑事ドラマ2000年~










 
お洒落で新しくてスリリングだった『MIU404』とは対極に位置するような刑事ドラマw、常に安定の『警視庁・捜査一課長』シーズン4が第16話をもって終了しました。

話数が異例に多いのは新型ウイルスによる自粛期間にも過去作の再編集版を放映してたから。1話完結型で常に安定の内容だからこそ出来たことです。

ほんと見事に毎回同じパターンで、捜査の流れから事件の構造、事件関係者の相関図や性格づけに至るまでほとんど変わんない。にも関わらず楽しめちゃうという事実こそが奇抜で面白いw

その面白さはたぶん「吉本新喜劇」等と一緒で、安定の中に細かい捻りをどう入れていくか、その隠し味に我々はどこまで気づけるかっていう、送り手と受け手が一緒になって楽しんでる感覚。

その最たる例が笹川刑事部長(本田博太郎)の登場場面で、東京の警察官全員を指揮する大岩捜査一課長(内藤剛志)ですら最敬礼するメチャクチャ偉い人なのに、今回はなぜか本庁じゃなくて所轄署の、駐車場の壁に描かれた落書きを1人でせっせと消してるというw、もはや100%あり得ないシチュエーションで登場し、大岩課長もさすがに気づかず通り過ぎようとして二度見しちゃうというw そういうことをいつも大真面目にやってくれるんですよね。

もちろん無意味に登場するワケじゃなくて、そこで笹川刑事部長が必ず格言めいたことを言い、それがいつも事件解決の糸口になるという、これも鉄壁のワンパターン。

笹川さんだけじゃなく、大岩家の飼い猫=ビビのふとした行動や、それに対して発せられる妻=小春(床嶋佳子)のさりげない一言も必ず(笹川さんの格言より大きなw)ヒントになったり等、本当に全てのシーンが毎回(たぶんタイムテーブルも)まったく同じパターンの繰り返し。

でも、吉本新喜劇を「ワンパターンだから」と言って怒る人はいません。むしろワンパターンだからこそ笑えるってことを、皆が無意識に理解してるから。『警視庁・捜査一課長』の面白さも多分それと同じなんですね。マンネリも徹底的にやり抜けば、何やら新しいものになっちゃうという不思議w

だからとてもリラックスして観られるし、毎週観なくたって全然平気w 実際、私は録画を貯めておいて気が向いた時に観てますから、今シーズンも5本くらい飛ばして最終回を先に観ました。

我々凡人に『MIU404』みたいな脚本は逆立ちしたって書けやしないけど、『警視庁・捜査一課長』の脚本なら書けるかも知れないってw、錯覚させちゃうシンプルな作りも魅力の1つ。実際はもちろん、全て決められた枠組みに沿ってストーリーを創るのは、もしかすると斬新なのを創るよりずっと大変な作業かも知れません。

これだけしつこく『警視庁・捜査一課長』シリーズの魅力を熱く語っても、共感してくれる人がすこぶる少ないのが残念でなりませんw ワンパターン(お笑い用語で言えば天ぷら?)の面白さって、1回観ただけじゃ分かんないから伝わりにくいんですよね。

『MIU404』は本当に近年稀に見る面白さだったけど、この『警視庁・捜査一課長』にはそれとは全く違う面白さがあり、なのに誰も声を上げて語らない、語るのがちょっと恥ずかしいような垢抜けなさがある。だからこそ私は好きなんだろうと思いますw

ところで最終回のメインゲストは「ぱるる」こと島崎遥香さん(握手会における塩対応でポンコツと呼ばれたAKBのアイドルも、雰囲気のある良い女優さんになられました)なんだけど、第1発見者の役で出演された小宮有紗さんのお尻グラビアが素晴らしいので、今回のセクシーショットは小宮さんのお尻で決定です。

小宮有紗さんは2012年のスーパー戦隊シリーズ『特命戦隊ゴーバスターズ』におけるイエローバスター=宇佐見ヨーコ役で注目され、数多くの作品に出演され声優としても活躍されてる方ですが、とにかくお尻が素晴らしいです。
 

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『MIU404』最終回

2020-09-08 00:00:16 | 刑事ドラマ2000年~










 
存分に楽しませて頂きました。本当に見事な、そして2020年現在ならではのエンタメ刑事ドラマでした。文句なし!

第8話では、伊吹(綾野 剛)の恩師であり良きアドバイザーでもある元敏腕刑事=蒲郡さん(小日向文世)が、なぜ警察を辞めたのか、その衝撃の理由が明らかになり、それがまた最終章に向けての重要な伏線となりました。

そして第9話から最終回(第11話)までの三部作で、ずっと正体不明だった最凶の敵=久住(菅田将暉)と我らが「4機捜」との決戦が劇場版並みのスケールで描かれ、本当に心底からハラハラドキドキさせてくれました。

私がこよなく愛する昭和の刑事ドラマだと、ハッピーエンドにしろバッドエンドにしろ観る前から結末がほぼ判ってた(なにせサブタイトルに『マカロニ死す』とか書いてあるw)のに対して、この『MIU404』はどっちにも転ぶ可能性を感じさせるからホントに油断出来ない。

いや、結局、この結末は本当に現実なのか!?っていう含みまで持たせてるんですよね! 途中、久住が手下たちに造らせた新種ドラッグによって、伊吹と志摩(星野 源)がそれぞれにとって最悪のバッドエンドの夢(あるいは幻覚)を見るんだけど、もしかしたらその内のどっちかが現実で、我々が最終的に観たハッピーエンドこそが夢なのかも知れない。

私個人としてはスカッとシンプルなハッピーエンドの方が好みだけど、多様性の時代にはこういう「観客に選ばせる」結末の方が合ってる気もするし、志摩の「人は信じたいものだけを信じる」とか「そこでスイッチを押すか押さないか」等の台詞に呼応してる気もして、いかにも『MIU404』らしい締めくくりで良かったと思います。

そして、それより何より、題材や展開はすこぶる現代的でありながら、随所に昭和の刑事ドラマへのオマージュを匂わせる演出が見られて、私はそのたびに痺れました。

最終回で言えば、屋形船に乗って逃げる久住を追って、伊吹が堤防を全力疾走する場面! 言うまでもなく『太陽にほえろ!』へのオマージュです。創り手はそれらの作品を観て育った世代じゃないかも知れないけど、敬意を示しておられるのは間違いないと思います。

やっぱりフィクション世界の刑事は、走って殴って撃ってナンボなんです。それが許されるのは彼らだけなんだから! 謎解きなんか家政婦とか三毛猫とか執事とかに任せときゃいいんだから!

MIU404=伊吹&志摩は、言わば令和時代のジーパン(松田優作)とスコッチ(沖 雅也)です。昭和時代のお二人とは貫禄も迫力もえらく違うけどw(約45年で日本人の容姿は随分と変わりました。さらに45年後にはどうなってるんでしょう? それまで人類は生き延びられるのか?)

さらに『MIU404』ならではの発明だと思うのが、『私の家政夫ナギサさん』の最終回にもチラッと登場した覆面パトカー「まるごとメロンパン」号!

『西部警察』シリーズの「マシンX」的なポジションでありながらキュートな持ち味もあり、まるで『スター・ウォーズ』シリーズにおける「ミレミアム・ファルコン」号みたいな1つのキャラクター、5人目の4機捜メンバーとも言える存在でした。

そうして根っこに熱い昭和魂を忍ばせながら、見せ方はすこぶる現代的。最凶の敵である久住と、彼を殺す気満々の伊吹が初めて対峙するシーンがお互い満面の笑顔っていうのもw、実に新しくて刺激的でした。まぎれもない大傑作です。素晴らしい!

バディー物の刑事ドラマっていう、もはや古典中の古典と言えるジャンルでも、こうしてアイデアを練りに練れば全く新しい作品が生み出せる。それを『MIU404』が証明しちゃいましたから、後続の刑事ドラマはホント大変ですw

同じ放映枠の後番組がまたもやバディー物の刑事ドラマだけど、予告編を観ただけで本作の足下にも及ばないのが見え見えで、ちょっと気の毒ですらあります。もちろん、そんな予想を覆してギャフンと言わせてくれることを期待しますが、まあ並大抵のことじゃない。

やっぱり今回は野木亜紀子さんというスペシャルな才能があればこその偉業で、以前にも書いた通り、刑事物を手掛けて下さった野木さんに感謝あるのみです。

そして、自分だって本気を出せば野木亜紀子なんかに負けやしないよ!って、刑事ドラマの創り手さんたちが奮起して下さることを切に願います。

このジャンルはまだ死んでません。ボクは死にまっしえーん!!
 

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『MIU404』#02~#07

2020-08-11 00:00:07 | 刑事ドラマ2000年~










 
(番組の概要&初回レビューは『刑事ドラマHISTORY』カテゴリーの記事をご参照下さい)

☆第2話は、第4機動捜査隊の伊吹(綾野 剛)と志摩(星野 源)がパトロール中に見かけた車の様子に違和感を覚え、それが凶器を持って逃走中の殺人犯(松下洸平)を乗せた車だと判り、追跡を開始するという滑り出し。

このドラマは日常から事件への導入がいつもスムーズかつ絶妙で、毎回あれよあれよと引き込まれて眼が離せなくなっちゃう。そこに強引さを感じさせない脚本がほんと神レベルで素晴らしいです。

で、車の持ち主である夫婦(鶴見辰吾、池津祥子)は若い犯人に脅されてるワケだけど、なぜか彼の逃走を手助けしようとする。実はこの夫婦、息子を信じなかったせいで自殺に追いやってしまった暗い過去があり、同じ年頃の犯人の無実を信じることで贖罪しようとしてる。

犯人が本当に人を殺したことを知ってもなお、我が身を挺して逃がそうとする夫婦がやってることは果たして愛なのか、単なるエゴなのか?

「人は信じたいものだけを信じる」っていう志摩の言葉が真理を突いてて、泣かされつつも考えさせられるお話でした。


☆『アンナチュラル』の刑事たち(大倉孝二&吉田ウーロン太)も登場した第3話では、偽りの110番通報でパトカーを呼び、よーいドンで逃げ切ったら勝ちっていうゲームを繰り返す高校生たちに、元陸上部で俊足だけが取り柄の伊吹が挑みます。

実はその高校生たちも、先輩部員が起こした不祥事の連帯責任で活動停止させられ、走る機会を奪われた陸上部員なのでした。

事件そのものは他愛ないイタズラであり、捕まった部員たちは素直に反省するんだけど、1人だけ逃げ切ってしまった子が怪しい男(菅田将暉)と出逢ってしまい、どうやら深刻な悪の道へと堕ちていく。

「人は何かのスイッチで道を間違える」

志摩が言った台詞はその高校生と、彼自身のダークな過去にも架かってることが後のエピソードで明かされます。


☆第4話は、冒頭でいきなりヤクザたちに銃で撃たれた女=透子(美村里江)が、なぜヤクザに追われてるのか、いったい何がしたくて逃げてるのか、その謎解きと平行して、桔梗隊長(麻生久美子)と同居する謎の女=麦(黒川智花)の素性も明かされていきます。

透子はかつて働いてた裏カジノ店で摘発を食らった後、心機一転で就職したつもりの会社までヤクザと繋がってることが判り、自分の人生に絶望して裏金を横領し、それがバレていま追われてる。

一方、麦もかつて裏カジノと関わり、その情報を提供したにも関わらず警察が摘発に失敗し、組織から命を狙われる羽目になっちゃった。それで責任を感じた桔梗が麦を匿ってるんだけど、どうやら彼女の存在がクライマックスの展開に大きく関わって来そうです。

で、撃たれた透子が命懸けでやろうとしてたのは、女子児童慈善団体への寄付でした。ろくでもなかった人生の最期に1つだけ、誰かの役に立って彼女は死にたかった。でもそれはヤクザの裏金だから寄付させちゃいけないのに、あえて見逃してやる伊吹&志摩の温情に泣きました。

なお、今回の事件を通して、志摩にもスコッチ刑事的な暗いトラウマがあり、リーサル・ウェポン的な危ないダークサイドがあることが分かって来ます。

そうしてゲスト側のドラマとレギュラー側のドラマを違和感なく絡ませ、各キャラクターをより深く掘り下げ、その関係性を変化させていく作劇が本当に見事! 毎回、存分に楽しみながらも唸らされます。


☆第5話ではベトナム人留学生たちによるコンビニ強盗を捜査する伊吹&志摩が、劣悪な労働環境にあえぐ外国人たちの実態を思い知らされ、彼らを支援したい気持ちが強すぎて強盗を首謀した日本語教師(渡辺大知)に哀しい手錠をかける羽目になりました。

昨今の刑事ドラマは奇想天外なトリックやらどんでん返しに固執しすぎて、すっかり現実離れしちゃってるけど、この『MIU404』で描かれる犯罪は我々の身近でも起こり得るものばかりで、とても現実的で現代的。

私が住む地域でもここ数年で外国人労働者が爆発的に増えており、つい色眼鏡で見ちゃう自分がいるもんだから身につまされました。確かに素行の悪いヤツはいるけど、いい子もいっぱいいる。それはどこの国でも同じ。当たり前のことですよね。


☆さて、第6話では「相棒殺し」と陰口される志摩のスコッチ的過去が明かされ、それを全面的に受け入れた伊吹によってその傷が癒され、ドラマが1つの節目を迎えました。

「人は何かのスイッチで道を間違える」

遠慮してスイッチを押せなかったせいでかつての相棒(村上虹郎)を死なせてしまい、自分自身すら信じられなくなった志摩の魂を、遠慮という文字が辞書から抜け落ちてる伊吹が救うんですよね。志摩が押して欲しくなかったスイッチまで片っ端から押しまくってw

それで傷が癒えたからと言って、志摩が遠慮を知らない人間に生まれ変われるワケじゃない。けど、横に伊吹がいれば何とかやって行ける。それは伊吹にとっても同じこと。名コンビとはそういうものなんだと思います。


☆そうして志摩や桔梗に関する謎が解明され、次回あたりから菅田将暉くんが本格始動して最終章に突入する、その間の骨休め的な位置づけの第7話は、追跡に次ぐ追跡の純エンタメ路線。私が一番観たいのはこういうエピソードなんですよねw

初回のカーチェイスを凌駕するような格闘アクションも見られ、陣馬班長(橋本じゅん)の長さん的ホームドラマにはホロッと来たし、スマホ世代のボンボン刑事=九重(岡田健史)の相棒想いな一面も描かれて、クライマックス前にやっておくべき事はこれで全部やった感じ。


☆いやあ~、ほんとに素晴らしいです。各エピソード単体のクオリティーもさることながら、回を跨いだ謎の匂わせ方にせよ、伏線の張り方と回収の仕方にせよ、あざとさを微塵も感じさせないのが野木脚本の凄いところ。そういった謎や伏線を毎回事件の内容とリンクさせるテクニックもさる事ながら、何より作品にこめられた「熱量」がストレートに響いて来るから素直に感動できる。

その熱量がどこから生まれてるのかと言えば、たぶん「怒り」なんですよね。あおり運転する輩どもへの怒り、反社会勢力への怒り、子供や外国人労働者を食い物にする連中への怒り、それを見て見ぬフリをする大人たちへの怒り、またその犠牲となった弱者たちに対する共感も、ぜんぶ作者が日頃から抱いてる本当の気持ちなんだろうと思います。

私がよく言う「作品に魂がこもってる」ってヤツです。説得するにせよ論破するにせよ、言葉に魂をこめなきゃ相手の心は動かせない。それとまったく同じことで、野木亜紀子さんのドラマが面白いのは常にメッセージが明確なのと、そこに嘘や建前がたぶん無いから。その根底にある怒りが、我々凡人が持つそれと全く同じだから。テクニックは二の次だろうと私は思います。

それと各キャラクターへの愛ですよね。謎解きゲームの単なる「コマ」になってない。刑事ロボットどころか、伊吹&志摩が使う覆面車にまで「まるごとメロンパン」っていう個性=人間味を持たせてる。

昨今の刑事ドラマがすっかり見失ったものが、この作品には詰まってる。格好つけて言えば「パッション」ってヤツです。パッションがあれば自ずと登場人物は走るだろうから、ドラマはアクティブになります。

ただ突っ立って謎解きしたり、裏切者を探したりする「ゲーム」にパッションなんか感じようがありません。だからこそ気楽に観られる→安定した視聴率を稼げる→そればっかりになっちゃうって事なんでしょう。

けど、そんなもん観たって何も得られないことに、もう皆とっくに気づいてますよ。かつて特撮ヒーロー物が「ジャリ番」と呼ばれてバカにされた代わりに、今じゃ刑事物が医者物と並んで鼻で笑われるジャンルの筆頭になってませんか?

それはマンネリだからじゃなくて、創り手にパッションが無いからだと私は思う。小手先だけで創ってるのがバレバレなんです。『刑事7人』がその代表格。なのにそういう番組の方が視聴率を稼いだりしちゃうから厄介なワケです。破滅です。

それは本当に嘆かわしいことだけど、一方でこの『MIU404』みたいにパッションの塊みたいな刑事ドラマも、ごく稀れにだけど生まれてますから捨てたもんじゃありません。

野木亜紀子さんが刑事物を書いて下さったことに、私は心から感謝します。ほかの創り手さんはこれを観て「ああ、さすがだな」だけで済まさず、「よし、こっちも負けずにやったるで!」って、どっかで落として来たパッションを是非とも取り戻して頂きたい! ほんと切に、切にそう願います。

セクシーショットは、第3話で高校陸上部のマネージャーを演じた山田杏奈さんと、第5話でベトナム人留学生を演じたフォンチーさん、そして第6話で志摩の死んだ相棒に命を救われた垣内彩未さんです。
 

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