goo blog サービス終了のお知らせ 

ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『俺の空/刑事編』2011

2019-08-07 00:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2011年の秋シーズン、テレビ朝日系列の日曜深夜「日曜ナイトプレミア」枠で放映された全9話の刑事ドラマ。本宮ひろ志さんの同名漫画を実写化した作品です。制作はテレビ朝日&MMJ。

日本屈指の大財閥「安田グループ」の御曹司=安田一平(庄野崎 謙)が、一族の掟に従い1年間で「正義とは何か?」という自らの命題への答えを見つけるべく、警視庁京橋警察署刑事課にコネで配属され、総理大臣をも動かす安田グループの人脈と財力を駆使し、暴力団や政治家が絡む大事件を解決していく痛快アクション。

しかし、そんな荒唐無稽なお話をドラマ化するなら、徹底して大真面目にバカをやらなきゃ駄目なんだけど、本作はちょっと中途半端だったように思います。

まず、深夜枠の番組=低予算ゆえか、安田グループの金持ち描写がショボい。主人公がヘリコプターで初出勤するファーストシーンからして、よく似た設定の『富豪刑事』が本物のヘリを使ってたのに対して、こちらは安っぽいCG処理。セットも衣裳も同様で、そこで圧倒的なスケール感が出せないと説得力がない。説得力がないとバカバカしさが笑いに繋がらない。

そして安田一平の婚約者である御前グループ総師=御前一十三(夏菜)にしても、地方検事となって一平を支援する武尊グループ次期総師=武尊善行(永井 大)にしても、わざと漫画そのまんまの「コスプレ」をしてウケを狙ったみたいだけど、単に浮いてるだけで豪快にスベっちゃってますw

ストーリーは警察幹部も絡む人身売買組織との対決というシリアスなもので、ちゃんと燃える展開もあるだけに、中途半端にフザケたりせず徹底して熱くやるべきでした。そうすればきっと笑えた筈ですw

それより何より残念だったのは、オーディションで2700人の応募者から選ばれたという、主役の新人俳優さんに全く魅力が感じられないこと。

オーディションはあえて「芸能経験ゼロの新人」を対象にしたそうで、演技が拙いのは仕方がない(もしかしたらそれもウケ狙い? だとしたらもっと下手な人を選ぶべきでした)にしても、大財閥の御曹司にはぜんぜん見えないし、眼を見張るようなイケメンでもないし、アクションも大して上手くないしで、言っちゃ悪いけど毎週チャンネルを合わせたくなる吸引力がまったく無い。

タレント人気に頼りきったドラマ作りがはびこる中、あえて無名の新人を抜擢したチャレンジ精神は素晴らしいと思うだけに、それで選ばれたのが(言っちゃ悪いけど)コレ?って思うとなおさら残念です。もしかすると出来レースだったのかも知れないけれど……

しかしその分、脇を固めるレギュラー陣には魅力的な俳優さんたちが揃いました。一平に恋心を抱く同僚刑事に国仲涼子、先輩刑事に松重 豊、泉谷しげる、課長に尾美としのり、マルボー担当刑事に遠藤憲一、フリージャーナリストに高知東生、一平の父親に大杉 漣、といった面々。

特に松重さんと遠藤さんの武闘派刑事ぶりが頼もしく魅力的で、安田一平抜きでこのお二人のバディ物にした方がよっぽど面白いかも?って、言っちゃ悪いけど思いました。

刑事ドラマがいよいよ謎解きゲーム一辺倒になりつつあった中、アクション路線の刑事物をやってくれること自体は本当にありがたく、だからこそもうちょっと何とかならんかな?っていう不満ばかりが眼につく、実に惜しい作品でした。
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』2011

2019-07-29 00:00:04 | 刑事ドラマ HISTORY









 
誉田哲也さんの警察小説『ジウ』シリーズを原作とする『ジウ/警視庁特殊犯捜査係』は、テレビ朝日系列の金曜深夜「金曜ナイトドラマ」枠で2011年夏シーズン、全9話が放映されました。

『デカワンコ』にハマったこの年、すっかり多部未華子さんのファンになった私は、彼女の次なる出演作を心待ちにしてました。

そこに飛び込んで来た夏の連ドラ情報に、私は狂喜乱舞しました。多部ちゃんが同い年の黒木メイサさんとダブル主演する新番組はなんと、またしても刑事物だと言うではないですか!

多部ちゃんサイドとしては、別に好んで刑事物を選んだワケじゃなく「コメディの次はシリアスな作品を」という意図で選んだ企画が、たまたま刑事物だっただけの話かと思います。

けれども私は「多部ちゃんにはいつか、スタンダードな刑事ドラマにも出てもらいたいなぁ」と思ってた矢先で、そんな漠然とした願いがいきなり叶ってくれたワケです。

スタンダードというのはつまり『デカワンコ』みたいな変化球と違って、ストレートに『太陽にほえろ!』の流れを汲む正統派の刑事物ってことです。

で、企画の概略を読むと、クールな武闘派刑事(黒のイメージ)に黒木メイサ、心優しい庶民派刑事(白のイメージ)に多部未華子、みたいなことが書かれてたんで、これは『太陽~』と言うより女性版『俺たちの勲章』だなと、私は勝手に想像を膨らませました。

と言うことは、対照的な2人の刑事が反目し合いながら犯罪者と闘う内に、やがて信頼の絆を結んで行くバディ物のパターンが想像され、いずれにせよスタンダードな刑事ドラマが観られるに違いないと、私はワクワクしながら放映日を待ちました。

ところが、いざ蓋を開けてみたら驚いた! そこに映し出されたのはスタンダードどころか、近来まれに見る珍品ドラマなのでしたw

『ジウ』というドラマはある意味『デカワンコ』を凌ぐ変化球? いや、魔球? 暴投?w とにかくそれは、ヘンなドラマとしか言いようの無い代物だったんです。

まず、メイサ扮する伊崎基子と多部ちゃん扮する門倉美咲は、ほとんど顔を合わしません。最初こそ同じ特殊犯捜査係=SITの所属だけど、すぐに基子は女性初の特殊急襲部隊=SAT隊員に抜擢され、美咲は所轄・柿の木坂署に異動しちゃう。

映画『ヒート』のロバート・デニーロとアル・パチーノみたいなもんで、それぞれの活躍が別個に描かれて重要なポイントでしか交わる事がない。だから反目する機会も少なく信頼の絆が育まれる時間も無い。2人の間の距離感は、最後まで変わらないままなんです。

基子は人を一切信じないロンリーウルフなんだけど、ヒューマニズム一直線の美咲に感化されることも無く、孤独なまんまでドラマは終わっちゃう。これには度肝を抜かれました。普通なら孤独な主人公が誰かと絆を結び、愛や友情の大切さを知るのがドラマってもんですから。

また、美咲は同僚達から「カンヌ」と呼ばれてて、それは泣きの芝居で犯罪者を落とす交渉テクニックが「主演女優賞もの」って理由なんだけど、彼女はドラマの中でその特技を、なんと一度たりとも披露しない!

それって「ジーパン」と呼ばれてる刑事が背広姿のまま最後まで通しちゃうようなもんで、彼女の一体どこが「カンヌ」なのか視聴者にはサッパリ解んないw

それより何より、彼女らが追う「ジウ」と呼ばれる謎めいた連続殺人鬼と、その背後に潜む「新世界秩序」なる怪しいテロ組織の存在が、怖いんだか可笑しいんだか、そもそも奴らは一体何をどうしたかったのか、最終回まで観てもよく解んないw

そしてタイトルロールにもなってる若き殺し屋「ジウ」です。言わばこのドラマの核となる人物で、彼の得体の知れない恐ろしさや、無敵とも言える強さがあればこそ、それに立ち向かうメイサ&多部ちゃんの活躍が光るワケです。

ところが、そのジウを演じる韓国から来たダンサー少年=L君が、ちっとも強そうにも怖そうにも見えない! これはホントに、返す返すも致命的でした。ミスキャストどころの話じゃありません。

そもそも、見かけは可愛い少年だけど眼が死んでるとか、全身に殺気が漲ってるとか、背中に哀しみが滲み出てるとか、そういうのは文字の世界(小説)じゃ成立しても、映像で表現するのは極めて難しいことです。

それだけハードルの高いキャラクターなのに、よりによってほとんど芝居が出来ない、見かけもお人好しの中学生にしか見えないガキンチョを、なんでわざわざ韓国くんだりから引っ張って来なきゃいけないのか?

そこには抗いようの無い大人の事情があったのかも知れないけど、ハッキリ言ってこのキャスティングは、全てを「台無し」にしたと私は思ってます。

……とまぁ、ツッコミだしたらキリが無い『ジウ』なんだけど、それでも私はこの作品を駄作だとは言いたくありません。だって多部ちゃんが出てるから……っていうのが主たる理由だけどw、それだけじゃないんです。

手垢が付きまくった既製のフォーマットに、旬の人気俳優をとっかえひっかえハメ込んだだけの、まるでインスタント食品みたいにお手軽で無個性な刑事ドラマがはびこる今のご時世においては、「非凡である」という事こそが何より素晴らしい!と私は思うワケです。

確かに私はスタンダードな刑事ドラマが好きだけど、そこに何かプラスアルファの新しさが無ければ、創る意味が無いとも思ってます。

良くも悪くも、他の刑事ドラマには無い味わいが『ジウ』には溢れてました。返す返すもL君の起用は大失敗だけど、安易に日本のメジャーアイドルを使わなかったチャレンジ精神は評価すべきかも知れません。

チャレンジと言えば、スタントマンに頼ることなく数々のハードアクションを自らこなした黒木メイサさんにも拍手を贈りたいです。彼女の殺陣は本当にカッコ良かった!

私は格闘技に関して素人ですから、殺陣のレベルがどれほどなのか判断出来ないけれど、彼女の全身から漲る殺気が、べらぼうに強いキャラクターに説得力を与えてました。L君のへなちょこアクションとは大違いw(今あらためて観直してもホントへなちょこ)

そしてやっぱり、果てしなくB級(いやC級?)に近いこの番組を、ちゃんと大人の鑑賞に耐え得る作品に底上げしたのは、間違いなく多部未華子さんの功績です。『デカワンコ』もそうであったように、彼女の卓越した演技力がキャラクターに実在感をもたらし、作品の世界観を「荒唐無稽」一歩手前でつなぎ止めてくれました。

美咲が冴えない中年男である東主任(北村有起哉)にほのかな想いを寄せる展開も、我々に夢を与えてくれましたw 多部ちゃんはなぜか、中高年のオッサン世代にファンが多いんです。

そんな多部ちゃんが籠城犯の要求に従って下着姿になったり、メイサはSATの同僚=城田 優くん相手にベッドシーンを披露する等、お色気描写も忘れない姿勢がまた素晴らしい!

その他キャストは、警察関係者に伊武雅刀、モロ師岡、阿南敦子、小柳 友、矢島健一、飯田基祐、宮川一朗太、石丸謙二郎、光石 研、寮のまかないオバサンに岸本加世子、美咲の両親に不破万作&松本じゅん、ジャーナリストに小市漫太郎、新世界秩序の首領に石坂浩二、といった面々。

主題歌はレディ・ガガ(ただしDVDでは差し替え)、そして制作はテレビ朝日&東宝という珍しい組み合わせ(映画化を目論んでたのでしょう)。

一般的な眼で観て面白いかと問われると返答に困るしw、決して名作とは言えない、どちらかと言えば迷作、珍作なんだけど……いや、だからこそ、これは忘れられない作品であり、昨今の無個性極まりない刑事ドラマ群に飽き飽きしておられる方には、恐る恐るながらもオススメしたいですw

多部ちゃんの下着姿やメイサの本格アクションも必見だし、L君の下手すぎる芝居&へなちょこアクションを見て笑うのも、これまた一興ですからw
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『絶対零度/特殊犯罪潜入捜査』2011

2019-07-22 12:05:15 | 刑事ドラマ HISTORY








 
2011年の夏シーズンにフジテレビ系列・火曜夜9時枠で全11話が放映された刑事ドラマ。前年に放映された『絶対零度/未解決事件特命捜査』の続編です。

コールド・ケースを扱う人情捜査物だった前作とはガラリと趣を変え、主人公の新米刑事=桜木 泉(上戸 彩)が警視庁の極秘スパイチームである「特殊犯罪捜査対策室」に異動、スリリングな潜入捜査が描かれます。

泉を厳しく鍛える先輩刑事=瀧河に桐谷健太、室長に北大路欣也、同僚に中原丈雄、小林高鹿、峯村リエ、齋藤めぐみ、情報分析班メンバーに杉本哲太、山口紗弥加、科捜研メンバーに北川弘美、木村了etc…といったレギュラーキャスト陣。

半人前の主人公が情報を得るため、身分を隠して容疑者の恋人と親しくなり、人柄の良い彼女を騙し続ける任務の理不尽さに苦しみ、葛藤するっていう初回のプロット自体は古典的だけど、マンツーマン(マンツーウーマン?)で泉をシゴく瀧河の冷徹なキャラと、両者の関係性がNHKの力作ドラマ『外事警察』('09) における尾野真千子&渡部篤郎の描かれ方そっくりで、初見の時は「パクりやん!」と思って私は切り捨てました。ちょっとでも気に食わないとすぐ切り捨てちゃうw

でも、スパイの仕事に情が禁物なのは当たり前のことで、新米にそれを教えるには冷徹になるしか無いワケで、それを描けば似たような感じになっちゃうのは仕方のないこと。タイミング的に『外事警察』の影響は確実に受けてるだろうけど、こっちはこっちで面白ければ別に問題ないやんって、今は思います。

そこさえ気にしなければ、これも相当な力作で見応えがあり、最初の2話を観た限りじゃ前作より遥かに面白いです。

葛藤しながらも泉は任務を全うし、事件解決に貢献するんだけど、友情を育んだ容疑者の恋人を最後まで騙したまま終わっちゃう結末は、決して後味の良いもんじゃありません。

けど、隠密捜査のプロフェッショナルである以上、たとえ事件が解決しても(今後の任務に支障が出ないよう)正体は誰にも明かせないっていう理屈はよく解ります。

これが『太陽にほえろ!』なら、罪のない市民を騙した報いとして、必ず正体がバレて相手に軽蔑されちゃうパターンになるんだけど、あえてそうしない結末には新鮮さを感じました。

もし正体をバラしたら、騙された相手は恋人が逮捕された事と二重に傷ついちゃうワケで、これはむしろ『太陽にほえろ!』より優しい結末と言えましょう。

ひたむきな主人公を上戸彩さん(許さんぞEXILE!)が好演、桐谷健太くんもなかなかハマり役だし、杉本哲太さん、山口紗弥加さんというこの種のドラマに欠かせないバイプレーヤーに、重鎮の北大路欣也さんがもたらす安定感。

あくまで最初の2話だけの感想ですが、観て損はないハイクオリティーな作品だと私は思います。
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『遺留捜査』シリーズ '11~

2019-07-22 00:00:05 | 刑事ドラマ HISTORY









 
テレビ朝日&東映の制作で、第1シリーズは2011年の春シーズンに水曜夜9時枠で全11話、第2シリーズは2012年の夏シーズンに木曜夜9時枠で全8話、第3シリーズは2013年の春シーズンに水曜夜9時枠で全9話、第4シリーズは2017年の夏シーズンに木曜夜8時枠で全9話、第5シリーズは2018年の夏シーズンに木曜夜8時枠で全9話が放映され、スペシャル版も2019年現在まで計6本が放映されてる人気作。テレビ朝日はこんなシリーズをいったい何本抱えてるんでしょうかw

『遺留捜査』はタイトル通り、被害者が残した遺留品から事件を解決していく謎解きドラマで、今となっては定番ジャンルの1つだけど、科学捜査の過程を見せるよりも、心情の機微に重点を置いた作劇が特徴と言えそうです。

要するに人情系ドラマで私の好みじゃないんだけど、上川隆也さん扮する警視庁科学捜査係主任=糸村 聡の超マイペースなキャラクターと、遺留品にとことん執着するマニアックさ、要するにオタク気質には個人的に共感出来るものがありw、観ればそれなりに楽しめるシリーズではあります。

なにかと糸村と関わる捜査一課の刑事に貫地谷しほり、大杉 漣、佐野史郎、螢雪次朗、甲本雅裕、波岡一喜、水野真紀etc…といったメンバーで第1シリーズがスタート。

第2シリーズからは所轄の月島中央署刑事課に舞台を移し、レギュラー陣も斉藤由貴、三宅裕司、八嶋智人、田中哲司、岡田義徳etc…といったメンバーにバトンタッチ。

そして第4シリーズからは京都府警本部が舞台となり、栗山千明、永井大、和泉崇司、梶原善、戸田恵子、段田安則etc…といったメンバー構成になってます。

また、いつも無理難題を押しつけて来る糸村にウンザリしてる科捜研の係官=村木(甲本雅裕)が、異動する先々になぜか必ず糸村も転属されて来て「またアンタかっ!?」となるのがシリーズ通しての笑いどころになってますw

しかし、刑事ドラマは動いてナンボ、謎解きゲームはもうウンザリっていつも書いてますけど、仕事を終えて帰宅し、何となくテレビを点けて食事しながらボ~っと観る分には、こういう落ち着いた作品の方が良いような気もして来ました。トシを取ると共にw

要は、面白ければ何だって良いんです。主人公のキャラクターと、レギュラーキャスト陣の魅力。この2点をしっかり押さえた『遺留捜査』は、まぁまぁ面白いですw
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『悪党/重犯罪捜査班』2011

2019-07-21 00:00:16 | 刑事ドラマ HISTORY









 
2011年の冬シーズン、テレビ朝日系列の金曜夜9時枠で全8話が放映された、朝日放送とテレビ朝日の共同制作による異色の刑事ドラマ。

世間ではイマイチ話題にされず、刑事ドラマが特集されても振り返られる機会がほとんど無いんだけど、私自身は当時『デカワンコ』の次にハマった番組で、言わば幻の名作です。

賄賂による情報収集、暴力団との裏取引、囮捜査、証拠隠滅、監禁、拷問、盗聴、乳首、足の裏などの違法捜査を繰り返す、横浜港町警察署・刑事課第四係の刑事たちの悪行三昧が暗いタッチで描かれてます。大衆ウケしなかったのは当然かも知れませんw

だけど彼らは快楽や私利私欲の為にルールを無視するんじゃなくて、目的はあくまで正攻法じゃ裁き切れない悪を確実に駆逐すること。朝日放送さんのお家芸とも言える『必殺仕置人』や『ザ・ハングマン』のスピリットを継承してるワケです。

なのに堺雅人さんの『ジョーカー/許されざる捜査官』ほど世間に受け入れられなかったのは、出演者たちの面構えがあまりにワル過ぎたせいでしょうか?w 一見温厚な優男にしか見えない堺さんの方がよっぽどアブナイと思うんだけどw、深読みが出来ない昨今の視聴者たちは見た眼だけで判断しちゃったのかも知れません。

そんな第四係の悪党たちを束ねる主任=富樫正義(高橋克典)は、失踪した妻(森脇英理子)が残していった養子縁組の娘=のぞみ(宮武美桜)の面倒を見ることだけが生き甲斐の男ヤモメ。

一見優秀でクールビューティーな紅一点=飯沼玲子(内山理名)は、プライベートじゃなぜかロクでもないDVヒモ男(敦士)と別れられない優柔不断女。

やはり一見切れ者のイケメン刑事=山下(平山浩行)も実は妻子と別居中で、息子の声が聞きたくて夜な夜な無言電話を掛けては、独りむせび泣くという人間臭さ。

唯一、私利私欲の為に暴力団から裏金をむしり取る乳首野郎=柴田(鈴木浩介)はやり過ぎて命を狙われ、警察にもいられなくなって途中から離脱しちゃいますw

そして富樫たちの暴走を知りながら日和見を決め込む課長=石黒(梅沢富美男)も一筋縄じゃいかない男。

かように多面的に描かれ、単純な善人でも悪人でもない刑事たちの複雑なキャラクターがまた、過剰に解り易く作られた昨今のテレビ番組に感性を奪われた大衆には、とうてい共感しづらかったのかも知れません。

そんな富樫たちを支援しつつも何やら良からぬことを企む県警本部の前島警務部長(村上弘明)が、彼らの動向を監視するために送り込んだのが、チョー堅物の新任係長=里中警部補(小泉孝太郎)。ドラマは、ただひとり裏表のない善良一直線なイケメン坊や=里中の視点から描かれます。

「あなた達のやり方のどこに正義があるんだ!?」

世間一般的に言う「正義」とは程遠い富樫たちのやり方に、激しい怒りをぶつける里中。

「正義? 正義なんて言葉、軽々しく口にするな。俺たちのことを誰にチクろうが構わねえが、あんたも刑事だったらやる事やってからにしろ!」

そんな富樫の言葉には、法や組織のしがらみに縛られた正攻法じゃ本当の意味での正義は実践できない、警察の矛盾が示されてるんだけど、これも大衆には悪徳刑事の言い訳にしか聞こえないのかも?

まぁしかし、それも無理からぬ事かも知れません。なにしろ卑劣な凶悪犯を殴る蹴るの体罰で自白させた富樫が、最後に言って聞かせるアドバイスがこれですから。

「法廷で余計なこと喋ったら、地獄の果てまで追い詰めてやる。……殺すよ?」

私はただただ拍手あるのみだけどw、良識派には通じないだろうと思います。なぜなら、彼らは人間という生き物の本当の怖さを知らないから。

この世に住んでるのは善良なウサギだけじゃない。それを狙い、襲って、骨までしゃぶるハイエナどもがウヨウヨいる。

あくまで正攻法を主張する坊や里中に、富樫は言います。

「あんたもウサギだ。ハイエナどもからウサギがウサギを守れるのか? ハイエナを倒せるのは、ハイエナだけだ」

まったくその通り! そして、堂々とそれが出来るのは「刑事ドラマの中の刑事さん」だけなんです。それをやらずして、何のための刑事ドラマなの?って話です。

何度も同じこと書いて恐縮だけど、テレビ業界の現状が変わらない限り、私は何度でも書き続けます。

ただ突っ立って殺人事件の謎を解くだけなら、家政婦にだって三毛猫にだって出来る。凶悪犯に「眼には眼を」で被害者の苦しみに相当する罰を与えられるのは、刑事ドラマの刑事さんだけなんです!

現実世界じゃ有り得ないって? だ・か・ら・こそ、でしょうが! 実際には出来ないことを、さも出来るように見せて、我々大衆のストレスを解消させる。それが本来あるべきテレビ番組の姿だと私は思うワケです。もう謎解きなんかいらん! 飽きた! 刑事なら凶悪犯をぶん殴れ! 撃ち殺せ! それが国家権力を背負ったアンタたちの使命でしょうが!

最終回で富樫刑事は、部下である玲子との仲を誤解した、彼女のしょーもないヒモ男に刺されて殉職しちゃいます。『太陽にほえろ!』のマカロニ刑事を彷彿させる「犬死に」だけど、富樫もそうして最後に罰を受けるワケです。

自分の拳を痛めないで、命を賭けることもせず、ただ突っ立って謎を解くだけでハイエナを倒せるのか? 笑わせんな!って話です。

思えば、昭和ドラマの刑事さんたちは普通にやってた事なんですよねw それがいつの間にやら……そりゃ日本って国も衰退するワケです。破滅です。

そんなワケで本作『悪党/重犯罪捜査班』は、2010年代に入っていよいよ絶滅危機に瀕した、本当の意味での刑事ドラマの数少ない生き残りです。機会があれば是非、刮目してご覧頂ければと思います。
 
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする