ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

「金壺親父恋達引」

2016-08-07 08:25:26 | 文楽
 8月7日発行 毎日新聞「日曜プライムくらぶ」の中の「新・心のサプリ」で医師の海原純子さんが相模原での悲惨な事件にふれていた。人間の価値は、収入、学歴、外見など目に見えるものだけではなく、別の尺度、つまり人が決めたものではなく自然の決めた役割や価値があるのではないか。すべての人には何らかの役割があり、世の中にとって必要である。しかし、役割に気づくのがわかりにくかったりするため、浅慮から「価値がない」と言う人がいる。「価値がない」というのは「価値を見つけられない」ことだと。
 心に刻んでおこう。

平成28年夏休み文楽特別公演 第三部 サマーレイトショー
「金壺親父恋達引」(かなつぼおやじこいのたてひき) ―モリエール「守銭奴」による―
平成28年7/23~8/9 国立文楽劇場

 呉服屋「金仲屋」の主人・金左衛門は、ひどいしまりやで、貯めたお金を壺に入れて庭に埋め、こっそりと取り出して眺めるのが楽しみ。今日は、町で評判の美しい娘・お舟が三十両の持参金つきで嫁にくるので大喜び。そのお舟に惚れている息子の万七は、お舟と一緒になるために手代の豆助を通じて三十両を工面しようとする。しかし、工面しようとした高利貸が父の金左衛門とわかり、父から罵られる。その晩、婚礼にきたお舟と万七の仲睦まじい様子を見た金左衛門は怒る。駆け落ちをしようとする二人に、豆助は金壺を掘り出して渡す。一方、金左衛門の娘お高は、父と同年輩の京屋徳右衛門の後妻にされそうになるが、お高は、恋仲である金仲屋の番頭・行平と駆け落ちするために庭の金壺を掘り出す。そこに来合わせた金左衛門は壺がないことに気付いて行平が盗んだ犯人だと大騒ぎをするところへ、京屋徳右衛門がやってくる。行平は、自分が長崎屋徳兵衛の忘れ形見だと話すと、お舟が妹だと名乗る。さらに、徳右衛門が、実は長崎屋徳兵衛と名乗り、親子の再会を果たす。万七とお舟、お高と行平がめでたく結ばれることになり、徳右衛門に連れられて店を出る。最後に一人残された金左衛門は、金壺を抱きしめるのであった。

 井上ひさしの書き下ろし。口語なので、前に字幕はなし。「質素倹約」の掛け軸が裏返って「金金金金金仲屋」となったり。豆助が金壺を掘り出すのに使った棒に泥がついているのを見て、泥棒だと騒いだり。しみったれで、半年ももたない老いぼれの高利貸しと言って噂をすれば、それが金左衛門自身のことだったり。とおかしみがあちこちにちりばめられている。お高の持参金三十両の内訳が、一汁一菜で間食をしないから年十両の節約、着飾ることをしないので年十両の節約、芝居見物が嫌いなので年十両の節約というのも笑える。徳右衛門、行平、お舟が実は親子というのも、えぇっという感じで「出ました、文楽の実は○○」と思ってしまった。文楽には珍しくハッピーエンド?というか、最後の金壺を抱きしめて金をチャリンチャリン言わせる金左衛門が、なんとも幸せそうに見えていい。
 桐竹勘十郎さんは、ユーモラスな人形を遣うのがお上手。吉田和生さんの遣う女の人は美しく、吉田和生さんのファンになりそう。
 休憩なしの1時間ちょっとの公演で、腰も痛くならず、気軽な感じがいい。

 子どもが、文楽劇場の2階の売店で「紅茶わらび餅」を買う。ミルクをかけて食べるとのこと。アールグレイの香りが口いっぱいに広がり、美味しかった。
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